俺と美優が結ばれてから一日。
オフ会を明日に控え、バイトもなく、美優の予定も無い。
やることと言えば残った学校の宿題くらいだが、恋人が出来た翌日に宿題に耽るのも不誠実な話だろう。
で、誠実な対応とはなんなのかというと。
「お兄ちゃんのキャラ、回復役なのに前進しすぎじゃない?」
「序盤は属性相性の関係で実質ダメージ0だからいいんだよ」
ベッドに二人で寝転んでゲームをやっている。
よく晴れた日の真っ昼間にだ。
もとより引きこもり体質だった俺たちにとって、夏場の晴れ日に外出するなんてのは自殺行為に他ならず、美優のキレイな白い肌を守るためにも外出しようなどとは考えなかった。
デートは家でゴロゴロするのに飽きたらすればいいんだ。
どうせ人目のあるところでイチャイチャすることはできないし、デートをしていても二人きりで落ち着ける場所が欲しくなってしまう。
「そろそろユニット交代しようかな」
「ハルマキさんの高レベル帯が一通り落ちたら俺と一緒に出すか」
うつ伏せに並んでマジョマルのマルチプレイを楽しむ二人。
美優はおっぱいが邪魔になるので柔らかいクッションを抱いている。
手動操作するソロプレイと違い、マルチでは育てたユニットの出撃と交代を指示するだけで、ほとんどがオートで進んでいく。
このシステムはチャットをしながらゲームを楽しむというコンセプトから生まれたもので、ゲーム操作が苦手な人の多い女性ユーザーから人気が高いのも、このマルチの簡易さが一つの要因になっている。
「ハルマキさんって重課金者なのにチャットが女の子っぽいよね」
「鈴原の先輩が言うには本当に女の人らしい」
「女子高生がそんなにお金持ってるものなの?」
「大学1年の人なんだと。遥と美優みたいに金になるバイトでもしてるんじゃないかな」
マルチプレイをしているのは、ほとんどが明日のオフ会で会うメンバーだ。
真偽のほどは明日にならなければわからないが、メンバーの男女比率は1対1になるらしい。
「ももちゃんが『みんな恋人いるの?』っ聞いてるよ」
「なぜオフ会の前日にそんな爆弾を……」
「本人は彼氏が居るって言ってるし、当日セクハラされないための予防線を張りたいとみた」
「え、ももちゃんってマジで女なの」
ももちゃんこと『フィリスたんのふとももペロペロ』さんは、不特定の人が集まるルームチャットで変態発言を繰り返しているために、完全にネカマだと思われている残念系プレイヤーだ。
普段の発言が変態っぽいとオフ会でセクハラをされやすいらしいからな。
そのあたりの情報をどこかで仕入れて、美優の言う通り予防線を張ったんだろう。
「みんな話をはぐらかしてるね」
「そりゃ荒れる話題だからな」
俺としては素直に恋人がいるって言いたいところだが、ここでわざわざ燃料を投下するのもな。
「こういうときの上手な切り抜け方を教えてあげようか」
「それは助かる。なんて返せばいいんだ」
「『女を作ると妹が怒るから興味ない』って答えればいいんだよ」
「余計ややこしくなるだろ……」
美優との関係を恥ずかしいものだとは思わないが、世間的な風評はまた別の話だ。
妹が極度のブラコンで一方的に俺を束縛してるって設定ならなくはないが、そうするには鈴原の存在が邪魔になる。
「じゃあもう『妹が世界の誰よりも好きだから他の誰とも付き合う気になれません』って正直に言うしかないね」
「お前な。そんなこと言ってると抱きついたりするぞ」
今日はまだエッチはしてないし、ベッドで横並びだからな。
気を抜いたら性欲が抑えられなくなる。
「こんだけ煽ってるんだからそろそろ抱きついてほしいんだけど」
「え、ああ、それ、そういうアピールだったのか」
美優のやつ、恋仲になってもニュートラルなときは無表情だし、誘い方にしても何にしても「察してほしい」が強すぎてしばしば扱いに困る。
俺の真横で、うつ伏せにクッションを抱く美優。
キャミソールだけのラフな格好から見える白い肩と、そこに掛かるサラッとした黒髪が本当にキレイだ。
「お兄ちゃん。マルチ、ボス戦だよ」
俺が美優に手を伸ばすと、自分から誘ったくせに美優は俺の注意をゲームへと向けさせた。
たしかにマルチのボス戦はスキル発動タイミングを調整するために、ユニットの出撃状態を調整しなければならない。
しかし、まあそんなもの美優もあんまり興味はなくて。
「美優」
俺が美優に抱きつく意思を示すと、美優はすぐに俺の腕の中に入り込んできた。
小さくリスみたいに丸まって、スマホそっちのけで俺にギュッとされにくる。
「お兄ちゃんにくっついてるとほんと安心する……なんでだろ……」
美優が頭をぐりぐりと押し付けてくる。
こういうときはスキンシップが足りないの合図なので、美優の敏感な部分にだけは触れないよう、俺は全身を包み込むように美優を抱きしめた。
スマホからボス戦開始の警告音が鳴っている。
チャットにもいくつかコメントが来ているようだが、それよりも今は美優が愛おしい。
