※この作品はR-18です。

俺の妹が最高のオカズだった   作:風見 源一郎

52 / 100
オフ会の延長戦

 

 俺はカラオケの個室トイレで、電動ディルドによるお仕置きによって潮を吹いた由佳と二人きりになってしまった。

 二人で入ると立つことすらままならないこの狭い空間で、由佳は洋式のトイレに逆向きに跨って息を荒らげている。

 

 こんなに酷い絵面だというのに、もう見慣れてしまって何も感じなくなった。

 自分のことながら嘆息してしまう。

 美優たちはずっと前からこうなってたんだろうな。

 

 俺にはこの意味不明な状況を自力で打破できる自信がなく、美優が由佳と一緒にカラオケに来ているらしいので助けてもらうことにした。

 

 ズボンのポケットからスマホを取り出して美優に通話をかけると、ワンコールで応答があった。

 

「──美優、質問があるんだが」

『うん。由佳のことだよね』

 

 さすがに察しの良い妹だ。

 あるいはこれも予定調和だったのか。

 

「罰ゲームのせいで由佳が潮を吹いて四階のトイレでダウンした。部屋まで運ぶから番号を教えてくれるか?」

 

 美優たちはトイレと同じフロアにいるはずだから、女の子一人を運び込むくらいはなんとかなるだろう。

 しかし、俺が質問をしても、美優はすぐに答えを返さなかった。

 

『もしかして、バイブ抜いたの?』

 

 美優は少しの間考えこんで、なぜかそんな質問を重ねてくる。

 

「それはまあ、抜いたけど。さすがに辛そうだったし」

 

 遊びで負けた罰ゲームだし、いくら美優でもそこまで徹底的にはやらないだろうと。

 そう思っていたのだが、この判断が誤りだった。

 

『ダメだよお兄ちゃん。罰は受けてもらわないと』

「ゲームで負けただけなんだろ? そこまでやるほどか?」

 

 由佳の場合は普段からお仕置きをされているから、生ぬるいと効果がないのは理解できる。

 それでも、やはりゲームはゲームだ。

 

『その女、自分が提案したゲームで自分で罰ゲームを決めて、散々私たちのことを煽ってきた挙げ句にボロ負けして飲食代も部屋代も払わずに出ていこうとしたんだけど』

 

 想像以上にどうしようもないやつだった。

 まったく同情する気にならない。

 

「うぅ……そ、それは……美優のやつがおっぱいでイカサマするから……」

 

 どうやら通話の内容は由佳にも届いていたらしく、意識を取り戻した由佳が鼻水をすすりながらぐずりだした。

 

『してないから』

 

 おっぱいでイカサマなんてどんなゲームならできるのやら。

 どんな責任も人になすりつけようとするその心意気は買うが。

 しかし、なんというかこの状況には違和感があるな。

 

「由佳はもうイタズラとかはしないって反省したんじゃなかったのか?」

 

 前にネカフェで相談に乗ってもらったときには、由佳には明らかな変化があった。

 それはどう考えても前向きなもので、俺は親心にも近い喜びを感じたほどだったのに。

 

「う……うるさい……」

 

 俺の問いに、由佳はいつものような生意気な反論はせず、虚しい口答えをするに終わった。

 

『というわけで、お兄ちゃんには罰を妨害したお詫びに代理執行人になってもらうね』

 

 電話口から聞こえてくる物騒な言葉。

 まさかとは思うが、こんなところで由佳をレイプしろなんて言うつもりじゃないだろうな。

 

『ディルドにゴムが被せてあるでしょ? それを使って、由佳が何と言おうと由佳の膣内で出して』

 

 まさかの予想通りの命令が下ってしまった。

 ほんとそういうところに躊躇がなさすぎる。

 

「そ、そんな……! もう無理やりしないって、お兄さんに約束してもらってるのに……!」

 

 それはネカフェでの相談の最後に交わされたもの。

 由佳とセックスをするつもりなんてなかったが、あのときの由佳になら俺は本気で優しくしてやりたいと思った。

 それに、山本さんをフッた後に慰めてもらった礼もある。

 

 だから、いくら美優の命令でも、断るべきだと。

 思考の表面上ではそう思うのに。

 

「由佳はどうしてそう悪いことばかりするんだ?」

 

 罰ゲームで女の子を犯すなんて倫理に反している。

 だが、俺を含めた美優たち中学生の間では、それがお仕置きとしてすでに成立してしまっているのも事実だ。

 

 その原因は俺でもわかる。

 

 由佳は口では拒否しつつも、そのお仕置きを受け入れてしまっているんだ。

 それどころか、周囲が由佳にお仕置きをするように、自ら誘導している節すらある。

 

 本気で嫌ならこんな程度の抵抗で済ませるはずがない。

 なにより、あとほんの少し大人しくしてさえいれば、美優たちだってここまでのことをしないのは由佳だってわかっているはずなんだ。

 

「か、勘違いなんだって。私は流れが悪かったから外の空気を吸いに行ってただけで……」

『それで荷物からなにまで持ち出すのはどうなの?』

「それは、セキュリティ上の問題よ」

 

 口ではこう言っているが、由佳が自らの非を認めているのは明白だった。

 態度がまるで自分の正当性を信じてもらおうとするものではない。

 

『お兄ちゃん』

 

