※この作品はR-18です。

俺の妹が最高のオカズだった   作:風見 源一郎

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大切なお話をしてもいいですか

 

 美優は自分の姿を見てオナニーをしている。

 

 そんな馬鹿みたいな結論に至ってしまったこの頭は、否定すればするほどに思考を加速させていた。

 

 おそらくは美優の人生で最大の事故であったであろう、クローゼットの秘密がバレたあの日。

 最初に目撃した美優の部屋の様子からするに、美優は鏡の前でパンツを脱ぎ、ローターを使ってオナニーをするその自分を見ながらオナニーをしていたのだ。

 

 美優が隠したがったアルバムの中にあるのは、遥とエロいことをしている最中の写真。

 それを見て楽しんでいる事実を知られたくなかったが故に、美優はアルバムの存在をなかったことにした。

 

 電子画像ではなく写真で所持していた理由は、きっと美優がロリータファッションを楽しんでいたのと同じだ。

 もちろん、最初に遥が用意したのがアルバムの形だったからというのもあるだろうが、わざわざリビングにアルバムを持ち込んで楽しんでいたことと、わざわざ写真にして楽しんでいたことは、同じ気持ちから生まれた行動なのだと思う。

 

「はぁー……」

 

 こんなことを考えて何になるのか、わからなくても考えてしまう。

 結局は美優の秘密への好奇心は薄まっていないのだ。

 俺がこうして考えを巡らせるほどに、美優には嫌な思いをさせるというのに。

 

(いけない、集中しないと)

 

 俺は机に置かれたテキストに意識を移動した。

 

 来年受験を控えている俺たち高校生の宿題は問題集ばかりだ。

 昨日から始めた宿題の消化作業は、想定していた倍以上の速度で進んでいた。

 

 美優にあれこれ世話を焼いてもらってからというもの、勉強への苦手意識がなくなっていた。

 とりわけ山本さんとエッチをするようになってからは頭の冴えが著しかった。

 

 まさか、童貞を卒業したから頭が良くなったのか?

 俺たちオタクの間じゃ信じられないことだけど。

 なにせ賢者の道から足を踏み外すことになるわけだし、セックスをするのはむしろ力を失う行為とされている。

 

 なんて、久しぶりにオタクらしくアホなことを考えてみたが、どうにも思考に関する何らかのモヤモヤが取り除かれたのは事実のようだった。

 それこそ、俺だって来年は受験生なわけだし、自分で参考書でも探して勉強を進めておこうかな、なんて信じられないことを思ってしまうほどに。

 

 俺は机にかじりついて、短くない時間が経って。

 スマホの通知音に邪魔をされて、すでに二時間も宿題に没頭していたことに気づく。

 

『オフ会の日、決まったぞ』

 

 鈴原からのメッセージだった。

 

 ここまで「お前だけは離すまい」としつこく誘われ続けていたオフ会は、どうやら四日後に開催されるらしい。

 当日の予定は、カラオケに籠もってお喋りとゲームを楽しんだ後、夕食を食べて解散というものだった。

 最高年齢20歳のオフ会だったらそんなもんだろうなと、俺は『了解』の返事を飛ばし、休憩のためにリビングに降りた。

 

 夕食も間近ということもあり、リビングには冷房がついていた。

 冷蔵庫の前に美優が立っていて、何やら考え込んでいる。

 

「どうしたんだ」

 

 俺が声をかけると、美優は数秒の間を開けて俺の存在に気づいた。

 

「食材の余りが偏るから、どうしようかなって」

 

 美優が気にしていたのは、野菜の処理に毎度悩まされるのをどうにかしたいというものだった。

 野菜は必要以上の個数が袋でまとめ売りされていて、これが欲しいという分量ちょうどを調達することが難しい。

 それに加えて、この夏場に何度もスーパーに行くのは億劫なため「なんとなく必要になりそう」という食材を無駄に買い込んでしまうことも多々あり、それらを上手く消化するために料理当番は先のことまで考えて料理を作らなければならないのだ。

 

「いっそ献立表でも作って、それに必要な食材だけ買ってくるか?」

「それいいかもね。献立表はどうやって作ろっか」

 

 美優は冷蔵庫を開けて中をぼーっと眺める。

 パーマをかけた髪がまだ巻き感を残していて、物憂げな目に伸びる長いまつ毛が、美優を色っぽく大人びさせている。

 

「美優は今年受験だろ? 勉強大変だろうし、料理当番はしばらく俺がやってもいいけど」

「うーん。申し出はありがたいけど、前期で東高に行くつもりだし、受験勉強はしないかな」

「マジでうちに来るのか……」

 

 偏差値の高い高校に入れば良い大学に行けるってわけじゃないけど。

 多少はこだわりがあってもいい気がするんだがな。

 

 美優は開けた冷蔵庫を、特に何をいじるわけでもなく閉じる。

 食材の再確認でもしてたんだろうか。

 

「移動で無駄な時間がかかるの嫌だもん。私立はお金が掛かるし拘束時間も長いし」

「にしたって東高でいいのか」

「お兄ちゃんが暇そうにしているのに憧れて入学を決めました」

「面接でそんなこと言ったら即選考外だぞ」

 

 美優の成績ならそれでも歓迎される可能性はあるけど。

 

「西高に行くにしても詰め込みで勉強する必要はないから。献立表は良いアイディアだし、二人で決めよっか」

 

 美優はとぼとぼと居間に歩いて、コピー機にセットされていたA4用紙を手に取った。

 そして、ペンを片手に、ソファー側のテーブルの前で正座をする。

 

 なんとなく、美優が大人しい気がする。

 昔からこんな感じだったっけ。

 最近はクールなときとエモーショナルなときが半々くらいだったから、本来の美優がわからなくなってきた。

 

 二人で献立を考えた後は俺の部屋に移動して、パソコンで必要な食材を整理した。

 美優がジッと俺の作業を凝視してくるから緊張したけど、どうにか手間取らずにまとめられた。

 

「パソコンって便利だね。私も買おうかな」

「いいんじゃないか。今の時代、パソコンを使った経験があったほうが何かと便利だろ。タイピングもできるに越したことはないし」

「それもあるけど。私もゲームしてみたい」

「マジでか!」

 

 興奮のあまりに椅子から飛び上がってしまった。

 いかん落ち着け。

 

「そんなにゲームにハマってたのか。やるっていうなら、店と物は紹介してやれるけど」

「いいの? じゃあお願いしようかな」

「貯金はいくらぐらいあるんだ?」

「そんなにないよ。50万くらい」

 

 50万円がそんなにない額って。

 それは家の外では言っちゃいけないセリフだからな。

 

「そしたら後で予算とやりたいことを教えてくれ。スペックは考えておく」

「ありがと」

 

 美優は平坦に返事をして部屋を出ていった。

 

 美優らしいと言えば美優らしいのだが、兄としてはもうちょっと喜んでくれてもよかったんじゃないかなと儚い期待をしてしまった。

 

 俺はデータを印刷機に飛ばして献立表を作成し、それを冷蔵庫に張り付けた。

 料理のときに何を作るか迷わなくなっていい感じだ。

 

 美優は無言でフライパンを取り出してコンロに置く。

 黙っているというより、気が抜けている感じだが、あんな調子で怪我をしないだろうか。

 

「ナスを炒めるんだろ。切って浸けとくか?」

「ううん。自分でやるからいいよ。ありがとうね」

 

 美優は包丁を持って手際よく食材を捌いていく。

 さすがに体に染み付いた動きは忘れないようだ。

 

 俺はソファーに座って、料理の音だけが響く部屋の空気を堪能する。

 よくよく考えてみれば、美優と喋るようになる前は、ずっとこんな距離感だったんだよな。

 俺が美優でしか抜けなくなって、彼女を作ろうって話が出てからの期間が特殊だっただけなんだ。

 

 濃密に過ぎていったこの二ヶ月半。

 ああしていつもクールにしている美優の、色んなことを知ることができた。

 ときおり感情的になる美優が、まだ明るかった幼少の頃に戻ったみたいで。

 

 楽しい時間だったな。

 美優としては、どうだったんだろう。

 

 俺は美優に何度も助けられて、迷惑を掛けて、怒られて。

 俺はそうやって少しずつまともになってきて、女の子と良好な関係になるという絶対にありえないと思っていたことまでできるようになった。

 ただのコミュ障でキモオタだった俺が、美優のおかげで一人の男になれたんだ。

 

