エロなしの箸休め回ですし、たまには良いかなとこんな日に更新。
次の話も微エロくらいしかないので、次の土日辺りに更新出来たらと思います。
では、どうぞ。
「この情報……偽りであるならば……」
「偽りは申しません。 そちらでも解析してみれば分かることでしょう」
「……皇帝陛下の判断次第だ」
「上手くいくことを祈っていますよ」
「……ふん」
「……全く。 大国に所属していると、それだけで強くなった気になるのが困る」
アザハイド帝国の外交官を名乗る男からの通信を前にして平伏していたメッツァーが、通信が切れた途端呆れたような声を出す。
「アレの価値がすぐに分からんとはな。 アザハイド帝国の外交官が聞いて呆れる」
「……まぁ仕方ないんじゃないか? 技術職でも頂点でもない奴の理解力なんて大体あんなもんだよ」
メッツァーのぼやきに、アザハイド帝国側には秘密に通信が繋がっていたアクラが反応する。
ちなみにメッツァー陣営の文官達は、メッツァーやアクラが凛々子に頼んで持ってこさせた地上の書物によって今話してる内容くらいならば理解出来るよう勉強させている。
つまり、アクラの言葉は皮肉だ。
「まぁ……皇帝が出て来ない段階で意味のない通信だったな。 これより会議を始める。入れ」
アザハイド帝国皇帝、ピエナ・パレルモ・イーザーヘルゲンは多忙のためとメッツァーとの通信には参加しなかった。
その時点でメッツァーには必要な情報をあちらに流す以外の目的がなくなり、早い内に大事な会議へと意識をシフトしていた。
メッツァーの言葉に、凛々子とココノが入室してくる。
ディラックは不在だ。というより、彼が会議に参加した前回が特別なのだ。
「まずはアクラ」
「エリクシルナイツの治療はある程度完了した。 エリクシルライムが57%。エリクシルローズが88%ってとこだ」
「予定より進みが早いな」
「まぁ……な」
「……どうした?」
「いや、報告には関係ない」
あれからもエリクシルナイツの二人の治療は続いている。
亜梨子も樹も恥ずかしがりながら、治療に協力的なため予想より遥かに治療の進行度は進んでいたが、問題がないわけではなかった。
だが、報告には関係ないためアクラは言葉を濁す。
「ならば良い。 フェイズ2への移行は?」
「可能だ。 というより運がむいてな。 レムティアシータとの接触に昨日成功した」
「ほう……」
ある程度の信頼は得られているが、まだレムティア計画の要であろうレムティアシータにはアクラは会わせて貰っていなかった。
会えるだけの信頼を得るためでもあるエリクシルナイツの治療だったが、どうやら別の要因があったようでアクラの表情は愉快そうだ。
「昨夜、野良が発生したんだが……レムティアシータが戦いに出ていた。 しかも、まぁ……負けちゃってな。 助けるついでに色々調べさせて貰った」
「それはまた……随分と運に恵まれたな。ランクは?」
「下の中。ゼーロウの奴なら使役出来るランクだ」
アクラの口ぶりからただ調べただけではないだろうと思いながらも、そこには触れずメッツァーは話を進める。
野良に関しては捨ておけないからだ。
「
「だな。 とりあえずまだ大丈夫だ」
「分かった。 他に問題はないか?」
「……一応、ない。 フェイズ2への移行には異論ないからな」
「……そうか」
暗に何か作戦以外で問題が発生してると言いたげなアクラの態度に気付きながらも作戦には問題ないならばメッツァーはスルーする。
というより、あまり触れない方が良い。そんな予感がするのだ。
「まぁ……良い。ココノ」
「はい。 大召喚器による下魔の量産は完了致しました。 いつでも戦場に送り出せます」
「ふむ。 奴らの動きは? 凛々子」
「相変わらず、王城に続く都市を中心に守って、外部を完全に捨ててる。 その代わり、首都周りの守備は硬いけど……」
「ちっ……まぁ予想が当たったということだな」
内政の代表であるココノ。外交の代表である凛々子の報告を受け、メッツァーは小さく舌打ちする。
アクラが先ほど話したレムティアシータのことで訂正がなかったということは、レムティアシータの聖涙石を生み出したのはティアナで間違いなかったと言うこと。
