お家デートというものに憧れていた。
ゲームやアニメの主人公たちは、学生の身分にもかかわらず誰も彼も一人暮らしの条件が整っていて、そりゃエッチなハプニングの一つでも起こるだろうと、現実を顧みずに俺は一人憤慨していた。
「悪いな、毎度見慣れた光景で」
「いいですよ。この時期だと外に出るのも億劫ですから」
部屋の中、佐知子と二人でベッドに腰を掛ける。
サイドテールを下ろした佐知子に、俺は複雑な胸中を吐露できないまま、もう二週間以上が過ぎていた。
7月も後半に入り、いよいよ夏を本格的に感じ始めたこの頃、部屋で遊ぶときにエアコンを欠かすことはできず、佐知子は涼しくなると髪の毛を解いてしまう。
髪を結い上げたままにするのは口を使うときくらいで、要するに食事かフェラのとき以外は、佐知子は室内ではストレートヘアにしていることが多い。
しばらくだべって、たまに料理を作り合ったり、勉強を教え合ったりして、結局行き着くのは男女の交わり。
義務感があるわけじゃない。
男である俺は数日もしないうちに否が応でも性欲は溜まるし、佐知子もなんとなく気持ちいいから嫌いではないと誘いを拒むことはなかった。
しばらく一緒にいると、俺もムラムラしてつい体の距離が近くなる。
肩が触れ合うくらいに接近すると、腕や太ももでスキンシップを取って、最後にはお決まりの言葉をかけるのだ。
「……そろそろ、するか」
「はい」
順序や誘い文句なんてなんでもよかった。
セックスを前提として付き合っているのだから、男女が同じ部屋にいればセックスの流れになるのは当然のこと。
それは佐知子もわかっていて、なんとなく雰囲気を察すると視線を送ってくる回数が多くなる。
セックスの順序もおおよそ決まっていた。
考えるのが面倒なのもあるが、それが最も妥当で効率的だったからだ。
最初に俺が佐知子の服を脱がして、胸を中心とした体の各所を触る。
女性器が濡れたのを確認すると指でイジって膣内をほぐす。
ここまでが俺側の前戯。
クンニをすることもたまにはあるが、やっていてそれなりに辛いところがあるのと、佐知子もあまり好まないのとで、もうやらないことがほとんどだ。
挿入前に何度かイかせてやるのがベストなんだろうが、俺には女の子をイかせられるだけの技量はないので諦めた。
佐知子の準備ができたら、次はフェラをしてもらう。
フェラが佐知子への前戯の後なのは、一方的に脱がされるのに抵抗があるから。
美優みたいに有無を言わせず命令してくれれば事情は違うけど、佐知子は基本的に受け身なのでそういった状況になることはない。
フェラはやはり期待していたほどは気持ちよくなかった。
射精に向けて感情が昂ぶっても、フィニッシュまでいくにはどうしても物理的な刺激が足りない。
口に含まれているあの唾液の粘性と温かさで勃起はするが、舌の力では普段手でシゴいている刺激を補えず、裏筋などの性感帯をピンポイントで舐められていないとふとした瞬間に射精感が消えてしまう。
そこまでの技量を佐知子に求めるのは難しかった。
美優に仕込まれた分の基本はきっちりと押さえてくれているが、美優だってフェラの経験があったわけではないし、具体的にどこをどう刺激すればいいのかまでは教えられていない。
だから最後は挿入に移る。
セックスなのだから当然の流れなのかもしれないが、俺としてはたまには口の中に出したい欲求もあった。
「佐知子。挿れるぞ」
「はい」
ベッドの上で仰向けになる佐知子の割れ目に、俺は固くなったペニスを押し付ける。
膣穴は上から入り口が見えるようにはなっていないため、最初はお尻の穴と間違えることも何度かあった。
それが童貞ネタとして使われていたときはそんな間違いするはずないとバカにしていたが、実際に手探りで穴の位置を探っていると焦るくらいにわからないときがある。
「……痛くないか?」
「平気、です。気持ちいいですよ」
もう何度もセックスしているのに、俺は佐知子に毎回それを確かめた。
佐知子の反応が、想像していたよりも薄いのだ。
いつも気持ちいいと言ってくれるので心配はいらないみたいだけど。
身悶えさせながら嬌声を上げるなんて、AVやエロゲの見すぎなんだと思い知った。
腰を前後に振って、肉と肉をぐちゅぐちゅを合わせる。
ゴム越しでなければもっと肉襞を感じられるんだろうか。
