夏休み真っ只中の午後。
俺はコンドームの箱を眺めながらベッドで横になっていた。
学校の宿題をやったり、オフ会の話題作りにクエスト消化なども行っていたが、どれも手につくことはなく。
休んでおくことが山本さんのためだと自分に言い聞かせて、呼び出しを貰うまで寝ていることにした。
箱に書かれている数字は『0.01』。
美優が以前、俺に使わせた、最もリアルな挿入感を得られるという最薄のコンドームと同じだ。
しかし、これは俺が選んだわけではない。
昨晩、山本さんと手を繋いだままコンドームを買いに行った俺は、背後からどのゴムを選ぶのかを山本さんに見られていた。
もちろん、俺だって最初からこの一番薄いやつを選びたかったが、それだと変な期待をしていると思われそうで、俺はもう一段階厚いコンドームを選んでレジまで持っていくことにした。
しかし、会計が始まる直前、山本さんが俺の背中をつついて待ったをかけた。
そして、「これにしよ」と、頬を赤らめながら、この最薄のコンドームを提案してきたのだ。
あのときの山本さんの少女的な可愛らしさと、店員の殺意に満ちた視線は今でも忘れられない。
『ソトミチくん、準備できたからおいで』
外が暗くなり始める前に山本さんから連絡がきた。
どうやら今日はランチの片づけまででバイトが終わったようだ。
俺は支度を済ませて家を出た。
バッグにスーツを詰め込んでいるせいで、想定以上の大荷物になった。
「せっかくの夏休みだから泊まりに来なよ」と誘ってもらって、俺は次のバイトも山本さんの家から行くことにしたのだ。
俺は自転車をフラつかせながら山本さんのマンションに向かった。
まだ数回しか通っていないのに、すっかりこの道にも慣れてしまった気がする。
今日はいよいよ、山本さんとセックスをする日だ。
なんでもできる山本さんが、長年叶えられなかった唯一の望み──山本さんも満足できるセックスを、実現してあげたい。
マンションにたどり着いた俺は、山本さんの部屋番号を入力して、エントランスからインターホンを押した。
夏の暑さとは関係なく喉が渇く。
脈も心なしか速いように感じる。
『ドア開けるねー。部屋の鍵も開けておくから、着いたら入ってきていいよ』
自動ドアを開けてもらい、エレベーターに乗り込んで、山本さんの部屋を目指す。
ボーッと空調の音だけが響く密室で、俺は一つずつ増加していく階数表示を眺めていた。
──俺は体を捧げているだけでいいんだろうか。
ふと、そんなことを考える。
山本さんが一番に求めていることは、自分の体でもすぐに射精をしない男と挿入行為に至り、短くない時間のセックスで気持ちよくなること。
そのはずなのに、何かが引っかかる。
山本さんの「セックスがしたい」を、「気持ちよくなりたい」と解釈するのは、どうにもしっくりこない。
もちろん、俺は山本さんに満足してもらえるよう、丁寧に時間をかけてセックスをするつもりだ。
あるいは山本さんのことだから、何十分も腰を激しく振り続けることを求められるかもしれないけど。
今日のために筋トレは控えておいたから、最初くらいはそうした望みにも応えてあげられるはず。
しかし、そこまでしても、山本さんが満足する姿が思い描けない。
長時間の挿入だけではダメなんだ。
美優はイかなくても満足できると言っていたけど、やっぱり女の子だって、セックスをしたらイきたいに決まっている。
山本さんは、イッた経験があるのだろうか。
よくよく考えてみると、俺って女の子をイかせたことはないんだよな。
佐知子をイかせていたのは、結局は美優の記憶だったわけだし。
由佳としたときも──あいつはイってたみたいだけど、あれは状況が特殊だし、何より美優が無理やりさせた影響の方が強かった。
そんなことをうだうだと考えているうちに、山本さんの部屋の前にたどり着いた。
鍵は開けていると告げられているので、俺がこのドアを開ければ、山本さんとの時間がスタートする。
こうなったら、なるようになれだ。
「お邪魔します」
ドアを開けてすぐ、縦長な廊下の左側に、キッチンが見える。
玄関に入ると、香ばしいスパイスの匂いが俺の嗅覚を刺激した。
「いらっしゃいませ、ソトミチくん」
山本さんが鍋をかき混ぜながら俺を出迎えた。
サマーニットにエプロン姿で、胸の膨らみがくっきりと出ている。
その所帯感のある姿がエロすぎて、さっきまで考えていたことを忘れてしまいそうだった。
「この匂いは……ビーフシチュー?」
俺が尋ねると、山本さんはニッコリしてOKマークを作った。
「がっつりと固形のご飯にすると、エッチのときにお腹がツラいからね。冷めてもパンと一緒に温めるだけですぐに食べられるし、今から用意してるの」
ビーフシチューか。
数日前に美優から焦らしプレイを受けたときもシチューだったな。
美優はいつもドライで、山本さんと違って直接的なエッチはしてこないけど、不意にパーソナルスペースに踏み込ませてくれるから、ドキッとして思考がおかしなことになってしまうんだよな。
……っと、いまは美優のことを考えてる場合じゃない。
俺はこれから、こんなにエロくて可愛い女の子と、思う存分セックスができるんだ。
まずはそれを喜ばなくてどうする。
「お腹が空いてるなら、いま食べちゃってもいいけどね」
山本さんは鍋の火を止めて、俺の手を塞いでいる荷物を受け取った。
重い物を持たせるのは申し訳ないけど、靴が脱ぎやすくて助かる。
「ご飯にしてもいいし、お風呂にしてもいいし」
俺の荷物を手近な床に置いて、至近距離まで近づいてくる山本さん。
しなやかな指が俺の体をなぞり、その指先は、ズボンのチャックに止まった。
「それとも、フェラする?」
いきなりのエッチの提案に、俺の股間が、むくむくと盛り上がる。
もはや恒例となりつつある即フェラ。
期待を裏切らない山本さんの快楽責めを、もう体が覚えてしまっているからこそ、抗えない。
「フェラが、いいかも」
「んふふー。かしこまりました」
山本さんは窮屈になったズボンから、俺の肉棒を外へと解放した。
今度は自分で出せとは言わない。
完全にご奉仕モードの山本さんだ。
玄関でまだ靴を履いたままの俺からペニスを引っ張り出して、膝立ちになる山本さん。
下から仰がれる目線と、ニットに表れている胸のラインが、俺の劣情をこれでもかと刺激してくる。
「はーむっ」
山本さんは迷うことなく俺のペニスを咥え込んだ。
じゅぶっ、じゅぶっ、と音を立てて、美味しそうに根元まで舐めてくれる。
「あっ……うっ……山本さん……すごいっ……!」
フェラをしてくれる山本さんの口はいつも温かくて、唾液に溢れている。
俺がまだエロゲで抜いていた頃、オナホを温めてローションをたっぷりに満たせば、最高の肉穴になると聞いて試したことがあったけど。
山本さんのフェラは、そんな道具なんて子供のオモチャだと思わせるぐらいの肉感をしていた。
「ああっ……ほんと……すごいよ山本さん……」
「んふ。きもひぃ?」