「お互い生活スタイルが似ててよかったな」
「ほんとだね。いつでもお兄ちゃんにギュッてしてもらえる」
互いに室内に居るのが好きで、暇な時間にダラダラするのにも抵抗がなくて、最近では一緒にゲームをすることもある。
最初のうちは俺と趣味を合わせるために始めてくれたのかと思っていたが、美優はゲームを積極的に楽しんでいるようで、変に気を遣う必要がないのもありがたいことだ。
「丸一日こうしてベッドで寝てるってなったらさ、美優はどう?」
「私は休みの間ずっとでもいいよ?」
そんなにまで外出に興味が無いのか。
俺としては願ってもないことだけど。
「それって、毎日エッチをすることになっても、いいってことかな」
「むしろ、私はしない日をいつにするか決めるぐらいだと思ってたよ」
美優は性関係を男の基準で考えてくれる。
彼女探しを手伝ってくれていた頃に美優が言っていた、「俺の彼女は旺盛な性欲を処理してくれる子でなくてはならない」という条件を、美優は承知の上で恋仲になってくれたんだ。
でも、俺だって美優に性欲ばかり押し付けたいわけじゃない。
美優がしたいなら俺もする。
美優がしてくれるならお願いをする。
それでいいんだ。
美優はどれくらいエッチが好きなのかな。
ロリコスしてオナニーをしてしまうくらいにはエッチが好きなんだろうけど、遥とのエッチはあくまでビジネスでしかないと割り切っていたし、それだけ聞くとたまに性欲を発散できるぐらいがちょうどいいのかと思えてしまう。
さすがにエッチが好きかって聞くのは無粋だよな。
美優は俺と一緒にいるとそれだけで興奮するみたいだし、それをどう処理するべきかって聞き方にしておくか。
「美優はこうして抱きついてるだけだと興奮はしない?」
「抱きついてそのまま寝ちゃえば興奮はしないよ。こうしてベタベタしてるとムラムラしてくる。あとはお兄ちゃんの性欲にだいぶ引きずられるかな」
「なるほど」
朝食を済ませてから、俺たちはずっとベッドで横になっている。
となると、美優はすでにだいぶムラムラしてるのか。
美優が俺に抱きつかせようと煽ってきたのはそういう意図だったんだ。
またいつもみたいにパンツの中をビショビショにしているのだろうか。
想像するだけで、俺も下半身が疼いてきてしまう。
「戦闘、終わったみたいだね」
美優はボス戦の勝利BGMを聞いて意識をスマホに向ける。
それに釣られるように俺はスマホを手にとった。
「なんとかクリアしたんだな。鈴原と黒い竿さんからどうしたってめっちゃ聞かれてるけど」
「『妹とイチャイチャしててそれどころじゃなかった』って言えばいいと思うよ」
「明日ボコボコにされるって」
まあ妹が相手だって言えば本気にはしないと思うけど。
「次のステージにも行くのか。どうしようかな」
「やってあげれば? 私はお兄ちゃんにイタズラしてるから」
美優は俺のTシャツを捲って、胸にチュパチュパとしゃぶりついてきた。
「あっ、ああっ……! それ、されると……!」
すでに半勃ち状態だった肉棒が一瞬で最大にまで硬くなる。
それを美優は手で擦って、満足気にニッコリと笑った。
「んふ。ゲームしてていいよ」
美優は俺のズボンを脱がして、手コキと乳首舐めで同時に責めてきた。
俺も美優を脱がして触りたいけど、「ゲームをしてていい」という美優の言葉は、むしろゲームをしてる俺にイタズラしたいって意味が強いんだろう。
だから、俺はマルチの戦闘開始ボタンを押した。
美優とハルマキさんの代わりに別のプレイヤーが参加して、マルチ用のチャットルームには明日のオフ会メンバーの男だけになった。
すると必然、始まるのは他の女の子に共有できない情報交換である。
『ちなみに明日のメンバー、写真見せてもらった感じだと中身が可愛い順はハルマキ>彼方>ももちゃんな。PC組の夜空も女らしいけど写真NGだったから知らねえ』
『マジっすか! さすが黒い竿の名前は伊達じゃない……!』
『ハルマキはガチでクソ可愛かったから俺が貰うわ。他はお前らがご自由に。ホテルの用意は各自で頑張れよ』
と、ハナからオフパコ目的の最低な会話が繰り広げられる。
そんな中、俺はチャットの影に潜んで、世界一可愛い妹とエロいことをしている。
果たして最低なのはどちらなのか。
「んちゅ……んっ……どうしたの?」
「ああ……それが……」
美優は俺のペニスをシゴきながら顔を上げる。
敏感な部位が美優の手に包まれて心地良い。
美優は俺のペニスを包皮ごと擦り、鈴口から漏れ出した先走り汁が十分に溜まると、それを亀頭に塗りたくって刺激してくる。
「はぁ……っ……オフ会の男側は……んんっ……完全にヤリ目っぽくて……」
「ふーん……へろっ……むちゅ……ん。へー。お兄ちゃんは家に帰ったらエッチできるからどうでもいいね」
カウパー液で粘つくペニスの先端に、美優は指で輪っかを作ってクチュクチュとカリ裏を擦る。
「んんっ……! あっ……!」
