イベントスタッフで派遣されるライブ会場は、それなりの回数をこなしているとある程度は応募先が絞られてくる。
自分の実家から移動しやすい範囲にあって、駅からの距離が近く、設営や誘導が楽な場所が感覚的にわかってくるとそこばかりを選ぶようになるのだ。
幸いにも熱中症患者が出ることもなく、あとは通行整備をしながらフェスを眺めて終わりだと、俺は打ち上げ花火でも見るような気分でイベントの進行を見守り続けていた。
そんな折、最後に会えないかと思っていたその人と、ようやく出会うことができた。
「阿形さん!」
成人にしては背の低い女性が、あてもなく通路を歩いていた。
俺が声をかけても、阿形さんは辺りをキョロキョロと見渡して困惑するだけ。
通路にはそれほど人は多くないのだが、近くに寄らないとわからないみたいだ。
「阿形さん、お疲れ様です」
「え、あ、はい?」
俺と顔を合わせた阿形さんは、まるで初対面のような態度で接してきて、それから顔をまじまじと覗いてきた。
「ソトっち? マジ? えっ、誰?」
「自分で言っておいて誰ってなんですか」
「いやぁ……だって整形でもしたのかと……あと身長も伸ばした?」
身長って伸ばしたくて伸ばせるものなのだろうか。
「どっちも変わってませんよ」
「そうかな。まあ、前からこうだった気もするけど、なんか雰囲気が違うんだよね」
阿形さんの反応からして、どうにも良い方向へ変化できているようだった。
もしそれが本当なのだとしたら、きっと美優が俺を男として育ててくれたおかげだろうな。
「色々とあるにはあったんですよ。その都合で、バイトも今回で辞めることになって」
「そうなの? まあ、この手の仕事は入れ替わり多いほうだけど。なんか寂しいなぁ」
「だから、俺も最後に挨拶がしたくて。会えて良かったです」
それから俺たちは、チーフに怒られない程度にお喋りをして、時の流れるままに仕事を終えた。
啓太郎さんはいなかったけど、俺はまた阿形さんに食事に誘われて、二人で居酒屋に向かうことに。
美優も友達と夕飯を食べてくるらしい。
「前に一緒に行ったとこの近くでいいよね?」
「俺は構いませんよ。あそこは居酒屋が多いですもんね」
阿形さんが選んだのは、四人用と六人用のソファー席が背の低い壁に囲まれて並んでいる、どこにでもあるようなチェーン店だった。
その奥の席へと通され、俺と阿形さんは向かい合う。
「ソトっちは会うたびに男前になるね。今回は彼女できた?」
「まあ、はい」
「もうそれしかないよねー」
二人で荷物を下ろして着席すると、店員が飲み物のオーダーを取りに来た。
阿形さんは遠慮なくビールを注文し、俺は場に合わせるためノンアルコールのドリンクをいただくことに。
「彼女ちゃんはどんな人なの? もしかしてあのエロエロちゃん?」
「エロエロちゃんって、山本さんのことですか。あの子ではないですよ」
「セフレは恋人にならないっていうしね。学校の知り合い?」
阿形さんは悪気なく追及してくる。
いつかはこうして掘り下げられるのはわかってはいた。
いざ質問されてみると如何ともし難いものだな。
俺と美優の関係を他人にどう説明するべきだろう。
恋人の存在を偽ることは美優にも話し相手にも失礼なことだが、兄妹での恋が世間で忌避されている現実はどうあっても覆ることはないし、俺がカミングアウトすることでいつか美優に嫌な思いをさせないとも限らない。
「まあ、身内ですよ」
「身内? 学校の友達ってこと? それとも話したくない感じ?」
「話しにくい、というのが正確なところですね。複雑な関係なので、言っても信じてもらえるかどうか」
「えーなにそれ。すっごい気になる。じゃあ私がベロベロに酔ったら話せるのかな?」
阿形さんの人柄からすれば、話しても悪いようにはならないと思う。
この場でストレートに伝えることは難しいが、勿体ぶりをつけて最後に本音を話すぐらいにすれば、阿形さんもそれを真剣なものとして受け止めてくれるかな。
「酔ってる阿形さんになら言うかもしれませんね」
「よっし! お姉さんじゃんじゃん飲んじゃうぞ!」
俺はそれでも「ほどほどに」と阿形さんに忠告をして、運ばれてきたドリンクで乾杯をした。
「阿形さんって、家でも飲んでるんですか?」
「基本はお店だよ。……最近は、家でも増えたけど」
阿形さんは意味あり気に一呼吸を置いて呟いた。
「啓太郎さんとは上手くいってるんですね」
「うーん……恋人関係は良好ではあるけどねぇ……」
阿形さんは重々しく言葉を濁す。
こういうあからさまな態度を見せるとき、人は強引にでも聞いてほしい話があるのだと、俺は経験的に知っている。
まだお酒も飲み始めたばかりだし、酔った勢いで本音を漏らしたのではない。
おそらくは、俺を誘った当初から何かしら打ち明けたい不満があって、それをほのめかしているのだ。
「他に何か問題が?」
「そう。まあ、うん。お酒、だからね。麻酔的な」
「飲むと啓太郎さんが寝るとか」
「い、いえね、酔うのは、私なんだけど」
阿形さんはジョッキ半分ほどのビールをぐいと喉に流し、通りがかった店員にフード数品と追加のビールを注文した。
「念のための確認なんだけどさ。例の色っぽいあの子……山本さん? とは、親密なお付き合いをしてたんだよね?」
「そうですね。短い間でしたが」
山本さんとの肉体関係はわずかに一週間のこと。
現在続いてる状況は、セフレとは違う気がする。
「あと、こっちは、あくまで直感的な質問なんだけど」
阿形さんは数瞬の迷いを過らせた後、ビールの残りを飲み干してジョッキを両手で支える。
「結構……過激なこともしてた……?」
ジョッキで顔を隠しながら、阿形さんはチラと俺を見やる。
この質問の意図は、『私も変態的な相談をしたいから、あなたも変態であることを示してください』というすり合わせなんだよな。
それなら俺も乗っかってあげないと。
「外でとか、ですかね」
「えっ? してたの? どこで?」
「ああいえ、あくまで、バスとかでですが」
「そっ、えぇ……」
ドン引きされた。
さすがに踏み込み過ぎだっただろうか。
「もっとぶっちゃけたこと聞いていい?」
「どうぞ」
阿形さんは声のトーンを下げて辺りに目を配らせ、周囲に聞こえないことを確認する。
「ソトっちって、エッチ上手いの?」
まだお酒もそれほど入らないうちからここまで話が進展してしまったか。
俺が暴露した内容が過激だったせいで、阿形さんの判断基準を狂わせてしまったようだな。
「どこまでが本音かはわかりませんが、上手いと言われることはありますよ」
「お、それはそれは。頼りになる」
阿形さんの悩みもシモネタか。
どうして俺にはそっち系の相談ばかりが来るのかこれまでは疑問だったのだが、こうして話してみてわかったことがあった。
由佳の友達たちやハルマキさんたちが言っていた通り、どうやら俺には、変態的な悩みを打ち明けても大丈夫だと思われるような雰囲気が漂っているらしい。
「でさ」
阿形さんは店員が持ってきた御通しとビールをまた勢いよく喉に流す。
「とても真剣な質問があって」
阿形さんは居住まいを正し、両手を膝の上に置く。
「アレのサイズって、聞いたら嫌な気にさせちゃう?」
それは予想の斜め上の質問だった。
