金曜日、夏休み前の最後の授業……の一つ前。
最終日が月曜日であることに不満を漏らす者も多かったが、それでも変わらない日々が今日も続いていく──はずだったのだが、変調の兆しはたしかにこのときに表れていた。
高波が声を掛けてこない。
それどころか、どこかクラス中の男子の態度がよそよそしい感じがする。
女子はむしろ普段より優しいくらいで、いつもとは世界が反転していた。
「なあ、夏休みの宿題の範囲なんだけどさ」
休み時間になり、窓を向いたままの高波に声をかける。
「なんだよ」
高波は机に肘を突いて俺を睨んだ。
まるで俺を咎めるような態度で低い声を唸らせる。
「前にノートを貸したとこと被ってるから、返して貰おうと思っただけだよ」
「あ? そんなことか。……それより、先に言うことがあるんじゃねえの?」
どういうことだろうか。
なにやら俺に非があると言いたいらしいが。
「何も思い当たらないけど。どうしたんだよ急に」
隠し事なんて、あるとしたら妹のことくらいだ。
でもあれは誰かに話したわけでもないし、そんな噂が広まったら嫌われるのは男子からではなく女子からの方になるだろう。
俺が本心からわからないという顔をすると、高波はがっくりと肩を落としてため息をついた。
「ったく、なんでそうかね。俺たち友達だろ?」
「まあ、俺もそう思ってるけど」
「ならほら、ほら!」
高波は両手を仰いで「カモン! カモン!」と催促してくるが、無いものを出すことはできない。
近くにいる鈴原にも助けを頼んでみたが、「これはお前が悪い」の一点張りで、俺自身が告白するまで高波の糾弾を支持し続けるようだった。
鈴原はどちらにも興味がなさそうで、会話の切れ目に話を挟んでくる。
「それよりソトミチさ、この前オフ会用のゲームがあるって言っただろ。アカウントを作ったら、手っ取り早くレベル上げてやるから、オフ会までにさっさと始めろよな」
鈴原だけは態度が変わらなかった。
夏休みの計画の方がよっぽど大事らしい。
「ゲームはやるけど。オフ会に行くとはまだ言ってないからな」
行く気がまるでない俺に、それでもゲームを勧めてくる鈴原から、まずはスマホのアプリを入れてもらった。
キャラの絵柄が可愛い横スクロールゲーム『マジョマル』。
魔法少女モノと動物のコンセプトを合わせたRPGで、性的な萌えが強くないところに女性人気があるそうだ。
序盤の効率的な進め方を教えてもらって、1時間ほどで鈴原チュートリアルが終わる。
その後は、同時並行するネットゲームの攻略サイトを要点を絞ってまとめてもらった。
ビックリするくらいにわかりやすくて、その情熱を勉強にも活かせないものかと、俺たちオタクが一番無意味だとわかっている言葉を投げかけそうになった。
その合間に、俺の何が悪かったのかを聞いてみたが、鈴原は答えない。
俺になにか問題があって、一方的にいじめられているのなら、まだわかる。
だが、なぜ俺が悪者扱いになっているのか。
そこが解せない。
この日の高波は俺が正直に言うまで待ってるからなと告げて帰ってしまった。
こんな雲を掴むような話をさして仲良くもない誰かに相談する気にもならず、鈴原の話が終わった後は、俺もわだかまりを抱えたまま帰宅することにした。
「おかえり、お兄ちゃん」
家に帰ると、美優が玄関で出迎えてくれた。
すれ違えば挨拶する程度でしかなかったのに、わざわざリビングから出てくるなんてどういう風の吹き回しだ。
殊勝な対応のわりに、どこか声が冷淡だったように感じたけど。
気のせいだよな。
「ただいま」
学校で溜まった妙な疲れがあって、俺は部屋に直行せずにリビングのソファーに座る。
美優は夕飯の下ごしらえをしていた。
制服を着たまま料理するのは珍しいな。
毎日丁寧にケアをされた黒い髪が、耳にかかってまっすぐに伸びている。
手元を見つめる、澄んだ瞳、長いまつげ。
家の中でも不必要に曲げることのないその姿勢が美しい。
日に日に可愛さが増している。
今朝は妹に欲情するなんて気持ち悪いとは言われたが、もう美優を女として以外に見ることはできないんじゃなかろうか。
何より、美優は言うほどにそれを気にする気配がない。
