※この作品はR-18です。

俺の妹が最高のオカズだった   作:風見 源一郎

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山本さんの悩み

 

 かくして、俺が山本さんの彼氏ではないかという噂は、事実誤認ということで訂正されることとなった。

 

 俺は鈴原と高波に事情を説明して誤解を解いた。

 これでようやく安心して夏休みを迎えられる。

 

「さて……」

 

 俺は鈴原のオフ会トークに巻き込まれないよう、そそくさと帰るふりをしてここまでやってきた。

 

 ──お詫びは、例の場所でしよっか。

 

 山本さんに指定されたその場所は、資料室だった。

 俺は山本さんとは二度この部屋を訪れている。

 忘れ物を探すから鍵を貸して欲しいと説明すれば、山本さんは優等生なのですぐに貸してもらえるようだ。

 

 ここならば部活動でやってくる生徒もいないし、邪魔が入る可能性は極めて低い。

 肝心の先生方はというと、実はこちらもほとんど来ない。

 というのも、この資料室は名ばかりで、生徒に配るプリントを一時保管しておくか、古くなったけどなかなか捨てられない紙を溜めておくぐらいにしか使用されないのだ。

 

 夏休みも始まったいま、先生たちの心血は教員研修に注がれている。

 彼らがデータの整理やスケジュール立てに勤しむ中、俺と山本さんはこれからこっそりと風紀を乱す行為に及ぶのだ。

 

 周囲に人がいないことを確認し、ドアに手をかける。

 ガラッと開かれたドアの向こうには、山本さんが待っていた。

 

「お待ちしておりました」

 

 山本さんは笑顔で俺を歓迎してくれた。

 指をクイッと下げて鍵をするようにお願いしてくる。

 

 まだ生ぬるいくらいだが、この部屋にも冷房が効いていた。

 

「えっと、確認なんだけど」

「むふふ。お詫びの内容? 心配しなくても、ちゃんと出してあげるよ」

 

 山本さんは自由奔放だ。

 短い付き合いだが、その明るさに裏がないことは俺にもわかった。

 

 しかし、だからといってエッチに抵抗がないというのは引っかかる。

 山本さんがただの天然なら理解のしようもあるが、山本さんは自分の可愛さをきちんとわかっている人だ。

 そんな人が自分の体を大切にしないわけがない。

 

「すごく今更なんだけど。山本さんって彼氏はいなかったんだね」

 

 それは鈴原と付き合うよりも前の話。

 これだけ頭も性格もいい美少女なら、この学校に限らずとも好きな男を選べたはずだ。

 

「うん」

 

 山本さんはしっとり頷くと、傍らに置いてあった椅子を二脚並べた。

 

「ちょっと、お喋りしようか」

 

 俺は誘われるままに隣に座った。

 なんでこんな美貌が俺の側にあるのか、現実味がない。

 

「ソトミチくんはさ。私の印象、どんな感じ?」

「美人で優秀な完璧超人」

「ふふっ。せーかい」

 

 山本さんは俺の頬を人差し指でプニッと押した。

 

 ん、まずいぞ。

 このイチャましい感じ、ドキドキしてきた。

 恋をしてしまいそうだ。

 

 うん、いや、なにもマズくない。

 これで山本さんを女の子として見られるなら、俺にとってはなによりの僥倖だ。

 

「私はさ。なんでもできるんだよ。なんでも持ってる。この人生は、全てに満たされてた」

 

 座面を両手で掴んで、山本さんは足をフラフラさせる。

 

「私はもうね、受験勉強なんてとっくの昔に終わってるの。大学を卒業しなくたって、雇ってくれるところはたくさんある。運動も得意で、毎日健康。オリンピックを目指してもいい。難しい計算に頭を使わなくたって、モデルとかでお金は稼げるし。お金なんか稼がなくても、私を養ってくれる人なんていくらでもいる」

 