山本さんはフェラをするときに全く嫌な顔をしない。
それどころか、美味しそうに味わいながら隅々まで舐めてくれる。
「気持ちいいよ……フェラだけで満足できちゃいそう……」
山本さんに初めて口でしてもらったのは学校の資料室、その次がソファーでのパイズリフェラで、昨日はバスの車中。
そして、来宅からの即フェラであるこれが4度目。
「あっ……あの……山本さんって……洗う前の方が好きなの……?」
山本さんは準備万端の状態でフェラをするより、屋外でフェラをしている時の方が楽しそうにしている。
精液や汗のニオイはもちろん、おしっこの味までしているかもしれないのに、山本さんは率先してそれらを舐め取ってくれる。
「んー、ちゅっ……別に汚いのを舐めるのが……好きなわけじゃないけど……んぢゅっ、ちゅる……」
山本さんはペニスを咥えたまま、舌を竿全体にべろべろと擦り付けて、ズズッと唾液を吸い取った。
「そのままのやつ舐めると、ソトミチくんが喜んでくれるから好き」
山本さんは微笑んで、またフェラを再開した。
俺が喜ぶからって、そんな。
嬉しすぎる。
その幸福感だけで射精してしまいそうだ。
「んむ……ちゅぶっ……んちゅ……あっ……。でも、この荷物にスーツも入ってるんだっけ。シワになっちゃうかな」
山本さんは俺の肉棒から口を離して、床に置いた俺の荷物に意識をやった。
そのバッグの中にはバイトに使うスーツと泊まり用の服が一式入っている。
リュックを使えば自転車を漕ぐのが楽だったのだが、手頃な物がなくて親の小旅行用のバッグを引っ張り出してきてしまった。
「そんなに気にしなくてもいいよ。イベントスタッフはスーツが制服だけど、ほとんど肉体労働だから、使い潰すつもりで着てるし」
「それでも。女が男の子をみっともない姿でお仕事には送れません」
山本さんは俺のペニスをパンツに押し込んで、「お預けです」と言ってチャックを閉じた。
それから俺は風呂場に送られて、山本さんがバッグの中身を整理している間に、シャワーを浴びる。
「はぁ」
また快楽に負けて、エロいことしか考えられなくなってしまった。
山本さんのフェラが気持ちよすぎるのもそうだけど、あんだけ楽しそうにされると、もうそれだけでいいんじゃないかなって思ってしまうんだよな。
俺が汗をシャワーで流している間も、股間には硬さの変わらない屹立が存在を主張している。
セックスをしにきたのだから、こんな状態でもなんら不誠実ではないのだが、四六時中セックスをすることしか考えていないと思われるのも、それはそれで問題だ。
美優も山本さんも、求めても嫌がらないという点では共通している。
そこに甘えっぱなしにならないようにしないと。
俺は浴室から出て、体を拭く。
服が湿っているとベッドを使わせてもらう山本さんに失礼なので、着る前にドライヤーで髪を乾した。
美容院できちんと切ってもらっているからなのか、ワックスをつけなくても風呂上がりの髪はそれなりにまとまった。
鏡に映る自分の姿は、数ヶ月前からすると信じられないくらいに、まともだ。
筋肉もついて、姿勢も良くなって、妹の美優があの可愛さである通り、俺の顔のパーツだってそれほど悪くはない。
……とは思うのだが。
それでも地味で根暗に見えるのは、やはりこの野暮ったい一重が原因か。
いっそ目の余分な肉と皮をごっそり削いでしまえば、そこそこ良い顔になるのかもしれない。
なんてことを素っ裸のまま考えていたら、あろうことか、山本さんがドアを開けてこちらを覗いていた。
「や、山本さん……何を……」
「鏡で自分の顔を見つめながらギンギンにしてる全裸のお兄さんを眺めてる」
やばい。
死にたいほど恥ずかしい。
「心配しなくても、ソトミチくんはかっこいいよ」
山本さんは脱衣所に入ってきて、俺の背後に回った。
そして、裸体の俺に背後から手を回して、ギュッと抱きしめてくる。
もこもこしたニットの温かさと、山本さん自身の柔らかさが心地良い。
「ここ、元気なままだね。エッチなこと考えながらシャワーを浴びてたの?」
山本さんは俺の上向きの剛直を優しく撫でてくる。
「あっ……そんな、ことないけど……。最近は、一度硬くなると……んっ……なかなか……萎えなくて……」
「ふーん」
山本さんは左右の手を使って、俺の下半身の肌を撫で回す。
指の腹がギリギリ浮かないぐらいの弱い力で、太ももから陰嚢、陰茎の先まで触られて、そこからざわざわとした快感が這い上がってくる。
「んっ、ふっ、ぁぐっ、ちょっ、それ、あっ……」
快感に体が反り上がりそうだった。
睾丸も上下にビクビクと反応して、他の男たちならきっとこの時点で出てしまうのだろうとわかるくらい、強烈な射精感が尿道を突き抜けていく。
「最近って? 美優ちゃんとエッチするようになってから?」
「それは、あぅっ……はぁ、そ、そう、です……」
「あらあら。いけないお兄ちゃんだ」
山本さんは手の動きを愛撫から手コキへと切り替える。
右手で竿を握り、左手は陰嚢の下側に添えられて、上と下から同時に快感がやってきた。
「あぁぁあっ!」
享楽に喜ぶ体が、電気信号のパルスを受けて、ビクン、ビクン、と跳ね上がる。
その様子が、俺の目の前の鏡に映されていた。
山本さんはそれをわかっていて手淫を始めたようだった。
1人裸になり、女の子に快楽責めをされて喘ぐ、情けない男の姿。
それを俺に見せようと、山本さんは両腕で俺をガッチリとホールドして逃さない。
「さっきはソトミチくんのこと、かっこいいって言ったけど」
山本さんの手を上下にする動きが激しくなる。
ストロークするごとに指を波打たせるように動かして、俺が一番に感じるところをピンポイントで刺激してくる。
「あっぐ、あ、ああぁっ!」
俺が腰を引いて快感を受け流そうとしても、山本さんはそれに合わせて腕を深くまで突っ込んでくる。
股下から玉袋の表面への刺激も、寸分狂わず俺に快楽のパルスを送ってきた。
「私は情けない声で喘ぐソトミチくんの方が好き」
ズチュ、ズチュ、と知らずのうちに先走りでグチョグチョになっていた亀頭に、集中して刺激が与えられる。
俺は足も腰もガクつかせて、山本さんの手淫に耐えることしかできなかった。
「電車の中でもこんな感じにイジられてたんだよ? 気持ちよかった?」
耳の裏から山本さんの淫靡な声が伝わってくる。
鼓膜を揺らし、蝸牛から伝わる信号が、性的な刺激として脳にインプットされていく。
「はぁ、あぅっ、ぎも、ちぃ……はぁ、あぁぁっ……!」
山本さんが頬と頬を擦るように顔を近づけてきて、俺は思わず正面を向いた。
そこには女の子の手でトロトロの陶酔状態にされた情けない男の姿が映っている。
美優も山本さんも、どうして俺のことをこんなにイジメてくるんだ。
「せっかくだからフェラされてるところも見る?」
そう尋ねてから、山本さんは俺の返事も待たずに、体を横向きにして膝をついた。
激しい手コキで鈴口に気泡が残った俺の肉棒に、山本さんがむしゃぶりつく。