亀頭のカリの裏側で、膣肉を擦るように角度を変えてのストローク。
より良い場所に当たるように動いているつもりでも、互いに膣内の状態なんてそんな細かくはわかっていない。
そこには肉感と温度があるだけ。
興奮はするし、射精したい気分にはなるけど。
「佐知子……激しくするぞ……!」
「来て……ください……!」
ギシギシと音を立てるベッドに、焦りだけが募っていく。
──今日もまた、射精ができなのではないか、と。
佐知子とセックスをするのは、もう5日連続になる。
塾が夏期講習のための日程調整として一週間の休みを作り、俺はその期間の放課後に家を貸してもらえるよう美優に頼み込んだ。
セックスにハマったわけではなく、それどころか、俺は童貞を捨てたあの日以来、一度もまともにセックスはできていなかった。
あるいは、その最初のセックスですら、美優の力で射精をさせてもらっていただけで、俺と佐知子の間にはまだ恋人としての正しいセックスは一度もなかったのかもしれない。
腰を振り続けて、筋肉と時間だけが消費されていく。
射精感が湧き上がってこない。
肉棒はガチガチに固まって、射精の準備はできているはずなのに。
「はぁ……あんっ……ぁっ……おにぃ……さん……!」
雰囲気だけは高まってきて、動きも激しくなって、もうそろそろイカなければならない流れになってくると、俺の中で葛藤が生まれる。
このままスムーズに終わらせて満足したことを伝えるべきか。
このセックスでは射精できないことを素直に告白するべきか。
「佐知子……出っ……出る……ッ!!」
俺は佐知子を強く抱きしめて、その喘ぎ声を聞きながら腰を強く打ち付ける。
美優に近い声質の佐知子の喘ぎを聞くことだけが、俺の唯一の射精手段だった。
それはもはや佐知子とセックスしているとはいえなかった。
俺は恋人と体を重ねていてもなお、実の妹をオカズにしている。
そんなことをセックスの真っ最中である相手に打ち明けられるわけもなく、俺は数瞬だけ結びついた佐知子の声と美優の姿に、ようやく射精にまで至った。
「はぁ……はぁ……」
「お兄さん……もう……すごいです……」
肉体関係なんていうけど、大切なのは精神的な繋がりだ。
テクニックなんてなくたって、想いの限りに激しくしていれば雰囲気はでるし気持ちよくなってくれる。
俺が射精するために全力になっていることが佐知子の快感につながっているようだった。
だから佐知子には不満を抱かれたこともない。
ベッドの上で、裸になって息を乱しながら寝転ぶ俺と佐知子。
本当は佐知子のことだけを考えて射精したいのに。
それができる気がしない。
そんな風になってからもう二週間が経って、俺の中のわだかまりも無視できないほどに大きくなっていた。
「明日は塾がありますけど。明後日はどうしますか? またエッチします?」
「そう、だな。明日考えてから連絡するよ」
「わかりました」
この一週間で、佐知子だけを相手に射精する方法を探り続けてきた。
だが一度として、妹をオカズにしないで射精することができないまま、俺はその日の夜も終えてしまった。
金曜日、晴れない気分で学校を過ごした。
鈴原と高波にも「ボケッとしてんなぁ。何かあったのか?」と気遣われたし、山本さんからは「大丈夫? おっぱい揉む?」とかリアルに揉ませてくれそうな口調で心配されて、無意識に断ってしまった。
まあ、それは彼女がいるから当然なんだけど。
いまだに佐知子と恋人同士という実感が湧いてこない。
イチャイチャもそれなりにしてるし嫌いな部分もないのに。
妹の影響力が強すぎて恋愛に集中できない。
乙女チックな表現をするなら、トキメキが足りていなかった。
そんなものがなくても仲良くしているのが正しいカップルのありかただとはわかっている。
でも俺にはそういう、佐知子を女として意識するためのきっかけが必要だった。
佐知子は無垢が故に否定も抵抗もしてこない。
お願いをすれば大体のことは聞いてくれる。
本来はありがたいはずのそれも、俺にとっては悩みのタネだった。
変わるためのきっかけを、全て自分で用意しなければならないから。
贅沢な悩みだ。
あれだけ可愛い子と好きなだけセックスができるのに。
恵まれていると言う他ない。
過去の俺がこんなふざけた悩みを抱えている男と出会ったら、迷わず殴りかかってくるだろう。