 並べ立てられた傲慢の数々。

 この全てが事実として疑いようのないレベルにあるところが、山本さんの凄さであり、山本奏という人間の等身大だった。

 

「そんな中でね、私が一番好きで得意なのが」

 

 山本さんは俺に体を寄せて、椅子に座るその横から、俺の腕に豊かな膨らみを押し付けてくる。

 潤やかな目で俺の顔を見つめる上目遣い。

 

 フワッと温かい空気に、花の匂いが混じった。

 

「こうして」

 

 山本さんの顔が近づいて、互いの頬を掠める。

 

 その唇が、俺の耳朶をミュッとはんだ。

 

「んあっ……あぁっ!!」

 

 全身に淫楽がほとばしる。

 

 唾液の熱い粘性が俺の耳輪を這って、吹きかけられた吐息に、俺の陰茎はスラックスの中で一気に膨張した。

 

「エッチな体を気持ちよくするの」

 

 山本さんの指が、パンパンに張ったスラックスの股間部を擦り上げた。

 

「うぐっ……あっ……はぁっ……!」

 

 空いた手で俺の首を触り、更に体重を傾けられた俺の半身が、山本さんの柔らかさで包まれる。

 まだ脱いですらいないこの状況で、俺は女の子と裸でまぐわっているかのような錯覚に陥っていた。

 

 これまで体験したものとはまるで質が違う。

 生のエロスが俺の性欲を沸き立たせている。

 

「射精ができないだなんて。じゃあ今日が精通の日かな」

 

 首に濃厚なキスで吸い付いて、手は俺の股下に忍び込ませてくる。

 玉の外側から裏筋の皮膚まで、山本さんが手を滑らせると、俺の肉棒はビクンビクンと激しくのた打ち回った。

 

「ああぁっ……それ、やばっ……うっ……ああっ!!」

 

 服の上から体を重ねられているだけなのに。

 全身が媚薬を塗られたように熱くなる。

 

 山本さんの肉感が服の外から伝わって来るたびに、射精と同じレベルの快感が突き抜けた。

 

「へぇ。ソトミチくん、まだ出してないんだ。えらいね」

「んっ……!」

 

 母親が子供を甘やかすみたいに頭を撫でられて、それすらも性感として俺の神経を刺激する。

 

「まだ、って、はぁ、服の上から、してもらってるだけだし……」

 

 耳を舐められてソフトタッチをされているだけ。

 手コキにすら至っていない。

 

 だが、山本さんの言葉も、意味がわからないわけでもなかった。

 

 耳を甘噛みされたときのあの快感。

 美優の呪縛さえなければ、俺は息を吹きかけられた時点で射精していた。

 

「それがえらいんだよ。みんなこうするだけでズボンまで濡らしちゃうんだもん」

 

 山本さんは俺のズボンのチャックを下ろし、亀頭の先っぽをぐりぐりと攻めてくる。

 

「ふぁっ……いっ……ぎも、ちぃぃっ……!!」

 

 指と亀頭、パンツという薄い布を挟んだだけの状態。

 よりリアルになる山本さんの指の感触に、かつてない悦楽が俺の脳を侵していく。

 

「ぴゅーっぴゅって。出ると気持ちいいもんね」

「あっ、あっ、あっ……!」

 

 山本さんの声が俺の男としての自我を引き剥がしていく。

 

 気持ちいい。

 このまま永遠に快楽に支配されていたい。

 もう射精していても不思議じゃないのに。

 

「しゃせぇしたいの?」

「したいっ! し、したい……ああっ……射精、させてくれっ……!」

 

 気づけばベルトが外されていて、俺は腰を上げていた。

 喘ぎながら天井を向いて、ズボンを下ろされたこの体勢。

 情けないほど気持ちいい。

 

「んふっ。別に我慢させてるわけじゃないのに。ほら、ここにせーえきいっぱいあるよ」

 

 トランクスの下から山本さんの手が入れられた。

 その手が、陰茎の根元から玉袋の全体を、優しく包み込んでいく。

 