硬く反り上がった肉棒が、山本さんの唇から口の中に消えて、喉近くまで突き刺さった。
フェラの音が立てられるたびに、山本さんの頬が膨らんだり凹んだりして、俺の肉棒が口内の深くにまで達すると、山本さんがゴクリと嚥下する動きで喉を絞めて、先端まで絞り尽くしているのがはっきりと見えた。
「ああぁっぐ……ぅぅああぁ、うっ、あぁ、あぁあああっ!!」
声を出すのを抑えられない。
ただでさえ山本さんの口は瑞々しいほどの肉感をしているのに、そのすべてを使ってのフェラをされて、平静を保っていられるはずがなかった。
「んふふ。私も脱いじゃお」
山本さんはフェラチオのストロークを大きくしてリズムを緩やかにし、快感が途切れないように服を脱いだ。
着衣状態でのフェラも十分にエロかったが、やはり山本さんの肉々しい体を見ると興奮の猛り方が違う。
横から見える山本さんのおっぱいは、重力などものともせず、俺の肉棒を咥え込むたびにぷるんと揺れる。
肌の色白さが、膨張色として肉体の柔らかさを強調して、口元が見えるように髪を耳にかける姿もまた艶かしく鏡に映っている。
「ああ、うっ……山本さん……出したい……!」
こうして山本さんの顔を俯瞰で眺めている状態で、山本さんの口に精液が注がれる瞬間まで見ていたい。
「んー……ちゅぶっ。それは、また今度ね」
残念ながら口内に射精をさせてはもらえなかった。
勝手に出していいと言われているのだから、出したら出したで受け入れてくれたんだろうけど、今日はセックスが主目的だし、ここで射精するわけにはいかないか。
「だいぶ唾液でべちゃべちゃにしちゃったから、軽く流してからベッドに来て。服は、着なくていいよね」
「ああ……そう、だな……」
山本さんは自分が脱いだ服と、俺がシャワーを浴びた後に着るつもりだった服を持って、居室へと向かった。
裸のままベッドに行くってことは、そのままセックスになるってことだよな。
シャワーを浴びているうちに心の準備をしないと。
俺はシャワーで下半身を洗い直し、山本さんのいるベッドへと向かった。
ドアを開けると、10畳ほどの部屋の右手にベッドがある。
そこでは布団を被った山本さんが横向きに寝ていた。
「お疲れさま」
「山本さんも、バイトお疲れさま。ご飯とか、スーツとか、ありがとうな」
「ううん……いいんだよ……」
山本さんの視線が、勃起したままの俺の肉棒に集中している。
内心では「やっぱりまだ硬いんだ」とか思われていそうだ。
恥ずかしいけど、これが収まるまで待っていたら気分が冷めてしまうし、覚悟を決めるしかない。
「ふぅ……んっ……」
裸で布団に入っている山本さんは、体をモゾモゾさせて、顔を赤くしていた。
呼吸もいつもより深くて、吐き出す息が熱そうだった。
「山本さん……なに……してるの……?」
山本さんが何をしているのか。
聞いてはみたものの、それが何かは俺にもわかっていた。
女の子がしてる姿なんてネット上でしか見たことがないが、これは間違いなく、オナニーをしてるんだよな。
どうして、このタイミングで。
「ん、とね……ふぅ……エッチの……準備してる……」
俺が目の前に現れてなお、オナニーを続ける山本さん。
その姿に股間のイチモツが、ピク、ピク、と反応してしまって、なんだかこっちが恥ずかしくなってきた。
俺は前戯ってものをほとんどしたことがないから、自分でしてくれるのは助かるけど。
雰囲気的にそれはどうなんだろう。
「あっ……んんっ……ソトミチくんがしてるのも……見たいな……」
山本さんは控えめな口調で、しかし、目では強くおねだりをしてきた。
じーっと俺のことを見つめて、俺がオナニーをするのを待っている。
それが山本さんの目的なのか。
こう誘われちゃ、断れないけど。
山本さんは布団を被ってるのに、俺だけ全裸で立ったままなんてアンフェアだ。
「それなら、俺も山本さんがしてるとこ、ちゃんと見たい」
女の子の生オナニーなんて、彼女がいる男でも見られる機会は少ない。
山本さんがお互いにしてるところを見せ合おうと言うのなら、俺だってオナニーをしている山本さんの全身を見たいんだ。
「……わかった。してるから、布団取って」
山本さんはオナニーを止めずに、俺にお願いをした。
布団に隠れて秘部を弄っているその姿を、俺に暴けというのか。
いけないことをしている気分になるけど、これも山本さんのしたいことの一環なんだよな。
ならば俺が期待を裏切るわけにはいかない。
ベッドに近づき、布団に手をかける。
ギンギンに勃起したままのペニスが山本さんの顔に近づいて、申し訳ない気分になりつつも、俺は山本さんのオナニー姿を隠している布団を取り去った。
「うぅ……はぁ……恥ずかしい……」
山本さんは自分から布団を取れと言ったにもかかわらず、秘所をイジることもやめないで羞恥にその身を縮こまらせた。
清楚なのか淫らなのかわからないその反応に、得も言われぬ興奮がふつふつと湧いてくる。
「あんっ……うぅ……ソトミチくんも……早くして……」
山本さんは切羽詰まった声で俺にオナニーを懇願する。
俺は山本さんのことを、攻めるのが好きなサディストだと思っていたけど、やはり女の子としては、どこかに辱められたい願望があるんだろうか。
くちゅ、くちゅ、と音を立てて、山本さんは秘所の湿りを強調する。
こうして勃起している俺と、興奮しているのは同じなのだと、心の内を伝えてくれている。
「はぁ……山本……さん……」
俺も自らのイチモツを握ってオナニーを始めた。
一擦り、二擦りと、シゴく度に血液が送り込まれていく肉棒。
突っ立ったまま惨めに自分のモノをシゴいている俺の姿を、山本さんは瞬きも惜しんで熟視している。
そんなに俺の情けない姿を見ると興奮するのか。
特殊性癖っていうのとは少し違うんだろうけど。
きっと今まで付き合ってきた男たちも知らない山本さんの一面なんだよな。
「はぁ、ああっ……山本さん……気持ちいい……!」
山本さんに見られているだけで、オナニーの感度は段違いに上がった。
しかし、これが、まずかった。
一分も経たないうちに、俺は我慢できないほどの射精欲に襲われたのだ。
「うっ──!」
俺は慌てて手を止め、根元をギュッと握った。
肉棒がカライキしたみたいに尿道の収縮だけを繰り返し、ようやく射精欲が収まる。
「ん……? ソトミチくん、どうしたの……?」
イチモツをいじり始めてすぐに手を止めた俺を、山本さんが不審そうに眺めていた。
どうしよう。
オナニーは、できそうにない。
それもそのはずだ。
女の子の目の前でのオナニーなんて、俺が美優と一番多くしてきたエッチなんだから。
限界まで肥大化したこの怒張の前には、山本さんの顔がある。
このまま射精をしたら、きっと山本さんは精液を飲んでくれる。
それは俺と美優がずっと続けてきた行為と同じ。
この体が射精するのを躊躇するわけがない。
「あ、いや、やっぱりちょっと、恥ずかしいかなって」
俺は苦し紛れに言い訳をした。