本当に他のやつらのセックスとかどうでもいい。
ヤリたければヤッてればいいんだ。
俺は美優とセックスする。
『彼氏がいるのはももちゃんだけっぽいな。まああいつ、前のオフ会でも普通にヤッてたらしいし、ヤリたいだけならむしろ狙い目だぞ。顔はお察しだが』
『まじすかー! でも、俺ちゃんと女見つけたいんすわ! あと、童貞を捨てさせたいやつが居るんですよ!』
鈴原とその先輩の話がなおも続いている。
童貞を捨てさせたいやつって俺のことだよな。
こいつにはどうやって真実を伝えてやるべきか。
ああ、やばい。
それよりも美優の乳首舐めと手コキが気持ちいい。
もう射精まで保たないかも。
「ふふっ。お兄ちゃんのビクンビクンしてる。飲んであげるね」
美優は俺の腕の中から抜けて、下半身側に移動した。
そして、正面から迷いなく俺のペニスを口に咥える。
「あっ……美優……! 美優の口……ほんとに好き……!!」
真相を知った今では当然のようにも思えるけど、美優が何の迷いもなくフェラをしてくれるという事実が、何よりも嬉しかった。
美優とのエッチは、長いこと自分で扱いて射精した精液を美優に飲ませて、その最中で何度も口でしてほしいとお願いしては美優に断られて、そうやってエッチを繰り返す度に欲望が蓄積してきて。
「じゅぶっ……ぐじゅっ……んむっ……はぁ…………チュッ……じゅぷっ……」
「あ、あ、み、美優……もう……出そう……!」
「んむっ……ちゅぱっ。むー。お兄ちゃん、早い」
「あっ……ご、ごめん……」
山本さんにも指摘されたけど、フェラになると射精が我慢できなくなる。
長いこと美優に焦らされ続けたせいで、この体は口に出すのが好きになり過ぎてしまったみたいだ。
「少しは堪えてね」
「が、頑張る」
「出すならアレをちゃんと言ってね」
「わかってる」
美優はできるだけゆっくりと口を動かしてフェラを再開した。
そして、俺がイキそうになると口を離して、しばらくは玉と竿を舐めるだけになる。
舐められるだけであれば射精はしない。
それに、外気に触れると射精欲が収まる。
そうしてまた少し我慢ができるようになると、美優は俺のペニスをパクっと口に含んでフェラを繰り返した。
「うっ……ああっぐ……い……イ……きたい……!」
「はむっ……ちゅっ……いいよ、出して……」
「ああ、美優、美優ッ……!!」
俺が射精するのに合わせて、美優はジュブジュブとらしくない下品な音を出した。
それが俺の耳に届いた瞬間に、俺の精液は一瞬にして尿道を突き抜ける。
「はぁ……ああっっ……気持ちいい……! 山本さんのフェラよりいい! ああぐっあぁっ……美優の口が……はぁっ……うっ……一番イイッ……ッッ! アッ、美優ッ……あっ……あぁぁアッ!!」
びゅっ、びゅるっ、ドクッ、ビュ、ビュルッ──!!
俺は美優の口の中に、今日一番の精液をたっぷりと出した。
筋繊維が何度も収縮して、美優が精液を飲み込んだ後も、おかわりといわんばかりに精液が美優の口に流れていく。
「ん……んくっ。ぷはぁ。お兄ちゃん、早すぎて全然咥えた気がしない」
「ご、ごめんて。……てか、美優としては早く済んだほうがいいんじゃないのか……?」
美優にはこれまでは我慢せずに早く出せとばかり言われてきた。
そのせいもあって、この体はちょっと早漏気味になったんだろう。
無論、俺の体は美優の命令には逆らえないから、強く命令されれば射精せずにいられるんだろうけど、美優にフェラをされて自分の力だけで射精欲を押さえ込むのは不可能に近い。
「そう思ってるならお兄ちゃんとの本番はだいぶ先かな」
「え、あ、ああいや! 例の話についてはきちんと理解してきたから!」
美優が俺に「セックスをするならその意味を理解してから誘ってね」と言ったあの話。
その意味なら、もうわかっている。
美優は俺に特別な性的興奮を覚えてしまうせいで、ある一線を越えたら理性が保てなくなる。
セックスは女の子側が攻めるのに積極的でなければ、基本的には男に体を預けるもの。
どこまでの快楽責めが許されるのか、俺が慎重に判断をしてあげないと、美優は安心してセックスができないんだ。
「美優は俺とエッチすると、普通じゃないくらいに興奮するんだよな。だから、俺が何も考えずに美優とセックスしたら、美優はその気持ちよさから抜け出せなくなるかもしれない。それを気をつけろってことだろ?」
俺が正答だと思って口にした答え。
それに、美優は晴れやかな表情を返さなかった。
俺の肉棒を吸って尿道の精液までを吸い出すと、美優はまた俺と真向かいに並ぶ。
そのままジッと見つめられて、どうやら何かを探られていたみたいだったけど、そこに美優の満足できる答えはなかったようで。
「うーん……30点」
どうにも俺の回答では理解がまるで足りていなかったらしい。
「そんなにダメ?」
「間違ってはいないけど、肝心なところがわかってない」
さっきの話より肝心なことか。
そんなもの、見逃す余地なんてあるのか?