 そんな俺のことを、美優はどう思っていたのかな。

 ミステリアスな言動ばかりで理解はしきれないけど、美優も楽しんでくれていた部分はあったように感じる。

 

 具体的にどの部分がと考えてみると難しいのだが。

 それこそ、三日前に秘密がバレたときの、あのドタバタ騒動。

 殴られたり、泣かれたり、ものすごく嫌な顔をされたり。

 色々あったけど、あのときの美優の方が活き活きしていた気がする。

 

 美優の感情を垣間見ることができたから、というのとは違うんだ。

 同じようにクールなときでも、夏休み前の美優には人らしい生命感があった。

 

 やはり俺が秘密を知ってしまったのが原因なのか。

 美優がロリータコスをして、しかも一人でエッチをしていると俺が知ってしまったからには、落ち着いて趣味に没頭することもできない。

 これまでどうやってあの服を楽しんでいたのかは知らないが、俺がいたら衣装を合わせるのにも気苦労するよな。

 

 なら、俺がいない日を美優に教えてあげるのはどうだろうか。

 もし予定より早く帰ることになった時は、事前に連絡を入れることにする。

 これなら美優も気兼ねなく趣味を楽しめるんじゃないか。

 

 そうともなれば、まずはカレンダーの共有だ。

 俺はペンを持ってキッチン横に移動し、そこに掛けられたカレンダーに今後の予定を書いた。

 主にはバイトとオフ会しかないけど。

 

 こうやって眺めてみると寂しいスケジュールだな。

 去年まではゲームをやっていれば日が過ぎたから気にしなかったけど、実質的に今年が高校最後の夏休みになるわけだし、俺もどこかに出掛けてみようかな。

 

 鈴原や高波なら暇してるだろう。

 高波は部活があるけど、鈴原は最近はアクティブだし、断らないはず。

 

 もしくは、山本さんとか?

 付き合ってくれそうではあるけど、気まずいよな。

 学校で会う分には仲良くできそうだし、山本さんなら友達と男女との関係を割り切って遊んでくれそうではある。

 しかし、美優を選ぶと言った手前、二人で出かけようとは言い出しにくい。

 かと言って別の人を呼んで三人で遊ぶというのは気が進まない。

 

 だとしたら、美優をデートに誘ってみる、とか。

 美優も夏休みの後半は家にいることが多いし、予定は合うはずだ。

 経験的に、やんわり軽いデートをお願いすれば、断われることは無いと思うけど。

 

 せっかく俺が家からいなくなるのに、外出に付き合わせたら可哀想だろうか。

 

「なあにそれ?」

 

 いつの間にか背後まで来ていた美優に、俺は驚きのあまり身を強張らせた。

 

 驚いたのは、声にでは無い。

 美優が俺の腰を掴んで、ピッタリと体をくっつけてきたのだ。

 

「えっ……と……俺が出かける日を書いておけば、美優も過ごしやすいかなって」

 

 カレンダーにはおよその外出時間が書いてある。

 スケジュールアプリに同じものを入力して、俺がそれに従うように習慣付ければ、美優も安心できるはずだ。

 

「ふーん」

 

 美優は俺の腕の横からカレンダーを凝視する。

 それから、ムスっとした不満顔をこちらに向けてきた。

 

「つまりこの時間に一人でエッチをしなさいということですか」

 

 意表を突いた美優の言葉に、俺の頭が一気に混乱する。

 

「い、いや! そういうわけじゃなくて! まあそりゃ、たしかにそういう意味になるといえばなるけど、それはなんというか……!」

 

 そうか、美優にとってはそういう認識になるのか。

 考え足らずだった。

 

「ここのバイトの日とかさ」

 

 美優は指が軽く反るくらいにカレンダーを押す。

 そして、俺のTシャツの中に手を入れて、お腹を撫で回してきた。

 

「お兄ちゃんは、今頃私が家でエッチなことしてるんだろうなぁとか考えながらお仕事するわけですね」

「っ……だから……それは……!」

 

 美優の趣味はロリータ服を愛でること。

 さらには、自分でそれを着て、エッチをすること。

 

 俺が美優の趣味の一部分、つまり可愛い服を愛でていることまでしか知らなかったとしても、この状況は変わらなかった。

 それが嫌で、美優は自分の趣味に関しては徹底的に情報を隠したんだ。

 遥から俺を遠ざけたのも、要はそういうことなんだよな。

 

「ふん」

 

 美優は俺から離れてソファーに移動した。

 俺は慌てて美優を追いかけて、近すぎも遠すぎもしない位置に並んで腰をかける。

 

「ごめんな、悪気はなかったんだ。別に美優にロリコスして欲しいとか、エッチなことをしてて欲しいとか、そういう意図はなくて。その、なんというか……」

 

 この考えをどうまとめればいいだろう。

 言いたいことはわかってるのに、誤解なく美優に伝える方法がわからない。

 

 それから俺は、言葉に詰まって。

 

 まごついているところに、クスッと鼻で息を抜くような音が聞こえた。

 

「冗談だよ」

 

 俺は呆気にとられて美優の方を見る。

 そこには冷たさのない、女の子らしい温度を持った顔があった。

 

「私が大人しくしてるから、気を遣ってくれたんでしょ」

 

 美優は微妙な距離のあった俺との間を詰めてきて、ピトッと横に密着してくる。

 

「ありがと、お兄ちゃん」

 

 えも言われぬむず痒さに、俺は思わず唇をギュッと結んだ。

 

 さきほどまでの冷淡さが嘘だったかのような声色の良さ。

 それとも、今ので美優を元気づけられたのかな。

 

「俺が美優の趣味を知ってることはさ、やっぱり美優には負担になってるのかな。俺としては全力で応援したいんだけど」

 

 できるならこの記憶を消してやりたいが、それは現実的ではない。

 ならいっそのこと、俺も美優の趣味を手伝う道もありなのではないか。

 

 そんな提案に対し、美優はまたからかうような笑みを俺に向ける。

 

「お兄ちゃんが見たいだけじゃないの?」

 

 そう言われると、なんとも返答に困る。

 

「見たいのは、間違いないけど」

 

 美優は可愛い服を着ている自分が好きで、昔の性格を考えれば、そんな自分を見られるのも好きなはずだ。

 そこに趣味を続けてもらうための妥協案があるはず。

 なにせ小さい頃は、美優は可愛い服を作るたびに俺に見せびらかしてきたし。

 俺は見惚れるばかりで何も言ってやれなかったんだけど。

 

「……ねぇ、お兄ちゃん」

 

 美優が俺の腕にしがみ付いてくる。

 リビングには家庭用の広い空間があって、そんな中で不要に密着されてしまうと、変な妄想をしてしまうのだが。

 

 美優はこんなに積極的になって。

 

 俺に、いったい何を……。

 

「ご飯冷めちゃう」

「えっ、あ、ああ! ご飯だな! 冷めたらもったいない。すぐに食べよう」

 

 俺は慌ててシンク横に並べてあったお皿をテーブルに移動させた。

 料理してた美優がキッチンから離れたんだから、ご飯を作り終えたなんてすぐにわかることなのに。

 今夜はナスと肉の炒め物だし、そもそも時間のかかる料理じゃなかった。

 

「いただきます」

 

 美優と卓を挟んでの食事。

 もう10年近く続いてきた当たり前の光景。

 

 いつまで当たり前でいられるんだろうか。

 俺が美優の秘密を知ってしまったからには、どうあってもこれからの付き合い方は変わっていく。

 

 それでも、こうして二人でいる時間だけは、失いたくない。

 

「それで、さっきの話だけど……」

 

 失わないために努力する権利が、俺にもあると信じて。

 

「俺が邪魔にならない方法はないかな?」

 

 三日前の事故について、整理をつけておきたい。

 

「その話に関して、まずお兄ちゃんに言っておきたいことがあるんだけど」

 

 向かいの美優が箸を止めて、俺の顔を見る。

 

「人間の思考がいつも感情と同じベクトルとは限らないわけですよ」

 

 いつ以来かの美優の小難しい講釈だった。

 思考と感情の向きが違うっていうのは、たとえばダイエット中だからご飯を食べたくないけど食欲はあるみたいなものかな。

 

 美優はロリータ姿を見られたとき、衝動的に俺を拒絶した。

 でも、気持ちの上では、そうでも無かったということか。

 

 ダメだ。

 さっぱりわからん。

 

「そもそも俺は、邪魔ではなかった……とか?」

 

 発言の意味は不明だが、流れ的にそういうことだよな。

 美優もうんうんと頷いてくれている。

 