雰囲気を台無しにしてしまうけど、見られながらのオナニーだけは、どんなに頑張っても射精を我慢できないんだ。
「そうなの? まあ、恥ずかしいって言うのは、わからなくはないんだけどさ」
山本さんもオナニーを止めて、自らの愛液で濡れた指で、そっと俺の肉棒をつまんできた。
「その割には、血管が浮くぐらいバキバキになってるけど……?」
「うっ……これは……!」
もう限界だと思っていた勃起が、無理やり血液をねじ込まれてまたひと回り肥大化していた。
明らかに今まで山本さんとエッチしてきたものを超える膨張。
自分でも「熱い」と感じるほどの熱を宿している。
「ふーん。そうなんだ」
山本さんが目を細めて俺を観察してくる。
ほんわかモードの山本さんなら騙せたかもしれないけど、こうなったらもう難しい。
「美優ちゃんとこういうエッチしてるんだ」
山本さんはご満悦の表情でその答えを導く。
ついに言われてしまった。
もう、取り繕えない。
「これは……あっ……その……」
俺がまごついているうちに、山本さんは俺の肉棒を優しく握って、表面を軽く擦ってきた。
まだオナニーの反動が残っていて、その刺激だけでも射精してしまいそうになる。
「ソトミチくんは、妹の目の前でオナニーばっかりしてる変態さんだ」
山本さんがイヤラシイ目で俺を責めるように見つめてくる。
その言葉の通りでしかない俺は、なんの反論もできない。
「フェラもセックスもしてないっていうから、どんな状況でエッチしてるのか疑問だったんだけど。ソトミチくん、美優ちゃんに見られながらオナニーするのが好きなんだね」
俺の性癖が次々と暴かれていく。
山本さんには、いまさら知られて困ることではないけど、改めて口にされると羞恥と罪悪感で心臓がズキズキしてくる。
「い、色々あって……」
「ふふっ。まあ、そんなに詮索するつもりはないけど」
山本さんは楽しそうに、俺の肉棒を射精しない程度にシゴいてくる。
印象は悪くなってないのか。
山本さんは俺がどれくらい変態だったら嫌いになるんだろう。
「出したくなっちゃう?」
「それはまあ……出したくはなるけど……」
昨日は山本さんにバスで精液を飲んでもらったけど、俺が口内に射精した後は、山本さんはすぐに水を飲み干すぐらい苦そうにしていた。
いつも美優としてるようなオナニーで出た精液なんかを飲ませたら、その濃さに今度こそ吐いてしまうかもしれない。
「でも、山本さんは、本番したいよね?」
俺も今では複数回の射精をできるようにはなっている。
でも、出した後すぐに勃起させるにはそれなりの興奮が必要で、山本さんからまた奉仕的なエッチをしてもらわなければいけなくなる。
本番を急かすつもりはないけど、確実にできるときにしておきたい。
「うーん……私は、どっちでもいいけど」
山本さんはそう呟いて、俺の肉棒から手を放した。
どっちでもいいのか。
でも、流れ的には今しかないよな。
次に本番をしないとなったら、俺はさすがにどこかで射精したくなっちゃうし。
「え、あの、これから……する……?」
「うん。そうだね。しよっか」
山本さんはベッドに仰向けになった。
俺はクローゼットの近くに置かれていたバッグからコンドームの箱を取り出す。
箱を開けると、斜めになった底に三つのコンドームが並べられていた。
それを見て、足りないかも、と思ってしまった自分を叱りたい。
一回一回のセックスを丁寧にしていれば、この数量で十分だ。
俺はベッドの縁に箱を置いて、コンドームを一つ持ってベッドに上がる。
「えっと、じゃあ、つけるね」
「うん」
俺はゴムが傷つかないように包装を破いて、上下が反対になっていないかを確かめる。
ぷっくりと膨らんだ精液溜めを上にして、ペニスが根元までしっかりとゴムに覆われるように、くるくると巻き付けを解いていった。
山本さんは秘部が見えないように脚を畳んで膝を立てている。
俺がその前で腰を落として、山本さんの膝に手を置くと、山本さんもセックスを受け入れるように脚を開いた。
先程までの和気あいあいとした空気から一転、静まり返った室内。
「挿れて、いい?」
「……いいよ」
山本さんは返事だけをして、顔は横向き。
壁をジッと見つめている。
俺は山本さんの脚を持ち上げて、腰を近づけた。
たっぷりと淫汁が溜まっている山本さんの蜜壺。
あと数センチ動けば、山本さんに挿入できる。
「えっ……と……」
何かが、おかしい。
山本さんの口数が少なすぎる。
俺はそんなに雰囲気を壊すようなことを言っただろうか。
あのタイミングでセックスを提案したのがマズかったのか?
いや、待て、そもそも、「どっちでもいい」ってどういう意味だ。
俺だって山本さんとのエッチを楽しんでいるとはいえ、元々この関係は、山本さんが俺にセックスをしたいと頼んだから始まったものだ。
昨日までだって、次こそはしようねって、あれだけ意気込んでいたのに。
前回この部屋に来たときも、本当はセックスをするはずだった。
それなのに山本さんにはまったくその気配がなくて、俺が手コキとパイズリだけで精液を出し切った後は、それで十分だってくらいに満足げだった。
このよくわからない、不思議な感じ。
身に覚えがある。
それこそ美優を相手にしているような感覚だ。
女の子特有の難しさと割り切ってしまえばそれまでだけど、山本さんだって人間なわけだし、こうして黙っている間も何かを考えているはず。
この状況は、美優が風呂場に押しかけてきたときと少し似ている。
あのときの美優の理不尽な言動にも、お仕置きをする目的があった。
なら、この山本さんの静かさは、いったい何だろう。
「ソトミチくん……? どうしたの?」
なかなか挿入しない俺に、山本さんが首をかしげた。
山本さんが黙ってるから挿れられない、なんて言ったら、それはそれで山本さんが気を利かせてしまうかもしれないし。
どうやって俺の混乱を伝えるのがいいのかな。
「あー……その……、何か雰囲気の出ることを、言ったほうがいいのかなって……」
俺は考えがまとまりきらなくて、それこそ雰囲気の無い発言をしてしまった。
「んー? ふふっ。何か言ってくれるの?」
山本さんは微かに笑ってくれた。
少しは表情の固さが無くなったような気がする。
「その……なんというか……だな……」
考えなしだったから、いざ求められると言葉に詰まる。
とにかくこの妙な空気が和らげばなんでもいいんだけど。
「……うん。そっか」
山本さんは俺が答える前に何かを納得して、おもむろに腕を伸ばしてきた。
その手が俺の後頭部に回されて、山本さんはそっと、自らの胸に俺の顔を抱き寄せた。
すっごい柔らかい。
そして、熱い。
耳を当てるまでもなく、ドクンドクンと激しい鼓動が響いてくる。
山本さんの脈が異常に早くて、運動の後みたいに体が火照っていた。
まさか、これって。
「山本さん……緊張してる……?」
急に口数が減ったのも、今まで本番を先延ばしにしていたのも、単に緊張して上手く始められなかっただけだったのか。