 美優が小声で俺に話しかけてきた。

 由佳には聞かれたくない話ということか。

 

『前に私がお風呂でした話を覚えてる? 由佳と奏さんとの関係をすっきりさせたいって。それでお兄ちゃんにお願いしたいことがあるって相談したよね』

 

 俺が酷い振り方をしてしまった山本さんを救うため。

 そして、美優の何らかの失態によって拗れてしまった由佳との関係を修復するため。

 俺はその二人とセックスをすることになると美優に言われている。

 

『お兄ちゃんももう気づいてると思うけど、由佳がこんな態度を取るのには理由があるの。その原因である悩みをね、解決してあげてほしいんだ』

 

 由佳がどうしてもイタズラや悪巧みをやめられない理由。

 それはたしかに存在しているのだと美優は言った。

 

 だが、その悩みが何なのかは、美優の口から教えることはできないらしい。

 俺が自分の力で気づいてやることこそが、由佳の悩みの解決する唯一の方法とのことだ。

 だから美優は、お風呂場で詳細を隠したまま俺にお願いだけをした。

 

『任せてもいいかな』

「……わかったよ」

 

 美優の依頼はいつだって唐突だ。

 言動は謎ばかりだし、俺もずっとそれに振り回されてきた。

 

 でも、そこには常に否定のしようがない理が存在した。

 だから、俺は今回も美優を信じる。

 

 美優は最後に『それまでは好きに射精していいよ』と言葉を残し、通話を切った。

 

「何を話してたの?」

 

 俺がスマホを洗面台に置いたことに気づいた由佳が、聞こえずにいた最後のやり取りについて尋ねてきた。

 

「由佳の処遇は俺に任せるって」

「へ? マジ!?」

 

 由佳は嬉しそうに顔を俺に向けた。

 あのニヤニヤした顔は「こいつはチョロいな」と思ってる顔だな。

 

 よし、お仕置きをしてやろう。

 

「言っておくが、美優たちに迷惑を掛けたことを見逃すつもりはないからな」

「たかが二千円程度をチョロまかしたぐらいで何が迷惑だっての。それに見合うだけの罰ならもう受けたでしょ? あれがお兄さん以外に見られてたらどうなってたと思うの?」

「言い分は理解できるけどな……由佳はいい加減に反省というものを覚えろ……」

 

 由佳が正当な主張をしたことなんてほとんどない。

 なのに、つい由佳の意見には同調してしまいそうになる。

 どういう能力なのかは知らないが、滅茶苦茶な主張を強引に納得させるだけの何かが、由佳にはある。

 

 まともに取り合っていると危険だ。

 こちらで主導権を握らないと。

 

「お仕置きをするから、腰を上げろ」

「な、何よその命令のしかたは」

 

 俺は電動ディルドに電源を入れて脅してみるが、由佳は怯えるどころか呆れていた。

 こいつに馬鹿にされるのは悔しい。

 

「そんなやり方で従うわけないでしょ」

「でも従うしかないだろ。いざとなれば俺の方が力が強いし、あんまりやりたくはないけど、裸の写真でも撮って脅すこともできるし……」

「ちがーう! そうじゃないでしょうが!」

 

 由佳は飛び上がるようにクルッと体の向きを変えて便座に正しく座り直し、なぜかムキになって説明を始める。

 

「そんなことを言うくらいならやるの! やってから脅すのよ! 美優ならそうしてる! それどころか全裸にひん剥いた私を便器につま先立ちさせて『落ちずに5回イッたら許してあげる』とか理不尽なことをほざいてこっちが全ての非を認めるまで延々と続けるのよ!」

「我が妹ながら恐ろしすぎる……」

 

 前世はヤクザの親玉か何かだったんだろう。

 俺には到底真似できそうにない。

 

「わかった? お兄さんにはお仕置きとか向いてないの。だから……ね?」

 

 由佳が「わかってるでしょ?」と言わんばかりにパチパチと瞬きをしてくるが、さてはて何をおっしゃっているのかさっぱりだ。

 

「今からラブラブホテルに抜け出して、イチャイチャセックスしよ?」

「何がなんでも断る」

「じゃあネカフェでいいから」

「場所の問題じゃない……!」

 

 ダメだ。

 どうしても流される。

 

 ここで由佳とお仕置きセックスをしないと、美優の目論見通りにはならないのに。

 どうにかしてこちらの主張を押し通すんだ。

 

「大体さ。そんな調子でちゃんと勃つの?」

 

 由佳の先制攻撃はかなり強烈なものだった。

 たしかに、こんな空気で襲いかかったところで、きちんとセックスできる気がしない。

 

「したくないことをすることないじゃん。別にイチャラブする必要はないけどさ、普通にセックスしようよ」

 

 由佳は生意気顔はそのままに、ちょっぴり頬を赤らめて俺のズボンのチャックをなぞる。

 思わず、息子がピクッと反応してしまった。

 

「ね。そのほうがココも喜んでるよ」

 

 由佳は次第に硬くなり始めたペニスの裏筋を、人差し指でゆっくりと前後にさする。

 

「お前な……悪いことをした自覚はあるんだろ……」

「そうだけどさ。そろそろご褒美をくれないと、私も叱られてばっかじゃ反省できないもん」

 