美優の話の一番大事なところって、俺とエッチをすると性欲が暴走することだと思うんだけど。
「教えてはもらえないんだよな……?」
「これは気付いてもらわないと困る」
美優は眉を下げて、これまで見たことのない、本当に困ったような表情をして目を逸らす。
セックスにドハマリしてしまう事以上に重大な問題っていったい何なんだ。
「お兄ちゃんはさ、どうして私が悩みを打ち明けられなかったと思う?」
「それは……」
美優は自らの特異体質に悩んでいた。
より遺伝子の近い者に性的興奮を覚えてしまうという生殖本能の逆転に。
最初の頃は美優は自分でもその体質について理解できていなかった。
気付いたきっかけはトイレのあの事故のときで、それが確信に変わったのは初めてフェラをしたとき。
それまで美優は、俺にその異変を隠したまま、ずっと検証するようにエッチを続けていた。
これは自然な流れだったように思う。
実の兄にエッチの相談をするのはハードルが高い。
「私はあなたとエッチをすると異常に興奮してしまいます」なんてことを暴露するのは、エッチな行為そのものよりも恥ずかしいものだ。
もちろん、行為自体も恥ずかしかったから、美優は意味ありげな態度でそれをボカした。
つまり、そういうことなのか。
これは由佳にも佐知子にも注意されたこと。
美優だって、一人の女の子なんだ。
「言えないのは、恥ずかしいから?」
「わかってるじゃないですか」
美優はぷーっと頬を膨らませて、俺のほっぺたを抓ってくる。
痛いけど心地良い。
「俺が本番で注意するべきことは、美優にとって何よりも恥ずかしいことだから、俺に自分で気付いてほしいと」
「恥ずかしいどころじゃないので、気付いても口にしてほしくはないレベルです」
そんなとんでもない理由がまだ隠されているのか。
さっき俺が答えを言ってから美優がしばらく見つめていたのは、口にするのも憚られるそれを俺が察しているのか見極めるためだったのか。
「いいですか。お兄ちゃんが本当に気づかなきゃいけないことは、私の口からは絶対に言いません。お兄ちゃんも、わかっていても口にしないこと。私が目を見て判断するので、暗黙の内にしまいこんでいてください。もしそのことで私を煽ったりなんかしたら絶交するからね」
「りょ、了解です」
これはクローゼットの秘密以来の本気の忠告だ。
そして、あの秘密よりもさらにエグい内容らしい。
いったい何なんだろう。
そこまでして俺が美優とセックスするときに気をつけなきゃいけないことってあるのか。
「そういえば、ゲームの方は完全に放置してるけどいいの?」
「あっ! やっば……!」
気づけばチャットには俺の寝落ち疑惑が紛糾していて、俺はやむなくその話題に乗っかることにした。
『ソトミチよー。“本番”は明日なんだから気を抜くなよ』
鈴原があえて強調したその言葉は、どう考えても俺の童貞を捨てさせたいという意思を含んだものだった。
いまちょうど女の子の口の中に射精したばかりの俺にとって、それは非常にどうでもいい内容だった。
そういえば、美優だってムラムラしてるんだよな。
指でしてあげたい気持ちはあるけど、なんとなくそんな雰囲気でもない。
美優はクッションを抱いてぐでんとしていて、背後から股ぐらに手を入れれば行為は始まるんだろうけど、それで美優が喜んでくれるビジョンが見えない。
俺は美優の兄であり、彼氏でもある。
だから、男らしくて、紳士的な行動が求められているんだと、そう思っていたけど。
美優が好きになってきた俺って、そういう人間ではなかったんだよな。
大人になるのは大事なんだろうけど、それで人柄まで変わってしまうのは違うんじゃないか。
俺だって美優が突然しおらしい淑女になったりしたら嫌だ。
皮肉に聞こえるかもしれないが、いつも無表情で何を考えてるかわからなくて、お仕置きをするときには鬼のように容赦がなくて、でも気遣いやマナーについては人一倍に敏感で、それでもなお俺にはわがままだったり暴君らしい一面も見せてくれる。
俺はそんな美優が好きなんだ。
自分本位な解釈ではあるけど、俺がしたいことが美優のされたいことになるはずなんだ。
一昨日だって、俺が美優にお詫びとしてフェラを要求したからこそ、ここまで関係が進展した。
では、俺がしたいこととはなんなのか。
そう考えると、射精をして性欲の落ち着いてきた俺には、エッチよりも優先したいとある望みがあった。
「美優。ゲームは一旦中止にしようと思うんだけど」
俺がそう言うと、美優も素直に頷いてスマホのアプリを落とした。
そして、俺が意味ありげな発言をしたためか、不思議そうに俺を眺めてくる。
「で、ちょっと提案があるんだけど」
「はい。なんでしょうか」
美優はクッションを抱いたまま俺と正面に向かい合う。
「例の、服をだな。着てるとこ見たいなって」
俺の言葉に、美優は強くクッションを腕に引き込んだ。
そして、顔の半分を隠して、前髪とクッションの隙間から軽蔑するような眼差しを向けてくる。
たしかに、酷い頼みではある。
美優はフェラをした直後でかなりエッチな気分になっているはずだし、そんな状態でロリータ服を着たら、性欲に負けて美優が暴走してしまうかもしれない。
「まあ、いいけど」
しかし、美優はその提案を素直に受け入れてくれた。
ベッドから起き上がってサッと服のシワと髪の乱れを直すと、準備が終わるまで俺に待っているように告げて自分の部屋に戻る。
もっと色々と問答をすることになると思ってたけど、不気味なくらいに素直だったな。
準備のために20分ほどがかかって、美優から「部屋に来て」との連絡がきた。