「ああああっ! あっ、ああっ!!」

 

 射精した。

 そう思った。

 

 すでに何回も絶頂を迎えているはずなのに。

 ただ射精という現象だけが起こっていない。

 

「ほんとに出ないんだ。ここまで我慢できた人って初めて。私もちょっとドキドキしてきちゃった」

 

 山本さんは早々に、また腰を上げる要求をしてきた。

 

 パンツを脱いで、外気に触れる肉棒。

 美優に一晩中焦らされたときと同じぐらいに反り上がった肉棒に、山本さんは頬を緩める。

 

「でもね、ソトミチくん」 

 

 伸ばされる手。

 更に密着して、俺は山本さんに抱きつかれる形になった。

 

「声出しすぎ」

 

 そう囁いて、山本さんは俺のペニスを一気に扱いてきた。

 

「ああぁっ! あっ! んはぁあ! うっ……あぁああっ……それ、もう、出る、出るッ出るでるっっ!!」

 

 腰が跳ね、体が跳ね上がる。

 学校内ということを忠告されても抑えきれない嬌声。

 

 それでもなお、精液は射出されなかった。

 

「すっごいトロトロ。こんなにヨダレを垂らしてるのに、精子は出してくれないの?」

 

 いやらしい音を立ててペニス全体に先走り汁を塗りたくる。

 山本さんの大きくて柔らかい手。

 美優や佐知子のものとはまったく違った感覚。

 

「ふぁ……あぁ……あっ、あああっ! きもちぃぃい! いや、もう、出る、出る……」

 

 それは快感を伴う潮吹きのよう。

 快楽だけが繰り返される空射精。

 頭がおかしくなりそうだった。

 

「よいしょ。よいしょ。あともうちょっとかな」

「あと、ちょっと……もう…………うっ……!!」

 

 射精できる。

 妹をオカズにすることなく。

 山本さんがくれる快感だけで、俺は子種を出すことができる。

 

「がんばって、ソトミチくん。もうおちんちんは、準備できてるよ」

 

 仰け反る体。

 山本さんが俺のペニスを握り込む。

 

 小指が裏筋をなぞって、それがまた射精と等しい快感を生む。

 薬指にカリをくすぐられて、また射精をしたのかと錯覚した。

 中指が皮の内側を擦り、人差し指が亀頭を撫で、手のひら全体が包み込む圧迫感に、俺は何度も脳の中で射精した。

 

「ああっ……がぁはっ……うっ……んぁぁあああぁっ!!」

 

 終わらない。

 山本さんの手がワンストロークするだけで、俺の下半身に射精数回分の刺激が広がって、それでもなお、フィニッシュを迎えることはない。

 

「があぁっ、はぁ、もう、だめっ、ちょ、すとっぷ、しぬ、あ、ああっ、あんっ、ああっ!」

「あらあら。本当に出ないんだねぇ」

 

 ゆるりと山本さんの手が止まっていく。

 あやうく腹上死するところだった。

 

 山本さんが手を放すと、教室の空気がやたらと冷たく感じた。

 今はそれが心地良い。

 熱くなりすぎて溶けてしまいそうだった。 

 

 まだ剛直を保ったままの陰部。

 山本さんの目はそこに釘付けになっている。

 

「すごい……こんなに硬いの初めて見た……」

 

 山本さんにつつかれて、そのたびにペニスがピクピクと動く。

 山本さんはそれを面白がって、いたずら紛れに俺への快感攻めを少しだけ続けた。

 

「おっ、あっ……! きゅ、休憩、させて……くれ……」

「あ、ごめんごめん」

 

 山本さんは楽しそうな表情はそのままに大人しくなる。

 

「ああ……死ぬほど気持ちよかった……」

「でも出なかったね。本当に射精できないんだ。びっくり」

 

 こんなに硬いのにね、と山本さんは俺のペニスを指で摘んだ。

 

「勃ってるの、そんなに珍しいのか? 結構、経験ありそうだったけど……」

「経験の数え方次第かな」

 