 なんとも身勝手な言い分だが、どうしても同情してしまう。

 このままだと本当に普通のセックスをして終わりになりかねない。

 そうなったら山本さんの誘いを断ったことすら正当化できなくなる。

 

「いいでしょ? 後でごめんなさいってするから……」

 

 由佳は俺のズボンのチャックを下ろし、物欲しそうにしながらパンツの前開きボタンまでを外した。

 

 マズい。

 本当にマズい。

 フェラなんか始められたら絶対に普通のセックスしかできなくなる。

 

 どうにかしないと。

 頭ではそう考えているのに、体の動かし方が全くわからない。

 

「──美優のお兄さん、開けてください」

 

 ドアをノックされて、俺と由佳は凍りついた。

 

 それから、一秒の間を開けて危機的状況を理解した俺は、由佳が押し込んできた勃起ペニスを慌ててズボンに仕舞った。

 皮をチャックに挟まなくてよかった。

 

「あ、あああ、あの、お腹が痛くて……二階にもトイレはあるので……!」

 

 ドアの向こう側に誰がいるのかわからなかった俺は、慌てて言い訳をしたが。

 その直後に、俺は「美優のお兄さん」と呼ばれたことを思い出した。

 

「私ですよ。遥です。開けてもらってもいいですか?」

 

 お次はまさかの遥の来訪だった。

 こんな狭い場所で同窓会でもやるつもりか。

 

 俺がドアを開けると、遥は一礼をしてトイレの中に入ってきた。

 ここ、男子トイレなんですけど、そこは大丈夫なんですか。

 

「お邪魔しますね」

「もー!! いい雰囲気だったのにー!!」

 

 由佳の文句を聞き流して、遥は持ってきたバッグを洗面台の上に置いた。 

 意外にも薄いワンピース一枚という夏らしい格好の遥は、やはりというか妖精のように可愛らしい。

 美優のおかげで以前のように一目惚れをするような情動は無くなったが。

 

「遥はどうしてここに来たんだ?」

「お助けアイテムを持ってきたので、お貸ししようと思って」

「あんたの変態アイテムは絶対につけないッ!」

 

 由佳が八重歯を剥き出しにして遥を威嚇するが、遥はそれを意に介さずにお助けアイテムとやらをバッグから取り出した。

 

 それは綿棒ほどの細さの、長いプラスチック棒だった。

 そして、ついでのように取り出される目隠し布と腕の拘束具。

 

 どうしてそんな物騒なものを持ち歩いているのかな。

 

「そ、それは反則でしょ!? それだけはダメだって!!」

 

 どうやら由佳は長細い棒を見て怯えているようだった。

 これがどんなアイテムなのかは俺にはよくわからない。

 だが、エロいことに使う道具だということはわかる。

 

「ボロ負けだったから詳しく調べてなかったけど、荷物の中にイカサマの痕跡を発見したから追加ペナルティね」

「うぐっ……ほんとネチッこくて嫌味な性格……!」

 

 この状況を平等に判断して、悪役はどちらなのだろうか。

 にしても、イカサマをしたのにボロ負けしたとか、どんだけ不器用なんだこいつは。

 

「とりあえず目隠しして。これを下に咥えておいて。声は出さないでね」

「ちょ、いだっ、こ、こらぁ……!」

 

 遥は問答無用で由佳を後ろ手にして拘束具を嵌めると、また便器に前から跨がらせて目隠しをした。

 そして、お尻を叩いて腰を上げさせ、ゴムを装着したままのディルドを挿入してスイッチを入れる。

 

「お、おっおっおっ……あぁぐぅっ……!」

 

 由佳は後ろ向きで腕を拘束され、背中を仰け反らせる。

 

 洗練された迷いのない動きだ。

 どれほどの経験を積めばこれほどの技術が身につけられるのか。

 

「さて、由佳とセックスをしてもらう前に、私からお話があるので聞いてもらえますか?」

 

 遥は目の前でバイブの刺激に喘ぐ由佳など無いのもののように、至近距離で俺に向き直った。

 右手に持ったままの長細い棒はまだ使わないようだ。

 

「まさか、話をするために由佳をこの状態に……?」

「目的はお手伝いですよ。ただ、ついでにお話したい内容が聞かれたら困るものなので、由佳の注意を逸らしました」

 

 それは別の機会ではダメだったのだろうか。

 助け舟に関してはありがたいけれども。

 

「この状況そのものが重要なんですよ。お兄さんが由佳に絆されるのは想定の範疇なので」

 

 遥は由佳の喘ぎ声とバイブの音にかき消されないくらいの小声で囁きながら、長細い棒でまだ硬さが残ったまま仕舞われている俺のペニスを突いてきた。

 ズボン一枚だけでは残念なくらいにバレバレなテントの張り方だった。

 

「お兄さんはお兄さんらしく、由佳の相手をしてあげてください。今回のお仕置きは、ちょっとしたきっかけ作りですので、どうか気楽に」

「気楽に女の子を犯せるか……」

「形ですよ形。由佳もお兄さんにしてもらえるのがわかってるので、いつもよりもかなり大人しいですよ? よっぽど気に入られてるんですね」

「なんだろう素直に喜べない」

 

 遥はバイブ責めに苦しむ由佳の膝を、プラスチックの棒でツンツンする。

 由佳はビクビクを身を震わせながら腰を振った。

 