「お兄ちゃんを邪魔だと思ったことは無いよ。でも、見られるのが嫌じゃないかと聞かれると、嫌じゃないこともないわけで」

 

 そういう考え方なら、美優のこれまでの天邪鬼な態度とも一致する、気がする。

 

 いや全然わからないけど。

 

「だから、お兄ちゃんが私の趣味を認めてくれたことは、素直に嬉しいよ? ありがとうって、心の中でいっぱい言ってる。でも、それでもね? 恥ずかしさとか、こっそりしてたい気持ちはなくならないわけですよ」

 

 ふむふむ。

 なるほど。

 

「どうあっても邪魔になってる気が……」

 

 俺に見られるのが恥ずかしくて、俺に知られずこっそりしていたかったのなら、要はその俺がいなければ済むだけの話だろ。

 そうすれば何不自由なく趣味を続けられたのに。

 

「そのうちわかるよ」

 

 美優は優しい声でそれだけ言って、またご飯を黙々と食べ進めていく。

 今の俺にはまだ理解できないということか。

 

 なんにしても、邪魔になっていないのなら喜ばしいことだ。

 それだと元気がなかった理由がつかないけど。

 そんなものはもうどうでもいい。

 

「美優の機嫌を悪くしてないなら、俺は構わないよ」

「機嫌は良好ですよ。心配かけてごめんね」

 

 美優との会話が一区切りして、改めて眺める食卓の雰囲気は和やかだった。

 美優の元気が無さそうに見えたのは、俺の気持ちの問題だったのかな。

 

 時間の大半が静寂になるような言葉数だけど、居心地は悪くない。

 こうして緊張せずに美優と居られるなんて、2ヶ月前に比べたら大した進歩だ。

 元が低すぎたというのもあるけど、他人は他人。

 俺にとってはまともな男への成長が実感できる貴重な証拠なんだ。

 

「食器は俺が洗っておこうか。献立表はできたけど、買い出しのタイミングも決めないといけないし。美優はそっちを考えておいてくれるか? 俺の予定はカレンダーに書いた通りだから、それを元に候補を出してくれればいいよ」

「そう? なら、洗い物はお願いしようかな」

 

 二人ともご飯を食べ終わって、ごちそうさまをして、俺は食器をシンクに運んでスポンジに水と洗剤を溶かす。

 

 俺が個人的に思う一番の変化は、相手のための提案をできるようになったことだ。

 一般レベルのコミュニケーション能力を持つ人には馬鹿にされるかもしれないが、俺のように一度コミュ障になってしまうと、気を利かせて何かをすることすら億劫になってしまうのだ。

 

 頭の中では「こうしておこう」とか「これを教えてあげようと」とか考えてはいる。

 だから、決してコミュ障は、気遣いができないわけではない。

 ただ単に、こんな自分が人のために行動するなんて、また「下心があるのか」と勘ぐられたり「お前にやられなくても」と拒絶されたりしそうで、怖くて行動できなくなるだけだ。

 

 最近では、その恐怖感が全く無くなった。

 美優に外見を良くしてもらったおかげか、山本さんに内面を褒めてもらったおかげか、あるいはその両方か。

 所詮はいつもやっている家事の延長だけど、俺にはどうせ飛び抜けた能力は無いわけだし、こうした日々の細かいところで恩返しをしていけたらと思う。

 

 なんて考え事に耽っていると、背後から柔らかいものがぶつかる感触があった。

 

「み、美優? なにやってんだ……?」

 

 カレンダーを眺めていたときよりも密着した状態だった。

 美優が俺の背中にぴったりと張り付いて、顔を埋めるようにして抱きしめてきている。

 

「んー。ちょっとした確認」

 

 美優はまたわけのわからないことを言って、俺の背後で深呼吸を繰り返す。

 これは何のための行動で、俺はどうして美優に抱きつかれてるのか、わからないがもうなんかとても気分が良いのでどうでもいい。

 

 俺が食器を洗い終わった後も、美優は確認とやらを続けていた。

 匂いを嗅いでいるのかな。

 俺は動かない方がいいだろうか。

 

「お兄ちゃんはさ」

 

 美優は埋めていた顔を離して、代わりに俺を抱きしめる力を強くしてきた。

 

「どうして奏さんと付き合わなかったの」

 

 あまりにも予想外の質問だった。

 

 たしかに、山本さんとは悪くない雰囲気だったし、最後は俺を男として認めてくれていたような発言もあった。

 にもかかわらず、俺は山本さんともっと繋がっていようとは考えなかった。

 

 この質問、どう答えるべきかな。

 ひとことで言えば、美優が好きだからではある。

 とはいえ相手は血の繋がった実の妹なわけだし、一人の女として愛していると言えるだけの覚悟もまだ無い。

 あんまり真面目に考えてこなかったけど、俺が美優を選ぶってそういうことだよな。

 

「どうしてって聞かれると、正直なところ俺にもわからない。山本さんとはいい感じだったし、人としては間違いなく好きなんだけど。単に付き合おうって考えが浮かばなかったんだよ」

 

 俺にとっても疑問だった。

 あれだけ魅力的な女性と一週間もエッチをして、なぜ情が沸かなかったのか。

 だからその答えは、別に選ぶべき人がいたからだと、俺は思うわけで。

 それは要するに、美優が好きだからってことに他ならないんじゃないかな。

 

「甲斐性がないのかね」

 

 この状況でしれっと暴言を吐くんじゃないよ。

 

「まともな恋愛経験が無くて悪かったな」

 

 佐知子も美優にくっつけてもらっただけだったし。

 その前は、中学のときに告白されて、俺が付き合っていたと思っていた女子から酷いことをされたぐらいのもの。

 青春なんて全く似合わない人生だった。

 

「むー。不正解ですよお兄ちゃん。そんな返事、ゲームならもう二度とエッチできなくなっちゃうよ」

「えっなにそれ」

「ほらほら。もっとちゃんと妹を見てください」

 

 どういうことでしょうか。

 

「お兄ちゃんはこの状況に何の疑問も抱かないの?」

 

 美優は俺のお腹に回した腕を強く締め上げてくる。

 

 いやぁ大いに疑問は抱いているけど。

 それこそ思考放棄するくらいにわけがわかりません。

 

「えーっと……だから、まあ、なんだ」

 

 これがゲームだとしたら、ってことは、つまり。

 そういう、ことなのか。

 

「山本さんと付き合わなかったのは、たぶん、美優を選んだからで。それはまあ、要するに、美優のことが、好きだったからではないでしょうか」

 

 口にしてみると、どうにももどかしいものだ。

 

「はあ、そうですか」

 

 くっそう。

 なんだその反応は。

 こっちは持てる勇気を振り絞って答えたんだぞ。

 

「正解は?」

「お兄ちゃんの甲斐性なしが治れば何でも正解です」

「それはどうも。確認したかったのもそれなのか」

「違うけど。終わったからもういいよ」

 

 美優は俺から離れて二階へと上がっていった。

 

 こうやって振り回される感覚、なんだか久しぶりだな。

 秘密を知ったら美優のことが少しはわかるようになるかと思ったけど、何を考えているのかまだまだ見当もつかない。

 

 俺は食器を水切り棚に置いて、さて次は風呂でも入れようかとキッチンを出ようとすると、カレンダーにいつの間にか書かれていた星の印が目についた。

 その横には名前が添えられている。

 この日が買い出しってことか。

 

 俺には書けない形の整った星のマーク。

 その丸みや傾きに、どこか美優らしい可愛らしさを感じる。

 

 ああ、思い出してきた。

 山本さんとの一週間と、クローゼットのことがあって、心の奥にしまわれていたもの。

 美優のことを愛おしいと思うこの気持ちは、たしかにここにあるんだ。

 

「だから美優を選んだんだな」

 

 俺は自分に独り言を言って、それから風呂を作って、アプリで暇つぶしをして、湯船に浸かることにした。

 

「はぁー」

 

 身も心もリラックスしている。

 美優のことで抱えていた不安がなくなって、心が開放された。

 俺は美優に邪魔だと思われていないし、美優の機嫌も悪くない。

 むしろキッチンでのベタベタを考えると、美優にとって俺は好印象な部類なんじゃないか。

 

 また一緒にお風呂に入ってくれないかな。

 今日だって、もし誘っていたら入ってくれたのかもしれない。

 

 美優の裸がまた見たい。

 あのおっぱいを生で。

 できれば、エッチなことも……。

 

