テーブルの上に4つのランチョンマットが並べられている。
皿が置かれているのはそのうちの3つで、俺と、母親と、父親の分。
今日の朝食は、パンに各々が好きなものを乗せるものだ。
両親はケチャップやチーズを乗せるピザスタイル。
俺はオーソドックスにマーガリンとジャム、もしくは砂糖。
美優はサラダや目玉焼きを乗せて食べることが多い。
「こーちゃん、私たち、明日からもう旅行に出ちゃうから。美優の世話はよろしくね」
「ん、ああ」
俺はパンを頬張って、リビングの外にある階段に意識を向ける。
まだ登校日は残っているはずなのに、美優が朝食を食べに来ていない。
「あの子は普段はしっかりしてるけど、ちょっとしたきっかけで気が抜けちゃうときがあるから。事故だけは起こさないように注意してあげるのよ」
母親の言うとおり、美優にも危なっかしいところはある。
美優は普通の女の子に完璧の皮を被せたタイプだ。
生まれつき天才だったわけではなく、努力の積み重ねで今に至っている。
美優の淡白さはその努力の過程で身に染み付いた緊張感からくるもので、その糸さえキレてしまえばむしろか弱いくらいの女の子に戻ってしまう。
美優がご飯を食べに来ない理由は、どう考えても昨日の健康診断の影響だ。
胸の大きさにコンプレックスを抱いていた美優は、ついに90の大台に乗ってしまったバストサイズに頭を悩ませている。
そのショックがまだ抜けきっていないのだろう。
美優のことだから数日休んだところで出席日数が足りなくなることはないはずだが、起こさなかったら無視をしてしまったみたいで後味が悪い。
食事を手早く終えて美優の部屋に行くことにした。
妹とはいえ女の子の部屋なのでズカズカと入っていくわけにもいかず、ノックをしてみるも反応がない。
わずかにドアを開けて中を覗くと、布団が盛り上がっている。
起きて登校の準備もしていないようだ。
「美優、朝だぞ」
声を掛けても返事はない。
昨日の事件からわかったことだが、美優は疲れて寝ているときは極端に起きにくいみたいだ。
部屋に入り、ドアを閉める。
内装は以前と変わりはなく、淡白ながらも女の子らしい赤みのある配色。
やはりというかいくつかの服が脱ぎ散らかされていた。
「起きろ、美優。学校に遅れるぞ」
俺は頭のてっぺんだけを出して寝ている美優の肩を揺さぶった。
「ん……んにゅ……」
美優は布団の中から第二関節までをニョキッと生やして、目の下まで布団を下ろす。
眩しそうに目を細める顔が不機嫌だった。
「そろそろご飯を食べないと間に合わなそうだから起こしにきた。休むなら休むでいいけど、どうする?」
「……行く」
言葉とは正反対に布団をかぶり直す美優。
重症だ。
いつもは必要以上にきっちりしているだけに、その落差からどれほどのショックを受けているかがわかる。
「今朝はパンだから、部屋に持ってきた方がいいならなんか作ってくるぞ」
床が汚れたりニオイがつくからと、部屋で食事をするのを好まない美優だが、こぼれにくいように作ってくればパンくらいは食べるだろう。
勉強のときはココアとか持ち込んでるみたいだし。
美優はまた顔を出した。
いつもの愛らしい眼に戻っている。
「それは嬉しいけど、食欲がないんだよね」
美優がギリギリまで寝ていた理由はそれだったか。
ご飯を食べないなら、なるほどたしかにまだ寝ていても余裕がある。
食器は片付けておこう。
両親ももうすぐ出かける時間だし、余った時間で食器でも洗っておくか。
部屋を出ようとして、ふと美優のベッドの足元に違和感を覚えた。
背後で美優が起き上がる音がして、布団が退けられると、その全容が露わになる。
淡い柑橘色のパンツが一つ転がっていた。
セットのブラジャーと思われる肩紐まで布団からはみ出ていて、その更に奥にはパジャマの裾らしき部分が見えている。
頭をよぎる予感。
いや、すでに確信となっていたそれは、俺の好奇心から我慢の二文字を奪い去っていた。
「あっ……」
美優がそれを自覚したのと、俺が振り返ったのがほぼ同時だった。
起き上がった美優の体が、朝日を浴びて白く輝いている。
上半身には美優の悩みの種が成熟していた。
その先端には、白桃を連想させるほんのりとしたピンク色が。
「うっ……そうだった……」
美優はゆっくりと布団を被り直した。