つまり、グロリアが女神近衛騎士団の指揮をとっているのが、ほぼ確定したのだ。
「ふぅ……良し、動くぞ」
「俺抜きで大丈夫か?」
「ふん。 魔法戦士達と楽しんで腑抜けてるお前なら居ない方がマシだ」
「あ、言ったな。 腑抜けてるかどうか試してやろうか?」
「試すまでもない。 力なら、精々お前の女神とやらに見せつけていろ」
「ぶっ!? ガ、ガキの頃の言い方を掘り返すな!」
「ふふふ……」
「……良かった」
まるで子供のような、言ってしまえば兄弟のじゃれ合いのようなやり取りを
アクラが腑抜けていると言われているが、あからさまに失恋の悲しみに沈んでから暫くは、まともにこんなやり取りは見られなかったのだ。
そのせいか、メッツァーもどこか元気がないように見えていた。
そんなメッツァーとアクラを二人が心配しないわけがないのだ。
それに何より、こうなった時の二人は、非常に頭の回転が良くなるのだから、悪いことは何もない。
「ココノ、奴等の配備を急がせろ。 狙いは、フューエルだ」
「分かりました、メッツァー様」
「フューエルの降伏勧告はどうするの? メッツァー」
「フューエルには代官が今は居ないはずだからいらん。 次の都市、トリアージに先に出しておけ」
「了解。 内容は、無条件で良いわね」
「あぁあそこの市長は流れが分かっているはずだからな」
その証拠とばかりにじゃれ合いをしていたはずのメッツァーが矢継ぎ早に、指示を出していく。
それに迷いなく反応出来るココノと凛々子も優秀だが、何よりやはりトップの意思決定力。これがロアとは大違いなのだ。
「それに何より王家から見捨てられてたら、まぁこっちを選ぶわよね……ねぇメッツァー」
「なんだ?」
「私達、香那葉ちゃんや麻由希ちゃん、愛梨さんも……間違ってたのかな」
「凛々子さん……」
「…………」
何がとまでは言わなくとも凛々子の言いたいことはこの場に居る全員に伝わる。
何よりメッツァーを見極めるつもりだった凛々子が、全力で仕事に取り組んでいる現状を見れば……すでに見極めが終わっていることを示しているのと同じことだ。
ココノの凛々子を気遣うような視線と、メッツァーを無言で見ているアクラの中でゆっくりとメッツァーは口を開く。
「……正義は=正しさではない。 悪もまた=間違いではない」
「……それは」
「正義とて間違う。 悪とて正しいことをする。 凛々子、正義を信じたお前が間違っていたわけじゃない。正義自体が間違うこともある。 だが、間違えるのが怖いと言うなら……」
そこでゆっくりとメッツァーは真剣な表情のまま立ち上がる。
そして自らの胸の辺りに平手を置いて、凛々子をじっと見つめる。
「ずっと俺に着いてこい凛々子。 間違いも何もかも俺が変えてやる。 俺を阻む全てを蹴散らし、俺の世界に連れて行ってやる」
「〜♪やるぅ」
「ふぁ……」
「…………」
迷いのない瞳、メッツァーの持つカリスマと、
「あ……あ……あり、がとう……」
何とかそれだけ口に出来た凛々子は、そのまま顔を伏せる。
耳まで真っ赤な辺り、嬉しさと恥ずかしさで顔から火でも出そうなのだろうと言うことはアクラにすら理解出来た。
「メッツァー様! このココノもずっとお側に!」
「む? あ、あぁ……ココノは当たり前だろう。
逃がすことはないと前から言っているからな」
「はいっ!」
「……んん?」
何故か滅茶苦茶機嫌が良いココノと顔を伏せてしまった凛々子。
その二人がなんでそうなっているのかメッツァーは全く理解していないようで、微妙そうな表情をする。
「まぁそっちに俺の出番はないな。 実の母親に囚われた可哀想な愛しの姫君の救出は、昔っから王子様って決まってるからな」
「……なに?愛しの、姫……?」
「えっ……もしかしてメッツァー」
「メッツァー様?」
「おっとこっちもお客さんだ。 そっちは任せたぜ、王子様」
「おいっ! 待」
最後に爆弾に火を付けて投げ込んだアクラは通信を勝手に終了する。
多分あちらでは爆発してるだろうが、知ったことではない。