アレというのは男性器に他ならないわけだが、幸いにも平均ぐらいの長さはあるので聞かれても嫌な気はしない。
ただ、サイズは女の子次第で印象が変わるものなので、俺のが大きいのか小さいのかは断言しづらいところだ。
「測ったことはないんですが、普通ぐらいですよ。以前はむしろ控えめなぐらいで」
「以前はって、どの時代の話? 体と一緒に大きくなるのが普通でしょ?」
「それとは別に、ここ数ヶ月でまあ、なぜかモノだけがすくすくと」
「そんなのあり得る!? 聞いたことないんですけど」
俺もモノのサイズだけが成長したなんて噂は、一度として耳にしたことはない。
しかし、ここに唯一の前例が存在してしまっているのだ。
美優と山本さんに鍛えられることによって奇跡的に成長した、立派と評価してもらえるほどの逸物が。
「手でいうと、どれくらい? ソトっちので」
「中指と親指を合わせたぐらいでしょうか」
「ふむふむ。それが男の子の平均ぐらいなのかな? みんなちょうどいいって言う?」
「どうでしょうか。彼女にはこれでも大きすぎるとは言われますが」
「だよね!? そうだよね!?」
阿形さんはテーブルを両手で叩いて身を乗り出してきた。
なるほどそっち方面の悩みか。
「でまあ、長くなったんだけどさ」
阿形さんは背もたれに寄りかかって肩の力を抜く。
「啓太郎とのエッチがツラいんだけど、どうしたらいいかな」
彼氏のモノがデカ過ぎて入らない。
阿形さんの悩みはそんなところか。
しかし、微妙に相談する相手を間違えているような気もする。
俺にイチモツをこれ以上大きくするなと忠告した件の嫁とは、まだ本番行為に至っていないのだ。
「どれくらいの大きさなんですか?」
「ソトっちの手でだいたい手首から中指の先ぐらい」
「それはまた」
世の中には本当に立派なモノを持っている人もいるんだな。
俺がこれまで取り扱ってきた悩みは精神的なものが主だったから、実技方面でアドバイスをするのは難しい。
俺も経験豊富とはいえ、そのほとんどは成り行きでさせてもらったものだし。
「してるうちに慣れたりするものじゃないんですか?」
「私もそう思って、かれこれ十回ぐらいしてるんだけど、まだ悲鳴を上げるくらい痛い」
「それはしんどいですね」
俺のも大きくなりすぎると美優とできなくなったりするんだろうか。
美優は遥に膣内の性感帯まで開発されているらしいけど、太いオモチャは挿れてないって言ってたからな。
いっそのこと入り口まで解してもらっていたほうが良かったかもしれない。
「ソトっちは、処女の子としたことあるの?」
「ありますよ。すでにオモチャで開発してあったので、痛くはなかったみたいですが」
「一人エッチでそこまでするって、珍しいね」
「そうですね」
残念ながら一人でしてたわけじゃなく、お仕置きで無理やり開発されてたんだけどな。
由佳のことは理解してもらえる自信がないので黙っておこう。
「それって今の彼女のこと?」
「いえ、彼女とは経験がなくて」
「え!? そうなの!? むしろエッチから入ったクチだと思ってた……」
「本番が、まだなんですよ」
俺と美優の関係は、兄妹であるということを抜きにしても特殊だった。
恋人でもないのに精液を飲んでもらって、でもそれは性欲の処理ではなく精液の処理であって、定期的にエッチなお仕置きを受けては、恋人ではない関係はそのままにエッチの濃度だけが高くなっていた。
「ソトっちは本番しないで不満は溜まらないの?」
「ないですね。ただ、俺の好みど真ん中の恋人が相手で、本番なしでも他で気持ちよくしてくれるという前提のものですが」
「超可愛くてテクがヤバい彼女なわけだ」
それは否定はできないな。
「で、どんな彼女?」
阿形さんは知らないうちに三杯目を飲んでいて、四杯目を注文するのと同時にさらっと尋ねてくる。
十分に酔ったとは言い難いが、場の温まり具合としては申し分ないか。
「信じられなかったらそれまでの話になりますけど、いいですか?」
「こんだけ引っ張るぐらいだし、言うなら信じるよ」
「妹です」
「……うん」
阿形さんは目を瞑って俺の言葉を反芻しながら、店員がビールを持ってくるまで口を閉ざしていた。
「もうちょっと飲むね」
「どうぞ」
阿形さんは普通にお酒が飲める方の人みたいだな。
これで麻酔代わりにエッチのたびに飲んでるのだとしたら、相当な出費と手間になりそうだ。
「お写真拝見タイムとかしてもいい?」
俺の発言を信じたいが、さすがに妹という事実は受け入れがたいので、もう少し情報が欲しいということなのだろう。
しかし、見せられる写真は、ないんだ。
ロリロリの衣装とエッチな顔をしてる写真は絶対に見せられない
「……メッセージアプリのアイコンならありますが」
美優がアプリのプロフィール画像を、遥たちと旅行をしたときの写真にしていたことを思い出した。
公に晒しているものだし、これぐらいなら見せても問題ない。
「これでよければ」
アイコンを拡大表示にしてスマホを阿形さんに向けると、阿形さんは食い入るように眺めてきた。
「みんな可愛いね?」
「そうですね」
「でもめっちゃロリロリしくない!?」
「そうですね……」
いかんせん中学生だからな。
精神的にはみんな大人びているとはいえ、美優と遥は完全にロリ体型だし、いくら俺が高校生の身分とはいえギリギリアウトな年齢ではある。
「で、妹ちゃんはどれなの?」
「右側にいる目尻が強い子です」
「うおぉ……」
阿形さんはスマホを手にとって、二本指で拡大操作をしている。
顔は全体写真で十分に確認できるほどだったので、阿形さんが何をしているのかは言われずともわかった。
「ソトっちの周りってエッチな女の子しかいないの?」
「どうでしょうね」
これもまた否定はできない。
俺は出会ってきた女の子のほぼ全員の性生活に関わっているわけで、今でもエッチな女の子に囲まれているわけだからな。
「この子にいつも本番なしで抜いてもらってるとかむしろヤバくない?」
「ヤバいですね」
「てかおっぱいとお顔立ちがマジでヤバい! こんな子のお手々とお口がエグいテクとか世の中どうなってるの!? しかもこの子が妹で恋人って何!?」
「ま、まあ、気持ちはわかりますが、落ち着いてください」
これが真っ当な人間の反応なんだよな。
むしろ酒が入っているおかげでこれでもマイルドな方だ。
「現実味はないけど、信じるしかないんだよね。ソトっちがそれだけ男前になったし、エロエロちゃんとセフレだったし、妹ちゃんも超エロいし、逆にこれはもう信じるしかない。とゆーか妹がエロすぎる……こんな子と一緒に暮らしてたら頭おかしくなるでしょ……なにこのおっぱい……私だって揉みたいよ……」
どうにか納得してもらえたか。
後半まで引っ張ったのは正解だったな。
他の人もこんな風に受け入れてくれればいいけど、世の中には過激な思想の持ち主も人もいるし、基本的には口外しないのが吉だろう。
「私もテクさえあればーって思うけど。エロエロちゃんにしても妹ちゃんにしても、みんな可愛すぎるよ。本番なしだとこのレベルが要るのかぁ」
「なんとも答えづらいところですが、恵まれ過ぎなぐらい可愛いのは事実ですね」
「だよねー。はあ……」