それほどに、俺は佐知子にも自分にもわがままな要求をしている。
「ただいま」
浮かない気分で家の戸を開いた。
鍵がかかっていない。
美優が帰ってきている。
キッチンから水を流す音が聞こえてきて、リビングのドアを開けると、そこには髪を結い上げて洗い物をする美優の姿があった。
トクン、と心臓が一つ大きな音を上げる。
スポンジを片手に真剣な眼差しで食器をこする美優の姿に、俺は見惚れていた。
遥や山本さんの顔の整い具合からすれば、佐知子も美優も容姿の良さはそれほどかわらないはず。
それなのに、どの瞬間を見ても美優が可愛い。
制服から室内用のTシャツとスカートに着替えたラフな格好。
白い首筋と血色の良いリップに、早鐘が鳴るこの体。
彼女持ちの、ましてや実の兄が抱いていい感情ではない。
理性ではそれを忌むべきものだとわかっていても、美優が特別であることは変えられなかった。
「ただいま」
俺が改めて声をかけても、美優は「うん」と淡白に返すだけだった。
たかが食器洗いなのに、一心不乱に手を動かしている。
何か別の思考から逃れようとしているような、そんな集中力だ。
美優にだって美優の生活がある。
学校で何かあったのかもしれない。
俺は鍋に煮込まれた夏野菜を横目に、冷蔵庫を開けてペットボトルを取り出す。
フタを緩めると、プシュッと小気味良い音が鳴った。
炭酸飲料の甘い匂いの後、俺の鼻腔をくすぐったのは、美優の髪から香るフローラルだった。
女の子の匂いはシャンプーや香水の残り香だなんて言われているけど、俺はこれが女の子特有の匂いであると信じている。
温度があって、フェロモンが含まれていて、男性の本能を焚きつけてくる。そんな香りに、俺の性欲はたやすく屈服した。
勃っていた。
もはや申し訳なさすら感じないくらい、俺は美優の背後でガチガチにペニスを勃起させていた。
美優に男としてまともにしてもらって。
可愛い彼女を紹介してもらって。
セックスのために家まで空けてもらった。
至れり尽せりの妹に、必ず報いなければならないのに。
失敗など許されるわけがなく、俺は童貞と一緒にシスコンを卒業して、妹に欲情しない体にならないといけなかったのに、と。
もしかしたら、そんなプレッシャーが俺の精神をおかしくしていたのかもしれない。
ストレスをかけられると絶頂できなくなるのは男も同じこと。
佐知子とのセックスが上手くいかないのはきっとそのせいだ。
だからあまり気負わず「知らないうちに恋人一筋になっていた」となればよいのではないだろうか。
そう考えると、胸の奥に詰まっていたモヤモヤが、スッと消えていく気がした。
「ごはん、どれくらいでできるんだ?」
「一時間」
食い気味の返事。
よほど虫の居所が悪いらしい。
鍋の火は止められていて、中から微かにスパイスの香りがする。
炊飯器のディスプレイを覗き込むと、ちょうどタイマーが作動した。
電子音に脅かされた俺は、無心で食器を洗い続ける美優を背に、リビングを飛び出した。
「はぁ……抜くか」
俺は制服のスラックスを洗面所に放り投げて、シャツとパンツだけのちょっと情けない姿でトイレに入った。
亀頭の先が湿ってパンツを尖らせている。
便座に腰掛けて、肉棒を開放すると、久々のオナニーに気分が高揚した。
今日は、もう美優をオカズにしてしまおう。
美優のあの、残念なものを見る目で射精を観察される状況を想像すると、ふとももの内側がこそばゆくなってくる。
脳が喜びに満ちていた。
アドレナリンだかドーパミンだか知らないが、とにかくなにかヤバいものがドバドバと分泌されている。
これはさすがにマズいかと迷いが生じながらも、ここまできての中止は脳に異常すらきたしそうだったので続行を決意した。
「ふぅ……ん……くっ……」
肉棒を包む手の感覚が懐かしい。
本音を言えば美優に見ていて欲しいし、受け止めて欲しいけど、彼女がいる今はそれを望むことはできない。
そもそも、そういうのをしなくて済むように彼女を作ったんだから、当然なんだけど。
何をするにしても唐突すぎた。
もっとゆっくり妹離れをするべきだった。
「はぁ……うっ……やばい……気持ちいい……!」
女の子とセックスをするよりオナニーが気持ちいいなんてよくある話。
噂に聞いているだけのときは信じられなかったけど、今ならわかる。