「私は由佳への仕込みを終えたら部屋に戻るので、一つだけ忠告をしておきます。由佳と話すときは、過去の言葉だけに振り回されないでください。そのときに感じた印象まで思い出さないと、いずれ簡単に丸め込まれるようになりますよ」

「そ、そうか。気をつけるよ」

 

 遥はその情報を俺に伝えると、由佳の膣からディルドを抜き取って俺に手渡した。

 そして、プラスチック棒の柄の部分で俺のズボンのチャックをノックする。

 どうやらディルドからゴムを外してペニスに装着しろとのことらしい。

 

 遥の前でズボンを脱ぐのはかなりの抵抗があるんだが。

 とりあえず、ゴムだけでも巻き取っておくか。

 

「じゃあ、由佳。するよ」

「や、やだやだ……それはほんとムリ……!」

「はい、ジッとしててねー」

「うっ……ううぅ……ッ!」

 

 遥は長細いプラスチック棒を、由佳の膣内にゆっくりと挿入した。

 その先端が子宮口のあたりまで到達すると、それを数センチ幅で前後させて、性感帯に微弱な刺激を与え続ける。

 

「はぅ……やだぁ……それだけは勘弁してぇ……悪かったからぁ……」

 

 これまでのディルド責めのような激しいプレイから一転して、由佳は静かに腟内をチクチクされているだけ。

 いくら潮吹きの後とはいえ、触覚が鈍いと云われている膣内では、プラスチック棒を入れられてることすら感じなさそうだが。

 どうして由佳はこんなものを怖がっているのだろうか。

 

「由佳はお仕置きの経験が長いので、体が出来上がっているんですよ。これはある種の暗示でして。由佳はこうして奥をツンツンされると、膣内が疼いて我慢できなくなるんです」

「は……え!? それって……!!」

「はい、その通りです。じゃあ頑張ってくださいね」

 

 遥は俺からディルドを取り上げると、スマホの通知を確認してから荷物をまとめてトイレを出ていってしまった。

 

「はうぅ……もうやだぁ……」

 

 由佳は目隠しをされて、後ろ手に手首をピッタリと固定されている。

 そんな体勢で膝だけを動かして、膣内の疼きに必死に耐えている。

 

「あ……あぁ……奥に欲しい……うぅ……死んじゃいそうだよぉ……」

 

 そんな由佳の可哀想な姿に、俺の体はなぜか興奮し始めていた。

 俺がこれまで由佳とそういうプレイしかしてこなかったせいなのか、それが由佳の持つ独特の体質なのか。わからないけど、どうにもこの姿が悩ましく映る。

 

 由佳とは俺らしくセックスをすればいいとのことだ。

 どういう意味かは不明だが、美優のような鬼畜責めをすることは求められていないことはわかる。

 俺が何にも配慮せずに、俺らしくこの罰を終わらせるなら、やはり由佳が一番楽に終わる方法を選ぶ。

 だとしたら、それでいいってことなんだよな。

 

 本当は何もせずに釈放してあげたいけど、由佳はこんな状態だし。

 幸いにも俺のペニスは勃起している。

 手早くゴムを付けて済ませてやるか。

 

「由佳、挿れるぞ」

「うぅー……! 次は普通のセックスって言ったのにぃ……!」

 

 由佳は文句を言いながらも、素直に腰を上げた。

 

 俺は由佳の腰を両手で持って、愛液の滴る肉穴に、ゆっくりとペニスを挿入する。

 

「あひぃっ……ヤバッ……いま敏感になり過ぎてるから……まずいかも……」

 

 由佳は長時間のバイブ責めのせいか、軽く膣奥を小突くだけで激しく身を跳ねさせた。

 

「大丈夫か? 一旦抜いた方がいいなら、それでも……」

「い、イヤ! 抜いちゃイヤ! 抜くのはダメ……だけど…………で、でも……これ以上、奥に来たら……気持ちよすぎて頭が変になっちゃう……!」

 

 由佳の態度は欲しがったり拒絶したりと定まらなかった。

 気持ちは汲んでやりたいけどこのままだと埒が明かない。

 思い切って奥まで挿れるしかない。

 

「由佳、少しだけ我慢してくれ」

「ひ、ひぎやぁああっ!! いひゃぁ、らめらぁのぉ!!」

「こら……大声を出すな……!」

 

 強引にピストンをすれば由佳が大声で喘ぐ。

 かといって、一度奥まで挿れてしまったペニスを抜こうとすると、それはそれで由佳が全力で拒んで暴れ出す。

 

 もはや由佳に合わせている余裕は一切なかった。

 俺は由佳の口を塞いで、膣内の疼きを擦り取るように背後から激しく腰を打ち付けた。

 

「うぅぅぐぅあうぅ!! んふぅー!! んんっッッ!!」

 

 拘束された女の子の口を手で塞いでバックで犯すなんて、これまでで最悪のレイプ行為だった。

 しかし、こうなったらもうダラダラと引き伸ばしてもいられない。

 

「ふぐっ……んんっッ!! ふんあぁあんっ……ううぅうぅッ……!!」

 