 山本さんは俺の体をベタベタ触りながら話を続ける。

 

「私ね、いろんな人と付き合って、それなりの関係にはなってきたんだけど」

 

 躊躇いから生まれる一拍。

 だが、中断する意味も、もうなくなっていた。

 

「いっぱいエッチはしてきた。でも、私……十秒以上……エッチしたことなくて……」

 

 語られる真相。

 これこそが、山本さんの抱える悩みだった。

 

「だいたいの人は、私からイチャイチャするだけで出ちゃうの。保つ人でも触ったらすぐイッちゃって。……私が心から楽しもうとするとね。それだけで、みんな限界を超えちゃうんだ」

 

 相変わらずの規格外。

 このヴィーナスは美しいだけに留まらない。

 人にとって良薬となるはずの能力が、行き過ぎたことにより毒に変わった事例だった。

 

「それは、ツラいな。俺も、似たような悩みがあるから、わかるよ」

「ん? 似たような悩み? ふふふっ。あはははっ!」

 

 急に笑いだした山本さん。

 とても楽しそうな笑顔だった。

 

「いやいや、ソトミチくんの方が深刻だよ。なんか私、悩んでて馬鹿みたい」

 

 山本さんは目尻に溜まった涙を、指で拭う。

 

 そんなに笑うとこか。

 

「これさ、こんなギチギチにおっきくなってるのに、射精できないんでしょ? ムラムラしたときはどうしてるの?」

「うっ……それはだな……」

 

 妹をオカズにすれば抜ける。

 

 言ってしまうか。

 この雰囲気なら、山本さんも俺の悩みを受け止めてくれるだろう。

 

 ただひとつ問題なのは、山本さんが美優と知り合いだということだ。

 話がめちゃくちゃこじれそうで怖い。

 

「とりあえず……口で……してくれると……」

「お口? そっか、ソトミチくんからしたら焦らされ状態だもんね。よしよし。我慢できたご褒美にお姉さんがフェラしてあげよう」

 

 山本さんは俺の正面に回って膝立ちになる。

 両手でペニスを支えて、まずは内ももから、陰嚢にかけてねっぷりと舐め上げられる。

 

「あぐっ、あっ、舌、舐められるの、めっちゃ気持ちイィ……!」

「喜んでもらえるのは嬉しいんだけどね、ソトミチくん。ここ、学校だから、あんまり喘がないでね?」

「す、すまん」

 

 俺は両手で口を塞いだ。

 声なんて、我慢すればいいだけのはずだが、本当に気持ちいいときはどうにもならなくなる。

 だからこうして押さえつけないと、声を殺すことができない。

 

「んちゅ、むぬゅ、んっ……」

 

 根元からキスするように、山本さんは俺の陰茎全体に唇を這わせる。

 それが先端まで達すると、迷いなく口の中に俺のモノを咥えこんだ。

 

「じゅぶじゅるんちゅっ、ちゅぶぐちゅんんっちゅ……!」

「んんんん!! ん、ああん、んっ……!!」

 

 唾液たっぷりの口内が俺の肉棒を包み込んだ。

 絡みつく舌も、唇も、頬の内側の粘膜さえ、快楽によってペニスを蹂躙してくる。

 

「ぐちゅ……じゅぶっ……んじゅぶぬぷっ、ぬちゅ……」

 

 激しく押し寄せる荒波のような快感。

 口を押さえてなかったら叫び声を上げていた。

 肉棒が山本さんの体温と交わり合って、もうどうなっているのかわからない。

 もう何度も口の中でビクついているのに、これでも射精できないなんて。

 

「ぁ、んんっ、んふっ、ふぅ、あぁ、あぅっ……」

 

 今度は酸欠で意識が飛びそうだった。

 でも、今手を口から離したら、間違いなく学校中に俺の喘ぎ声が響き渡ることになる。

 

