裏方の多いイクシードナイツ編は早めに終わらせないとなぁと考えてはいますが、色々やることが多く、未だにイクシードナイツ本人すら出ない始末。
ゆっくりお付き合いください。
では、どうぞ。
「まだまだだね、王子様」
遂に始まった、アクラにとっても無関係ではない計画の第一戦は、キールの惨敗に終わっていた。
魔力に覚醒したことで元の気質が戻ったのか、魔力の万能感に酔ってしまったのか、まだまだキールが莉々奈を相手にするのは早かったのだ。
折角召喚した下魔も全て蹴散らされてしまい、キール自身もあと一歩退く判断が遅ければ捕まっていた可能性も高かったのだ。
だが、アクラは今回の戦いである程度キールを評価していた。
(ただ……溺れすぎず、正しく戦力差を把握出来たのは褒めてあげるよ。 ただの魔法犯罪者なら無謀な戦いをしただろうからね。 そしてソレはあの二人にも分かったはず)
ゲート事件からはや一年ほど。
その前から少量はあった魔力に目覚めたものによる魔法犯罪は絶えることはなく、増加の一途を辿っている。
魔法犯罪者を相手に警察ではどうにも出来ず、いちいち軍隊を出動させるわけにもいかない。
今や魔法戦士敵は魔族や悪の組織だけではないのだ。
しかしアクラにとっては、倒して捕まえれば魔法戦士の信頼を得られ、魔法戦士クラスの素養がある女なら犯して糧に出来る。
魔法戦士を悩ます頭痛の種である魔法犯罪者だが、アクラにとっては色々な意味で都合が良い存在であった。
(普通の魔法犯罪者ではないことは今回で分かったはず。 ならある程度は集中してくれるだろうし……アレを使うタイミングも見えてくるはずだ。 まぁどこまで出来るかは……ん?)
そうやって思考を回していく中、また携帯が鳴る。
菜々芭達に教えてある方ではなく、通信機の方だ。
「はいよ。 連絡してくるなんて珍しいな……サキュバス」
「あんたとはメッツァーがいなくなってからご無沙汰だからね」
通信してきたのはメッツァー陣営時代の同僚である上魔サキュバスだった。
この通信を知っているものは限られるため、必然的に候補は数人になるのだが、今回は珍しい相手だ。
というより、メッツァーが封印され、この通信を教えてから連絡してきたのは初めてだ。
「こっちも暇じゃないから同僚のよしみで簡潔に教えてあげる。 魔界の方はいくつかの派閥で固まっちゃったわ」
「なんだ、次の魔王は誕生しなかったのか」
サキュバスからの通信理由は魔界の情勢についてだった。
そのため魔界ではまた争いが起こっているとアクラは判断していたが、どうやら違うようだ。
「魔王になれるほどの大粒は少なくとも参加しなかったわよ。 あんたもディラックの奴もね。 ただ本題はこれじゃないの」
「簡潔にじゃなかったのか?」
「必要だったから仕方ないじゃない。 小賢しい奴が何人か現れてね……組織みたいなのを作ったみたい」
「組織……魔族のか?」
ハッキリ言って魔族は互いに仲が悪い。
それは人間よりも遥かに高い戦闘本能のせいで、どうしても戦いになりやすいからだ。
特に群れなければいけないであろう下級魔族にこの傾向が強いのが、余計に集まりを作りづらい理由であった。
故に組織と言われても、ピンとは来ない。
「まぁ私も詳しくは知らないわよ。 ただ奴らの狙いは地上、それにゲートみたいよ」
「ゲートも狙い……今はファルケ達が弄った都合であれは演算装置としての面の方が強いはずだけど……いや、まさかな」
「どうしたの?」
「いや、何でもない」
「もうっ。 同僚のよしみで教えてあげたんだから、そっちも何か言いなさいよ」
「まぁまとまったらな」
サキュバスの言うことには一理あるが、アクラとしても魔族がゲートを狙う理由は確信が持てなかった。
ちょっと普通とは違う知識を持つアクラも、分からないことはあるのだ。
「とりあえず分かった。 連絡悪いね」
「別に。 早くメッツァーを復活させてよね。 こっちは暇で暇で仕方ないわ」
「まぁなんとかな。 復活したらまた」
「ええ勿論。 あぁ……それと、奴らの組織の名前はデプレダ。 覚えときなさい。 じゃあね♡」
その言葉を最後に通信は切れた。
本当にアクラを気遣って……何割か以上は多分この情報をアクラに渡すことで起こることを楽しんでいるのだろうが、事実情報は有り難い。
これで最近起こっている現象に関しても説明はある程度付くようになったのだから。
「さてさて……政府側にもどれくらいいるのかな。 奴らが組織的な動きをすると厄介だからね」