 俺はピストンの速度を緩めずに由佳を攻め倒した。

 由佳はいつの間にかイキっぱなしになっていて、再び潮吹きのように溢れてくる愛液に、腰を打ち付ける音がトイレ内に響く。

 それを避けるために俺はストロークを小さくして、押し付けるようにする動きに変えたのだが、どうにもこれが由佳の性感帯にハマりが良かったらしく、由佳はキュッと膣肉を締めてより激しく絶頂に達した。

 

「ああぅっぅあああっ……はひやぁうぅぐぅぅっ!!」

「由佳……もうイク……イクぞ……!」

 

 由佳の絶頂に合わせて、俺も腰の動きを速めた。

 ペニスを根元まで深く打ち付け、暴れる由佳を両腕でガッチリと後ろからホールドし、最後は子宮口にペニスを突き刺す勢いで奥まで挿れて由佳の膣内で射精した。

 ディルドですっかり柔らかくなっていた肉質が想像以上に気持ちよかった。

 

「はぁ……はぁ……」

 

 互いに息を切らし、ようやくこの脅迫的なセックスは終了した。

 もし外に人がいたら聞こえててもおかしくなかったけど、行為の最中はそんなことを心配している余裕なんてなかった。

 

 こんなことをして、本当に由佳の悩みを解決することに繋がるのかは俺にはわからない。

 でも、美優のことだから、意味のないことはさせないはず。

 なにより美優は、俺が他の女の子とセックスするのは嫌だとはっきり口にしたんだ。

 その気持ちを犠牲にしてでも得たかった何がこの行為にはあったと、まずは信じるしかない。

 

 俺はゴムを外して口を結び、陰部にまとわりつく精液と愛液を洗ってから美優に連絡をした。

 それから瀕死の由佳を部屋に運び入れるのを手伝い、名前しか知らなかった優花里ちゃんという美優の同級生に挨拶をして、背中を刺されるような視線に見送られながら俺はオフ会をやっている部屋に戻った。

 

 そこでは夕食前の最後のカラオケタイムが始まっていて、みんなずいぶんと盛り上がっていたおかげか俺が大遅刻をしたことをそれほど気にしてはいないようだった。

 

「ソトミチ、戻ってきたか。悪いな、あんまりアシストしてやれてなくて」

 

 放心状態の俺とは逆に、そわそわと落ち着きのない鈴原が話しかけてきた。

 俺が精気の抜けた顔をしているのでオフ会を楽しめてないと心配してくれたんだろう。

 

「アシストはいいって言っただろ。それに、いい刺激にはなってるよ。……鈴原は夕食会が終わったらどうするつもりなんだ?」

 

 俺は彼女を作る気はないし、黒澤さんと田中さんがそれぞれハルマキさんと彼方ちゃんをお持ち帰りしたら、その後は解散する流れだと思っているが。

 

「それがだな。俺、あれからハルマキちゃんと話し合って……。結論を言うと、俺はハルマキちゃんを信じることにした。だから、夕食が終わったら、ハルマキちゃんの相談を受けようと思うんだ」

 

 鈴原はチラッと横目でハルマキさんを見た。

 ハルマキさんも俺と鈴原のことを眺めていたようで、鈴原と目が合った瞬間に、楽しげな笑みを浮かべてくる。

 そんな笑顔にすっかりハートをやられてしまったのか、再び俺と目を合わせた鈴原の顔はもうゆるゆるになっていた。

 

 ああ、なんかダメそうだな。

 しかしまあ、友達としての忠告はしたし、ハルマキさんが絶対に悪い人と決まったわけではないから、この先は鈴原に任せたいんだが。

 

「相談に乗るのは構わないけど、面倒だけは起こすなよ。俺はもう帰りたいんだから」

「わかってるって。ちゃんと上手い具合にやるよ」

 

 俺はゲームにそこまで本気じゃないから、関係が拗れてギルドが解散とかになっても気にはしないけど。

 オフ会で幹事三人のいざこざとかが発生したら、俺まで巻き込まれかねないからな。

 早く家に帰って美優とイチャイチャしたい。

 

「よーしお前ら! 時間だ! 飯に行くぞ!」

 

 黒澤さんの号令と退室コールに追い出されるように俺たちはカラオケを後にした。

 

 夕食会場は歩いて行ける距離にあるレストラン。

 個室居酒屋に似た雰囲気で、学割コースを1980円で楽しめる。

 学生からすれば少なくはない出費だが、出てくるものと質と場所代を考えればかなりリーズナブルな値段設定だ。

 

 そんなお店に行く道すがら、俺は鈴原と黒澤さんと三人で歩いていた。

 

「おい、お前ら」

 

 黒澤さんは後ろから俺たち二人の首に手を回してきてヒソヒソ話を始めた。

 ガタイがガタイなだけに腕を掛けられるだけでかなり重たい。

 

「調子はどうだよ。ココはちゃんと温まってんのか?」

 

 黒澤さんは鈴原の股間をグイッと掴んで持ち上げる。

 鈴原の歪んだ顔を見ているだけで痛い。

 

「ぼ、ボチボチっすかね、今回は顔合わせ会になりそうな気が……」

「んーだまたかよ鈴原よ。お前、この前もメッセージのやり取りだけで満足してただろ? ダメだぜ会ってるうちにヤらないと。ハルマキちゃんはご奉仕してくれそうだぜ?」

 

 黒澤さんは後ろから付いてきている女子グループに見えないように手筒を作って上下に動かす。

 