俺も失礼のないように最低限の身なりを整えて、美優の部屋のドアをノックする。
「入るぞ」
ドアを開けると、そこに美優はいた。
ブルーの生地を宇宙のように見立て、きらびやかな刺繍を散りばめた、ホワイトリボンのロリータワンピース。
簡素ながらも品のある純白のブラウスに、ふわっと巻かれた髪が掛かって、まるで異星のお姫様のような風貌でそこに立っている。
「おおっ……」
美優のロリータ服は初見ではない。
とはいえ。
これほどのものとは。
「ふふっ。どうですか。お兄ちゃん」
美優は勝ち誇ったような顔でスカートを翻す。
天使、いや、女神か。
この世の語彙では表現しきれない。
「か、可愛い! マジでほんとに可愛い!!」
俺は飛びかかる勢いで美優に接近し、しかし決して触れないように踏みとどまった。
「すごい可愛いよ。世界で一番可愛い。こんなに可愛い女の子が現実に存在するなんて、いまこうして見てても信じられない……」
軽い気持ちで頼んでみたけど、とんでもなかった。
これほど凄まじい可愛さの暴力があるなんて。
遥の撮影会とやらに金持ちお姉さまたちが寄ってくるわけだ。
この感動を額に収めて永遠にしてしまいたい。
「でしょ。可愛いでしょ」
美優はハニカミながらも挑発するような笑顔を俺に向ける。
「どうせエッチさせるつもりでお願いしたんだろうけど。私はしないからね」
美優が素直にロリコスを引き受けた理由がこれだった。
俺がムラムラしている美優にわざとロリコスさせたのはバレていて、しかし、それをあえて引き受けた上でエッチを行わないことで、逆に俺を生殺しにしようという作戦だ。
しかし、そんな邪心が吹き飛ぶほどに美優が可愛かったので、ひとまずエッチは二の次になった。
「邪な気持ちでロリコスしてほしいなんて頼んで悪かった。美優の可愛い姿を見てたら、いかに自分が愚かな人間だったか思い知ったよ」
実のところロリータ姿の美優は完全に欲情対象なのだが、今は感動がそれを凌駕して押さえ込んでいる。
「そんなに可愛い?」
「可愛い。本当に可愛い。美優より可愛い人がいるなんてもう絶対に信じられない」
「んふふ。はいはいわかってるからもう」
さすがにここまで言われると美優も照れるのか、巻いた髪を更に巻き巻きして手寂しさを紛らわさせる。
しかし、俺の気持ちはこんなものでは収まらない。
クローゼットの秘密を暴いてしまった事故の日は、美優を慰めるので精一杯だったからまともに見れていなかったけど。
こうして改めてロリータ服の美優を見ると尊さすら感じる。
もはや神の域だ。
「美優は本当に可愛い服が似合うな」
「遥の方が可愛いけどね。無駄な肉もついてないし」
「いや美優の方が絶対に可愛い」
「見てもないのにそういうこと言わないの」
「見なくてもわかるよ。俺は美優のことが好きなわけだし、むしろ現実がどうであれ美優が一番可愛く見えるのが道理だろ」
「むっ。たしかに」
珍しく美優を納得させられた。
でもそんなものはどうでもいい。
今はこの美優を堪能していたい。
「美優、よければこう、くるくる回って全身を見せてほしいんだけど」
「ん? こう?」
美優は窓際に寄ると、カーテンの閉め具合で光を調整して、その場で髪を軽く持ち上げたり、スカートをつまんだりして、その細部までを俺に見せてくれた。
部屋に差し込む光に美優の笑顔が照らされて、俺は自分の魂が少しずつ浮いていくのを感じた。
美優が可愛すぎて死にそうだった。
「美優……美優が可愛すぎて……俺は一体どうしたらいい……」
「どうしたのお兄ちゃん生きて」
床にくずおれた俺を、美優が慌てて起こしてくれた。
こういう芯の優しさが垣間見えるせいで、普段のあらゆる仕草が愛おしく思えてしまう。
「あの……で、できればいいいんだけど。他の服も、見せてほしいなーって……」
「えー。他の服も見たいの?」
美優は表情だけは面倒くさそうにして、顔を若干赤らめながら満更でもない顔をする。
「手間なのはわかってる。でももっと可愛い美優が見たいんだ」
「はいはいわかりました。じゃあ着替えるから廊下に出ててください」
美優は俺の背中を押して部屋の外に追い出した。
それでも、ドアが閉まるまでの短い時間に、美優がご機嫌に鼻歌を歌っていたのを俺は聞き逃さなかった。
こんなに楽しんでくれるなら、最初から隠すことなんてなかったのに。
たしかに、実際にはあの服を着てオナニーまでしてしまっているのだから、俺が思っている以上に恥ずかしいことなんだろうけど。
俺ならそんな美優も含めて愛してしまえるのに。
また20分ほど準備の時間を待って、美優からの連絡が来る。
俺は一方的に楽しんでいるけど、美優からしたら化粧を直したりして結構大変なことなんだよな。
本来なら数万って金を払って頼むものだろうけど、あいにくそんな持ち合わせはないし、美優も金なんか貰っても嬉しくないだろう。
ひっそりと胸のうちに『一日なんでも美優の言うこと聞く券』でもしまいこんでおくか。
普段と何が違うのかは、まあそのときに考えることにしよう。
「入るぞ」
美優の部屋をノックして再入場する。
そこにはまた別の天使が存在していた。
「どうでしょうか」
お次の衣装は、セーラー服をモチーフにした、チェック柄のクラシカルロリータだった。
髪は三つ編みに結んで、小ぶりな帽子を頭に乗せている。
美優が小柄なこともあり、これで革の鞄でも背負わせれば、小学生にさえ見間違えてしまうほど幼な可愛い。
そんな中でも主張の激しいたわわな胸部は、もはや冒涜的とすら言える。
「かぁ……か……わいぃ……ッ!!」
俺は掠れた声で思いの丈を叫び、膝をついた。