 もうダメだ。

 死ぬほど射精したい。

 快楽を生み出すため生まれたようなこの淫らな口の中で、欲望を思い切りぶちまけたい。

 

 美優、許してくれ。 

 山本さんとのエッチで射精することを。

 いますぐこの口の中に精液を出すことを。

 

『──そんなに出したいの? お兄ちゃん』

 

 俺の耳の傍で、そう囁かれた気がした。

 

 連鎖的に湧き上がってくる美優とエッチした思い出の数々。

 

『お兄ちゃん、射精するの好きだもんね』

 

 かつて美優が俺に言ったその言葉が、精液をせき止めていた精管の詰まりを、一気に吹き飛ばした。

 

「あっ──!! 山本さん、ごめん、出るッ、出るっ!!」

「ん!? ん、あっ、ふっ、むちゅ、んぐっ……!」

 

 びゅっ、びゅぐっ、どびゅるっ、びゅるっ──!

 

 限界を超えて溜めた精液が、鉄砲から発射されたみたいに山本さんの口内に吐き出された。

 

「うっ……うぐっ……!」

 

 苦々しい顔で、離れそうになる口を必死で留める山本さん。

 俺の射精が終わると、ゆっくりペニスを引き抜いて、口を手で押さえた。

 

「ううぅ~!!」

 

 目を赤くして泣いていた。

 それから、俺の精液を飲み込もうとして、何度か失敗してえずいて、ようやく喉の奥へと流し込んだ。

 

「ごほっ、げふっ、うっ、うぷっ……うぅぅ……死ぬほど不味い……」

 

 山本さんが子供みたいな泣き顔になった。

 そんなに不味いのか。

 俺の精液は。

 

「わ、悪い」

「私こそ、ごめんなさい……うぷっ……」

 

 本当に気持ち悪そうだった。

 由佳や佐知子にも不味いって言われたけど。

 

「ごめんね、こんな風になったことないんだけど。久しぶりだったからかな。ほんと、気分悪くさせちゃって、ごめん、だけど、水、飲んでくる……!」

「ああ、おう。ゆっくりしてきて」

 

 山本さんはダッシュで部屋を出ていった。

 

 俺は山本さんが精液の味を洗い流している間に服を着て、戻ってくるのを待った。

 

「た、ただいま……」

 

 げっそりとした顔で戻ってきた。

 吐いたりしてなきゃいいけど。

 

「そんなに不味い?」

「ソトミチくんのために、正直に言わせてもらうけどね……これはね……飲める人……ほとんどいないと思う……」

「そ、そうか」

 

 それなりに経験豊富そうな山本さんですらこれだからな。

 

 美優のやつ、実は味覚が死んでたりしないよな。

 あいつにも散々不味いとは言われてきたけど。

 

「で、でも!! 出たよ、ソトミチくん! 射精できたよぉ……よかった……悩み解決してあげられないかと思った……!」

「お、おう。そうだな」

 

 これは、話さないとダメな流れだな。

 

「あれ? そんなに、嬉しそうじゃない?」

 

 残酷なことだ。

 これだけ頑張ってもらって。

 俺はまた人を傷つけることしかできない。

 

「……本当の俺の悩み、聞いてくれるか?」

 

 俺が尋ねると、山本さんは黙って首を縦に振った。

 

「俺、射精できないって、言ったけど。実は、一つだけ出せる条件があって」

「おおっ。ふむふむ」

 

 山本さんは身を乗り出して食いついてくる。

 

 大丈夫。

 山本さんなら嫌いにならずに受け入れてくれる。

 この聖女のような女性なら、理解してくれるはずだ。

 

「妹のことをオカズにしてるときだけ、射精できるんだ」

 

 紡がれた真実。

 

 続いたのは沈黙。

 

 ついに言ってしまった。

 俺の倫理も常識も度外視にした深刻な悩みを。

 

「えっ……」

 

 案の定、山本さんはドン引きしていました。

 

「あの、え? 妹って、美優ちゃんのこと? 義理、なの……?」

「血の繋がった実の妹だけど」

「はぁ……」

 