「お恥ずかしながら……」
山本さんは俺の顔を胸に押し付けて、自分の顔が見えないようにしている。
考えてみれば、緊張するのも当然なのか。
今日まで何度もセックスに失敗してきたのは、山本さんからしたら深刻な悩みなんだし、絶対に俺が射精しないとわかっていても心配になるよな。
俺もひとまずはセックスを中断して、体を抱き寄せてくる山本さんに身を預けることにした。
足の付根同士が重なりあって、挿入はせず、秘部と秘部が当たるだけの状態。
山本さんのアソコが思っているより濡れていて、ペニスがクリトリスに触れるだけでも気持ちいい。
「ソトミチくんの、ほんと、硬いね。体温は同じくらいのはずなのに、熱も感じるし。なんか……すごい……」
平均と比べれば、俺の男性器はそれほどすごいものではないはずだけど。
美優や山本さんが魅力的過ぎるせいで、俺のオスとしての本能が覚醒している。
「んっ……あの、あんまり、ビクつかされると……ふぅ……んんっ……なんか、気持ちよくなっちゃう……」
俺の肉棒が山本さんのエロスに影響されて、節操なくセックスの準備を始めている。
このイチモツのビクつきは、男の意思では制御しきれない。
っていうか、どうしよう。
体が疼いてきた。
「山本さん……俺……セックス、したくなってきた……」
山本さんの裸体に包まれているだけで気分が昂ぶってくる。
抱きついた直後はそれほどでもなかったのに。
さっきからリビドーが溢れて止まらない。
「ソトミチくん」
山本さんは、一瞬だけギュッと強く俺を抱きしめて、すぐに腕から解放した。
「私も、挿れて欲しい」
山本さんの潤んだ瞳。
ようやく、その言葉が聞けた。
「山本さん……いくよ……」
俺は亀頭を山本さんの膣口にあてがい、ゆっくりとペニスを挿入した。
「んっ……ああっ……ソトミチくん……!!」
ズブズブと肉壁を押しのけてペニスが侵入していく。
山本さんの膣内は想像していたよりもずっと狭くて、でもまったく抵抗感がないくらいに柔らかい。
「うぐっ……はぁ、山本さん……! あぁ、これ、気持ちよすぎる……!!」
ペニスが最奥まで到達した瞬間、俺の体がガクッと震えた。
引き抜こうとするカリ首に山本さんの膣壁が絡みついて、俺の肉棒を絞り上げてくる。
腰を動かすほどに山本さんの膣内が柔らかくなって、挿しても抜いても、あらゆる箇所に淫肉が絡みついてきた。
「ああぐっ……や、やばい、出そう……!!」
まさかの事態だった。
美優以外は絶対に射精できないと思っていたのに、本当に出てしまいそうなぐらいにギリギリまで精液がせり上がってきている。
「ん……いいよ……出して……」
山本さんは俺を抱きしめて、射精を迎えてくれた。
俺が出してしまったら、その他の男たちと同じになってしまうはずなのに。
「あああっ……山本さん……山本さん……ッ!」
俺は一心不乱に腰を動かした。
卑猥な音を立てて蜜をかき乱していく俺の肉棒。
鉄のような硬さが山本さんの体内に入っていることを感じるたびに、脳内が歓喜に満ち溢れていく。
そして、10秒ほどの後、俺は緩やかに腰の速度を落としていった。
「はぁ……はぁ……で、出なかった……」
「ふぅ……そっか……それは残念」
山本さんも息を乱していて、俺はまた山本さんの胸に抱きつく体勢になった。
絶対にイクと思っていたのに、やはりこの体は、そう簡単に美優以外には出させてくれないらしい。
「でも、これでまだ続けられるから」
俺は徐々にピストン運動を再開した。
さっきは美優以外で射精できるかもしれないと思っていきなり激しくしてしまったが、挿入の時間では一般的な女の子よりずっと経験の少ない山本さんに、あんな乱暴なセックスをするべきではなかった。
「痛くなかった?」
「平気だよ。でも、そうやってゆっくりしてくれる方が、嬉しいかも」
山本さんは全身から力を抜いて、俺の肉棒を受け入れた。
「んっ……あっ……」
心なしか、この速さの方が山本さんの感度が良いようだ。
俺としても、激しくしない方が、山本さんの膣内を深くまで感じられて気持ちいい。
「山本さん……いつまで……ゆっくりにしてたほうが良い……?」
「うっ、あ、はんっ……そ、ソトミチくんが、よければ……あっ、あんっ、はぁ……ずっとこれがいい……」
山本さんの嬌声が次第に上擦っていく。
リズムも変えずに腰を動かしているだけなのに。
「ああんっ、あっ、そこっ……きもちいとこ……あたってる……っっ……ふぅ……んんっ……!!」
ペニスで突く深さによって、山本さんのビクつきと声の艶やかさが変わる。
山本さんが感じるほど膣の具合も良くなった。
俺はピストンの速度は一定に保ったまま、肉棒の先端を押し付ける位置だけを微調整していく。
「はぅっ、んあぁっ、しゅご……あああんっ……! ソトミチくんの、硬いの、しゅごぃ……あぐっ……あぅ……んっ、んんっ、んんぅぅんっ!」
こんなに緩慢な動きなのに、山本さんの反応はどんどん良くなっていった。
山本さんは肉棒が気持ちいいところに当たるとわかりやすく喘いでくれて、俺はそこを刺激し続けられるように、より動きを単純化していった。
「はぁ……山本さん……! さっきより、もっと気持ちよくなってる……!」
自分が気持ちよくなるように動くより、相手を気持ちよくさせた方が、結果的に得られる快感が大きかった。
それを知ってから、俺は山本さんをひたすら感じさせることだけに集中した。
山本さんは俺にしがみついてきて放そうとしてくれない。
それだけ俺のこのセックスが求められているんだ。
その男としての精神的な悦びが、物理的な快楽として上乗せされていく。
「あうっ……あっ……ソトミチ……くん……」
やがて山本さんの嬌声が小さくなっていった。
だがそれに反比例するように、俺に抱きつく力は強くなっていく。
肉棒が子宮の近くを突くたびに、山本さんの体が跳ねて、その力みを俺への抱擁で吸収する。
その山本さんの動きから、感じることによる体の跳ね上がりも無くなって、しばらく俺に抱きつくだけになったと思ったら、それまでの力みを一気に開放するように、山本さんの体全体が、ビクン、ビクン、と大きく痙攣した。
「あっ……ふぅ…………うぅ……ごめん……」
山本さんの異変を察して、俺は動きを止める。
山本さんは気まずそうに目を伏せて、小さく声をこぼした。
「勝手に、イッちゃった」
それから山本さんは、傍らの布団を引っ張ってきて、顔を隠した。
「うぅ……すごく恥ずかしい……」
とても悶々としている。
俺にエロいことをしてくるときはあんなに余裕綽々としているのに、いざ自分がイクとなるとここまでウブになるのか。
「全然開発されてなかったのに……こんなあっさりイッちゃって……はしたないよぉ……」
これまでしてきたエッチのほうが大分だいぶんはしたなかった気がするが、それほどまでに自分が感じている姿を見られるのは羞恥に耐えかねるのだろう。
俺は山本さんの気が落ち着くのを待った。