「そうだった」というのがどのような意味を持つのか、さすがの俺でも想像がついていた。
そんな邪推などするべきではないのだろうが、これはどう考えたってそうだったとしか考えられない。
止まない想像が俺の下半身に熱を集めていく。
布団の中で脱がれた服……最初から着ていなかったのならそれだけのことだったが、美優はわざわざ着ていたものを脱いで裸になった。
俺だってまさかとは思うが、これが指し示すものは一つしかない。
「お兄ちゃん……」
美優の恨みと羞恥の込められた声が俺の耳に届く。
それが更に下腹部に硬さを与えていく。
「これは、ですね、寝ているときに、サイズの合わないブラが苦しくなって。それで、脱いだだけでして……」
美優の苦しい言い訳が俺の確信をより強固なものにしていく。
ブラジャーを脱いだ理由としては適切でも、パンツまで脱いだ理由にならない。
沈黙が俺の返答だった。
美優は必死に体のいい釈明を探しているようだが、この状況がひっくり返るはずもなく。
「わ、私だって、若い体を持て余すことくらいあります」
ついに美優が認めた。
昨晩、一人でその体を慰めていたことを。
声は全く聞こえなかった。
バレないように声を押し殺して、この布団の中で美優は身悶えしていたんだ。
考えれば考えるほど、危険な脳内物質が分泌されていく。
生地の柔らかいスウェットが勃起に押し上げられて、いつもよりもペニスのサイズが誇張されていた。
「ばか……」
美優の目も俺の膨らみを睨んでいた。
朝勃ちでも体感したことがないくらいの膨張感がある。
興奮は収まりそうになかった。
美優から目を反らしても、あらぬ妄想が睾丸を疼かせて止まない。
このままだと俺が学校に行けなくなる。
抜かなくては。
ここで出しておかないと、どうにか誤魔化して学校に行ったとしても、授業中は妹のエロシーンしか頭に浮かばなくなる。
「そんなもの見せられてしまうと、さすがにな」
「そんなものってなに。妹だよ。実の妹の見慣れた裸でしょ。どうしてそんなに元気になっちゃうの」
「裸を見ただけならまだ平気だったんだけど」
「ぐぬ……妹の一人エッチがそんなに興奮するんですか」
するに決まっている。
というか正直にいうと、エッチをしていなかったとしても、この状況で裸を見たら勃起する。
「美優はやっぱり、そういう気分じゃない、かな」
「いつものですか」
「うん」
「別にいいけど」
いいのか。
いいんだな。
なら遠慮はしない。
俺はパンツを脱いで美優のベッドの横に立った。
「す、するぞ」
「はい。どうぞ」
美優は布団で体を隠し、俺が肉棒を扱くのを眺める。
何度もしてきたことだが、恥ずかしさが消えることはこの先もないだろう。
妹にオナニーを見られる羞恥心が興奮材料になっている。
「まさか朝食がお兄ちゃんの精液になるとは」
美優の恨み節に、俺の頭の回転が速まる。
射精した精液を口で受け止めてもらうことは、ただの処理だと考えてきた。
だがここにきて、この行為がもう一つの側面を持つ。
──餌付け。
エロ本ではミルクだなんて呼ばれることもある精液。
不調の妹のため、兄の栄養たっぷりのミルクを、その口に注ぐと考えれば。
これは飲食としての口内射精。
俺は性欲を処理するためではなく、食事を望む美優に精液を飲ませるために射精をするんだ。
ならいつも以上にたっぷりと出してあげないと。
その腹が精液で膨れるくらい。
美優の口に、出して、飲ませて。
「美優……出すよ…………飲んで……!」
今日一番の美優の食事が俺の精液になる。
尿の排泄器官である、その先端から射出されるどろどろとした白い液体が、美優の朝食になるんだ。
本来なら汚らわしいと、誰も進んでは飲まないはずの精液。
それを、美優なら飲んでくれる。
「美優……あぁ……美優……ッ!!」
ペニスに与える快感が最高潮に達して、腰をぐいっと前に突き出すが、それでも美優の口までは届かない。
美優もそれはわかっていて、俺の限界に合わせて顔を近づけてきた。
ベッドの脇に立つ俺の腰の高さまで顔を上げれば、必然、上半身が起き上がる。
予想以上に早かった俺の射精に、油断もあったんだろう。
ベッドを汚されることだけはどうしても避けたかった美優は、両手をベッドについて亀頭を覆い隠すくらいに口を近づけてきた。
はらりと美優の体を滑り落ちる布団。