彼氏のモノが大きすぎて挿入らない問題は、残念ながら俺には解決できそうにない。
少しずつ大きいオモチャを買い替えて拡張するしか方法はないように思う。
「でもいいや。話したらスッキリした」
「いいんですか?」
「どうせ私が頑張るしかないってのは最初からわかってたことだし」
たしかに、俺が何と言おうと、カップルの問題である以上は阿形さんの行動でしか解決はしない。
ならどうして俺に悩み相談を持ちかけたのか。
これまでの俺なら疑問に思うだけで答えには辿り着けなかったが、いわゆる女の子の愚痴というのがこのようなものなのだと、理解するには十分な経験を積んでいる。
「ソトっちはさ、こんな話でもどっしり受け止めてくれるから、安心感があっていいよ。実は別クチでも何人かには相談したんだけどさ、もう逆にストレスが溜まる一方で、嫌になっちゃう」
今度は露骨に不快感を滲ませて、阿形さんはビールまた口にしてジョッキを重たくテーブルに置いた。
「何かあったんですか?」
「あったもなにも、みんなセクハラしてくるんだもん。彼女持ちだっているのにさ、『そんなに悩んでるなら、俺としてみる? 俺の小さいから簡単に入るよ?』とか言われて。私は別にお前の粗末な棒とセックスがしたいわけじゃないんだっつうの!」
段々と声が荒くなる阿形さん。
喋るごとに怒りのボルテージが上がっていく。
「説教ばっかしてくる輩もいてさ、『そこは阿形にも責任があるんじゃない? 自分でも入るように努力しないと』とか言ってきて。なんで私が努力してない前提なわけ? 私だって恥を忍んでデカいオモチャ買ったし。膣内で出してもらえないときは手とか口とかで最後までしてるんだよ? 大きすぎて入らないこと自体は私が悪いわけでもないのにどこに責任があるの?」
相談してきた人に説教は一番やってはいけないやつだ。
自分の視野や常識だけでものを語ると、勝手な決めつけが多くなって相手を不快にさせる。
それがまた、副次的な問題を発生させることも。
「それでイライラが我慢できなくなったら、私は怒っちゃうんだけどさ。『ならなんでそれを先に言わないの?』って言われて、いや話には順序があるし、言いたかったのを言いたくなくさせたのはお前だし、そもそもオモチャで一人でしてますなんて気軽に言えるかっての。『相談したのはそっちだろ?』って、じゃあ乗るなって! 悩みでイライラしてるのと話をしてイライラしたのはまた別の話なんじゃい!」
そして、阿形さんはビールを一気飲みをしてふてくされる。
さすがにこれ以上は帰れなくなりそうなので俺からストップを掛けておいた。
「で!」
途端に明るくなる阿形さんの表情。
人は酔うとこんな感じにコロコロ機嫌が変わるものなのか。
「ソトっちはそういうのがないから、話してるだけで気が楽になるの」
「なるほど」
俺の周りの子はこうしたマイナス面を見せてくれる人が少なかったからな。
こうした本音に触れられるのも貴重な経験だ。
「俺で不運がストップしたなら良かったです」
自分の評価が阿形さんの周囲の人間に比べて相対的に高いことはわかった。
ただ、そんな説教ばかりしてくる人に当たったのは、運が悪かったとしか言いようがない。
「ソトっちの安心感はさ、他の人とはちょこっと違うんだよ」
組んだ両腕をテーブルに乗せて、阿形さんはちょっぴり眠そうに話を続ける。
「自分がどうかと思うような素を晒しても、絶対に真面目に受け止めてくれるって、なんでか思っちゃうんだよね」
阿形さんは組んだ腕に頬ズリしたまま俺を見上げ、突然弾かれたように体を起こして俺を指差した。
「で、その安心感がソトっちの性的な面での魅力でもある。だからシモネタも気軽に相談できる。あとこれは内緒だけどちょっとエッチしたくなるような感じもある」
「それは彼氏持ちの発言としてはどうなんですかね……」
好意と性欲は別だというのは、俺も山本さんと過ごしていて理解したことではあるが。
「空は青い理由を知らなくても青いでしょ? そういうことだよ」
「なるほど、そうなんですね」
何を言っているやらさっぱりだった。
たぶん知る意味もないやつだな。
それも経験上からわかる。
「んでさ、彼女ちゃんのこともっと教えてよ」
それから、俺と阿形さんは喋り疲れるまで店に居座って、他愛のない身の上話で盛り上がった。
阿形さんは初めのほうこそ実の妹との恋愛に疑問を抱いていたが、互いの根の深いところまで暴露してしまうと「どうせ人間なんて動物はそんなものだ」という自嘲的な空気が場を包んで、一度許容してしまってからは阿形さんも応援する立場になってくれた。
毎回こうして上手くいくとも限らないが、理解者が増えるのは喜ばしいことだ。
お店を出ると、夜は雲が無いおかげか珍しく涼しい風が吹いていて、俺と阿形さんは軽やかな足取りで駅に向かった。
その道中で、阿形さんがはたと立ち止まって俺に振り返る。
「エロエロちゃんのおっぱいに癒されたいかも」
そんな男子中学生みたいな欲望を突如として吐露されて、しかし、俺は困惑する暇も与えられないままに山本さんの働く居酒屋へと連れて行かれた。
「出勤してるかどうかなんて俺は知りませんよ」
「いーのいーの、いたらで。またビール瓶を運んでるかもしれないし」
「まさか出てくるまで待つなんて言わないでくださいね」
そうして山本さんのバイト先に着くと、まずは辺りをキョロキョロとする阿形さん。
そんな簡単に見つかるわけもなく、阿形さんは客が店を出てきたタイミングでレジ打ちしていた店員に声を掛ける。
「あの、山本さんいますか?」
「山本ならさっき帰ったよ。ランチから早番で入ってもらってたんだ。何か用でも?」
「ああいえ、ならいいです。失礼しました」
三十代前半にも見えよう若い男が、山本さんの知り合いとはいえ客の可能性が高い相手にいきなりタメ口を使うのでびっくりしたが、どうやら彼が店長だったらしい。
「くっそーニアミス! ソトっち、走って追いかけよう!」
阿形さんは元気よく走り出して、駅に向かって百メートルほど、ダッシュした直後に顔面を青白くして立ち止まった。
「やば、ビール一気したから胃が死んでる」
「酔いすぎですよ。山本さんのことは諦めて大人しく帰りましょう」
「はーい……」
お酒は人を変なテンションにさせる。
それを実体験として学習できたので、今回は良い機会だったと思うことにしよう。
阿形さんとは改札を通るまでが一緒で、そこから別の電車に乗って帰宅する。
ホームに向かう階段の手前で、俺と阿形さんは別れを惜しむこともなく手を振って解散した。
電車はほどほどに混んでいるくらいで、ドアの隅に立っている人たちからときおり話し声が聞こえてくる。
バイトの疲れは居酒屋で休んでだいぶ回復したが、場の雰囲気にあてられて俺も酔ったような妙な気の昂りがあるので、できれば座って落ち着きたいところだった。
(他人のことばっかり気にしてたけど、俺も酔ったらどうなるかはわからないんだよな)
美優と本番を迎えるにあたっては越えてはならない一線がある。
恋人としての仲が深まった今では、俺が酔って自制を失ってしまったら美優も一緒に暴走してしまうかもしれない。
出来るものが出来てしまったら困るし、俺は二十歳になってもしばらくは飲酒禁止かな。