 ハルマキさんは複数の男に声をかけているらしい。

 鈴原と黒澤さんの間でさえ折り合わなくなっているのに、どうするつもりなのかな。

 鈴原だって黒澤さんを出し抜いたりなんかしたら半殺しにされかねないと思うんだが。

 

「今日のメンバーはハルマキちゃん一強じゃないっすか? だから、いいかなーって……」

「馬鹿かお前は。鈴原だって女の経験は少ないんだろうが。ももちゃんでいいからヤれよ。動画撮ってルームに流そうぜ。俺もハルマキちゃんのハメ撮り流してやっからよ。ソトミチはそれ見てシコれ。そうしてっとな? 欲しくなって次はヤル気が出てくんのよ。これも、チームワークってやつだ」

 

 黒澤さんはそれだけ言うと、またハルマキさんの横に並んでお喋りを始めた。

 ハルマキさんの発言のどこまでが真実なのかはわからないが、誰といつ話してても笑顔を絶やさないあたりは根性があるよな。

 

「くっそ、どうすっかな……」

 

 鈴原はハルマキさんとのメッセージのやり取りを見返しながら呟く。

 あの黒澤さんを見るに、今夜の一日だけでも預けてしまえば、鈴原がハルマキさんを自分のものにできる可能性は限りなく低くなる。

 だから、ハルマキさんと二人きりの相談会をするには、夕食が終わってすぐにこっそりと抜け出さなければならないわけだが、そんなことをすればその後が怖い。

 

 さっき軽く肩を掴まれただけで、黒澤さんがかなりの武闘派なのはわかった。

 正面から突き飛ばされたらそれだけで骨も心も折れそうだ。

 

「無理そうなら諦めろよ? 今日の出会いが全てじゃないんだし」

「わかってるよ。わかってるけど、なんというか、ハルマキちゃんだけは、違うんだ。運命というか、この人だって感じがするんだよ」

 

 鈴原はもう完全にハルマキさんの虜になっていた。

 童貞を殺すのが上手すぎる。

 

 どうにもまともな精神状態じゃなさそうだからな。

 鈴原には悪いが、夕食が終わったら即行で帰らせてもらおう。

 

「いらっしゃいませ。ご予約の黒澤様ですね? 席までご案内します」

 

 レストランに着くと、今度は男女交互に、全員の隣と向かいが異性になるように並んだ。

 合コンで席替えをするときによくあるパターンだ。

 

 俺はトイレが近いからと言い訳をして端っこに座らせてもらった。

 残りの時間はそれぞれの思惑を外野から眺めるだけにしたい。

 と、思っていたのだが、対極の位置に座っていた黒澤さんを無視してハルマキさんが俺の隣に座ってきてしまい、俺は鈴原と黒澤さんの両方から睨まれることになった。

 

「ソトミチくんのお隣、ゲットだぜ」

 

 ハルマキさんはキメ顔で音の出ない指パッチンをする。

 スカってもやり切った表情を崩さないのは偉い。

 

「なぜ俺の隣なんだ」

「うーん。なんか疲れた顔をしてるから?」

 

 それは申し訳なかった。

 さきほど中学生をレイプしてきたばかりなのでな。

 心身ともに疲弊している。

 

「幹事としては、みんなに楽しんで帰ってもらいたいのです」

「ああ、それは……そうだよな。気を抜いて申し訳ない」

「そうだよーもー。これからが楽しいんだから。ご飯の食べ方って、その人の性格とかが出るじゃない? 狙った女がまともかどうかを見極めるならココだぞー! って。ふふっ」

 

 ハルマキさんはパントマイムでフォークとナイフを表現する。

 

「なんてね。抜いていいのは、こっちの方だぞ」

 

 かと思いきや、ハルマキさんは口を窄めてじゅぷじゅぷっと、スパゲッティを食べると見せかけた下品な顔で俺を誘う。

 その意味ありげな仕草はいったいなんなのかな。

 恋人がいるってもう言ったよね?

 

「口でするだけなら、浮気じゃないから」

 

 ハルマキさんは手で口元に壁を作って、ヒソヒソと呟く。

 俺にはまったく本性を隠さなくなってきたな。

 いよいよ剥がれてきた化けの皮の中身が酷すぎる。

 

 ここまで清々しいと逆にビッチと呼ぶのが憚られるな。

 元から遊びのセックスを悪いものだと思わないタイプなのかも。

 実際のところ、本人が好きでしてるなら、それを外野が批判する権利なんてどこにもないわけだからな。

 

「でもそれ自分の彼氏に言える?」

「他の女としてくれた方が、私とのエッチも刺激的になるでしょ? 背徳感というか、罪悪感というか。そういう心臓に負担のかかる行為って、依存性が強いらしいんだよね。そうなれば、彼氏ちゃんは何を犠牲にしてでも私とエッチをしたがる……つまるところ、そっちのがお得なわけですよ」

 

 ハルマキさんは両手でカニのマネをして、ちょきちょきと中指と人差し指を動かす。

 お得っていう表現がすでに酷い。

 

「ソトミチくんは飽きたりしないの? 彼女が下手過ぎて物足りないとかさ。新しい刺激が欲しくない? 一万円くらいで」

「やっぱり金なのか……」

 