 山本さんは一時停止を押したみたいに固まった。

 あのクールでエロいことになんかまるで興味のなさそうな妹を知っているからこそ、それをこっそりオカズにしているなんて考えられなかったのだろう。

 

「えーっと。なんというか。切実だね」

 

 そう、切実なのだ。

 だからこうして、妹以外で射精できないかと必死になってきた。

 

「つまりさっきのは、フェラの最中に美優ちゃんのエッチなことを考えてたということでしょうか?」

「すまん」

「おふ……」

 

 自分の力で射精させたと勘違いしていたことと、射精の要因が実の妹であったことが、山本さんの頭を混乱させていた。

 

「美優ちゃんの口に出すつもりでイッたの?」

「そ、そんなところ」

「この精液はね……さすがに……美優ちゃんに出したら怒りそう……」

 

 間違っちゃいないけど。

 誰よりも率先して飲んでくれるのはその妹なんだがな。

 

「ソトミチくんがなかなか言わなかった理由がよくわかりました」

 

 ようやくわかっていただけましたか。

 

「ソトミチくんはどっちを応援して欲しい?」

「どっちって?」

「美優ちゃんとエッチできるようにするのと、美優ちゃんのことを考えずに出せるようにするのと」

 

 山本さんは意外にも前向きだった。

 まあポジティブを固めて作ったような人だしな。

 

「できれば、後者が嬉しいけど。応援してもらえるの?」

「いいよ。聞いてたらだんだん楽しくなってきた」

 

 山本さんはニコッと笑ってくれた。

 ああ、やっぱり話してよかった。

 

「それに、あとはその、私の悩みもですね……」

 

 そういえば、山本さんの悩みって、付き合った人がみんなすぐにイッてしまうから、まともにエッチができないことだったか。

 

「失礼を承知で聞くんだが、鈴原のやつとはしたの?」

「うーん……たぶん……」

 

 たぶんってなんだ。

 

「鈴原くんは私が抱きつくだけでイッてしまいました」

「それはまた」

 

 でも、俺も美優がいなかったら同じだっただろうし、悪くは言えないな。

 

「二次元美少女以外では興奮しないなんて言ったくせに。そんな言葉に期待した私も馬鹿だけどさ。……それくらい、もう色々と投げやりになっているといいますか」

 

 山本さんは不満顔でそう語った。

 他の優秀な男たちを試してダメだったからこそ、鈴原みたいなやつにもチャンスが回ってきたわけか。

 

「付き合う条件って、やっぱり山本さんをエッチで楽しませることだったのか?」

「そんなとこ。今までの人はそれがダメならダメですっぱり諦めてくれてたんだけど。まさかこの悩みをネタに脅されるとは思ってなかったよ」

「それは警戒心が薄すぎるな」

「だねぇ」

 

 山本さんはまた椅子に座り直して俺と並んだ。

 部屋にはまったりした空気が流れている。

 

「俺が鈴原とショッピングモールで話してたときは、ラブラブにセックスしてるって感じだったけど。愛の営みがどうとか言ってたし」

「鈴原くんが? あはは。まあ、男の子だもんね」

 

 あの会話には鈴原の見栄が多分に含まれていた。

 

 よくよく考えてみると、俺が鈴原から話を聞いていた時点で、山本さんとは上手くいってなかったんだよな。

 イチャイチャなんてしているはずもなかった。

 

「私が最初からその気になるとすぐイッちゃうから、とりあえず脱いでベッドに横になってって言われまして」

「おう」

「それからゴソゴソと、一分くらい経って」

「うん」

「出ちゃったって言われて、終わった感じ?」

「あいつ本当に童貞卒業したのか……」

 

 山本さんがたぶんって言ったのはそういう理由か。

 どっちにしても、ひと月は付き合って、エロい体験があったことには変わりないが。

 