どうしたら美優のことをただの妹として見ることができるだろう。
やはり彼女を作るしかないのか。
俺はスマホを取り出して、ゲームを起動する。
鈴原から教えられたRPGの『マジョマル』。
乗り気じゃなかったけど、考えてみるとオフ会に出るのも悪くないのかもな。
「何をやってるの?」
準備を終えた美優が俺の横に座る。
夕刻なのにまだ髪から漂うフローラルの香りと、指先についた洗剤の匂いに、女の子特有のフェロモンが混じっている。
「ゲームアプリ。友達から勧められて」
横にいるだけでドキドキしてくる。
しかも画面を覗き込んでいるから距離が近い。
まずいな。
彼女を作らなきゃとか考えてた矢先に、もう美優の匂いで勃ってしまいそうだ。
「ふーん」
興味がなさそうな反応をして、それでも美優は俺から離れようとしない。
ディスプレイを凝視したまま俺と肩を触れ合わせてくる。
ゲームはやりにくいが、ここで中断すると美優も離れてしまいそうだし。
俺は無心でストーリーモードを進めていった。
アプリゲームの開始直後は、レベルアップが早くてスタミナが尽きない。
物語もしっかり追わなければならなかったため、それなりの時間がかかった。
「楽しい?」
画面をイジる俺の指を眺めながら美優が訊いてくる。
「まあ、思ったよりは」
女性人気が高いだけあって、ストーリーとキャラの作り込みに余念がない。
オフ会に人が集まるほどの人気作なだけある。
「美優はこういうのやらないのか」
美優がゲームをやっているところを見たことはないけど。
アプリくらいなら入っているかもしれない。
「やったことないけど。面白そう」
「やってみるか?」
「うん」
美優は俺からスマホを受け取ると、ソファーに座る俺の膝の上に、更にお尻をドスッと乗せて座ってきた。
え、なんで。
「やりかた教えて」
美優は待機画面をぽちぽち触る。
いくら小柄な美優とはいえ、膝の上に座られると目線が隠れてしまうので、俺は横に顔を出した。
なかなかにツラい体勢だ。
「えっとだな……」
俺の膝の上には美優の体温がある。
しかも制服スカートだから生足だ。
俺はスラックスをはいているので肌が触れ合うことはないが、それでも生々しい温かさが伝わってくる。
目の前には、Gカップとの噂の胸の膨らみが。
第一ボタンだけを外している美優の胸は、この距離であれば最上部に谷間が見える。
え、エロすぎる。
俺には刺激が強すぎだ。
それに、ソファーに深く腰を掛けていたところに美優が跨ったせいで、股間部が美優のお尻、いや、下手をしたらもっと下の方にまで当たっているかもしれない。
これ、勃ったら絶対に怒られるよな。
やばい。
そんなスリルにすら興奮してしまう。
「しゅ、出撃したキャラの、体力管理をするのがポイントでな。こう、フリックするとキャラが戻る」
「ふむふむ」
「それで……」
どうにか理性を保ちながらゲーム操作を説明する。
思ったより腹筋がきつい。
足を押さえつけられているとはいえ、美優になるべく触れないように体を倒すと、どうしても負荷がかかる。
だが、これはこれでいい。
筋肉にエネルギーが集中していることで、美優への興奮が抑えられている。
「別に手を回してもいいよ?」
俺の無理な体勢を知って、美優がとんでもないことをぶっこんでくる。
そんなことをしたら思わず抱きしめてしまうかもしれない。
いや、間違いなくする。
「スキンシップは苦手なんじゃなかったのか」
「苦手だけど。今はいいよ」
また美優の気まぐれか。
ゲームに集中しているせいか、声はどこまでも平坦だけど。
いいのか。
いいんだな。
やるぞ。
「な、なら、遠慮なく……」
美優のお腹に手を回し、今度は全身に伝わってきた、その体温に、俺の心の奥底に打たれていた楔がガタツキ始める。
髪の毛だけではない。
制服から香る柔軟剤の香り。
美優が二年半、何度も何度も着た服の匂いだ。
首筋に残る、かすかな汗の跡。
帰宅後にすぐに洗顔に向かう美優から、汗の匂いを感じたことはなかった。
でも、今ならわかる。
この夏の暑さで染み込んだ美優のニオイが、濃縮された芳醇な香りが、俺の鼻の奥に入り込んでくる。
「あぁ……美優……やっぱり……これ……」