 この調子だと今までの彼氏からもかなりの額を搾り取ってそうだな。

 他から搾り取って彼氏に貢ぐタイプではない、完全自己消費型の集金女子だ。

 もしかしたら今は彼氏がいないっていうのも嘘なのかもしれない。

 

「サクッとトイレで出すだけでも気持ちいいよ? 絶対に風俗に行くよりいいって」

「うん、あの、それは、経験談ってことでいいのかな?」

「あっ……と……。ど、ドリンクは何にしようかなー!」

 

 よくわからないタイミングでシラを切るハルマキさん。

 それからもしつこく誘われはしたが、俺は事後だったので全く股間に響いてくることはなかった。

 

 そんな俺の状態をハルマキさんも察したようで、席替えタイムになると鈴原の隣に移動してしまった。

 あいつはきっと搾れるだけ搾り取られるだろうな。

 まあ、ハルマキさんに騙されるなら、たとえ数十万円単位で持っていかれても、いい勉強になったと笑い話にできるだろう。

 

 俺が考えるべきことは、ハルマキさんが誰とセックスするかなんてことじゃない。

 由佳がなぜあんな態度を取るのかについてだ。

 

 美優が言うには、由佳の性格を理解することは、山本さんと仲直りするためにも重要なことらしい。

 ならばこれは俺が本気で取り組まなくてはならない課題なんだ。

 あの山本さんにあんな悲しい顔をさせてしまった俺にはその責任がある。

 

 気になるのはやはり遥の忠告だな。

 過去の言葉だけではなく、当時の印象まで思い出せと言われたけど。

 昔のことなんてそんな簡単に思い出せるものじゃない。

 

 俺にとっての由佳は、わがままで、怒りっぽくて、世話焼きで、何よりも美優が好き。

 いつもみんなにイタズラを仕掛けて返り討ちにあうポンコツの変わり者。

 

 俺に少なからず好意を抱いているようだが、それは俺が美優の兄だからであって、そうでなければここまでの執着はされなかっただろう。

 普段付き合っている友達の感じからするに、レズというわけではなさそうだ。

 美優だけが由佳にとっての特別。

 そして、その影響で俺も特別枠に入れられた。

 

 今の由佳は俺とエッチをしたがっている。

 その前は、美優に好き好き言っていた。

 たしか、美優の笑顔が見たい一心で頑張っていて、それが空回りして過剰なイタズラになってしまって、いつの間にかそれが、恋心に変わっていた……んだっけ?

 

 なんだろう。

 記憶に間違いはないはずなのに、この流れに違和感を覚える。

 でも、いくら考えても結論が出そうにない。

 

 まだ情報が足りないのか。

 俺の思考力が足りないのか。

 

「……ん?」

 

 俺が考えに耽っていると、スマホに一通のメッセージが届いた。

 由佳が写真を送ってきたようだ。

 

 その写真は中学生組が食事をしている最中のもの。

 卓上には中学生には似つかわしくないお高そうな料理が並べられている。

 どうやらそれは由佳が勝手に自撮りをしたものらしく、美優たちは端っこに写り込んでいるだけでカメラに目を合わせてはいない。

 

 で、その本人はというと。

 

『デラックスジャンボパフェをいつ奢るか考えておきなさいよ!!』

 

 というメッセージを添えて俺に中指を立てていた。

 美優以外のことに無駄金は使いたくないが、約束は約束だし、なにより話し合いの機会としてはちょうどよいので従ってやるしかないな。

 

 それからの夕食会は、ハルマキさんが絡んでくることもなかったためか、これといって目立つような出来事は起こらなかった。

 ただ、来きたるべき本番に向けて黒澤さんがスキンシップを激しくしたせいで、最後の方のハルマキさんは露骨に鈴原へとすり寄っていた気がする。

 

 夕食会そのものは恙無く終了し、クレジットカードを使うからという理由で黒澤さんが集金を行って、俺たちは外に出た。

 美優たちの解散のタイミングも同じだったみたいで、俺は美優と合流するためにチャットに夢中になっていて。

 

「んじゃ今日はこれまでだ! これからもギルドに顔を出してくれよ!」

 

 会計を終えた黒澤さんが、店を出てすぐに全体に声掛けをした。

 この時点で、ようやく気づいた、人数の不足。

 

 鈴原とハルマキさんが姿を消していたのだ。

 

 そのことを、黒澤さんはすぐに言及することはなかった。

 とりあえずは幹事としてオフ会の締めを行って、解散をしてからは、やはりというか向かってきたのは俺のところだった。

 

「おう、ソトミチよ。ハルマキちゃんはどうだったよ?」

「え、ああ、可愛かったですよ」

「だろう? しかもガードも薄かったからよ、お前らがトイレに行ってる間にちょろっと胸を揉ませてもらったんだが。ありゃEカップはあるな。細身だから挟めるかはわからんが、使いみちはアリそうだ」

「な、なるほど」

 

 黒澤さんはどこに行くとも聞かずに俺の横にひっついて話しかけてくる。

 美優から集合場所を聞かれてるけど、このままでは無理だな。

 この人を美優に会わせることだけは絶対に避けたい。

 

「んでよぉ、ソトミチよ」

 

 黒澤さんの不機嫌そうな声。

 それは他でもなく、鈴原とハルマキさんが一緒に消えたことへの怒りだった。

 