「サシの女の子を酔わせるのは、浮気の第一歩だよ」
背後から俺をからかうような声がして、気付けばドアの窓に長い黒髪の女性が映り込んでいた。
エロエロなあの美少女である。
「こっちに気付いてたのか」
「あれだけ騒いでたら目にも付くよ」
振り返ると山本さんがいた。
乗車した直後は姿が見えなかったので、山本さんは俺の存在に気づきながらも別のドアから乗り込んだようだ。
「あの人は、バイトでお世話になってた人で。今日で辞めることになるからお別れ会をしてただけだよ」
「サシで飲んでたことはともかく。二人きりの女の子が酔うまで飲むなんて、気を許してる証拠に他ならないんだからね。ソトミチくんもそろそろその辺覚えないと、ダメなモテ男になっちゃうぞ」
山本さんは人差し指で俺の額を小突く。
それはたしかに気を付けなければならないことだな。
覚えておかないと。
「山本さんもバイト上がりだよね?」
山本さんは大きめのシャツにハイウエストなスカートを合わせていて、どうにも居酒屋で働いてきたように見えなかった。
「ああ、これ? うちは上下制服だから。本日もお安い給料で扱き使われておりましたよ」
時給820円の安バイトだったっけ。
山本さんならもっと効率よく稼げそうだけど、どうしてそんなバイトをしてるんだろう。
居酒屋の雰囲気そのものが好きって感じでもなさそうだし。
「山本さんは家庭教師とかやらないの?」
「どうして?」
「もっと稼げるバイトとかいくらでもありそうだから」
「あー、うん。どうしてだろうね」
山本さんは顎をしゃくって曖昧に答えた。
まあ、なんとなくで生きるっていうのも、全然ありな選択肢ではある。
どちらかといえば俺もその側だし。
「ソトミチくんはスーツも似合うね。体つきは良いほうだから、きっちりした服がサマになるよ」
「ありがと。山本さんは、何を着ても似合うな」
「それはもう、素体が良いですから」
山本さんは胸の膨らみからスカートの下までを指でなぞる。
おっぱいの大きさもそうだが、短く上げられたスカートから伸びる脚がとにかくエロい。
今日もどれだけの人の視線を釘付けにしてきたのやら。
「ソトミチくんだけはこの体を滅茶苦茶に犯せるって考えたら、ちょっと興奮しない?」
山本さんはそんな俺の汚れた感情を察知したのか、口元を手で隠して囁いてきた。
まともに取り合うと同意を誤魔化せそうになかったので、俺は広告の文字を無心で読みながら適当な相槌だけで返事を済ませる。
「昨日は帰ってから美優ちゃんに何か言われた?」
「言われたよ。思う存分にやらせろって。もう俺にも何が目的かさっぱりだよ」
「思う存分にって、ソトミチくんと好きにデートとかエッチしていいってこと?」
「そうらしい」
そういえば山本さんとデートしたのも昨日のことだったんだよな。
昨晩と今朝のエッチが濃厚すぎて数日前のことのように記憶していた。
「私も美優ちゃんの独占欲を甘くみてたかも。これはもう遠慮もしていられないかな」
山本さんはむしろ美優の対応に納得したようで、凛と瞳を澄ませて俺を見つめてきた。
「他の女の子とのエッチを許してるのに、独占欲が?」
「美優ちゃんは私がソトミチくんへの未練を欠片でも残していることが嫌みたいだから。私が後悔を引きずることもないくらい、本気でぶつかれって言いたいんだと思う」
なるほどそう考えれば実に美優らしい。
やるとなったら徹底的にやる。
それが美優の性分だからな。
「となれば、早速ソトミチくんとエッチしないとね」
山本さんは両手でガッツポーズをして俺に期待の眼差しを寄せてきた。
「したい?」
「したい」
「そんなにしたい?」
「すごくすごくしたい」
美優への遠慮がなくなったからなのか、本音がダダ漏れの山本さん。
昨日の乙女チックな山本さんも好きだったけど、自らの性欲を恥じらわないこの素直さが、俺は好きだったりする。
「でも、明日は由佳ちゃんとデートなんだよね」
山本さんは残念そうにため息をついた。
俺は山本さんのお願いを全面体に受け入れろと指示を受けている。
しかし、由佳に対しても優しくしてあげてと言われている以上、そちらも無下にするわけにはいかない。
「今朝は美優ちゃんと何回したの?」
「な、なぜしたことを」
「ソトミチくんと付き合ったら、私なら毎日欠かさずするから」
山本さんにそう言われて、俺も美優とのこれからの生活を考えてみる。
旅行などでどちらかが家にいないようなとき以外は、たしかに毎日していそうだ。
「今朝は、一回だけだよ」
「一回か。それなら、今夜もう一回ぐらい、ワンチャンスが、あったりしないかな?」
山本さんは悩ましい目つきで俺にチラチラと視線を送ってくる。
ここまで言われてしまうと、一回ぐらいならと俺も考えてしまう。
「するとしたら、どこでする?」
「人が少なかったらここでもよかったんだけどね」
山本さんは冗談めかしく口を少し開けて赤い舌を覗かせた。
このエッチな小娘は田舎の電車とかだったら絶対にしてたと思う。
「山本さんって俺とする前はどうやって発散してたの?」
「どうって。私をこうしたのはソトミチくんですが」
山本さんは『何をとぼけていらっしゃる』と言わんばかりの真顔で小首を傾げた。
たしか山本さんは昔からエッチが大好きだったはずだが。
どこらへんに俺の責任があるのだろうか。
「前も言った通り、元々エッチは好きだったよ? でも、そのときのエッチは、人の内面に触れるための手段みたいなもので。……だって、私は、できなかったし」
山本さんは物憂げに言葉を継いだ。
その声にこもっていたのは、不満や辛さとはまた別の感情だった。
「こんなにもソトミチくんを求めてるのは、もうご奉仕がしたいからだけじゃないの。私はソトミチくんとのエッチが、ただ、好きで」
山本さんは俺とセックスをして快楽を知った。
それから恋をして、愛欲を知った。
その生まれ持った才能で、男たちを滾らせ、悶えさせてきたこの小悪魔は、あるいは初潮前の少女たちよりも無垢に、その初めての感情を持て余しているのかもしれない。
「なんだか、責任を感じるな」
「そう? なら、ソトミチくんはどうやって責任を取ってくれるのかな」
山本さんは俺を責め立てるように、人目も憚らず俺と密着してきた。
そして、自らの唇を人差し指で軽く押して、俺の耳にだけギリギリ届くような声量でその欲望を言葉にする。
「私はここにお詫びが貰えたら、何でも許しちゃうかも」
その嬉しそうな声音に、まだ電車の中だというのに肉棒が疼く。
山本さんは美優との謎の約束によって本番を避けていることから、エッチをするのはイコールでフェラになるのだ。
そうでなくても、このご奉仕体質の淑女はまずフェラをすることを考えるだろうけど。
「多目的トイレが空いてたら、そこでしちゃおうか」
「エッチ目的はどうかと思うけど……」
「ふふっ。まあ、普通の個室トイレの方が、エッチなことしてるみたいで興奮するけどね」
「それはわかる」
公衆トイレで女の子とエッチとかAVの世界でしかないと思ってたからな。
あの虚しい空気の中で性欲を発散する姿は惨めさもあってなお興奮する。
「駅のトイレはそんなに使ってる人は多くないから、どっちもいけそうかも」