山本さんは顔を隠したまま、体をくねくねさせて、いつまでも恥ずかしそうにしている。
それが収まったのが、5分ほどしてから。
山本さんは布団から目だけを出して、睨むように俺と目を合わせた。
そして、すぐに目をそらした。
「ソトミチくんのセックス、気持ちよすぎ」
まさか、女の子からそんな言葉をいただけるなんて。
山本さんって、男とまともにセックスができたのは、これが初めてなんだよな。
だとすると……。
「イッたの、初めてだったりする?」
「うん」
山本さんとセックスをした誰もが数秒と保たなかったんだ。
初めてなのが、当然なんだよな。
俺は山本さんをイかせることができた。
これだけは、上手にできたって、自信を持っていいはずだ。
「ソトミチくんの、これさ」
山本さんはまだ連結されたままの俺のペニスに手を触れた。
「立派だね」
はちきれんばかりに勃起した俺のペニス。
この硬さだけは、他の男のと比べても立派と言えるだろうけど。
「そう……かな? サイズも、そんなにないし。美優とする前は……こんなに勃たなかったし……精液の量も……ずっと少なかったし……」
ここ数ヶ月で変わったんだ。
エロゲでオナニーばかりをしていたころは、酷いときなんて勃ちきらずに射精してしまったこともあるくらいだったし。
「やっぱりそうなんだ。じゃあこの立派なのは、美優ちゃんに育ててもらったんだね」
山本さんは俺のペニスの根元をさすって、慈しむような目でその連結部に視線を落とす。
「美優ちゃん、旅行してるんだよね。いつ帰ってくるんだっけ?」
まったりとした空気の中、始まったのは世間話。
山本さんもイッたことだし、一旦休憩にするか。
「一週間って言ってたから、4日後の夜には帰ってくると思う」
俺は山本さんの膣からペニスを引き抜いて、体勢は四つ足立ちを維持した。
「ふあっ……んっ……明後日がソトミチくん、バイトなんだよね? その後は?」
「5日後にもう1件入ってる」
「じゃあ美優ちゃんが帰ってくるまでは、明後日のバイトだけなんだね」
「そうなるな」
もっと入れてもよかったんだけど、初っ端から飛ばすと体力的にキツイからな。
夏休みの前半はバイトを詰め込まないようにしていた。
「あのさ、ソトミチくん」
山本さんが話を仕切り直して、俺の目を見つめてくる。
「美優ちゃん以外でエッチできるようにする必要、無いと思う」
山本さんが、そう言って。
俺がその意味を理解できたのは、その数秒後だった。
「えっ。な、なんで?」
俺は上手くセックスができたはずなのに。
美優以外で抜けるようにするのを諦めるってことは、俺はこれからも美優とエッチをし続けたほうがいいってことだよな。
「なんとなく、今日までしてて思ったんだ。ソトミチくんの中にさ、いつも美優ちゃんを感じるんだよ」
山本さんは穏やかな口調で話を続けた。
「ソトミチくんは、美優ちゃんはソトミチくんのことを好きじゃないって言うけど。……今は、そうなのかもしれないけど。でも、こうやってソトミチくんが変わってきたのは、愛がないと無理だったと思う」
俺と美優の間にある、愛か。
たしかに、いくら俺が美優のことを好きだったとはいえ、そもそも美優が俺のことを受け入れてくれてなかったら、何も始まらなかったんだよな。
そしたら俺はきっと、根暗な童貞のままだった。
鈴原や高波たちに嫉妬ばかりして、いつかは孤独になっていたかもしれない。
「ただの勘ではあるんだけどさ。ソトミチくんに挿れてもらって、確信した。ソトミチくんはこれからも、美優ちゃんを大切にしてあげた方がいいよ」
最後は悪戯っぽく、山本さんは微笑んだ。
「それで、いいのかな」
「大丈夫だよ。こんなに立派になったんだし。もっと自信を持って」
山本さんはまだ硬いままの俺の肉棒を撫でる。
結局、山本さんを以ってしても、俺は射精をすることができなかった。
でも、問題なのは、たぶんそこじゃないんだよな。
昨日の阿形さんたちとの飲み会でも疑問に思ったこと。
山本さんとこんなに楽しいエッチをして、俺がまだ恋心を抱かないのは、きっと美優以上に相性の良い人はいないと、本能的に悟っているからだ。
「というわけで、私は残りの四日間、ソトミチくんとのエッチを楽しむことにします」
山本さんの表情がカラッと明るくなった。
美優の帰ってくる日を聞いたのはこういうことか。
「山本さんは、それでいいの?」
俺の都合でいえば、もう美優しかないと決めてしまったのでそれでいいのだが、山本さんは俺以外とはまともにエッチができないわけだし、これで終わってしまったらその後がツラい気がする。
「へーきへーき。これもさっき気づいたんだけどさ、ソトミチくん、勘違いしてる」
「勘違い?」
俺が、山本さんの悩みについて、何か思い違いをしているということか。
「たしかに私はずっと、セックスしたいって言ってきたけど。別に、セックスそのものに憧れてたわけではないから」
男と付き合って、健全な関係が育まれて、セックスという深い関係に至る。
その周囲にとっての当たり前ができなかったからこそ、山本さんは苦悩していたはず。
ならそれは、セックスへの憧れと言えるんじゃないのか。
「今の私が、ソトミチくんとセックスしたいって言ってるのは、ソトミチくんとのエッチが楽しいから、セックスもしたいなって思ってるからだよ」
山本さんは、ハニカミながらそれを口にする。
「そう言ってもらえるのは、嬉しいけど……」
するのが楽しいからセックスを望まれるなんて、男としてはこれ以上ないほどに喜ばしいことだ。
でも、セックスができなくて悩んでたんじゃないとしたら、いままでの山本さんのお願いはなんだったのかな。
「まあまあ、ちゃんとお話しますから。まずは、その……もう一回、しません?」
山本さんは宙にぶら下がった俺の勃起を軽く引っ張って、続きを要求してくる。
「今度はソトミチくんに下になって欲しいな」
山本さんは体を起こすと女豹のようなポーズになって、俺に寝るように指示した。
こんなに楽しそうにしてるなら、山本さんが俺に美優を選べって言ったのも、良い方向に転んだ結果なんだよな。
なら、もうそれでいい。
「寝てるだけでいいの?」
「できればマグロになって欲しい」
「マジか……」
まさか女の子にマグロになれと言われる日が来るとは思わなかったが、相手が山本さんならそれもアリか。
俺はベッドで仰向けになって、全身の力を抜いた。
山本さんは俺の腰の上に跨って、自ら肉棒を膣口へと誘う。
そして、間を置くことなく、ズブッと腰を下ろして根元まで体内にしまい込んだ。
「あぐっ……ううっ……これ……あんっ、あっ……好きっ……!」
山本さんは体を大きく動かすことはせず、腰を前後させて肉筒の奥にグリグリと俺のペニスを押し当てた。
「ああっ……山本さん……! そんな……されたら……っあぁぁっ!」
俺の肉棒の硬さを存分に使って、山本さんは自らの快感スポットにひたすら俺のペニスをこすりつけた。
グジュグジュと山本さんの膣内がかき乱されて、そのたびに熱い液が溢れてくる。