美優の可愛さに目眩を起こしてしまったようだ。
「お兄ちゃんいちいち反応が大げさなんだから」
美優は喜んでいるのか怒っているのかわからないような顔でツンとそっぽを向く。
その仕草に、俺のハートはまた萌え殺されるのだった。
「ごめん、美優。どうしたらいいだろう。さっきから可愛いしか言ってないけど、可愛い以外になんて言ったらわかんないや……」
「気持ちは十分伝わってるから大丈夫だよ」
美優は淡々と俺を引っ張り上げる。
下から見上げる美優のおっぱいも良いものだったが、立ち上がってみると髪を結ぶことでスッキリした首周りが良く映えて、その眩しさにまたクラッときた。
「美優はどうしてそんなに可愛いんだ」
「知らないよ」
ジト目で呆れる美優も可愛い。
美優の可愛さを以てすれば世界平和すら目指せる気がする。
でもそんなもののために美優の可愛さが使われるのも遺憾ではある。
「美優。ほんと愛してる」
「できれば普段の私に言ってね」
美優は俺とのやりとりで疲れたのか、ベッドに座って足をパタパタさせた。
たしかに、俺はこうして興奮しているときしか美優に素直な気持ちを伝えてあげられていない。
普段からもっと好きな想いをアピールするべきなのか。
それはそれで美優がウザがりそうなんだけど。
美優ならウザがりながらも喜んでくれるか。
よしもっと言おう。
「満足した?」
「美優の可愛さには大満足だけど、もう少し見ていたい気分ではある」
せっかくこんなに可愛くセットしてくれたんだし、ただ着替えさせるだけではもったいない。
「いつもはどうしてるんだ?」
美優がロリコスをして楽しんでいることと言えば、その自分の姿を見てオナニーをするか、遥とエッチをするかのどちらかだ。
だが、それだけではないはず。
性的な興奮はあくまでも付随して起こるものであって、美優は可愛い服そのものが好きなはずなんだから、そこには何かしらエッチとは違うこだわりがあってもいい。
例えば、いつだか美優に出してもらったフレーバーティー。
あれは家にキッチンに常備されているものではなかった。
美優が個人的に楽しむために買ったものなら、ロリータファッションと一緒に楽しんでいたと考えることもできる。
もしただ飲むだけに買ったのなら、堂々と自分の物だと宣言してキッチンに置けばいいんだ。
その方が不便がない。
うちには人の物を勝手に使う人はいないのだから。
「まあ、お茶を楽しむくらいはするけどさ」
「ティーポットは?」
「ある」
「ならそれだ!」
俺は一階のリビングで簡単なお茶会をすることにした。
美優は始めこそ面倒臭そうにしていたが、そそくさと茶器を用意してどの茶葉を使うか悩み始めるなど、結構乗り気なようである。
美優がお茶関係を用意している間、俺は簡単な甘味を作ることにした。
お菓子作りは経験が少ないが、母親の命によって美優のお菓子作りを手伝わされたこともあり、その後で個人的にこっそり作っていたとあるスイーツがある。
かぼちゃのタルトだ。
これが下手にスポンジケーキを作ったりするより遥かに簡単にできる。
俺は美優が下りてくるまでに生地を練り上げて、その他具材の準備に入った。
美優がティーセット一式を持ってきてからはコンロを明け渡し、二人で一緒にお茶会のセッティングをした。
美優にはテーブルにマットを引いてもらい、そこで先にお茶を楽しんで貰う。
ティーカップに優雅に口をつける美優がキッチンから見えて、最高の眺めだ。
いつもよりツヤやかな唇で微笑む美優の顔が輝いている。
俺はオーブンから取り出したタルトを食べやすいように切り分けると、それを持って美優の対面に同席した。
「ほんとにそこまでするんだ。いい匂いだね」
「美優のためなら俺は何だって全力だからな」
「お兄ちゃんがバカでよかった」
美優はタルトを一口食べると、小さく「美味しい」と呟いてから紅茶を飲んだ。
俺はそんな美優の姿をただ眺めていて、まるで絵本の中にでも迷い込んだような気分だった。
「これってお昼の代わり?」
「そうなるかな。ステーキでも焼く?」
「お願いします」
甘い物ばかりだと食べた気にならないからな。
メルヘン感はなくなってしまうけど、ステーキだってスイーツビュッフェとかにもよくあるし、テーブルとしての違和感はないはずだ。
美優の大事な服にニオイや油が飛んでしまわないように、俺は全開の換気扇の中で細心の注意を払って昼飯を作った。
それを二人で食べて、済んだ皿も俺が片付ける。
美優の服を汚すわけにはいかない。
「ふー。満腹になりました。お兄ちゃんがお料理できる人でよかったよ」
「数少ない取り柄だからな。いくらでも頼ってくれ」
俺ができる美優への恩返しなんて、たかが知れている。
だが、美優はそんな俺のことも認めてくれて、ずっと一緒に居てくれると言ってくれた。
どうせ焦ったところで急に何かの能力に目覚めるわけでもないし、これからの長い人生で、少しずつ美優に尽くしていけたらと思う。
「服はもうこれぐらいにする?」
食事を終えて、二階に戻ってきた俺たち。
目も心も十二分の英気を養ってもらったが、俺にはどうしても着てほしい美優の衣装があった。
「一個だけ。最後に気になってる服があって」
それは、クローゼットの中を覗かせてもらったときに見えた、小悪魔コンセプトのゴスロリ衣装だ。
他の服に比べても露出が多くて、あんな攻撃的な格好の美優を一度でいいから見てみたい。
もちろん、露出が多いということは、生地が少ないということだ。
しかし、勘違いしないでほしい。
俺は決してロリータファッションを否定したいわけではない。
単にエロい格好の美優が見たいだけなんだ。