「そういや、最近は朝しか人を見なくなったな」
「デパートに広くて綺麗なトイレができたから、みんなそっちに行ってるんだよ」
なるほどな。
通勤や通学の時は急ぎで立ち寄ることもあるが、帰路であればゆっくり落ち着けるところがいいよな。
「ほんとにするのか?」
「んふ。私は、してもいいよ」
「……空いてたら考えようか」
「そうだね。空いてたら、ね」
山本さんはキスでもしてくるのかと思うくらいに上機嫌な顔を近づけてきた。
「周りの人たちは、私たちがどんな会話してると思ってるのかな」
「少なくともモノを咥える場所を相談しているとは思わないだろうな」
「スーツの男と清楚な女の子だもんね」
一見すると、真面目そうに見える二人。
頭の中はコスモスの花畑より真っピンクだ。
「早く硬いの咥えたいな」
「山本さんはフェラするの好き?」
「ソトミチくんにフェラするのが好き」
山本さんは俺の肉棒をズボンの上からさすって、「好き」と言葉を重ねる。
けしからんぐらいにエロい。
平常心を保たないと。
こんなところで大きくするわけにはいかない。
「とりあえず、もう着くから降りようか」
「はーい」
山本さんとイチャついているうちに、電車は最寄り駅にまで着いていた。
かなり音量は抑えて喋ってたけど、話し声、聞こえてたりしなかったよな。
「これからまたソトミチくんとエッチができると思うと、なんだかドキドキしちゃうな」
ちゃっかりと手を繋いで駅の階段を登る俺と山本さん。
人は少ないものの、やはりまだ照れ臭さはある。
「何を今更」
「処女に戻った気分だよ。今の私は処女」
「処女はトイレでフェラなんてしない」
「彼氏もできたことのないクラスメイトが学校のトイレで部活の先輩としていること知らないソトミチくんであった」
「嘘だろ……」
風紀の乱れた学校は俺の妹のところだけにしてほしい。
「あら、残念ながら使われちゃってるね」
駅のトイレにはちらほらと人の出入りがあって、多目的トイレも使用中のランプが点灯していた。
しばらく待てば入れそうではあるが、人目が完全に避けられるかは微妙なところだ。
悩んでいても時間が勿体無いので、家ですることにして俺たちはバス停へと向かった。
その途中、ふと目についたカラオケの前で、俺たちは立ち止まる。
「カラオケか。夜は高いよな」
「三十分の個室と考えれば、お安いのでは?」
たしかに、こうして二人きりになる場所を探してみると、カラオケは安くて都合の良い店だ。
「監視カメラとか平気かな」
「ここはないって友達が言ってた」
山本さんも友達とそういう話をするんだな。
「あ、私は、あくまで聞き役で。私自身は口にしてないけど、学校では処女ってことになってるから。そのあたりはよしなにお願いします」
「彼氏がいたことすらみんな知らないんだもんな」
「そういうことです」
鈴原との件で山本さんが一番困っていたのが、学校での立場が失われてしまうことだった。
これまで付き合ってきた人たちが好意的に山本さんに気を使っているので、学校には情報の一切が漏れていない。
どんな別れ方をしようと、最後には山本さんを守ろうという気にさせるのは、それだけ山本さんがみんなに本気で尽くしてきたからなんだろうな。
「入ろうか」
「うん!」
入店は俺から促した。
美優も山本さんも覚悟を決めたのに、俺だけが受け身でい続けるのは不義理だと思ったからだ。
「二人で、とりあえず三十分お願いします」
俺たちに用意されたのは、二人用ほど狭くなく、ドアに付けられた窓からは死角ができるくらいの広さの部屋だった。
中の明かりを消せば光の反射でほとんど見えなくなるため、口でするくらいならテーブルの陰に隠れるだけでも問題ないそうだが、安心できる要素はあればあるだけいい。
「ソトミチくん、早く早く」
山本さんは死角になる位置にしゃがみ込んで、すぐにでも始めたいことをアピールする。
この三十分コースは飲み放題のため、ワンドリンク制と違って店員が部屋に入って来る心配がない。
「言っておくけど、俺は一日中働いてたから……」
「私が舐めてキレイにすればいいんだよね。任せて」
山本さんはむしろ嬉しそうにして俺の股間を撫でる。
山本さんなら気にしないとは思ったけど。
なんか、この何でも許される感じ、すごくエッチな気分になってくるな。
「そしたら、これを」
ベルトを外してチャックを下ろし、ズボンとパンツをズリ下ろしてつまんだペニスを山本さんに向ける。
チャックを開けた瞬間から汗と精液のニオイが漂ってきたそれを、山本さんはあえて鼻を近づけて嗅いで、先っぽをチロチロと舐めてきた。
「ソトミチくんの蒸れた精液のニオイって、なんだか好きなんだよね。あと、最初のちょっとしょっぱい味も好き」
山本さんはいきなり咥え込むことはせず、玉の裏側や鼠蹊部を同じように嗅いでは舐めていく。
部屋の両側からは他の客たちの歌声が聞こえてきて、そんな中で俺たちは、曲も入れずにフェラに勤しんでいた。
「もう咥えちゃうね」
やや息を荒くして、我慢の限界を迎えた山本さんが、俺のペニスを口いっぱいに含んだ。
「はむっ……ちゅぶっ、ぐちゅ……ずずっ、じゅふちゅぶっ……!」
「うぁ……あっ……!」
素人の歌声と、その合間に聞こえる喋り声、そして、ドアのすぐ前を通り過ぎていく店員の足音が、下半身を露出させている俺に危機感となって興奮を与えてくる。
「ふぁ……おいひぃ……んちゅぶっ……」
排尿と射精をするための器官を、山本さんは愛おしそうに舌で舐めてくれる。
勃起したペニスを咥え続けられることは、山本さんにとって得難い機会だ。
それができるモノが、山本さんが初めて本気で恋をした人に付いているのだから、むしろ山本さんは美優の許可が下りるまで良く自制していたほうだと思う。
「んちゅ……ぐじゅちゅるっ……ちゅぶっ……はぁ。この位置だと、絶対に外から見えないね」
「そう、だな」
客が入っているはずなのに照明も音楽も入っていない部屋を店員が不審に思わないか不安はあるものの、この部屋の構造はエッチをするのにかなり向いている。
「山本さんにお願いしたいことがあるんだけど」
俺は美優からもっと山本さんに手を出していいと言われている。
それは、山本さんとのデートやエッチを、俺がもっと楽しまなくてはならないというニュアンスを含むものだった。
「少しだけ脱いでもらうこととかできる?」
さきほどから、山本さんが頭を動かすたびに揺れるおっぱいが悩ましくて仕方がなかったのだ。
いつもお前はおっぱいばかりかと怒られそうではあるが、せっかくこれほど美しい果実を実らせている女体に対して、無関心でいる方が失礼なのではないかと俺は思う。
「いいよ。どこまで脱ぐ?」
山本さんは一瞬も迷うことなく容認してくれた。
おっぱいだけ触れればいいので、ブラジャーを外してシャツのボタンを開けてくれれば触ることはできる。
「どこまでならいい?」
しかしこう、家でもないところでしているからには、エッチなイタズラ心が働いてしまうものだ。
「どこまでって聞かれても。ソトミチくんが脱いでほしいなら全部脱ぐけど」
「全部……!? い、いいの?」
「んふふ。興味がおありなら脱ぎましょうか?」
山本さんは俺が指示するよりも先に服を脱ぎ始めた。