俺の理性は美優の匂いにあっさりと屈服した。
美優のスカートの中で、俺の亀頭がゆっくりと首をもたげる。
半勃ちの状態で、それを押さえつけたのは、スラックスの容量の限界か、あるいは、美優のお尻なのか。
「なんかボスが出てきたけど。同じやり方でいいの?」
美優は俺の興奮状態を無視してゲームを進めている。
よもや気づいていないとは思えないが。
「それは、その、強い攻撃が来るから。演出に合わせて、キャラを待機状態にすれば……」
美優を抱きしめる力がだんだんと強くなる。
まさかこんな風に美優と密着できる日が来るなんて。
お風呂に入ったときには肌と肌だったけど、なぜだろう。
今、こうして着衣状態で抱きついている方が興奮する。
「はぁ……はぁ……」
声なんて、我慢すればいいのに。
息が荒くなって仕方ない。
興奮すればするほどに美優の匂いが強くなって、どんどん下腹部に熱が集中する。
また気持ち悪いと言われてしまうだろうか。
さっきまで彼女を作らなきゃなんて思っていた俺はどこにいったんだ。
腰が動く。
互いの陰部の間には、パンツと、スラックスとが挟まって、いま俺の先端に与えられている“柔らかいものを押す”感覚は、それらの服がよれているだけのはずなのに。
「すぅー……はぁ……美優……」
腰を押し付けるのを止められない。
無機質な布の感覚のその先には、確かに柔らかさがあるんだ。
それが美優のお尻のお肉だったとしても、俺には、もうなんでもいい。
「お兄ちゃん」
さすがに暴走しすぎた俺の行動に、美優はボスとの戦いを中断せずに忠告してくる。
「当たってるからやめて」
美優の対応は、それだけだった。
当たってる、とはどういうことなのか。
俺は意図的に腰を押し付けているわけだし、肉棒の硬さが当たってることなんて百も承知している。
そのうえで俺は美優を抱きしめて肉欲を擦りつけているんだ。
つまり、こういうことなんだろうか。
俺のペニスが当たっているからやめて、という意味ではなく。
美優の大事な部分に当たってしまっているからやめて、という意味なのか。
「うっ……あっ……美優……ッ!」
一気に血液が沸騰して、俺は服を突き破りそうなくらいに勃起した。
美優のアソコに当たっている。
美優の割れ目に、俺のペニスが触れている。
さきっぽが、女の子としての大切なところに、挿入っている。
もう耐えられない。
このまま射精したい。
パンツを汚すことになってもいい。
俺は美優とセックスをしているんだ。
ゴムの代わりに服を着て。
この先端を覆う体温、肉感。
美優の蜜壺の口に性器をねじ込んでいる。
美優がそれを感じている。
アソコで、俺のペニスの硬さを感じている。
ああ、もうだめだ。
出る、出る……!
「はぁ。もう、バカ兄」
美優は俺の手を解いて立ち上がってしまう。
くっ、射精まであと少しだったのに。
美優はスマホをソファーに置いてキッチンへ。
俺の屹立を打ち見したときに何か言いたげにしていたが、特に怒った様子もなく黙って夕飯の準備を始める。
俺は興奮を収めるためにトイレへ向かった。
ズボンを脱ごうとして、チャックを開ける。
「なんだ、これ」
ぬるっと指を滑る粘り気。
まさか気づかないうちに射精してしまったのかと、パンツを確認するがその様子はない。
尿道口が当たるところはやはりというか先走りでぐちょぐちょになっていたが、それがズボンの、ましてやチャックの付いている厚い部分を貫通するとは思えなかった。
「まさか……!?」
それに気づいた瞬間の心臓の飛び跳ね方は、それこそ破裂してしまいそうなほど激しかった。
ベッドから落ちる直前に目を覚ましたような、走馬灯のように思考が駆け巡る強烈な衝撃。
ズボンについたこの染み。
ちょうど美優の股に当たっていた範囲に一致する。
これほどの粘性、汗では到底説明はできない。
間違いない。
これは。
「美優の……」
愛液だ。
しかもパンツ越しにこれほど濡れる量。
感じていたのか。
俺のペニスに股下から突き上げられて。
蜜壺から淫液を溢れさせていたというのか。
手が言うことを聞かない。
体が、この美優の体液を求めている。
その匂いを。