 っと、いけないいけない。

 下半身が疼いてきた。

 思えば美優のことを心配するあまりにオナニーまで忘れていたからな。

 そろそろガス抜きしないと、ダメな兄に戻ってしまう。

 

 俺が風呂から上がって美優に声をかけると、美優が入れ替わりで風呂に入った。

 

 ここから数十分は誰にも邪魔されずにオナニーができる。

 美優が戻ってくるまでに済ませてしまおう。

 今日を含めてもう四日も出してないし、そろそろ限界だ。

 

 パジャマを着る前にオナニーを開始する。

 ギンギンにイキり立ったモノが熱い。

 一人きりで射精するのは本当に久しぶりだ。

 

 そういえば、美優とエッチをするようになってからかなり精液が増えたんだよな。

 四日も溜めてからの射精をティッシュで上手く受け止められるだろうか。

 

 ティッシュに出すのなんて、それこそ2ヶ月ぶりくらいだっけ。

 どんだけ贅沢なエロ生活をしてたんだ俺は。

 

 しかし、そうか、そんなに出るのか。

 美優の口に出したら、たくさん飲ませてあげられるな。

 

 以前に焦らしプレイをされたときは、結局は由佳とのセックスで出してしまった。

 だからこんなに溜まった精液を飲ませるのは、きっと初めてになる。

 美優とするのも久しぶりだし、きっとドロドロの精液が口いっぱいになるまで出るんだろう。

 それを美優は、どんな顔で飲むのか。

 

「って! アホ! 何考えてんだ俺は!!」

 

 つい数日前に良いお兄ちゃんになるんだって決めたばかりだろ。

 それをこんな、性欲が溜まったからってすぐ無かったことにするなんて。

 

 男として、それだけは認められない。

 約束は守らないと。

 自分との、約束ぐらいは。

 

 せっかくまともな男になったんだ。

 これ以上、美優を失望させられない。

 

 恩返しだってしなきゃいけないのに。

 目下の問題は美優の趣味をどう続けさせてあげるかだ。

 美優のことに関しては、それ以外を考えるべきじゃない。

 

 美優が心置きなくロリコスを楽しめて、その姿のまま思う存分にオナニーができるような環境を作る。

 それが俺の使命。

 

 これだけ聞くと、なんだか美優の方が変態っぽく感じてしまうけど。

 人の趣味なんて色々あって然るべきだし、ましてや俺に変だなんて思う権利なんてない。

 なにせ俺は、妹に彼女を作ってもらって、童貞を卒業させてもらって、その前にも後にも目の前でオナニーをするとか妹の友人をレイプするとか、もう一生自分を真人間だと誇れないことまでしているんだ。

 

 男として多少まともになったぐらいで、あの気が利いて頭も良くてなにより超可愛い美優を変態だなんて言う権利は、俺には無いんだ。

 

(……しかし、なんだろう)

 

 現状だけを見れば、兄である俺が妹の変態行為を手伝っているようにしか思えないんじゃないか。

 

 だって、事実、そうだろう。

 美優にはロリータ服を着てオナニーをする趣味があって、しかも俺の見立てでは、美優はそんな行為に耽っている自分をオカズにしている。

 俺はそのオナニーをさせてあげるためにあれやこれやと考えて、自分の分は自分で処理……。

 

 ああいや、これからする俺のオナニーは妹をオカズにするものだ。

 決して普通なんかではない。

 

 でもなんでこんなに美優の特異性が目立つんだろう。

 ギャップの問題なのか?

 いや、そもそも美優が精液を飲んでるのも、友人をレイプさせたのも、お風呂でのあれこれも、全て美優から始めたことだろ。

 ってことは、よくよく考えてみれば、最初から異常だったのは美優の方なんじゃないか。

 

 それが、俺がまともになってきたから、美優だけが……。

 

「ああ、そうか! そういうことか!!」

 

 俺はまともになんかなっちゃいけなかったんだ。

 

 俺が美優とのエッチを望まなくなったら、美優だけに変態性を押し付けることになる。

 それこそ酷い扱いじゃないか。

 恩返しなんてのとは真逆の道だ。

 

 だから美優も最近は元気がなかったんだ。

 俺がまともになってきてエッチもスキンシップもしなくなったから、美優はその環境の変化に戸惑っていたに違いない。

 

 そうかそういうことだったのか。

 だったらこんなところでオナニーなんてしてる場合じゃない。

 なにより、俺は美優とエッチなことがしたいんだ。

 

 しかし、だが、いざこうしてプラトニックな関係になってしまうと、今度は唐突なエッチのお願いに美優が困惑しないだろうか。

 それこそ俺が同情してエッチを持ちかけているようだし、美優ならその機微を感じ取ってしまうだろう。

 実態はエッチがしたいだけなんだが、この思考の流れを、美優が全く感知しないはずがない。

 

 何か手があるはずだ。

 考えろ、今の俺ならいける。

 このところ頭は冴えまくってるんだ。

 ここで使えなきゃなんのための脳みそだ。

 

「お兄ちゃん? なんか叫んでた?」

 

 ドア越しに美優の声が聞こえてきた。

 どうやらもう風呂は上がってしまったらしい。

 

「あれは、あれだ。スマホを落としそうになって、ついな。うるさくして悪い」

 

 美優が戻ってきた。

 ドア越しだったけど、美優の声って意識して聞くとめちゃくちゃエロいよな。

 俺はあの声に何度も命令されて射精してきたんだ。

 この体が美優なしでは達せなくなってしまった理由もよくわかる。

 

「……さて、行くか」

 

 美優が歯を磨いてしまったら、もう精液は飲んでもらえない。

 こんな勃起状態で翌朝まで我慢なんて御免だ。

 

 着替えが終わったであろうこの瞬間。

 お風呂前に今日のタスクは終了しているはずだし、さて風呂上がりの一息をつこうと部屋でリラックスをしている、このタイミングがベスト。

 

 流れはもう考えてある。

 美優に絶対に精液を飲んでもらうための必勝法を思いついた。

 いや、思い出したと言うべきか。

 

 そうだ。

 まだ“アレ”を使っていないのだから、この一回に限り必ずそれは成功する。

 

 美優にフェラをしてもらうという、俺のかねてよりの望みは。

 

「美優、ちょっといいか」

 

 俺は美優の部屋のドアをノックして返事を伺う。

 

「どうしたの?」

 

 美優は自分の体分くらいまでドアを開けて俺を迎えた。

 

 予想通りパジャマ姿でゆったりな雰囲気。

 風呂上がりだとパーマのクセが強まってちょっぴり別人みたいだ。

 最初に俺と一緒に寝たときと同じパジャマを着ていて、重たい生地が下乳から沿うように凹んでいい感じに乳袋が作られている。

 

「なんと言うかだな。ほら、まだお詫びをしてもらってないなって」

 

 三日前に美優が俺を思い切り殴って昏睡させたことについて、誠心誠意お詫びをすると誓ってもらったはずだが、クローゼットの流れでうやむやになっていた。

 

 美優は俺の言葉を聞くと、その意味を理解して、ほんのり頬を赤らめる。

 

 そして、何も言わずにドアをパタンと閉めた。

 

「お、おーい。美優」

 

 ちょっと予想外の反応だったが、まさかこのまま無かったことにはすまい。

 そんな俺の見立ては正しかったようで、しばらくドアの前で待っていると、美優がまたドアを開けてくれた。

 

 とても嫌そうな顔をしている。

 

 そして、俺の膨らんだ股間を一瞥してからの、睨みつけ。

 

 この一連の流れに、安堵さえしている自分がいた。

 

「入って」

 

 美優は仏頂面で俺を部屋に招き入れた。

 どうやらお詫びをしなければという使命感はあるらしい。

 

 風呂上がりなのでベッドに腰掛けることを許してもらえた。

 美優はその俺の前に正座している。

 

「なんだかさっきまでの二時間を台無しにされた感じがするのですが」

 

 美優の言うことは否定する余地がないほど尤もだった。

 二時間どころか、この三日間で美優の中でも積み上げられていたであろう『まともな兄』としての像を、俺はこの一瞬で粉々にしたのだ。

 

「俺にも色々と思うところはあったんだが。さすがに四日分も溜まるとな」

 

 美優と兄妹らしくイチャイチャするのは幸せだった。

 だが、俺と美優のあるべき関係は、そうじゃないんだ。

 美優とエッチしてこそ、俺と美優は兄妹でいられるというか、なんかもうめちゃくちゃだけどそういう感じなんだ。

 