その指は上半身を包んでいた服を取り去り、山本さんがブラジャーのホックを外すと、美しく形作られていた乳房がぷるんと溢れ出す。
「ずっとおっぱい見てるね、ソトミチくん」
「すまん……」
「お気に召したのなら、何よりですが」
山本さんは視線を下げてばかりの俺の手を取って、おっぱいまで導いてくれた。
こうしてたまに童貞のような扱いをされると、見下されている感覚よりも強烈な母性を感じてしまって、山本さんの性愛に溺れそうになる。
指が沈み込むほど柔らかい山本さんのおっぱい。
鷲掴みにすると指の間からむちっとした脂肪が溢れ出す。
そして、手のひら全体にその反発が伝わってくるそれを、俺は欲望のままに揉みしだいた。
「痛くない?」
「痛くないし、ソトミチくんになら痛くされてもいい」
山本さんはおっぱいに夢中になる俺を微笑ましく眺めながら、スカートのベルトを外してストンと床に落とす。
それからしゃがんだままパンツをずり下ろすと、山本さんの柔い素肌の全てが露わになった。
「靴下も脱ぐ?」
「そのままがいい」
「わかった」
どんな希望も聞いてくれる山本さんは、俺におっぱいを揉ませたまま裸で俺のペニスにまたむしゃぶりついてきた。
「はむっ……はうぁ……はぶちゅ、じゅるちゅぶちゅっ、んっ……ぐちゅっ!」
「あっ、ああっ……!」
山本さんは空気を逃さないように口を密着させて、顔を前後させるたびにぶちゅぶちゅと空気の潰れる音が口内で響く。
美優の命令だから乗り気になっただけなのに、さすがに山本さんが相手なだけあって、もう俺は心からこの状況を楽しんでしまっていた。
それが山本さんにも伝わっているのか、山本さんは顔を綻ばせながらご奉仕フェラを続けてくれる。
いつもの暴走状態とは違っていた。
俺が気持ち良さそうにしているのをひたすらに山本さんが喜ぶ、以前までのエッチに戻っている。
俺としてはやっぱり、情けない姿を慈しんでくれる、この聖母のような山本さんが一番好きだ。
「や、山本さん……」
「ん? んふ。なあに?」
山本さんは素っ裸のままで、まるで子供に目線を合わせるように声のトーンを上げる。
「脚、開いてって、言っても怒らない……?」
「怒らないよ。私はすごく恥ずかしい思いをするけど、ソトミチくんがそうしてほしいなら、私は喜んで恥ずかしい思いをするから」
山本さんはそう言って、しゃがんだままの脚を開き、その秘部を露わにしてくれた。
そこには、愛液の滴る割れ目がぱっくりと口を開けていて、クリトリスの突起までがはっきりと確認できた。
視界を遮る障害物の一切がなかったのだ。
「山本さん、前は少し生えてなかったっけ」
「美優ちゃんが生えてないって言ってたから剃ってみたの。そしたら、思いのほかすっきりしちゃって」
山本さんは今更になって恥ずかしげに顔を逸らした。
美優は体型がロリ型だからパイパンがしっくりきたけど、山本さんみたいに大人びた女性がツルツルにしていると、ギャップでまた違った興奮が味わえる。
「山本さんのそういうエッチなところ、マジに好きになりそう」
「こういうときだけ調子いいんだから」
山本さんは鬱憤をぶつけるようにまた俺のペニスを深くまで咥えた。
それでも、脚を開くのが俺のお願いだったため、どれだけ恥ずかしくてもそれを閉じようとはしない。
そんな山本さんに薄らと恋心に似た感情すら抱きながら、俺はひたすらに胸を揉んで山本さんのアソコを凝視する。
そうすると山本さんが、照れ隠しにフェラを激しくしてきて、そんな姿に俺のオスとしての何かが目覚めてしまった。
「あ、ああっ……山本さん、そのまま、奥まで咥えて……!」
俺は自ら腰を動かし、山本さんの口にペニスの根本までを押し付ける。
山本さんの豊乳を揉みしだきながら、俺は中腰になり、後背位で挿入する要領で山本さんの口内をペニスで犯した。
「んっ、ふっ……んじゅぐっ、ちゅぶっ……! ん、くふぁ、はあっ……んんっ……!」
俺が腰を前後させるたびに、山本さんの表情筋は力を失っていった。
それが絶頂の兆しであったことに、気づいたのは山本さんが体を弾ませて激しくイッたあとだった。
山本さんの乳首はゴム栓のように硬くなり、口からは涎が溢れそうになって、窒息した脳がすでにイッていると誤認したことが、山本さんを強制的な絶頂に導いたのだ。
そんな中でもなお露わにされていた秘裂がヒクヒクして、まるでおしっこを漏らしたように床が濡れている。
「かふっ……あぁ……はぁ……わけわかんないくらい気持ち良くて、死んじゃうかと思った……」
恍惚とした表情で、息荒く呼吸をする山本さん。
そんな状況すら楽しんでいる顔を見て、俺も自らの欲望に歯止めがかからなくなった。
「山本さんのおっぱいが、吸いたくなってきたんだけど。いい、かな?」
おっぱいを揉むと小さくなるという噂があるから、美優も手で乳房に触れることは許してくれた。
だが、乳首に吸い付くような、女性ホルモンを分泌させてしまいそうな行為はまだ抵抗されてしまう。
となれば、もう山本さんのおっぱいを吸うしかない。
しばらく吸っていなかったから、もう軽い禁断症状なのだ。
「おっぱい吸いたいの?」
「うん。でも、そうなると、口ではできなくなるから、山本さんは困るかもしれないけど」
「全然困らないよ」
山本さんはソファーの空いた部分に膝をつくと、俺の目の前にそのおっぱいを近づけてくれた。
「ソトミチくんがおっぱいを吸いたいと言えば吸わせる。おちんちんを咥えてほしいと言えば咥える。それが今の私の存在意義だから」
「そこまでいくと、もはや性奴隷のような……」
ファンタジーの世界でも、ここまで従順に言うことを聞いてくれる奴隷もいない気がする。
「ソトミチくんの性奴隷か。とても魅力的な求人だけど、私に応募資格はあるのかな」
「資格はともかくとして、俺は山本さんには、奴隷じゃない関係でお願いを聞いてほしいかな」
「あ、それ、すごく嬉しい」
山本さんはおっぱいで俺を窒息させるのかと思うぐらいにギュッと抱きしめてきた。
「ソトミチくん、いっぱい吸って」
「それじゃあ、遠慮なく」
山本さんの乳首は、美優と比べると少し大きめで、吸わせたのは俺が初めてと言ったのは嘘ではないのだとわかるくらい、まだ淡い色の突起が勃っている。
それに俺は唇で挟んで、コリコリとした硬さを舌と唇で楽しんでから、音が鳴るぐらい強めに吸い付いた。
「ん、はぁ。ソトミチくんとエッチしてから、なんだか乳首が敏感になっちゃったみたいで。んあっ、あっ、それ、気持ちいい」
山本さんは俺の舌使いにまた息を荒くしながら、フェラの代わりに手での刺激をペニスに与え続けてくれる。
あまつさえスーツを着ているというのに、こんな赤ちゃんみたいなことをしていると思うと情けなくて恥ずかしくなる。
それがまた性的快感になって沸々と湧き上がってきて、もしかしたら俺は、こんな姿を山本さんに見てもらいたくて、おっぱいを吸わせてくれとお願いしたのかもしれない。
「ふぁ、んっ、ソトミチくんは、おっぱいを吸うのが上手だね。よしよし。上も下もいっぱい撫でてあげるね」
そして山本さんも、俺が子供扱いされて興奮していることに気付いている。
だからこうしてあやすように俺をもてなしてくれるんだ。