 山本さんにとっては、脅される危険を顧みずに賭けるだけの願いだった。

 セックスを楽しめないことがそんなに辛いことだったなんて。

 だから俺とも、こんな簡単にエッチをしてくれたと。

 

 ふむ。

 

 納得できん。

 

「山本さんは、それ以外にも取り柄がたくさんあるだろ? 人の価値観なんて、他人が決められるものじゃないけどさ。俺にはそこまで体の関係に固執する理由がわからないよ」

 

 山本さんはセックスなんかしなくたって楽しい人生を送れるはずだ。 

 誰もが羨む能力をたくさん持っている。

 いや、セックス以外の全てができると言っても過言ではない。

 

「……言ったでしょ。しょーもない悩みだって」

 

 山本さんはかつて俺に言った。

 深刻な悩みではあるが、説明したところでどうせわからないと。 

 

「きっかけは中学生の頃だったの。初めて付き合った男の子とね、まあ、そういう雰囲気になりまして」

 

 それが山本さんにとっての初めて。

 初体験と呼べるほど、確かなものではなかったようだが。

 

「何度やっても上手くいかなかった。そのうち相手が自信を失くしちゃって。最初は、それが原因で別れることになっちゃった」

 

 山本さんという高嶺の花を抱えていたからこそ、その重圧は大きかったのだろう。

 

「次の人も似たような感じ。ただ、二人目は私から別れを切り出したの。初めての失敗が頭にこびりついてて、どうにもギクシャクしちゃって」

 

 中学生の頃から完璧な美少女だった山本さん。

 付き合う男には困らなかったが、その先まで発展することはほとんどなかった。

 

「たったそれだけのことが私にとっては綻びになっちゃったの。付き合う目的と、別れ癖。それに雁字搦めに縛られて、何回も恋人を作っては別れた。みんなひと月も保たずにね。体の関係になる前に別れる人もたくさんいた。もうその頃には、何のために彼氏を作ってたのかもわかんなくなってた」

 

 小さい頃から、それを積み重ねたというだけ。

 些細なこだわりが、やがて山本奏という人格の一部を変質させていった。

 

「不思議でしょ? 私はこんなに可愛くて、こんなに優秀で、家族にも友人にも恵まれて、生きていくのに困ることなんて何もなかったのに」

 

 山本さんは右手を開いて、手のひらをぼーっと見つめる。

 そこには世界の誰もが羨む全てが与えられていた。

 一つの完璧の形が、存在したというのに。

 

「今じゃただの馬鹿な女。もっと上手に生きる方法なんて、いくらでもあったはずなのにね」

 

 理想の男を見つけて、何不自由のない人生を謳歌するはずだった。

 そんな少女が今、こんなちっぽけな公立高校に律儀に通っている。

 

「私はね。ごくごく普通に青春を過ごして、ごくごく普通に就職して、慎ましやかに暮らすんだ」

 

 山本さんは俺の顔を見て、また優しい笑顔になる。

 

「変な女でしょ。嫌いになった?」

「あー……いや、別に」

 

 俺の周りは変な女しかいなさすぎて、もう、逆に普通というか。

 

 なにより、俺自身が異常だし。

 

「なら!!」

 

 椅子を蹴飛ばし気味に立ち上がる山本さん。

 元気が良くて大変好ましい。

 

「あのですね。お願いが、あるのですが」

 

 その勢いの割には、しおらしい態度だった。

 

「ソトミチくんの悩みに便乗するみたいで、悪いんだけど……」

 

 それが、山本さんにとっての望み。

 誰にも希望を見いだせなかった、その唯一がここにある。

 

「もし、よろしければ。私と、セックスしてもらえませんか?」

 

 顔を赤らめてもじもじする。

 まるで生娘のような姿の山本さんが、そこにはいた。

 

「別に、いいけど」

 

 明日の、夏休み初日。

 

 フェラでは破れなかった妹という壁。

 男として、正真正銘最後の希望を賭けて。

 

 俺は山本さんの家に行くことになった。

 

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