 とにかく、エッチがしたい。 

 

「聞かずともわかることですけど。お兄ちゃんの精液を私が出して、それを飲めばお詫びになるという認識でよいですね」

 

 美優はえらく事務的な対応だった。

 落差を考えればそうもなるか。

 

「そうだな。美優とはもう十日もしてないし。そろそろ美優としたくて」

 

 山本さんには一週間かけて何度も射精をさせてもらったけど、それでも美優に出してもらいたい欲求が抑えられるわけではない。

 

 美優とのエッチだけは特別なんだ。

 他の人で代わりにはならない。

 

「ずっと奏さんとしてればよかったのに」

 

 美優はぶつくさと言いながら俺のズボンに手を掛けた。

 どうやら脱がしてくれるようなので、俺は美優に合わせて腰を浮かせる。

 パンツまで一気に下ろされて、そこから反り立った肉棒が飛び出した。

 

「なんか、久しぶりに見ると、本当に気持ち悪い形してるよね」

 

 美優は俺の肉棒をツンツンと突いた。

 そして、鈴口に触れた指先から糸を引いて、美優が顔に嫌悪感を滲ませる。

 

「すっごい精液のニオイがするんだけど……」

 

 風呂上がりにもかかわらず、美優とのエッチを目前にした俺のペニスからは、すでに射精を終えた直後のような雄臭が漂っていた。

 

「悪い。これは、俺としても想定外で」

 

 風呂上がりなら美優も咥えやすいと思ったけど、これじゃあ陰毛に染み込んだ石鹸の匂いも逆効果かな。

 

「はあ、もう」

 

 美優は俺の肉棒を軽く握って、シゴくでもなく上下させる。

 触るのにはもう抵抗がなくなったんだな。

 美優の肌の温度を感じるだけで、かなりの快感がある。

 

「ここまであえて聞かずにいたのですが」

 

 美優は手を止めず、俯いたまま目も合わせない。

 

「もしかして、お詫びというのは、まさかとは思うのですが、その、お口ですることを期待されているのでしょうか」

 

 まさかもなにも、フェラ以外に考えてなかったんだが。

 

「フェラならいいって、言わなかったっけ……?」

「あれはアルバムの存在が知られていなかったからクローゼットを開ける代替案を出しただけで。今となってはフェラまでする意味はないのですが」

 

 なるほど、たしかにその通りだ。

 秘密が知れてしまったからには、美優がそこまで体を犠牲にする必要はない。

 

 だが、それでも、フェラはかねてよりの俺の望みだった。

 だからなんとしてでも口でしてもらいたい。

 そして、その美優の口内に、四日分溜め込んだこの精液を思い切り射精したい。

 

「できないなら無理しなくてもいいよ。殴られたのは俺にも落ち度があったからだと思うし。お詫びとは言っても美優の気持ち次第だから、そこは任せるよ」

 

 こんなことを言っておいてエロいことをしてもらいたい気持ち満々だが。

 あとは美優の責任感の強さに賭けるしかない。

 

「いやあ、まあ、言ったからにはしますけど。お兄ちゃん、さっき四日分も溜まってるって言ったよね」

「言ったな」

「うちに帰ってきてから、一度も一人でしてないの?」

「してない。だから、出るときは結構な量になっちゃうと思うけど」

「ううっ……それはとても……困るのですが……」

 

 美優は俺の肉棒を両手の指で掴んでモジモジする。

 たしかに、今では普通に射精をしても、昔に比べたら考えられないぐらいの量がドロドロと出るけど。

 それが四日分になったからって、何が問題になるというのか。

 

 美優は精液も飲めるし、胸も舐められるし、夢精したときには股の付け根のところまで精液を舐め取ってくれた。

 最初からそのあたりも含めて全部ダメって子なら、フェラができないのも当然だとは思うけど。

 

「美優がフェラをそこまで嫌がる理由って、何かあるのか?」

 

 これまでしてきたエッチだってフェラをするのとそう変わりないものだった。

 どうして美優はフェラだけを特別に嫌がるのか、その訳が知りたい。

 

「だっておしっこ出るところだし。見た目もグロいし。手でするのならまだ医療行為って思い込めるけど、フェラはどう考えても性欲でするものでしょ」

 

 気持ちはわかる。

 言いたいこともわかる。

 しかしなんというか、詭弁だよな。

 

 まさか精液を飲むのも医療行為の一環なんだろうか。

 そんな病院があるなら入院してみたい。

 

「何よりお兄ちゃんのだし。お兄ちゃんこそ妹にフェラさせて何も思わないの?」

「それは……」

 

 思わないわけじゃない。

 実の妹にペニスを咥えさせるという背徳感に、興奮を覚えているのは間違いないんだ。

 でも、大事なのはそこじゃなくて。

 

「妹だからっていうより、美優だからしてもらいたいんだよ」

 

 もしも俺の妹が、美優ほど魅力の無い子だったら。

 あるいは魅力はあっても美優とは全然違うタイプだったら。

 俺はここまで強くフェラをしてもらいたいとは思わなかっただろう。

 

「それがたまたま妹だっただけというか。相手が妹って、そんなに重要かな」

「重要に決まっています。どこの世界に兄のモノを咥える妹がいるんですか」

 

 ゲームの世界ではたくさん見てきました、なんて言ったら美優は怒るかな。

 

「そしたら、今回は兄に無理やりさせられたってことで」

「ぜひそうさせていただきます」

 

 美優はこのやり取りで意を決してくれたようだ。

 

「じゃあ、します」

 

 美優は何度も深呼吸を繰り返して、俺のペニスに顔を近づけていく。

 

 亀頭の近くで、口が開いて、美優の息が敏感な部位に吹きかけられる。

 その吐息の蒸気だけで、軽くイってしまいそうだった。

 

 美優は舌を出したり、引っ込めたり、先に唇を近づけたり、どうやってフェラを始めればいいのか迷っている。

 定められた目標点は、やはり肉棒の先端。

 美優は両手で丁寧に根元を掴んで、鈴口から垂れる先走り汁をしかめ面で見つめている。

 

 そうして近づいた口は、まるで嫌いな野菜を食べようとする子供のように開閉して、ためらいながらも、その瑞々しい肉の感触が、確かに俺の亀頭の神経を刺激した。

 

「うっ……あっ……!」

 

 ついに、あれだけ拒まれていた美優の口が、俺のペニスに触れた。

 美優は鈴口へのキスから始めたフェラを、カリ首が包み込まれるまで咥えこんで、そこで動きを止める。

 

「んちゅ……んっ……」

 

 美優の舌がカリ裏を撫でて、爆発的に増していく射精欲に、睾丸が煮えたぎってくる。

 俺のペニスの一部が美優の唇に隠されて見えなくなっているこの光景が、最高に興奮する。

 

「んんー……! ちゅぶっ……はぁ……」

 

 しかし、まだ亀頭までしか咥えてもらっていないうちに、美優は口を離してしまった。

 

「うっ……」

 

 美優は両手で口を押さえて苦い顔をする。

 美優としても、本当に俺のモノを咥えてしまったという事実はショッキングなのだろう。

 

「うぅー」

 

 しかし、その落ち込みっぷりは俺の予想以上のもので。

 

「ああああぁぁ……」

 

 美優は俺の膝に倒れ込んできて、そのまま動かなくなった。

 

「お、おい。美優、大丈夫か」

 

 ずっとフェラを嫌がってきた美優だったけど、まさかここまでとは。

 色々考えた末にお願いしたこととはいえ、もうちょっと段階を踏んでからしてもらうべきだっただろうか。

 

 それから、美優が俺の膝に倒れたままため息を繰り返して、俺はその頭をなんとなく撫でて。

 数分したところで、美優がムクッと体を起こした。

 

「やっぱりこうなるのか……」

 

 美優は意味深な発言をして、口を一文字に結ぶ。

 

「できそうか?」

「たぶん」

 

 美優は曖昧な返事をして、また俺の肉棒を掴む。

 しかし、それから俺のペニスを咥えるまでにもう躊躇いはなくなっていた。

 

「ああっ……美優っ……!」

 

 美優が俺のペニスを舐めている。

 口に入るギリギリまでを咥えこんで、舌で裏筋を刺激している。

 

「ん……んくっ……ちゅぶっ……ふ……んっ……」

 

 美優は頭を動かすよりも舐めることを優先していた。

 上目で俺と目を合わせたり逸したりして、恥ずかしがる顔がまた愛らしい。

 