「そのハルマキちゃんの姿が見えねぇんだが? お前、なにか知らねえか?」

「いえ、俺はほんと、何も話とか聞いてないんで」

「鈴原のやつ、電話しても出やしねえ。あいつ……まさかとは思うが……」

 

 黒澤さんが額に青筋を浮かべて怒気を強くする。

 

 鈴原のやつ上手い具合にやるとか言ってたくせに、全部放っぽり投げやがったな。

 俺はデラックスジャンボパフェくらいじゃ済まさないぞ。

 

「あ、あいつ! ハルマキさんに相談を受けたって聞きましたよ! だから、もしかしたら近場のカフェとかで話し込んでるのかもしれません……!」

「ああぁ!? 俺はハルマキとヤるってんだからそんなんどうだっていいんだよ!! あーちくしょう!! ぜってぇホテル街だぜあいつら……許さねぇ……!!」

 

 黒澤さんは俺の話などまるで聞かず、道脇に置いてあったポールを蹴り飛ばす。

 

「まあいい。少なくともあの女は俺から逃げられねぇんだ。おいソトミチ。てめぇのとこに鈴原からの命乞いが来たら真っ先に俺に連絡しろよ。どうせ俺に会う以外に道はねぇんだからよ」

 

 黒澤さんはそれだけ言うと、ホテル街へと走って行ってしまった。

 

 俺は慌てて鈴原と通話を試みてみるが、今は電源すら入れていない状態らしい。

 ここまで徹底して連絡を遮断するということは、追いかけられていることを自覚してしまうような情報はかけらも目に入れたくないということ。

 自らの精神的にも、雰囲気的にも、誰にも邪魔されたくない状況にあるんだ。

 

 まず間違いなくハルマキさんと二人きりになっている。

 ハルマキさんの目的は間違いなく金だから、あとはどうやって搾り取ろうとしているかだけど。

 とりあえずは俺もホテル街に向かっておこう。

 

 店に入っているなら見つかる可能性は低いが、この周辺には黒澤さんの知り合いの不良集団もたくさんいるみたいだし、捕まってリンチされないとも限らない。

 せめて俺が先に見つけられそうなら見つけてやらないとな。

 

 俺は近くにあるホテル街へと足を速めた。

 ホテル街と言ってもそれほど活気のある場所ではなく、田舎とも都会とも言えないような土地にたまに存在する比較的静かなエリアだ。

 

 俺もラブホなんて使ったことはないが、入り口のそばにコース料金が出ているところがラブホだということは知っている。

 黒澤さんたちからオススメスポットを聞かされていたこともあって、迷うことはなかった。

 

 それらしい建物が見えたあたりで、美優から着信が来た。

 そういえば集合場所を聞かれていたのに答え忘れていた。

 

『お兄ちゃん? どこにいるの?』

「それが……悪い。今夜は合流できなくなった。由佳たちと一緒に帰っててくれ」

『なにか事故でもあったの?』

「事故っていうか、事件っていうか。鈴原のやつが女の子を連れてラブホに消えたんだよ。それが同じ女の子を狙ってたヤバイ人の逆鱗に触れちゃって……」

 

 きちんと事情を説明しないと美優が納得しないと思い、俺はこれまでの経緯を美優に伝えた。 

 

『鈴原さんだって、その黒澤さんって人を怒らせるのはわかってたんだよね? それなのに、黒澤さんがオススメした場所に行くのかな?』

「それは……あー……たしかに……」

 

 言われてみれば、黒澤さんの知り合いも多くて、かつ居場所もある程度絞られるこの地域のラブホにわざわざ行くとは考えにくい。

 ともすれば、鈴原たちは駅に向かった可能性も高いわけか。

 もしそうなら追いかけることはできないだろうし、俺も安心できるんだけど。

 黒澤さんが言っていたあの言葉が気になる。

 

『──ハルマキさんは逃げられないって? 黒澤さんが言ってたの?』

「そうなんだ。俺もどういう理由かはわからないんだけど、黒澤さんの口ぶりからするに、鈴原たちはまだ近くにいるかもしれない」

『ふーん。なるほどね』

 

 美優はこのヒントだけでおよその状況を把握してしまったようだ。

 さすがに頼りになる妹だが、今回ばかりはあまり関わらないでいてほしい。

 変なことに巻き込まれても困る。

 

「だから、俺は今いるところをしばらく探索してから帰るよ。そんなに遅くなるつもりはないから、美優は家で待っててくれるか?」

『私も手伝うよ。このまま家に帰っても落ち着かないし。あと由佳がまた悪いことを思いついたみたいですでに走り出してる』

「はあ!? いや、意味が……と、とにかく、手伝うとかはダメだ!! いくら美優だってこういう荒事は……って、み、美優!? 美優!!」

 

 美優からの通話は切れていた。

 俺が掛け直しても美優が応答することはなく、ただ焦りだけが募っていく。

 手伝うって言ったって何をするつもりなんだ。

 こんな夜道を女の子だけで歩かせるだけでも怖いのに。

 

「どいつもこいつも勝手ばっかり……!」

 

 俺はスマホを握りしめて全力で駆け出した。

 

 人通りの少ない、静かな街の中。

 

 今日の夜は、まだ長く続きそうだ。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。