竿全体から伝わる山本さんの悦び。
それが俺の脳にも伝播して、2人の快楽が共鳴していく。
「ソトミチくん……うぅ……これ……頭白くなっちゃう……」
「俺も……気持ちいい……はぁ……山本さん……ああっ……!」
思わず腰を動かしたくなるのをグッと堪えて、俺は山本さんが自らの膣で扱き上げてくれる快感に身を委ねた。
女の子が自分の体を精一杯に使って気持ちよくしてくれているんだ。
ここで動くのは、それにケチをつけるようなもの。
俺は山本さんの想いのままに気持ちよくされていたい。
「はぁ……はぁ……ソトミチくんの……ほんと硬くてステキ……」
山本さんは俺の肉棒の硬さをとても気に入ってくれているようだった。
いままでは挿入されてもすぐに出されてしまって、みんなそこで萎えてしまっていたんだろうな。
山本さんに好きなように動いてもらって、二人の間には快楽による共通意識だけが満ちて、この瞬間だけは、俺と山本さんは完全に感情を一つにしていた。
「ふぅ……んっ……こんなにイイなんて知らなかった……。やっぱり、ギリギリまでソトミチくんと一緒にいようかな」
山本さんは動きを止めて、ベッドの近くに置いてあった自分のスマホを手に取った。
「やまもと……さん……?」
コツ、コツ、コツ、と画面を数回タップして、山本さんは、スマホのスピーカーを耳に当てた。
それは疑いようもない。
山本さんは、俺の肉棒を膣内に入れた状態で、誰かに電話をかけている。
「──こんばんは、お世話になっております。山本です。今週のシフトについて相談をさせていただきたいのですが」
山本さんが電話を掛けたのはバイト先のようだった。
今日から4日後、つまり、俺とセックスを続けようと約束した最終日に、バイトのシフトが入っていたらしい。
「はい、申し訳ございません。とても大切な予定が、入ってしまいまして……」
山本さんはお腹をさすり、恍惚とした表情で連結部に目を落とす。
そして、人差し指を唇に当てると、グジュッと音が出るように腰を深く沈めた。
「っ……!」
緊張感のせいか、感度が高まっていた。
山本さんの膣壁の蠢動だけで声が出てしまいそうだった。
「えぇ……そうですね……来週は、出られると思います。ふぅ……んっ……はい、ありがとう、ございます。よろしくお願いします」
山本さんは電話を切ると、ソファーにスマホを放り投げて、その勢いのままに俺の正面から覆いかぶさってくる。
「よかったの?」
「よくないよ」
「えっ」
なにしてるんですか山本さん。
「だっていきなりの電話でシフトに穴を空けちゃったし。フルタイムで入ってたから、ヘルプを探すのも大変かも。この時期は人が減ったら大忙しだよ」
山本さんは他人事みたいに自分の悪事を口にした。
そして、頬を緩めて、スケべな顔で俺を見下ろしてくる。
「どうしよう。ソトミチくんとのエッチが気持ちよすぎて、悪い子になっちゃった」
その山本さんの表情は、困ったようでもあり、喜んでいるようでもあり、とにかく今は、山本さんにとってエッチをする以外に優先することはないようだった。
「んっ……ああっ……ソトミチくん……!」
山本さんがまた動き始めて、セックスが再開される。
「山本さん……うぐっ…………膣内がトロトロして……わけわからないくらい気持ちいいよ……!」
名器と言うほかないぐらいに仕上がった山本さんの体内で、俺は射精をせずに肉棒の硬さを維持し続けている。
これは我慢強いとか早漏とか関係なく、俺にしかできないことなんだ。
山本さんのために、この体が役に立てている。
俺が男として山本さんの助けになっているんだ。
「んふふ。もっと気持ちよくしてあげる」
山本さんは少しだけ体を丸めると、舌を出して俺の胸の周りを舐め始めた。
「あっ……そ、それは、マズい! んっ、んあぁっ、それだけは、ダメ……だ……ッ!」
山本さんの行動の意味はわかっていた。
乳首を舐めて俺の性感を更に高めようとする気だ。
「ここ? そんなに弱いの?」
先端部分に舌が触れるのを避け、焦らすように乳輪の外側を舐めてくる山本さん。
俺が「ダメ」と言った言葉の意味が、山本さんの脳内で「射精しそう」という解釈になるまでに、そう時間はかからなかった。
「んふふ。ここも美優ちゃんにイジってもらったんだ。仲のいい兄妹だね」
山本さんは、俺が美優とエッチなことをしていることに、もう驚くこともない。
仮に俺のアナルが開発されていたとしても、山本さんはそれを愛情の証としか考えないだろう。
「へー。そうかぁ。ここがソトミチくんの射精スイッチなんだ」
山本さんは上機嫌に、俺の胸の周りだけを舐めてくる。
「う、ぐはぁ……あああっ……それは……あっ、でも、も、もう、イキたい……!」
俺もずっと山本さんに責められ続けて、我慢も限界だった。
「イキたい? じゃあ、『イカせてください、お願いします』って言えたら、出させてあげる」
「はぁ、あぁっ……い、イカせて……くださ……あぐっ、むっ……!?」
俺が言い切る直前、山本さんはおっぱいで口を塞いできた。
マシュマロのように柔らかいその肉質に、口全体が覆われて、息をすることも苦しくなる。
「ん、うぐ……ぅぅうっ……!」
「はぁ、んんっ……あっ、あんっ、ああぁっ……ソトミチくんの、気持ちいい……ふんっ、んぁ、あぁぁっ……!」
「んんんっ! んんっ! んあぁ、あっ、ん、ふぁあっ、あぁああっ!」
ようやくイケると思ったその寸前でお預けを食らって、その間にも、俺の肉棒は山本さんの肉壁に何度も擦られる。
イカせてくださいとおっぱいの中で懇願しても、山本さんはいつまでもセックスを止めてくれない。
快楽と呼吸困難で意識が希薄になって、俺はその両方を悦びに感じながら、必死に射精させてくださいと許しを乞うた。
「あんっ、はぁ……ふふっ。ソトミチくん、涙出てるよ。そんなにおっぱい好きなんだ……はぁ、あぁ……んんっ、ぁあぁっ、ん、んんっ……い、イッ、あ、私、また、イッちゃいそう……!」
山本さんは俺とのセックスで見つけた快感スポットに、肉棒を深くまで挿し込んで、一心不乱に腰を振った。
その分だけ俺に伝わる性感も増大して、もう射精以外の何も考えられなくなる。
「あぁぁんはぁ……んぁっ、あぁっ、あっ……ん、んんんっ!」
「うん、うん……ソトミチくんも、一緒に、イこ……あっ、んあぁぁあっ、あんっ、ンんっ、アッ……んぐ、じゅぶっ、ちゅぶっ……!」
山本さんのおっぱいが口から離れたと思うと、山本さんは俺の懇願を聞くまでもなく俺の乳首に吸い付いた。
胸の小さな突起が山本さんの舌に蹂躙されて、下半身は絶頂に向かう山本さんの腰の動きにシゴき上げられて、肢体のすべてに快感が走り抜ける。
「んちゅ、ソトミチくん、んんっ! いひょ、イこ、ん、んんンンっ──!!」
「山本さん……あぅぁあっ、あっ、山本さん……! あああっ、あっ、ううっ、あぁぁあああっ!!」
どびゅ、どくっ、どぶっ、どびゅるっ──!!