「この服かー。メイクアップにだいぶ時間が掛かるんだよね」
「それは……悪いとは思うんだけど……。どうにか、ダメか?」
「ふん。しょうがない。今は気分が良いので特別に着てあげます」
「よっし!!」
全力を出した甲斐があった。
たぶん、美優だって、内心では乗り気なんだよな。
恥ずかしがり屋だから素直じゃないけど。
美優が着替えに入ってから、今度は30分が経っても準備が終わらなかった。
俺はスマホを握りしめたまま、今か今かとその時を待ち続ける。
しかし、メッセージが送られてくることはなかった。
その代わりにやってきたのは、俺の部屋のドアをノックする音。
美優は「準備できたから私の部屋に来て」とだけ言って、自室に戻っていく。
なぜ今回だけ直接俺の部屋まで来たのか。
それが判明したのは、美優の部屋に入って、そのゴテゴテに装飾された姿を見たときだった。
「ネイルを付けたらスマホが使えなくなっちゃって」
美優が手をわしわしさせるその指先には、凶器にもなりそうな程の長い爪がつけられていた。
毒々しい紅黒のネイルと、ぷっくりとわざとらしく強調された涙袋が、ちょっぴり精神を病んでいそうなその風貌。
しかし、左右に結い上げられたツインテールの可愛さが、そんなネガティブな印象を全て吹っ飛ばす。
真っ黒なゴシックロリータに、おそらく撮影用のコンセプトとして取り入れられた小悪魔なテイストが、幼なエロいという凶悪なステータスとなってそこに確立されている。
「ああ……! やっぱり最高だ……思った通り…………いや想像以上に可愛い……!!」
三度目となる美優のロリ服鑑賞だったが、その感動が薄れることなど一ミリもなかった。
むしろ美優の可愛い一面や、その可愛さを引き出すために研鑽された技術工夫を見るたびに、美優という人間の底の深いところまでを見れたような気がして歓喜が湧きやまない。
「美優、ほんと可愛すぎてやばい。脈が200くらいありそう。死ぬかも」
「お兄ちゃんそろそろほんとに死んじゃうよ」
「俺が死ぬときはその格好で看取ってほしい」
「私より先に死なないでね」
美優は照れたり、呆れたり、笑ったり。
どんな表情をしていても可愛かった。
「もう一つお願いがある」
「なんでしょうか」
「い、い……ちまい、だけでいいから……写真をだな……」
あわよくば待ち受けにしたい。
この可愛い小悪魔をスマホに入れて毎秒ニヤニヤしたい。
「むぅ……どうしよう……」
美優は巻いたツインテールの先をビヨンビヨンと引っ張って考え込む。
「まあいいけど」
そして、なんということか許可を得ることができた。
これは美優の写真を手に入れられること以上に嬉しい事実である。
この承諾は間違いなく信頼の表れなんだ。
そうでなければ、たとえその相手が恋人だったとしても、絶対の秘密が映る写真を渡せるわけがない。
「よし、じゃあ早速……」
俺はスマホを取り出して、その世界一美麗な被写体をカメラの中に収める。
そして、なんともいえないアンニュイな表情の美優を、そのままパシャリと撮った。
可愛い。
可愛いけど、スマイルぐらいはしてもらえばよかったかな。
「どんな感じ?」
美優が俺のスマホを覗き込んできて、その写真のデキを確かめる。
「やっぱり棒立ちだと写り方が悪いね」
「なら、少し構図に注文つけていいか?」
「いいよ」
俺はカメラを向ける角度や、美優の表情、立ち位置やポーズを、できるだけ楽しそうに、しかし明るすぎないように諸々お願いをして、何枚か写真を撮った。
しかし、どれも満足のいくデキにはならず、二人で頭を悩ませる。
「こうなったらまたアレを使うしかないね」
そう言って美優が取り出したのは、いつぞや使ったデジタル一眼だった。
「それ、使っていいのか? いいなら、喜んで使うけど」
「ぜひぜひ。それでちゃんと可愛く撮ってね」
「任せろ」
俺も前にオタク友達の繋がりで、カメラマンの真似事をしたことがある。
実態としてはほとんど荷物持ちみたいなものだったが、メインのカメラマンが珍しく自分のカメラを使われることを嫌がらない人だったので、ほんとに基礎の基礎ぐらいだが教えてもらうことができた。
「美優、いいぞ! ほんとに可愛い! 世界一可愛い!!」
「お兄ちゃんそればっか言い過ぎ」
美優には語彙力のなさを指摘されまくったが、どの写真に映る美優も表情が柔らかくて、それほど悪くない褒め方だったように思う。
「美優、そのポーズもいいよ。もう少しだけ手下げて、目を伏しがちに……」
「うん……、こんな、感じかな」
「そう! それ! 良いよ美優!! 滅茶苦茶可愛い!!」
「んふふ。もー。おバカ」
椅子やベッドを使ってもらって、ときには肉食獣っぽい格好もしてもらった。
拘束具に似たコルセットに強調されるたわわな胸。
薄い蝶の羽を思わせるドレススカートが、ベッドの上をヒラリと滑る。
一般的なゴスロリ衣装に比べても露出が多く、本来は服で隠されているはずの腕部にも肌色が覗いていて、少し色っぽいポーズをさせると途端にドエロイ被写体になる。
「お兄ちゃん、凄いことになってるけど」
美優の憐憫が向けられたのは、俺の股間部。
俺は美優の撮影をしているうちに勃起してしまっていた。
「こ、このまま、続けていい……?」
「どうぞ。どうせわかってたし」
そんな流れで、俺は完全勃起状態で撮影をひたすら続けた。
こんなにたくさん撮っても、写真として貰えるのはどれか一枚だけ。
でも、何より美優が楽しそうにしてくれているから、そんな物はもうおまけ程度にしか思っていなかった。
「美優、今度は、片足かけて、壁にこう……そう! それで……!」