その味を。
「うっ……ぐぁっ……!!」
俺はトイレで一人、悶え苦しんでいた。
このまま美優の恥部に溺れて快楽の底に沈んでしまいたい。
ズボンに鼻を埋めて、肺いっぱいに息を吸って、舐めて。
この先で一生ないかもしれない美優の味を知るチャンスだ。
絶滅危惧種の最後の肉が、今まさに調理された状態で目の前にサーブされているようなもの。
それを喰らうことは、背徳的というより、もはや冒涜的な行為。
神代から築き上げてきた、人間の根源にある何かを失うことになる。
これは美優の、血の繋がった妹の、女性器の一部だ。
その味を兄である俺が知ってしまっていいのか。
神すら立ち入ることの許されない領域を、侵してしまっていいのか。
「ッ──!」
気づいたらズボンを咥えていた。
美優の性欲を吸収した濡れ布を。
垣根に植えてある花の蜜を吸うように。
その耽美を前に、俺の理性はあまりにも脆かった。
瞼の裏に楽園が広がっていた。
目が浮いて、止めどなく思考が流れ続けているのに、何を考えているのか自分でもわからない。
パンツを脱いでイチモツを擦り上げていることにも何も疑問に思わなかった。
自分が自分ではないようだった。
「ぁ……ぁっ……」
血に飢えた吸血鬼、いや、これではまるで人肉を喰らうゾンビだ。
俺は飲んだ。
口にしたんだ。
美優の愛液を。
射精する。
トイレが汚れるとかどうでもいい。
このどろどろの欲望を思い切りぶちまけたい。
「はっ──!?」
射精の直前、俺は手を止めていた。
気づいてしまったのだ。
ある事実に。
美優の口内に射精する度に、その濃さと量を増してく俺の精液。
興奮と比例していくそれは、ただ尿道への刺激が強くなるだけではなく、美優にたくさん飲ませるということそのものを快感として俺に与えた。
では、いまこの状態の射精はどうだ。
間違いなく、また俺は精液の最大量を更新する。
これまでも美優が文句を言うくらいに多かったのに、それを遥かに凌駕するほどの射精になることは明らかだった。
なら、このまま出していいわけがない。
これ以上にないほど昂ぶっているこの性欲を、美優にぶつけずに済ませることなんて許されない。
俺は急いでズボンをはいてリビングに入った。
股間部が唾液で湿っていることなんてお構いなしに、クリームシチューをかき混ぜる美優の前に立つ。
美優だって、自分の淫らな蜜で俺のズボンを汚したことはわかっている。
ならこのズボンの状態を自分のせいだと思うだろう。
だから隠す必要はない。
「美優、また、飲んでほしいんだけど」
臆面もなく俺はそれを口にした。
美優はクリームシチューを小皿に取って味を確かめると、引き出しからコショウを取り出して加え入れる。
「今日は飲まないよー」
美優はまた、お玉でクリームシチューをかき混ぜた。
何を言われたのかわからなかった。
想定していた返事と違う。
美優ならいつもの妥協的承諾で引き受けてくれると思ったのに。
「今日はもう精液の処理はしません」
「それって、どういう……」
「どういうも何も。妹はお兄ちゃんの精液なんて飲まないのが普通でしょ」
それはそうだが、なぜ、今更。
普通はしないなんて理由で断るなら、最初から断ってくれればいいのに。
「マジで、ダメ?」
「マジでダメです。今日は気分じゃありませんので」
「まさか、その、明日以降は……?」
「うーん。お兄ちゃん次第かな」
美優はまたお皿にシチューを取って味見をする。
今度は納得の顔だった。
「俺次第か」
「そ、お兄ちゃん次第」
美優は腰に手を当てて俺と向かい合う。
よりにもよって今日がダメとは。
それに明日以降は俺次第って。
どういう意味なんだろう。
どうする。
部屋に戻って自分で処理するか。
明日まで我慢したところで飲んでもらえるかわからないし。
でも、射精はしたい。
美優の愛液を堪能できる日なんてもうないかもしれないんだ。
飲んでもらえなくても、せめて最高の射精感だけでも味わっておきたい。
「わかったよ」
俺は力ない足取りでリビングを出た。
これから部屋に籠もって、ズボンを脱いで、また美優を味わいながらオナニーをする。
……いや、このズボン、まだ美優の味がするのか?