絶頂する山本さんの膣の収縮に絞られて、俺は一気に精液を吐き出した。
いままで快楽にごまかされて張り切っていた体が、射精が終わると倦怠感に包まれる。
膣内から引き抜かれた肉棒には、パンパンに精液を詰め込まれて逆流寸前のコンドームが付いていた。
山本さんはそれを外して口を結ぶと、近くのゴミ箱に投げて、ぐったりと俺に体重を預けてきた。
体力を消耗しきったわけではないだろうけど、オーガズムという初めての体験に、精神的な疲れもあったみたいだ。
高身長で肉付きのいい山本さんには相応の重さがあって、その感覚が山本さんとセックスをしたのだという実感を俺に与えてくれる。
「はぁ……ふぅ……なんというか……イッたらスッキリするものかと思ってたけど……ぼーっとするね……」
息を乱して、上に重なったまま動かない山本さん。
額に薄っすらと汗が滲んでいて、張り付く髪が色っぽい。
「あのさ、ソトミチくん」
山本さんは俺の頭の後ろに腕を回して、ギュッと抱きつく。
「一瞬だけ、重たい女になってもいい?」
山本さんは小さな声で呟いた。
重たいって、悩みについての話だよな。
「いいよ。聞いてるから」
すでに解決していることなら、俺が身構えることはない。
話す気になってくれたってことは、それだけ山本さんの心に整理がついたってことだ。
「私ね、エッチが好きなの。2人きりでエッチなことをしてると、普段は表に出さない、性格の根っこの部分に触れ合えるでしょ? そういうのが、楽しくて」
それはいままでも感じていたことだ。
山本さんはご奉仕精神で相手の懐に入り込んで、本性を探りながら、好みに合う言葉やプレイを選んでくれる。
「ご飯を作ったり、ハグしたり、膝枕をしたり。その人が望むことを私がして、相手がそれを喜んでくれて。私はただ、その笑顔を見てるだけで幸せだった」
まるで聖女のような台詞。
でも、この山本さんになら、素直に似合うと思える言葉だ。
「でもね、いつもいつも、楽しいのは最初だけだった」
声のトーンが下がり、山本さんの呼吸にもため息が混じる。
「服を着たまま、ソファーでベタベタしたり、お互いの脚を触りあったり、くすぐりをしたり。そうやって、ゆっくり、ゆっくりエッチして、それで相手が我慢できなくなって、出してあげて……。そういう流れの時は、みんな喜んでくれて、私も楽しかった」
──「でも」と山本さんは続ける。
「もっと直接的な、手でするのとか、口でするのとか、求められるようになると、みんな余裕がなくなっていって。エッチもすぐに終わっちゃって、だんだん気まずくなるし、でもみんな、私とエッチするのは気持ちいいから……」
息苦しそうに語る山本さんが、俺を抱きしめる力を強くして、ひと呼吸置いた。
「早くヤらせてって、最後はみんなそう言うんだ。前戯も無しに、酷いときは襲われるみたいに体を求められた。……どうしてだろうね。それまでずっと楽しくエッチしてたのに。すぐにイッちゃうから、本番が上手にできなくて、私にフラれるとでも思ったのかな」
山本さんの瞳が、潤んでいる。
きっと言葉で聞いている以上に、山本さんにとっては辛い過去だったんだろう。
俺は何も言えなくて、それでも、聞いていることは伝えたくて、俺からも山本さんを、そっと抱き寄せた。
「私はセックスできないのなんてどうでもよかったのに。ただ、気持ちよくなってもらって、喜んでもらって。それで、ちょっとだけ褒めてもらえたら、私は幸せだったの」
そっか。
それが俺の勘違いだったんだ。
山本さんの悩みは、たしかにセックスができないことではあった。
でも、それは山本さんが気持ちよくなりたいからじゃなくて。
山本さんは気も利くし、器量もあるし、どんなことをしても相手を喜ばせることができた。
そんな中で、自分の好きなエッチという行為だけは、恋人を喜ばせることができなかった。
それが山本さんにとっては、なによりもツラかったんだ。
「だからね、私の気持ちが落ち着くまでソトミチくんが待ってくれたときは、すごく嬉しかった」
山本さんが緊張で黙り込んだあのとき、立ち止まったのは正解だったんだな。
本当に良かった。
「資料室でお願いした時は、まだトラウマみたいなものがあって、少し焦ってたんだけど。ソトミチくんとエッチしてる間になくなっちゃった」
山本さんと最初にエッチをしたときには、たしかにセックスに対する必死さがまだあった。
それが、知らずのうちに、同じ言葉でも違う意味になっていたらしい。
『悪いイメージを払拭するためにセックスがしたい』から、『エッチが楽しいからセックスもしたい』へと。
「ソトミチくん、ありがとう」
チュッ、と、山本さんの唇が触れたのは、俺の左の頬だった。
「お、おう。どう、いたしまして」
動揺が隠しきれず、せっかく褒めてもらえたのにキマらない。
このあたりはもう、経験を積まないとどうにもならないよな。
これほど明確な好意を感じたのは、人生で初めてかもしれない。
「な、なんというか、自信が持てないだけで山本さんに酷いことをするなんて、俺には考えられないな」
山本さんは、優しくて、献身的で、思いやりのある女性だ。
こんな素敵な人に危害を加えるなんて、まともな精神状況じゃないと思うけど。
「ふふっ。まあ、ソトミチくんは、今の私しか知らないからね」
山本さんも色んな困難を乗り越えて、ここまで魅力的な女性に変わってきたのか。
数年前までは中学生だったわけだし、難しい時期もあったんだろうな。
「それに、ソトミチくんは大事なことを忘れています」
「え? なんか、約束でもしてたっけ?」
俺と山本さんとの約束なんて、これから美優が帰ってくるまでエッチしようってことくらいだと思ってたけど。
「そうじゃなくて。やっぱりソトミチくんってそういう人だ。勘違いとか思い込みとか激しいでしょ」
「それは美優にも言われたけど……」
女の子2人から同じ注意をされるなんて。
よっぽど気をつけた方がいいことなんだろうな。
「なら自分で気付きなさい」
山本さんは指でコツンと俺の額を小突いた。
「はい……」
叱られてしまった。
でも、山本さんはどうしてだかニヤケ顔を表情の奥に隠しているし、人に迷惑をかけるほど悪いことじゃないんだよな。
「それじゃあこの話は終わりっ! ソトミチくん、セックスしよ、セックス」
山本さんは弾み良い声で鼻唄を歌いながら、新品のコンドームを箱から取り出す。
「あの……ついさっき、終わったばかりなんですけど……?」
ボソッと俺がそう溢すと、山本さんは俺の上に跨ったまま指を咥えてモジモジとする。
山本さんは『セックスで気持ちよくなることなんてどうでもいい、相手が喜ぶのが最優先だ』って言っていたはずじゃなかったかな。
「それはそうなのですが……その……もっと欲しくなってしまいました……」
声だけは申し訳なさそうに、山本さんは容赦なくコンドームの包装を破いて、俺の肉棒を指で詰ってきた。
「お相手していただけますでしょうか……」
山本さんは俺ではなく、俺のペニスにそう尋ねた。
視線がどう考えても真下を向いていた。
そして俺のペニスはむくむくと大きくなり、こちらも俺の都合など伺わずに勝手に「イエス」の返事をする。
「うふふ。そういうところ、ステキですよ」
偉そうにふんぞり返るペニスと山本さんがしばらくイチャイチャして、ついには竿にコンドームが被せられる。
山本さんは再び俺のペニスを手で支えると、すっかり出来上がった状態の膣内に、ズブッと根元までペニスを挿入した。
「うぐっ……ああっ……!」
「はうぅあっ……ふぅ……いい…………これ……好き……」
山本さんはしばらく肉棒を膣内で堪能して、気持ちが落ち着いたところで、ようやく俺と顔を合わせた。
「ねえ、ソトミチくん」
山本さんは俺の胸板をイジイジしながら語りかけてくる。
「せっかくだから、美優ちゃんが絶対にしてくれないような、下品なセックスをしてみませんか……?」
控えめな口調から、とんでもない発言が飛び出してきた。
「げ、下品って……?」
「恋人みたいに、相手を思いやるセックスじゃなくて」
トン、と肋の中心に置かれた山本さんの指が、首元にまで迫ってくる。
「お互いの本能をぶつけるだけの、すごいやつ」
頚動脈に手を添えながら「うふっ」と妖しく微笑む山本さん。
その緋色に滲み始めた瞳に、俺は死の運命を垣間見た。