単純な悪意という点では、人間の方が余程性悪だと思っているアクラであっても魔族の厄介さというものは理解している。
アクラがそうであるように特殊な能力を沢山持つ魔族達が搦手に走った時、どのようなことをやるのかは想定が難しい。
それに地上最大の戦力である魔法戦士の拠点である学園は狙われる可能性は高いのだから。
「うーんズレがあるのかな……このタイミングで菜々芭に始めたのは不味かったか? いや、でも二人は王子様にはまだ荷が重いしな……ってあれ?」
デプレダという存在が介入してくるという前提で今後の予定を立てなくてはいけない。
そんなことを考え、考えをまとめるために一人でブツブツと喋っていたアクラだが、再度通信機の方に通信が来る。
どうやらサキュバスと通信中にも連絡が来ていたようだ。
そして、今度の相手も無視するわけにはいかない相手だった。
「どうした? ノエル」
「アクラ様! 一匹貸してください!」
「うん?」
通信相手であるノエルの一足飛びの会話に流石のアクラも理解が及ばない。
理由が全く分からないわけではないが、この娘はアクラと会話をする時だけやたらとテンションが高いのだ。
それが彼女とアクラの関係性を物語っていた。
「とりあえず順序を……あ、もしかしてアインス達のどれかってことか?」
「正解です!」
「あのな……」
故にアクラも何となくではあるが、ノエルの一足飛びの会話を遅れながらも理解してしまう。
正解を告げるノエルは嬉しそうだが、アクラはどうしても呆れたような声を出してしまう。
「もう少し分かりやすく……あと貸してくれと言われて、ほいほい貸すようなものじゃ……」
「貸して頂けないのですか?」
「……貸すけどさ。 きちんと無事に返すなら」
実際の所、ノエルに甘いアクラも悪かった。
この娘は唯一甘えられる存在であろうアクラに甘えているのだ。
それが分かっている以上、アクラも突き放し難い。
例え、ノエルも分かってやっていてもだ。
「そこはお任せください! あの子達には傷一つ……は難しいかもしれませんが、絶対に倒させなんてしませんよ!」
「分かった分かった。 なら……アハトを貸してやるよ。 擬態で改良の方に見えるだろ」
旧型に当たるアクラの使役するアインス等の下魔は、今はもうアクラくらいしか使役していない。
ノエルはその制御レベルと実力で使おうと考えたのだろうが、アクラは更なる方を考えていた。
「流石アクラ様。 何に使うまでお見通しですか」
「まぁな。 覚醒は劇的であるほど良いもんだ。 ただの下魔かと思ったら相手は強大な相手。 それを守るため……なら、悪くない」
ノエルの狙いは
より正格に言うならば、聖涙石を持つキールによる魔法戦士の覚醒を劇的にすることにより、覚醒後の魔法戦士を従いやすくすることだ。
誰を魔法戦士として覚醒させるつもりかを知っているアクラからすれば予想はしやすい内容だった。
「彼女達はある程度、恩には弱い性格だからな。 アハトに襲わせて、王子様の手によって魔法戦士に覚醒させる。 それなら例え怪しかろうと王子様……沢渡継を他の人間に報告する可能性は低いだろうよ」
「……本当に流石です」
完全にノエルのやることの目的まで細かく読んでいるアクラに、少しばかりノエルの声に緊張が走る。
アクラはノエル
甘いが……アクラの目的を覆すほどではないし、あくまでアクラはノエルの味方であってノエルの主人となったキールの味方ではない。
そこが分かっているノエルは、少し理解し過ぎるアクラが驚異的に感じるのだ。
「まぁ今回に関してはズルだから気にすることはないよ。 真咲さんと裁明寺さんはちょっとした知り合い……いや、彼女達以上に俺は彼女達のことを知っているからね」
実は百果と紫鶴の二人をアクラはこの学園に来る前から知っていた。
彼女達は数年前、まだ無月亜九としてアクラがインペリオ社に居る頃に開発した魔科学で作られたナノマシンの被検体だったのだ。
勿論ただの被検体だったわけではなく、野良の下魔に襲われ、重症を負った彼女達を救うために実験中だったナノマシンを使ったというのが正しいが、被検体に変わりはない。
アクラはこの学園で彼女達を見かけた時から、彼女達があの時の少女達であることに気付いていた。
「はえ〜偶然ってあるものですね」
(本当に偶然かどうかは怪しいけどね)
完成するまでインペリオ社には居られなかったためにあのナノマシンが人体にどういう影響を及ぼすかは分からない。
だが、少なからず魔科学によって作られたナノマシンが魔力に関与する可能性は低くなく、それは優踏生である紫鶴、魔力の大きさならば魔法クラス1である百果と、ある程度現れている。