 ついに美優がフェラをしてくれたんだ。

 無表情ではなく羞恥や悔しさが表情に出ているからこそ、美優は想像していたよりもずっと美味しそうに俺のペニスを咥えてくれているように見えて。もっと舐めさせてあげたい気持ちが湧いてくるのに、それを追い越すほどの速さで射精欲が迫ってくる。

 

「うあっ……はぁ……美優……すごい気持ちいい……! やばい、出、出そう……!」

 

 溜め込んでいた精液を、美優が咥えたままの口に吐き出したい。

 美優に初めてフェラをしてもらったこの時を思い出に残すように。

 この一回で、ありったけの精液を美優の口にぶちまけたい。

 

「んっ……! ちゅぱっ……はぁ……お兄ちゃん、ごめん」

 

 しかし、美優はそんなタイミングで口を離してしまった。

 慣れないフェラが息苦しかったのか、美優も息切れが酷かった。

 

「はぁ……はぁ……うぅぅ……やっぱり……ちょっとダメかも……」

「み、美優。ごめんな、でも、もうすぐだから。あと少ししてくれたら出すから」

 

 このまま射精せずに終わりなんて絶対にしたくない。

 たとえ美優が動けなくても、せめて口の中に出すくらいは。

 

「うん……。我慢、しないでね?」

「しない。すぐ出すから」

「わかった」

 

 美優は息を整えてから、再び俺の肉棒を咥える。

 小柄な美優の体のパーツが、俺を全体的に大きく見せて、小さい子にエロいことをさせてる感じもまたたまらなく興奮する。

 

「んくっ……ちゅぶっ……んん……。んー……ちゅぱっ……ちゅっ……ちゅっ……」

 

 美優の動きは控えめで、その不慣れな感じも俺の性欲を煽ってくる。

 さすがに佐知子に指導していた知識だけはあって、唾液の含み方や刺激するポイントはきちんと押さえてくれていた。

 そうした想像上の技術を使って一生懸命にペニスを咥える美優が愛おしい。

 

「美優……ほんといい……! もう、出る……!」

 

 俺の肉棒がピクピクと反応して、射精の発射の準備が整った。

 

 その、直後のこと。

 

「ぷはっ……うぅ……! はぁ……はぁ……うぅぅ……ごめん……」

「み、美優……。いいけど、あんまり寸止めされると、出るときが……」

「わかってるけど……」

 

 美優としてもすんなり出してしまったほうが楽なはずなのに。

 何度もフェラを中断して、キュロットパンツをギュッと押さえ込んで、美優は苦しそうというよりもどかしそうに体を縮こまらせていた。

 

「美優? どう、したんだ……?」

 

 美優の火照りと息切れが普通ではない。

 いくらなんでもフェラをしているだけでこんな風にはならないはずだ。

 

 美優は俺の問いには答えず、呼吸が落ち着いてからもフェラを再開しないで体をクネクネさせている。

 こうしてるときの美優は、無理やり聞き出さない方がいいのを俺は経験的にわかっていて。

 

 しばらく待っていると、美優が俺の服をちょんちょんと引っ張ってきた。

 どうやら「お話があります」の合図らしい。

 

 俺が身を屈めて、顔を近づける。

 

 すると美優が頬を紅潮させながら、耳打ちをしてきた。

 

「イッちゃいそう」

 

 言われた直後は、俺はその意味がわからなくて。

 

 考えてみると、とんでもないことを言われたことに気づいた。

 

「それは、その。フェラを、してて。美優が、イキそう……ってことか?」

 

 俺がそう尋ねると、美優は顔を伏せたまま、わずかにわかるくらいに顔を縦に振った。

 

 まさか、そんなことがあるのだろうか。

 フェラをしているだけで、女の子がイッてしまうなんて。

 美優も一緒にオナニーをしているならまだしも、その手で自分の秘部を刺激しているような様子はないし。

 いやそもそも、自分の意思でイキそうになってるなら、それを止めればいいだけ。

 寸止めをするほど射精の勢いが増してしまうことを知っていながら、それでも美優がフェラを続けられないのは、自分ではどうにもならないってことだよな。

 

「そんなに、興奮するのか……?」

 

 俺のペニスを咥えているという、その事実だけに性的興奮が高まって、美優は達してしまいそうになっている。

 そうでなければ、美優がフェラを中断する意味はないわけだが。

 

「……うん」

 

 まさかの肯定の返事だった。

 

「だから、あの。ちゃんと受け止められなくて、溢しちゃう」

 

 俺の射精と同時に美優がイッたら、その衝撃に耐えられなくて美優は精液を吐き出してしまう。

 そんな状態の美優、ぜひとも見てみたいが、美優としてはベッドや服が汚れる可能性があるわけだし、なによりそんな姿は見られたくないよな。

 

「どうしたらいいかな」

 

 最も優しい選択肢は、フェラを中断すること。

 でも、これだけは無い。

 

 もう終わりにしようと切り出すのは、美優のエッチそのものを否定することになる。

 今後一切のエッチをやめるならまだしも、これからの性生活にもうフェラは要らないなんて、そんなことを言っていいはずがない。

 

「ちょっと、手を使っても、いいかな」

 

 そうして美優から提示された妥協案。

 これに乗るのが、美優との関係性を良好に保つためのベストな選択。

 

「いいよ。ありがとう」

「ごめんね。次は頑張るから」

 

 美優ははむっと亀頭にだけ口を被せて、竿は手を使って刺激してくれた。

 

「はぁ……美優……いい……!」

 

 基本的な刺激は手によるものだけ。

 しかし、口に含んでいる亀頭の方も、きちんと舌を使って舐めてくれている。

 口を動かすと美優の性感が刺激されてしまうらしく、顔は動かしてもらえないし、俺が動いて口に入れることもできない。

 

 でも。

 

「ふっ……ちゅっ……ちゅぷっ……」

 

 美優が俺のペニスを咥えて射精を待ってくれている、その事実が俺にとっては何よりも重要だった。

 

「あああっ……もう、出る……! 口に出すから、全部、飲んで……!」

「ん……んっ……!」

 

 どびゅっ、びゅーっ、びゅっ、どぴゅっ、びゅるるっ、どくん、どびゅっ、びゅっ──!!

 

 俺のペニスから美優の口の中に直接精液が飛び出して、射精のたびにビクビクと膨らむ竿が美優の唇を押し広げていた。

 いままでと違って精液が出る瞬間は見えなかったが、美優の口の中で今まさに俺の精液が放出されているのかと思うと、その事実が興奮材料になって、射精している最中にもかかわらず再び射精欲が高まっていく。

 

 俺は射精が終わってから、その数秒後にまたすぐ美優の口に射精をした。

 

「んんんっ……んんー……!!」

 

 美優はもうやめてと言いたげな顔をして、それでもどうにか口から漏れないように、精液を飲み込みながら射精を受け止めてくれている。

 その恍惚とした表情、喉の動き一つ一つに、俺の性本能が刺激されて。

 

「美優……ごめん……まだ……出る……ッ!」

 

 溜め込んだ精液が完全に空になるまで、俺は延々と射精をし続けた。

 

「うっ……うぅ……」

 

 さすがの美優も泣きそうな顔になって、その表情に俺は最後の精液を絞り出して、射精はようやく収まった。

 いったい何十秒、射精を続けていたんだろう。

 

「がはっ、げふっ! はぁ、はぁ、けほっ、ふぅ……!」

 

 美優が喉を擦って苦しそうな顔をする。

 量もそうだったが、尿道を通った感じからして濃さも相当だったからな。

 精液がずっと引っかかったままなのかもしれない。

 

「出しすぎ……もう……」

「ごめん、気持ちよすぎて、つい」

「こんなに溜め込んで。どれだけ飲ませたがりなんですか」

 

 美優はスクッと立ち上がって、足早にドアへと歩いていった。

 

「お茶飲んでくる」

「そ、そうか。ゆっくりしててくれ。ありがとうな」

「どういたしまして」

 

 美優はツンとした顔で部屋を出ていく。

 

 さすがにあれだけ出したら怒るよな。

 いくら四日分が溜まっていたとはいえ、美優も一度にあれだけ出されるとは思っていなかっただろうし。

 

 しかし、そうか。

 俺はついに美優にフェラをしてもらったんだな。

 美優の口に出すのは、想像していたより遥かに気持ちよかった。

 

「ふぅ……それにしても……」

 

 フェラしてる最中にイキそうになったって、あれは事実なんだろうか。

 フェラをすると興奮するっていうのは本人も認めていたし、嘘ではないんだろうけど。

 