彼女がいてもオナニーの時間は必要だ。
美優が目の前にきて、スカートを押さえながら正座をして、姿勢良く俺の肉棒を見つめる。
ムチムチに張り上がったそれが、だらしなくカウパーを垂れ流すのを見て、美優は口を開いて舌を出す。
口内の湿り気、唾液の残り具合、その吐息の温度まで、俺の脳ははっきりと記憶していた。
「美優……はぁ……美優…………!」
オナニーから数分もしないうちに尿道口はぬちゃぬちゃと音を立てていた。
飲み込むのは美優の口なのに、そのときを待って涎を垂らしているのは俺の肉棒の方。
出したい。
もう出してしまいたい。
睾丸がせり上がって、精子の緊急製造が開始される。
膣内に出すわけでもないのに。
美優の口内に射精することを想像するだけで、俺の脳は精液の増量命令を出していた。
「あぁ……美優……もう……出るッ……!」
ラストスパートに右手を激しく上下させた。
その瞬間のこと。
ガチャ、とドアノブを捻る音に、俺は鍵を閉め忘れていたことに気付いた。
慌てて手を伸ばすも、ときはすでに遅く、開かれたドアの向こうにいる美優と目が合う。
その視線は、照明を反射してテカりつく俺の亀頭へと移された。
「お……お兄ちゃん、そんなとこで何してるの!」
予想だにしなかった剣幕で怒られて、俺の思考は興奮と驚きに混濁した。
いくらご機嫌斜めでも、こんな当たり散らすように怒鳴られることは今まで一度もなかったのに。
「お兄ちゃんの……馬鹿……ッ!」
美優がスカートの真ん中をギュッと押さえ込んで涙目になる。
内股気味に息を荒らげるその姿に、俺は事の重大さをようやく理解した。
「わ、悪い! すぐに退くから!」
美優は機嫌が悪いわけではなかった。
おしっこを我慢していたのだ。
きっと料理をしているときから尿意を感じていて、手の油を拭うのが手間で限界まで我慢してしまったのだろう。
食器洗いが終わって駆け込んできたトイレの鍵が開いていて、ひと安心した美優の目に飛び込んできたのは、用を足しているわけでもない俺が便器を占有している姿。
美優が感じた絶望と憎悪は計り知れない。
俺が立ち上がるよりも先に、美優はパンツを脱ぎ始めた。
風呂上がりでも滅多に裸で出て来ない美優が、人前でパンツを下ろすなんてよほどのことだ。
一刻も早く便器を空けてやらないと。
そんなお互いの焦りが、絶妙な歯車の不一致を生んだ。
俺は前かがみの状態から腰を上げようと、前後のバランスを取るために足を踏み出す。
その先にあったのは、片足首に掛かかったままの美優のパンツだった。
それを踏んだ瞬間、脳裏によぎる最悪の展開。
美優が自らのパンツに足を引っかけてバランスを崩したときには、もうその結末は変えようのないものになっていた。
「うわっ……ちょっ……!」
俺は美優に押し倒されて便座へと腰を打つ。
痛みを感じる間も無く美優が倒れこんできて、俺たちは向かい合わせに便座に跨った。
お互いに性器を露出したまま。
先走りに濡れたガチガチの肉棒がそそり立って、下手をすればそのまま事故挿入すら起こり得た状況。
肉棒は美優のTシャツの中に入り込んで、先走り汁をお腹に塗りつけている。
俺は謝罪するより先に美優の肩を掴んで押した。
元よりスキンシップを好まない美優だ。
こんなデリケートな場所が触れ合っている状態に耐えられるわけがない。
だが、美優は動かなかった。
それどころか股をぐいぐい押し込んできて、力の限り俺を抱きしめてきた。
「み、美優……!?」
驚きの連続で、俺は完全に固まった。
美優は片膝を俺の太腿に乗せた状態でぴったりと体を密着させ、
「ふぅ……はぁ……ううっ…………うぐッ……」
痕がつくほど俺の腕を握りしめて、真っ赤な顔を肩に埋めていた。
「おにぃ……ちゃん…………ばか……」
美優が膀胱の決壊を懸命に押さえ込みながら、最悪の事態に備えておしっこをするスペースを確保しようと体を押し込んでくる。
俺も腰を引くが、中途半端な体勢で足が絡まっているせいで身動きが取れなかった。
美優のお腹が俺の肉棒を圧迫し、先走りの滑りで絶妙に裏筋をマッサージする。
公開排尿という羞恥プレイに晒されている美優に少しでも気を遣ってあげたいのに。
「美優……それ以上は……もう────ッ!」
オナニーによって散々煽られた俺の肉棒は、もう射精の暴発に歯止めが掛からなくなっていた。