「だんだん要求がエッチになってる気がするけど……まあ……いっか……えへへ」
美優はぶつくさいいながらも、俺の要求を聞いてくれる。
それどころか、エッチなポーズを取らせられるたびにテンションが上っているようで。
もうデータには同じ衣装の美優が100枚以上保存されているのに、それでも夢中で撮影を続けた。
「み、美優、ごめん」
そして。
「めっちゃムラムラしてきた」
撮影への集中力が切れたせいか、俺の下腹部からそれまで堰き止められていた性欲が一気に吹き出してきた。
ずっと勃起したまま撮影を続けていて、パンツも先走りでだいぶ濡れてしまっているだろう。
「どうせそうなると思った」
美優もこうなることはわかっていたようで、俺を咎めることはしなかった。
それどころか、俺の膝下まで四足歩きして近づいてきて、ガブッとズボンの上から俺の勃起を齧ってくる。
「あっ……美優……それされると……してほしくなっちゃうんだけど……」
「エッチはしません」
ぐっ、ここまでされてエッチはできないのか。
いや、なにか、あるはずだ。
だってエッチをするつもりがないなら、こんな思わせぶりな態度は取らないはず。
「じゃあ……エッチはしなくていいけど……」
俺はたまらずパンツを脱ぎ、ガチガチに反り立った肉棒を露わにした。
「こ、こ……今度は、その、これを……咥える……ポーズで……」
美優は撮影をする俺の指示に全て従ってくれている。
これもその延長線上のものだと言い張れば、美優ならしてくれるんじゃないかと、そう思った。
「……変態」
美優は露骨に俺を軽蔑するように睨みつけてくるが、嫌とは言わなかった。
そして、俺の指示通り、美優は俺のペニスをパクッと口に咥える。
その瞬間、パシャッ、と、俺はほとんど無意識のうちにシャッターを押してしまっていた。
美優の表情が更に険しくなって、恨みすら感じるぐらいに俺を睨んでくるが、それでもペニスを咥えた口を離さない。
「み、美優。もっと奥まで咥えて」
俺はレンズ越しに映る美優に、フェラと何も変わらない指示を出した。
ときには口を離させて、舌で舐めるようにお願いして、その度に俺は美優のそのエッチな姿を写真に収める。
「美優……ああぁ……気持ちいい……あっ……!!」
美優のエロい顔をキレイに取るための集中力と、その姿に興奮する血液の速さによって、俺の息は高山で走り回った直後のように上がっていた。
なにより、カメラ越しにフェラをする美優がエロすぎて、射精を我慢するのに尋常ではない体力が持っていかれる。
「ん……ふっ……むちゅ……んくっ……くちゅっ……」
気づけば美優の顔が蕩けてしまっていて、俺の指示など無関係にペニスをしゃぶってくる。
自分で指示を出していたからこそコントロールできていた射精感が、限界を突き破って一気に射精の信号を脳まで伝達させた。
「あ、アッ……美優……出るッ……!!」
びゅっ、びゅくっ、ビューッ、ビュルルッ──!!
美優には口を閉じさせたまま、俺はその中に何度も何度も射精をした。
そして、精液の射出される勢いと、その苦い味に、かすかに強張る美優の表情を、俺はその快感の中で撮影し続けた。
「んー……ちゅぷっ」
美優が俺のペニスから精液を吸い出して、口を離した。
そのまま俺がカメラを向けていると、美優が口を開けて舌を出し、口内にたっぷりと注がれた白濁液を見せてくれた。
最後に、カシャリとその一枚だけを撮って、撮影会は終了した。
途端に静かになった室内。
やってしまったという気持ちは湧いてくるが、そこに後悔はなかった。
「美優、ありがとう。すごく可愛かったよ」
俺がお礼を述べると、美優は精液を飲み込んで、無言のまま俺にカメラを渡すように要求してきた。
美優はそれを腕の中に大事そうに抱えて隠す。
「選んでいいのはエッチじゃないのだけだからね」
「は、はい」
今回のことは、お互いにテンションが上がりすぎてしまったがゆえに起こった、事故みたいなものとして俺たちの間では処理された。
それでも写真を一枚だけ選ばせてくれる美優の優しさに、俺は涙を禁じ得なかった。
ちなみに、美優は「これはエッチじゃなくて撮影のポーズだから」と頑として主張を変えることはなかったため、やはりというか『ロリコスでエッチは禁止』というのは変わらないようだ。
「今度は美優の番だよ。……服は、どうする? そのままする?」
美優だって撮影中はずっとムラムラしていたんだ。
今朝だって俺は美優に何もしてやれてないし、これだけ尽くしてくれた美優を気持ちよくあげないと、男として立つ瀬がない。
「なら、私から一つ、エッチのお願いしていい?」
美優は「服は着替えるけど」と言葉を挟んで、俺の答えを待った。
「もちろん。どんなことでも言ってよ」
俺がノーなんて言うわけがない。
聞かなくたってそれは明白なはず。
でも、その質問をしたことにも、美優なりの意味はあった。
「……その」
美優はモジモジして、目を伏しながら、小さな声でその望みを口にする。
「もうちょっと、咥えさせてください」
美優がわざわざ質問をした理由。
それは「こんなエッチな私でも大丈夫ですか」という確認だった。
「美優の気の済むまでしていいよ。俺はいくらでも頑張るから」
一度フェラを経験してから、美優はどうやらそこに何かの魅力を感じてしまったらしい。
そんな風にエッチになってくれるなんて、俺としては願ってもないことだ。
だから、迷いはなかった。
迷うはずもなかった。
そして、俺は自分の部屋に戻って美優が着替え終わるのを待った。
その望みを受け入れることが、どれほど大変なことになるのか。
このときの俺には、知る由もなかった。