 だとしたら、美優はまだ性欲が昂ぶったままなんだよな。

 前に一緒に寝たときのことを思えば、美優だって気持ちよくして欲しいはず。

 だったらここで俺が満足していたらダメだ。

 

 美優はイかなくても平気とは言っているけど、あのもどかしそうにしていた感じは、それこそベッドで美優が悶々としていたときと同じだった。

 美優は自分からして欲しいとは言い出せないし、だったら多少強引にでも俺がしてあげないと。

 

 俺は美優を追いかけて階段を下りた。

 もしかしたら俺の考えなんて全部勘違いで、美優は俺に触って欲しくなんかないかもしれないけど、でもそんなものを恐れていたら一生美優を気持ちよくしてあげられない。

 

 怒られるくらいなんてことはないんだ。

 お仕置きをされるならそれも甘んじて受け入れる。

 そもそも、俺と美優の力関係は美優の方が上なわけだし、あれだけ歯に衣着せぬ物言いできる美優が本気で嫌なことを俺に許すはずがない。

 

 美優はキッチンに立ってお茶を飲んでいた。

 俺の姿を認めるなり「お兄ちゃんもいる?」という言葉の代わりにグラスを上げてくれたが、俺は首を横に振って美優に近づいていく。

 

「さっきは、ありがとうな」

「いえいえ。お兄ちゃんの妹の責務なので」

 

 美優はカウンター形状になっているキッチンからリビングを見つめて、遠回しに俺の性欲を非難してくる。

 この毒気の多さも、今では可愛いと感じる美優の一部だ。

 

「美優はいつも全部飲んでくれるから嬉しいよ」

 

 俺はそれとなく美優の背後に回って、そっと体を密着させてみる。

 

「前にも増して不味くなった気がするのですが。まさか今より濃くなるとかもう無いよね?」

 

 美優はぶつくさと言いながら、俺が腰に添えた手に自分の手を重ねてくる。

 

 美優は俺のスキンシップを拒まなかった。

 後ろから軽く抱きしめてみるが、それでも美優は嫌がる素振りを見せない。

 

「あと少しくらいは、量も濃さも増えるかもしれない」

「うぐっ……もうこれ以上は本当に困るんだけど……」

 

 美優は俺を責めるように指で俺の手の甲をぐりぐりしてくる。

 

「出されると興奮するからか」

 

 これまでも美優とエッチなことをしてきて、疑問だったことがある。

 俺とエッチをするときはいつも、美優の秘部がぐちょぐちょに濡れているのだ。

 

 エッチ自体は俺から頼むことが多かったし、美優もその先を求めることはなかったから、単に濡れやすい体質なのだと思っていたけれど。

 

 そこに難しい話なんかなくて。

 

 美優が俺とのエッチに興奮していただけだったとしたら。

 体は俺を求めていたけど、相手が兄だから、体面上断っていただけだとしたら。

 

 今まで俺を誘ったり拒んだりして微妙な距離感を取っていたのも、それなら理解できる。

 

「……ばか」

 

 美優は口だけを動かして、俺を振りほどこうとしない。

 それどころか、俺の手首を掴んで離れないようにしている。

 

 その言葉を無視すれば、当たり前のように気付けるサインはいくらでもあった。

 美優の行動は常に何かを目的としていると思い込んでいたから、俺はいつもどんな目論見があるのかと勘ぐってばかりいたけど。

 でも、時には本能を抑えきれなくなって、想いのままに行動していた部分があるのなら、少なくともこれだけは確信してあげることができる。

 

 美優は俺とエッチすることを望んでいるんだ。

 

「美優、前より大人っぽくなったな」

 

 俺は美優を一度抱きしめてから、その手を膝の方へと伸ばした。

 胸ばかりが成長していると美優は言っていたけど、決してそんなことはない。

 唇も、太腿も、声も、それと、きっと身長も。

 最近になって、大人のオンナに近づいてきた。

 

「んっ……お兄ちゃん……何してるの……」

 

 俺が体を弄り始めると、さすがの美優も身じろぎをした。

 

 だが、それだけ。

 はっきりと「やめて」と言えば俺が止まることぐらいわかっているはずなのに、羞恥心を隠れ蓑にして美優は本音を隠している。

 

「してもらってばかりだと悪いから」

 

 俺は美優のキュロットパンツに指を入れて、割れ目と太腿の、その間の位置を手で撫で回す。

 

「こら……そこは……ダメって……」

 

 美優は内腿を擦って抵抗する。

 ふとももは無断で触ったらビンタするとまで忠告されていた部位。

 にもかかわらず、美優は吐息を熱くするばかりで怒った様子すらない。

 

「俺もそろそろ、見てるだけじゃ我慢できなくて」

 

 このやりとりが俺の暴走だと片付けられてもいい。

 美優がそれで心に整理をつけられるなら、俺は何度だって怒られたい。

 

「はんっ……!」

 

 パジャマの下から手を入れて、美優のパンツの中を弄る。

 肉ひだとクロッチに指を挟んでいるだけで、膣内に挿入したのかと錯覚するほどに、美優のアソコはぐしょぐしょに濡れていた。

 

「お兄ちゃん……そこは……だめ……」

 

 ついには美優も全身をくねらせて俺を振りほどくような動きを見せるが、俺が美優を腕ごと強く抱えると、もうそれだけで観念したように大人しくなった。

 

 前戯の経験は浅いけど、クリトリスの感触ぐらいならわかる。

 美優は遥とのエッチで慣れているはずだし、触るのがパンツ越しでなくても痛くは無いはずだ。

 

 念の為に包皮の上から美優のクリトリスを刺激した。

 ごくごく弱い力で、ぷくっと膨らんだ豆粒くらいの肉芽を円状に撫でる。

 

「ふわっ……うぅ……お兄ちゃん……恥ずかしいよ……」

 

 美優は腰をビクビクさせて、刺激を逃しているのかと思ったが、どうやらむしろ俺の指にクリトリスを擦り付けようとしているらしい。

 

 刺激が足りないんだろうか。

 力加減がわからない。

 少しだけ指に力を入れてみるが、美優の反応は変わらなかった。

 

「もう……あんまり……じら……さないで」

 

 美優は言葉尻を消えそうなくらい小さくして、俺に刺激をねだってきた。

 

 これくらいでは全然気持ちよくなれないらしい。

 そんなに慣れているなら、思い切って指を押し込んでみるか。

 

「ん、んっ、ああっ! あぐっ……んんっ……はぁ……ああああうぅ……ッ!!」

 

 美優の体がガクガクと震えて、力を失った膝が崩れて美優はぺたんと床に座った。

 それに合わせて俺も膝をつき、美優を抱いたままその様子を確かめる。

 

「ごめん。痛かったか?」

 

 予想以上に激しい反応をされて、俺もビックリしてしまった。

 押し込んだとは言っても、肉芽が潰れたりはしない程度。

 包皮の上からだし大丈夫だと思ったんだが。

 

 痛みだけは与えたくなかった。

 それで美優が怖がってしまったら、もうエッチな気分どころではなくなってしまう。

 

「痛くは、ないけど……は、恥ずか……しい……」

 

 俺の手はまだ美優の秘部に触れていて、美優がそれを嫌がる様子はない。

 さっきのが痛くないのだとしたら、あれは気持ちいいの反応になるわけだけど。

 まさか、もっと強くしたら、もっと激しくなるんだろうか。

 

「あの、あの、お兄ちゃん。痛くは、ならないけど。強いのはまだ、ちょっと、許して欲しくて。そこまでしなくても、イけるから。お願い……します……」

 

 美優のお願いに、俺は「わかった」とだけ答えてクリトリスへの刺激を再開した。

 わざわざ最後までして欲しい本音を暴露してまで条件をつけたのなら、きっとそれは美優にとって本心からのお願いであるはず。

 

「直に触るのは大丈夫?」

「あっ……う……うん……。軽く、ぐりぐりするくらいなら……平気……はふっ……ン……あぁ……。痛かったら……痛いって言うから……」

「なら、直でほんの少しだけ強くしてみる」

「はふぅ……はひぃ……」

 

 俺は指を少しだけ下側にずらし、美優のクリトリスの包皮に指先だけを入れて、パソコンの打鍵がギリギリできる程度の力で圧迫した。

 

「あぐっ……んんんッ……!! はああぁうぅぅうっ……うっぐ……ふあっ……んンッ……!!」

 