「昔の言い方するからだ。 母さんの影響なんだよアレは……」
愛しの人を女神と呼ぶのは、母親サリアの影響だ。
実際子供の時にアクラはその言葉を使っており、成長するにつれて恥ずかしい言い回しだと気付いて使うのを止めたのだ。
その失敗を思い出させられたアクラはブツブツ言いながら、住処にしている元ゼーロウの基地の機能を操作する。
別にただ爆発から逃げるためだけに通信を切ったわけではない。
本当に
「疑似上魔8体。 洗脳スキン兵20人。 それにシンフォニックリリーか……すぐ動かせる戦力をほぼぶつけてきた感じかな」
この基地に迫りくる客、それはファルケ・シルヴァ連合だった。
狙いは無論、アクラだろう。
「意外と遅かったな。 どっちかが知識を出し渋ったか……ファルケが見えないのも、警戒かねぇ」
連合を組んでいてもファルケとシルヴァは信頼しあっているわけではない。
いつ裏切られてもおかしくない同盟関係なのだから、警戒するのも当然。
アクラを潰すための戦力のはずなのに、戦力として高いファルケやシルヴァ本人が居ないのは、まぁそういうことなのだろう。
それにタイミングも遅い。
アクラが地上に来ていることはとっくにわかっていたはず。
そのわりに戦力を向かわせてきたのは今日。
わざと隠蔽せずにこの基地を使っていたのに、攻めてくるのが遅すぎるのだ。アクラはシルヴァの変容魔法を治してしまう可能性があるにも関わらずである。
そこからも知識的な連携は強くないと考えるのが普通だった。
『あーあー、聞こえる? 菜々芭』
『え? あ、アクラさん?』
『念話って魔法……知るわけないか。 ロアの魔法だし。 とりあえず前に話した通りだ。奴等が攻めてきた』
『な……だ、大丈夫なんですかアクラさん! お怪我はっ!? ファルケ達に捕まったりはしてないんですか!?』
「…………」
いきなり頭の中に響いたアクラの声に戸惑う菜々芭の表情を想像して、ほくそ笑み、悪戯が上手く成功した子供のような表情を浮かべるアクラだが、続く菜々芭の言葉に驚かされてしまう。
『……菜々芭、俺に怒ってるんじゃなかったっけ?』
『……それとこれとは別です!』
『……ごめん』
エリクシルナイツの治療絡みで妙に仲良くなってしまった亜梨子と、どこか様子が変な樹という状態になってしまったことで、欲望に任せてやり過ぎとアクラは菜々芭に怒られていたのだ。
しかしアクラに危機が迫ってることを知った瞬間、そんな怒りも忘れてしまう。それほど想ってくれていることすら分からないアクラではなく、小さく謝罪を口にする。
『じゃあ今度四人でする? くるみも混ぜて5人でも良いけど』
『……お、怒りますよ?』
『……? 冗談だよ。とにかく、俺は大丈夫。 何よりこの襲撃は予定通りなんだから』
「……はぁ」
いきなり意味不明なことを言い出すアクラだが、その内容にちょっと惹かれたのか、返答の遅れた菜々芭の反応の理由には気付かず、本当に冗談だったため、アクラは本題に戻る。
念話先の菜々芭が吐いた溜め息もアクラには届かない。
『……分かりました。 すぐに救援のためにみんなで向かうので場所を……』
『場所は教えるけど救援じゃないよ菜々芭』
『救援、じゃない?』
いくらアクラと言えどもファルケ・シルヴァ連合に一人で戦うのは無謀。
だから、白薔薇と協力がしたいと連絡をしてきたと菜々芭は判断していたようだが、実際には違う。
目的は敵の撃退ではない。初めから目的は一つだ。
『あぁこれはフェイズ2。 シンフォニックリリー、百合瀬莉々奈の救出作戦だ。 助けるよ、菜々芭の大切な友達を』
『……アクラさん』
『早めにね。 みんなには救出した莉々奈を安全な場所に連れてって貰うんだから』
『……はいっ!』
ロアではメッツァーが。地上ではアクラが。
それぞれの想いを持ち、全力で突き進んでいく。
立ち止まっている暇など、野望のために猛進する彼らにはないのだから。
どの編が面白かった?
-
スイートナイツ編
-
プリンセスティア編
-
スイートナイツ2編
-
シンフォニックナイツ編
-
レムティアナイツ編