もう俺の唾液しか感じられないんじゃないだろうか。
そもそも量も少なかったんだ。
もうすべて舐め取ってしまっている。
「くそっ」
なぜあのとき、あのまま射精しておかなかったんだ。
人生最高の射精を体験できたのに。
俺はバカだ。
もう美優の愛液は残っていない。
かけらも、その残り香すらも。
「──あ、あぁ……ある……! あるぞ、まだ、あるじゃないか!!」
俺は踵を返して再びキッチンに駆け込んだ。
そうだ、美優のアソコから俺のズボンに染み込むまで。
その間には、もう一枚の布が噛んでいるんだ。
「美優! パンツを! パンツをくれ!! 今、履いてるやつ!!」
狂っていると、自分ながらに思った。
それが、美優という妹が持つ魔力だったのだ。
「え、パンツ?」
美優はスカートの端をつまんでちょいと持ち上げる。
「そう、そのパンツだ! あと、できればやっぱり精液を飲んでほしいけど……!」
傲慢が過ぎるというのもわかっている。
それでも、これが人生最後のチャンスだと思うと、なりふり構ってはいられなかった。
死に際になって、初恋の人に想いを告げるようなもの。
どんな結果になろうと遂げたい。
ただ一言、本心なんて関係なく、慈悲の心で「いいよ」と言ってくれれば、俺は救われるんだ。
「飲むのはイヤだけど。パンツならいいよ」
「そこをなんとか、頼っ……!! ん? ん!? い、今なんて言った!?」
「だから、パンツが欲しいならあげるよって。精液は飲まないけど」
お、俺の願いは、天界へと届き得た……。
「その、パンツ、あの、洗濯したやつとかじゃなくて……」
「うん。これでしょ?」
美優は「はいはいわかってます」と言いたげな顔で、スカートの中に両手を入れ、それを脱いだ。
「あ……あっ……あぁ……」
自分で頼んでおいて困惑した。
なんでパンツをくれるんだ。
どうかしているんじゃないのか、この妹は。
俺はズボンの上からはっきりわかるくらいに勃起をしているんだぞ。
精液だって飲んでほしいと公言している。
そのパンツをオカズにしてオナニーするのは明白じゃないか。
「あげるって言っても、お兄ちゃんのものにしていいわけじゃないからね。済んだら返して」
美優は俺に、その生暖かいパンツを手渡した。
広げて確認するまでもない。
割れ目に沿って染みができている。
それだけじゃない。
脱いだときに垂れた液が、まだうっすらと溶け込めずにいる。
濃厚な、濃密な、美優の体液だ。
「ああぁ、あぁぁ……あぁぁぁあああ!!」
その場で膝をついてむしゃぶりついた。
美優が目の前にいるのに。
三日間断食でもしていたのかと思うくらいに勢いよく、妹のパンツを食らった。
股下を口に含み、その真上に鼻を当てて、残りの布で顔面を覆う。
あらゆる感覚器官が美優一色に染まっていた。
美優が見える。
美優の秘部が見える。
こんないやらしい味のする蜜を出す、その割れ目が鮮明に浮かんでくる。
今朝、美優がオナニーをしていたときもこれくらい濡れていたんだろう。
俺に聞こえないように声を殺して、音が漏れないように布団のなかで腟内をぐちょぐちょにして。
今なら聞こえる。
美優の嬌声と淫液のこすれる音が。
もうダメだ、射精する。
美優のパンツで絶頂する。
妹の下着に顔を埋めるだけで、金玉にある全部の精液が絞り出される。
「ふぐっ、むうぅぐっ……うっ……!!」
脳が蕩けて、ペニスが激しく筋収縮を始めた。
その瞬間。
「お兄ちゃん。こんなところでしちゃいけません」
「あ、ああっ、待ってくれ!! あとちょっとだから!!」
美優にパンツを取り上げられた。
人類史上最高の幸福が、指の先を掠めて、遠くへいってしまう。
「あとちょっとって何? 匂いを嗅いだだけで出ちゃいそうだったの?」
「うぐっ……それは……」
当たり前だろう。
妹のパンツの匂いを嗅いで射精しない兄がいるわけがない。
「まったくもう。……もうそろそろシチューができるから、パンツをはいてくるね」
美優は俺の膝の上にパンツを置くと、鍋に火をつけたままキッチンを出ていく。
廊下に出ると、ひょこっと顔だけ戻して俺を見た。
「シチュー、焦げないように混ぜておいてね」
俺は放心状態だった。
射精がしたい。
とにかく射精をしたい。
この興奮状態じゃ、ご飯なんて気分にならない。
「お兄ちゃん」
美優が鋭い声で釘を刺してくる。
くそう。
もういっそ、美優が二階に行っている間にちゃちゃっと射精だけでも済ませてしまうか。
美優の味はしなくなってしまったが、俺にはまだこのパンツの中に射精するという第二の楽しみが残っている。
「そこ、キッチンなんだからね。不衛生なことしたら、鍋の予熱で焼くからね」
「わ、わわっ、わかった!! わかったから!!」
ええい、ならさっさと済ませるべきはご飯だ。
早食いして、部屋に戻ってじっくりとオナニーを堪能しよう。
「あー……射精したい……」
俺は鍋の前で呆然として、その後のことだけを考えていた。
美優のパンツに思い切り俺の精液を染み込ませて。
それを返したら、美優は捨てずに履いてくれるのだろうか。
もし履いてくれるのだとしたら、もはや、それは中出しに等しい行為なのではないかと。
考えるほどに、また興奮が湧き上がってきて。
湯気の立ち昇る鍋。
そこから、焼けたニオイが漂っていることに気づいたのは、美優がリビングのドアを開けた音を知覚した直後だった。