変態的なエッチに関しては、山本さんが一番だと箔を押してもいいかもしれない。
「あぁ、やばい。イキたくなってきた」
手コキで与えられる刺激以上に、このシチュエーションに対する興奮が昂まってしまって、射精欲が溢れて止まらなくなっていた。
「イキたい?」
山本さんは俺の耳に息を吹きかけるように訊いてくる。
「い、イキたい、けど、まだちょっと時間はあるから……」
せっかく三十分も取ったのに、まだ半分ほどしか時間は使っていない。
俺としては射精したくてたまらないのだが、ここで出してしまったらまた山本さんに物足りなさを感じさせてしまう。
「いいよ、イッて。ソトミチくんが気持ちよく射精してくれるのが、私の一番の喜びなの。今日は私、すごく満足してるから」
山本さんは俺のペニスを扱く手を速くして、俺の射精を促してくる。
こうなったら、もう欲望に任せて出すしかない。
「ソトミチくん、以前に美優ちゃんに似せた私の写真を見てイッたじゃない? 私のこともさ、美優ちゃんが成長した姿だと思えば、射精できるんじゃないのかな」
山本さんの昔の写真を見せてもらったとき、それがあまりにも美優に似ていて俺は驚いた。
そして、その山本さんの小さい頃の写真と、今の山本さんを美優似に加工した写真の両方で、俺は射精にまで至った。
「妹とは別に、お姉ちゃんがいたらきっとこんな感じだよ。ソトミチくんは、きっとお姉ちゃんでも射精しちゃうんじゃないかな」
「あ、ああっ、そんなっ……はぁ、はっ、う……ああっ……!」
昔の姿が美優に似ているということは、山本さんも遺伝子的にはかなり親しい存在。
それは山本さんが言う通り、もうひとりのオカズになり得たかもしれないセックスパートナーなんだ。
「ああっ! あ、や、やばっ、──ッ!?」
ペニスを扱き続ける山本さんの指がカリを擦った瞬間、呪いのようにその射出を阻まれていた精子の先頭組が、ついにその欲望のままに尿道を駆け抜けていった。
「あっ、ちょっと出た」
山本さんは小豆一粒分くらいの精液を指で掬い取って、それをネバネバと捏ねて伸ばす。
「ソトミチくん、いま美優ちゃんのこと考えてた?」
「ど、どうだろう……」
具体的に美優とのエッチを思い出していたわけでもないし、いつもみたいに美優の声や姿を想像していたわけでもなかった。
それでも、山本さんが美優というワードを出したのは間違いがないし、以前に射精をするために見せてもらった写真のことは考えていたから、まだ美優をオカズにしないと抜けないことに変わりないとも思う。
それぐらい、俺が山本さんに対して抱いた射精欲は、どちらによるものなのか曖昧なものだった。
「ふふっ。思ったより早く堕ちた」
山本さんは不敵に微笑み、指で遊んでいた精液を舐めとる。
「まさか、最初から……」
「写真を加工してたときに、可能性として考えてただけなんだけどね。ここまでソトミチくんとエッチする機会があるとは思ってなかったし」
つまるところ、それは確信的でありながら、計画的ではない犯行だった。
「ソトミチくんは美優ちゃんのことを考えていれば射精ができるわけでしょ? それってさ、結局はソトミチくんがどう認識してるかの問題でしかないんだよ」
美優とよく似た山本さんの写真で、俺は簡単に射精をしてしまった。
すでにその時点で、俺は美優と近いものを山本さんに感じていたんだ。
「美優以外で、抜けるようになったのか」
「たぶんね。確認してみようか」
山本さんは俺のシャツをまくり上げてソファーに倒すと、ズボンを下ろしながら俺の腰を奥に移動させた。
そこに靴下だけを履いた裸の山本さんが跨ってきて、俺のペニスをその溝に嵌めるように割れ目をあてがう。
「この位置だと、ドアの窓から見えちゃうよ」
「んふ。そうだね」
俺の言葉の意味を理解しているはずなのに、山本さんは体を前に倒して、ぷっくりと膨らんだエッチなおしゃぶりを俺の口に押し付けてきた。
「私は耳がいいから安心して」
山本さんは緩やかに腰を前後させて、秘裂から湧き出してくる愛液を俺のペニスに塗りつけてくる。
いつ誰が通るとも知らない廊下を尻目に、俺は山本さんのおっぱいを吸いながらペニスを硬くしていた。
空いた手は無意識にもう片方の乳房を揉みしだいていて、この強烈なまでの母性にまるで逆らえる気がしなかった。
「ソトミチくんは美優ちゃんのことを考えずに我慢しててね。それで射精したら、もうソトミチくんは私をオカズにできるってことだから」
山本さんは俺におっぱいを飲ませるために、体を斜め前にして支えている。
その状態で素股をすると肉芽が擦れて、それを山本さんも気持ちよさそうにしていた。
「ソトミチくんの悩みがやっと解決できるんだね」
それはもはや俺にとっては障害にはならなくなっていたもの。
妹と結ばれたから、妹をオカズにしないと抜けないこの体質は、全く問題にならなくなった。
むしろそれは、俺と美優の絆の強さを示す証のようなものだったはずなのに。
俺は山本さんの乳首にちゅぱちゅぱと吸い付いて、なされるがままに快楽を享受していた。
腰をくねらせる山本さんのアソコはもうぐちょぐちょになっていて、本当に挿入していないのか不安になるほど。
山本さんの片乳を横に持ち上げて、下目でどうにか股間の状況を確認すると、そこにはパイズリをしてもらっているときのように亀頭が見えたり隠れたりを繰り返していた。
ペニスはその全体が山本さんの淫液で照りついて、生の肉の柔らかさを感じるたびにビクビクと震えている。
「ん、あっ……ソトミチくんの、硬くて気持ちいい……膣内に入れちゃいたい……」
周囲の音楽の切れ目に、グチュ、グチュ、と卑猥な音か聞こえてくる。
こんな状況で挿入したら絶対に中出しするまで止まらなくなる。
それがわかっているのに、俺はまた山本さんにオスとしての本能を引き出されそうになっていた。
「山本さん、もう出させて……!」
さっきの手コキで射精の寸前まで追い詰められていたせいで、もう我慢も限界だった。
このまま快楽責めをされていたら、理性が吹っ飛ぶかもしれない。
美優との親愛の証である、妹をオカズにしなければならないという体質を否定するのは辛い決断だったが、ここで射精しておかなければ大事になる気がした。
「出そうなの? ソトミチくん」
ほのかに優越感に浸った顔の山本さんは、腰を深くまで落として俺のペニスを肉の溝に埋めた。
フェラとは違う肉感と、唾液とは違う粘性が、性感帯にかつてない刺激を与えて俺を昂らせてくる。
「あ、あっ、や、やまもとさん……!」
「ふあっ、ああっ、ソトミチくん……腰を動かしたら危ないよ……!」
欲望のままに腰を反り上げていた俺は、山本さんがコントロールを失いそうになっているのを見て、慌てて動きを止めた。
相互に腰を動かしていると気持ちがそっち側に引きずられてしまうのだ。
「そんなに動きたいなら、ソトミチくんがして」
山本さんが腰を上げると、練り込んだローションを垂らすように愛液がダラっと溢れた。
そして、山本さんはまたドアの窓から見えない位置に立つと、壁に手をついて俺を呼ぶ。
俺は導かれるままに山本さんの背後に立った。
すると、山本さんは俺のペニスを腿に挟んで、俺の両手にそれぞれのおっぱいを掴ませた。