彼女達自身の才能も関係はしているだろうが、あのナノマシンが関係していないとは考え難かった。
無論、その考察をわざわざ教えてやるほどは甘くないが。
「まぁとにかく、一時的にアハトは貸すよ。 上手く使うと良い」
「ありがとうございます! 大好きですよアクラ様!」
「はいはい」
冗談なのか、本気なのか分からないノエルの言葉を適当に流しながら、アクラは通信を切る。
ノエルの軽口はいつものことなのでいちいち気にしてられないのだ。
そして何より重要な情報が入ったため、ゆっくり思考している暇はなくなった。
「二人を覚醒させるまでは数日……すぐに受け入れるわけはないから、狙いはまずシンフォニックナイツになるはず。 けどまだ莉々菜には勝てないだろうし……」
またブツブツと呟き、考えをまとめながらもアクラは拠点としているラブホテルの地下へと進む。
「まぁ万が一、莉々菜に勝てるようになっても、無視して菜々芭を狙うとしてもとりあえず保険はかけてあるし、最悪切り札を切れば良い。 となると問題は新たな魔法戦士の方か……」
地下へ転移するわけでもなく、長い長い階段をアクラはどんどん降りていく。
この地下は万が一のために、転移などの魔法は封印してあるため、狭いこの長い階段を降りるしか向かう手段がないようにしてあるのだ。
これならば軍勢も攻め辛い。
「真咲さんも可愛いし、裁明寺さんのあの真面目な顔を快楽に染めあげるのも楽しそう。 ククッ……王子様には悪いけど、素直に渡してあげる気にはならないなぁ」
メッツァー・ハインケルという枷を失った
彼自身の計画はあるが、それ以外は自由だ。
なら、楽しまなければ損だ。少なくともアクラはそう考えている。
コレも、実益より趣味を優先した結果だった。
「それにしても莉々菜も政府も鈍いよね。 なんで魔法戦士からもロアからもアザハイド帝国からも追われているシルヴァが闇にも潜まず、なんで
そして最深部に着くと、科学的にロックされている扉にパスワードを打ち込む。
魔法的にも科学的にもロックされた扉の先が開く。
「男が固執するといったらコレしかないじゃん。 聞こえてないだろうけど、久しぶり。 少しは素直になったかな?
「んぐっ……♥んんっ……♥」
その奥には一人の少女……と素直に見るのは難しいものがあった。
何故ならソレは巨大な肉塊のようなものから、少女の顔が生えた醜悪なものなのだから。
その見えてる顔も、目元は肉の触手により塞がれて目隠し状態であり、口には太い触手が、鼻の穴にも細い触手がいくつも入り込んでいる。
もはや顔が見えている意味があるか分からない状態なのだ。
彼女の名はフィエナ。
シルヴァの副官のような立場の女性である。
他の副官達と違い、明確にシルヴァと好きあっているわけではないが、アクラからすればシルヴァが地上に固執する理由としては十分説得力がある存在だ。
「きみを洗脳したくはなくてね。 きちんと堕ちて、俺の手駒になってくれよ?」
レムティア計画の混乱に紛れ攫ったフィエナは、実験の役には十分にたった。
ならば、次の役目は無論アクラの手駒となること。
魔法戦士ではない彼女は、強引に堕としても何ら支障はない。
だから、アクラは仕上げにココに来たのだ。
「さぁ始めよう。 菜々芭が待ってるから……手早くね」
「っ……♥」
耳も塞がれているため、アクラの声は聞こえていない。
だが、暗殺者として超一流の力を持つフィエナにはアクラが現れたことが気配で分かってしまう。
故に彼女は諦めた。
この肉の塊の調教で弱った自分がアクラの責めを耐えられるわけがない。
だから、今日でシルヴァとはお別れなのだと。
そして、誰も知らない地下で勝敗の決まった戦いが始まる。
勝敗は……言うまでもない。
どの編が面白かった?
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スイートナイツ編
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プリンセスティア編
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スイートナイツ2編
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シンフォニックナイツ編
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レムティアナイツ編