隠されていた裸体が露わになる。
風呂に入る前なら体に掛けてもいいと言われて、ぶっかけをしたのは結局あのときの一回きり。
しかも、風呂場で裸になっているのとベッドの上で裸になっているのでは、その景色が与えてくるインパクトに隔絶した差がある。
射精の直前にペニスが二回りほど大きくなるのを感じた。
美優の生のおっぱいだけではない。
まだ毛も生えていない幼い下半身まで視界に飛び込んできた。
美優の裸を見てから射精をするまで、わずかコンマ数秒。
その間に、俺の脳は5年間で溜め込んできた二次元のエロシーンと美優の裸をリンクさせた。
線香花火より儚い一瞬に、永遠とも思える時間旅行の中で、幾千もの美優のエロい姿が浮かんでくる。
時間とともに濃縮された精液が、美優の口内にぶちまけられた。
昨日射精をしてから半日も経っていないのに、繰り返す日々の中で、俺の体は急速に精液を溜め込む術を覚えたようだった。
「あー……んむっ…………いっぱい出た」
美優が精液を飲み込む。
先っぽに残った精液だけは相変わらず処理してもらえない。
ティッシュを手渡されて、俺は自分でそれを拭う。
「す、すげー気持ちよかった」
その感想は、美優への敬意も含んでいたつもりだった。
美優は布団から服を引っ張りだすと、訝しげに目線だけを向ける。
「お兄ちゃんはさ。実の妹に興奮して、何の罪悪感もないの?」
「え……?」
今更すぎる質問だった。
もちろん、罪悪感はある。
やってはいけないことをしている背徳感も。
だが、美優が許してくれているから、問題ないものだと思っていた。
「美優の方はどうなんだ。一番最初のときもそうだけどさ。兄が一人でしてるのを見て、気持ち悪いとか思わないのか?」
「うーん。別に、何も」
ならば俺と同じではないか。
「……いや、正確にはちょっと違うかな」
美優はパンツをはき、ブラジャーの紐に腕を通していく。
「思うところは色々あるけど、何も感じない」
「なるほど?」
「なので気持ち悪いとは思います。とても」
「マジか……」
前者と後者に何の違いがあったのかはわからないが、そうか、やっぱり気持ち悪かったんだな。
「お兄ちゃん、いいですか」
美優はパジャマを着ると、すくっと俺の前に立ちはだかる。
「妹に欲情して射精してたら、誰だって気持ち悪いです」
先生が生徒を諭すような口調だった。
当たり前のこと、なんだよな。
どうして俺にはその感覚がないんだろう。
「お兄ちゃんは妹の裸で興奮することに何の抵抗もないよね」
「はい。すみません」
「少しはお兄ちゃんも悩んだらどうですか」
「留意しておきます……」
下げた頭を上げられない。
結論として俺は何を改めればよかったのか、全然わかっていないのだが、肉親に欲情してしまうことについてはもっと悩んで反省するべきだということはわかった。
そんだけ怒るくせにどうして精液は飲んでくれるのか。
今はもう聞かないほうがいいだろう。
きっと義理堅い妹が情けをかけてくれているだけなのだ。
まだ時間は早いけど、おとなしく学校に行ってしまおう。
俺はドアノブに、美優はクローゼットに手をかける。
ドアを開けて、視界の端に映る美優が微動だにしないのを感じ取って、なんとなくそちらに目をやった。
「ん?」
美優が首をかしげる。
「ああ、いや、なんでもないんだけど」
俺は呆然と突っ立つ。
「むっ」
美優が顔をしかめる。
「着替えるんだから出てってください」
「あ、はい」
俺は急いで美優の部屋を出た。
そういえば、美優にはクローゼットの中を見たら絶縁するとまで言われてたんだった。
俺の予想ではコスプレ衣装が大量に詰め込まれているわけだが。
これだけ仲良くなったわけだし、その片鱗くらいは覗かせてくれても良い気がする。
「待ってるぞ、美優」
いつか「めちゃくちゃ可愛いレイヤーと仲良くなった!」って鈴原たちにツーショット写真でも送りつけてやりたい。
美優自身のためにも、もう大人になったとは言わずにこれからも趣味を続けて欲しい。
でも本格的にやるとなったらかなり金がかかるんだよな。
俺が美優の趣味を支えてやるためには、やはり収入が必要。
そのためにはそれなりの大学を出て稼げる会社に入らなくては。
「……勉強、頑張るか」
夏休みを目前にして、ものすごく不純なやる気が湧き上がってきた。