 美優が体を跳ねさせて大きな声で喘ぐ。

 激しく息を乱すその顔が、快感に蕩けて力を失っていく。

 

「気持ちいい?」

「はぁ、ふぅぅ……きもひぃ……んっ……ああっ……! うぐぅ……ん、あひゅっ……んん! んんんっ! あうぅあっぁあっ……! うぐぅ……ぎも……ひぃ……ふうぅっ……んッ!!」

 

 美優ももうその欲望を隠そうともせず、俺の指に自分でクリトリスの気持ちいい部分を当ててきて、呼吸と喘ぎ声が更に荒くなっていく。

 やがて美優の体がガクッと震え始めて、いよいよ絶頂のときが近いようだった。

 

「んっ! んんんっ……! あひぃあぁ……ぐぅぅあああっ! ひあぁ、う、うぅうんっ……あうぅぅはずかしぃ……あっ、あっ、あっ、ああああっ……!!」

 

 美優がイクのに合わせて、俺はその全身の痙攣を押さえ込むように美優の体を強く抱きしめた。

 

「あひゅぁうぅ……いひゃ……イッ……あっ……イ……クッ……!! ふひゃぅ……ああっ……ひきゃ……いっひゃう……あっぐあぁ……んっ……イッ……んッッ!!」

 

 切ない声が高まって、美優がビクンビクンと身を震わせると、嬌声が止まった。

 後には息苦しそうな呼吸音だけが残って、美優はもう上体を起こしておく力もなくなり、俺の腕に支えられながらキッチンのドアに体重を預けた。

 まだ震えたままの指で引き出しのくぼみを掴み、余韻でイキ続ける体を必死に抑え込もうとしている。

 

「ひぁ……はぁ……ふぅ……。んっ……、ん、あっ……いや……もう……んんっ……!」

 

 俺がパンツから手を抜いても、しばらく美優の体の痙攣は収まらなかった。

 こんなイキっぱなしになっている美優の姿は、見ないであげたほうがいいんだろうか。

 でも、初めて美優をイカせられた瞬間だし、これだけは怒られても思い出にしていたい。

 

「うー……」

 

 美優が落ち着いたと同時に、俺の中にあった緊張感もなくなって。

 そこで俺は、自分の指が美優の愛液でドロドロになっていたことに気づいた。

 

 美優が精液を飲んでくれているわけだし、俺もこれを舐め取った方がいいのかなと考えていると、美優がすかさず新品のキッチンペーパーを引き出しから取り出して俺に渡した。

 

「拭きなさい」

「あ、ああ。拭くほうがいいのか」

「女の子は男と違って自分のを舐められるのイヤなんです」

「そうだったのか」

 

 男だと出した精液をティッシュで拭われたりすると虚しい気分になるが、女の子は逆なのか。

 これからはちゃんと拭うようにしよう。

 

「まったくもう」

 

 美優が立ち上がろうとして、しかし足に全く力が入らず、俺にもたれかかってくる。

 美優は悔しそうな表情を見せながらも、俺の力を借りてどうにか立ち上がって、どうにもソファーに行きたいらしいので俺は美優を支えながらソファーまで移動した。

 すると、美優が俺を押し倒してきて、俺はちょうどソファーの肘掛けの部分に背中が来るような位置で横になった。

 そこに美優がボディプレスをかましてきて、俺のお腹の上に重なった。

 

「美優、大丈夫か?」

 

 美優は俺の腹部に顔を埋めてきて、そこで息絶えたように静かになった。

 かと思ったら、美優は突然うめきながら足をバタバタさせた。

 

「お、おい。どうしたんだ」

 

 その奇妙な行動は、俺を無視して数分間続けられた。

 そして、美優もさすがに疲れたのか、また死んだようにばったりと動きを止める。

 

「あの、美優さん……?」

 

 俺が心配して三度目の声をかけると、ようやく美優は顔を上げた。

 

 そこにあったのは、これまでに無いほど真っ赤に染まった、今にも泣き出しそうな美優の顔だった。

 

「ううぅぅ恥ずかしいぃぃぃああああああ!!」

 

 美優はまた足をバタつかせて、何度も俺の腹に頭突きをかましてくる。

 

 山本さんのときもそうだったけど、攻めっ気のある女の子って、いざされる側になるとこんなにも弱いものなんだな。

 

「むぅぅ……お兄ちゃんのばかぁ……! なんであんなことしたのもぉぉ!」

 

 美優はなりふり構わず羞恥を暴力に変えて俺にぶつけてきた。

 だがその力も、マジ殴りされたときに比べたら全然大したことはなくて、なんと言うかいい感じに腹筋が鍛えられそうである。

 

「ぐぬっ。おっぱいのせいで上手く頭突きができない」

 

 どうやら力が弱いと思っていたのはおっぱいが緩衝材になっていたからだったらしく、美優としてはもっと俺に痛みを味わって欲しかったようだ。

 

 それから美優が何度か頭突きを試して、足をバタつかせる力もなくなって、暴力装置は完全に沈黙した。

 俺はどう扱っていいやらわからず、美優が落ちないようにジッとしていると、美優はうつ伏せのまま俺の手を取ってそれを自らの頭に置いた。

 どうやら「撫でろ」と命令されたようなので、俺はそのわがままにも付き合ってあげることにした。

 

 すると数分後には、スヤスヤと小気味の良い寝息が聞こえたきた。

 どう考えても寝にくい体勢のはずだが、俺と寝ると落ち着けると言っていたのは本当らしい。

 

 俺も熟睡してしまいたかったが、美優を落としてしまうのが怖いのと、興奮とは別に心が湧き上がって寝られる気がしなかったので、美優が寝入った後も俺は頭を撫で続けてひたすら時計の音だけを聞いていた。

 

 それから、一時間ぐらいが経った頃。

 

「んっ……んん……」

 

 さすがに呼吸が辛かったのか、美優が目を覚ました。

 

「おはよう」

 

 すでに夜も更けて遅い時間だが、これ以外に挨拶が思いつかなかった。

 

「んー……おはょ……」

 

 目を覚ましたとは言っても、美優は寝起きが弱い。

 普段からそうなのか、俺と寝ているときだけがそうなのかは知らないが、この寝ぼすけ姫は素直には起きてくれないのである。

 

 俺もこの体勢が辛くなってきて、二度寝されるとたまらないので美優の肩を掴んで体を起こそうとするが、美優はそれに抵抗するように俺の背中とソファーの間に両手を差し込んで抱きついてきた。

 もはや押しても引いてもビクともしない。

 

「美優。そろそろ、トイレとかも行きたくなってきたんだが」

 

 俺がそう言うと、美優もようやく頭が回り始めたのか、体を起こして俺を解放してくれた。

 まるで泣き明かしたようにヒドく疲れた顔をしている。

 

「はぁ」

 

 美優は正面を向いてソファーに座ると、まずはため息。

 その横に俺が座り直して、美優が俺の肩に頭を乗せてくる。

 

「大丈夫か? 水が欲しければ持ってくるけど」

「後でいいよ。もうちょっとだけこうさせて」

 

 美優は俺の腕を掴んで体重を預けてきた。

 怒られはしたけど、心の距離は縮まっているようだ。

 というより、美優ってなぜか怒った後の方が俺に心を開いてくれるんだよな。

 

 どういう思考回路をしているのか、その頭の中を覗いてみたい。

 

「そろそろお兄ちゃんに話そうかな」

 

 そんな折に、隣の口から飛び出したドキッとする一言。

 

「話すって、何を?」

「だから、お兄ちゃんもずっと疑問に思ってたこと」

 

 俺が美優にぶつけた疑問って、何があったっけ。

 

 どうして精液を飲んでくれるのかは聞いたことがあったな。

 それで、まだ明確な答えは貰っていない。

 遥との関係はもうほとんど教えてを貰ったようなものだし。

 あとは、トイレでのお仕置きの後に急にスキンシップを許すようになった理由は、まだ謎のままだったか。

 

「色々とありすぎる……」

「だろうね。まあ、そういう諸々も含めて」

 

 美優は俺に身を寄せたまま、手を握って見つめてきた。

 

「大切なお話がありますので。聞いてもらえますか?」

 

 それは、美優とこれまで過ごした日々の、全てについての話だった。

 美優と最初にエッチをしたあの日のことと、そのもっと前の、美優に起こった出来事について。

 

 俺が美優を求めて、美優がそれを受け入れるようになった。

 そんな二人の奥に根付いている、とても大切なお話だった。

 

 

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