「犯して」
山本さんは俺に期待の眼差しを向けてから、その裸体を俺に預けてきた。
それは股にペニスを擦り付けて射精してほしいという山本さんのおねだりだった。
「や、山本さんッ──!」
俺の腰は自然と動いていた。
動物が本来そうあるべく、生殖行為に至るその一歩手前まで、俺は無意識に動作を行っていたのだ。
「はんっ、あっ、あああっ……! そとみちくんの……当たって、きもちぃ……っ!」
張り裂けそうなほど勃起したペニスは、上向きの力で山本さんの秘裂を圧迫し、エラの張ったカリが山本さんのクリトリスを擦って悶えさせる。
俺は無我夢中でおっぱいを揉みくちゃにして、バックで犯されて悦ぶ痴女を躾けるように、両方の乳首を指先で抓り上げた。
「ひやぁうっ……あんっ、あぅああぁ! そ、ソトミチ、くん……いひゃ、きも、ちいいッ……!!」
俺の名前を叫んで悶絶する山本さんに、次は臀部を叩いて叱るように、俺は腰を激しく打ち付けた。
パン、パン、と室内に破裂音が鳴り響き、それの音を聞いて山本さんが興奮しているのが喘ぎ声から伝わってきて、俺もまた歓喜に震える。
防音室であることをいいことに、俺たちは快楽を声にして寸前の交わりに耽った。
淫らな音が反響して、それが催眠術のように俺たちの脳を蕩けさせる。
胸を揉みしだけば山本さんの頬が緩み、乳首を抓ればふとももがキュッと締まって、そこにねじ込むようにペニスを挿入すると、擦り切れるような嬌声を上げて山本さんが身悶える。
こんなエッチな女の子はお仕置きしなければならない。
男を誑かしておかしくする魔性は、俺のペニスで更生させるんだ。
セックスがしたい。
このまま山本さんのいやらしい穴に挿入して溢れるまで射精がしたい。
「山本さん……もう……出るよ……ッ!!」
もう理性の限界だった。
これ以上続けていたら、俺の本能が山本さんを孕ませてしまう。
どうにか射精して一区切りをつけなければ、全てを失うことになる。
「ひゃ、い、ああっ、あぁあ! だ、だして! しゃせいしてぇ!」
滑舌が怪しくなりかけた、その山本さんの「だして」という叫びが、俺の射精のスイッチを押した。
急速に尿道を登ってきた精液を、俺は山本さんの背中にかけようと、射精の瞬間に腰を引く。
「い、ぃギュッ──!」
そのペニスを引き抜く最後の動きが、腰の引けた山本さんのクリトリスを強く擦り、その刺激が山本さんの絶頂を導いた。
俺が射精するのと一緒に、脚の踏ん張りの効かなくなった山本さんの腰が降りてきて、俺はにゅるりとした温かな肉質の間に精液をドクドクと吐き出した。
「──ッ!?」
俺は山本さんが転ばないように支えつつも、焦燥の中でなんとかペニスを抜き出し、体勢を立て直して山本さんの尾てい骨のあたりに残りの精液を出した。
まさか山本さんが倒れてくるとは思わず、予想外の事態に軽いパニックになる。
「山本さん、大丈夫!?」
「うん。ごめんね。まだイクのに慣れてなくて」
少しして山本さんが落ち着いたのを確認すると、俺は山本さんの股のあたりに射精してしまったことを告げた。
すると山本さんは前から指を入れて膣の周辺を探り、そこには何もなかったことを教えてくれる。
「壁にも掛かってないね。でも、これだけ掻き出しても出てこないから、中には出てないと思う」
「そうなのかな。奥に押し込んじゃったとか」
「それもなさそう。中出しされても実は大丈夫なんだけどね」
山本さんの気になる発言に、俺がどういう意味かと尋ねようかとした瞬間、
「あっ……」
それがどんなハプニングだったのか、先に気づいたのは山本さんだった。
「どうしたの?」
「その、とりあえず、妊娠の心配とかは、ないんだけど」
山本さんは壁の方を向いたまま、その事実をモジモジと教えてくれた。
「ソトミチくん、私のお尻に出したかも」
まさかの事実に、俺も上手く状況が飲み込めなかった。
どうやら絶頂の弾みで、俺のペニスの先っぽだけが山本さんのアナルに入っていたらしい。
俺はそこに精液を流し込んでしまったんだ。
その事実を聞いて、俺は、ゴクリと唾を飲んだ。
もしそうなら、山本さんがお尻の力を抜けば、そこから俺の精液が漏れ出してくるはず。
「か、確認、させてもらってもいい?」
「ふぇ!? え、あぁ、うぅ……」
さすがの山本さんも、アナルを見られるのは慣れていないらしい。
穴のかなり浅いところに先っぽが入っただけとはいえ、俺は山本さんのもう一つ残っていた処女を奪ったとすらいえるんだよな。
きちんと確かめておかないと。
「そ、ソトミチくんが、そう言うなら……」
自らのお尻を両手で丁寧に開く山本さんの顔は、かつて見たこともないぐらい真っ赤に染まっていた。
山本さんは恥じらいを知らないわけではなく、人よりもエッチに抵抗がないだけ。
股を開いて見せるとかは、山本さんからすれば予定調和の範疇だったのだ。
だが、これは正真正銘、山本さんにとっても陵辱に等しい行為。
「み、見えちゃってる……?」
重厚な扉を引くように、ゆっくりと開かれた臀部の中心には、溢れそうな精液をなんとか押し留めようとヒクついている菊門があった。
「見えてるよ。お手拭きでキレイにするから、力を抜いて」
「う、うぅぅ……そんなに、見ないで……」
ついには観念した山本さんのアナルから、俺が中に出した精液がとろっと垂れ落ちてきた。
俺はそんな光景に感動を覚えながら、山本さんのお尻を丁寧に、精液が出なくなるまで拭いてあげた。
「山本さんのこと本気で好きになりそう」
「私はソトミチくんのそういうエッチのとき頭がバカになるのも好き」
山本さんは辱めを受けてなお従順に、俺の方を向き直ってペニスをおしぼりで拭いてくれた。
「あの、ソトミチくん」
そこには、まだ屹立したままの剛直が張り詰めていた。
あんなエロいものを見たあとでは仕方がない。
山本さんがエロいのがいけないんだ。
と、そんなタイミングでなり響く、退室の時間を告げる電話のベル。
このままだとまた勃起したまま帰ることになってしまう。
「もう三十分だけ延長しよっか」
「そうしてもらえると助かる」
この時間の延長は痛い出費だが、背に腹はかえられない。
「はい、はい。……え? ああ、そうですか。わかりました」
電話に出た山本さんは、目を丸くして俺と視線を合わせた。
まさか、とは思ったが、どうやら満室で延長ができないらしい。
「どうしよっか。残り十分でもう一回出す?」
「それは、さすがに……」
俺の回復の早さを考えれば、もう一度出しても明日の由佳とのデートに支障はないように思う。
だが、エッチありのデートをすることがわかっていながら、これ以上精液を減らしておくのは、さすがに由佳をないがしろにし過ぎだと思えた。
「どうにか、鎮めるよ」
「そう? 無理しなくてもいいんだよ。せっかく出せるようになったんだし。ソトミチくんだって、まだ出したいからおっきくしてるんじゃないかな」
山本さんは、俺の事情を知りながらも煽ってくる。
なんて悪い女なんだ。
いつか本格的にお仕置きエッチをしてやりたい。
「と、とりあえず、服を着ようか」
「ふふっ。はい」
こんなところで裸になっている山本さんを見ていたら、落ち着くものも落ち着かない。
俺はブラジャーをつけ始めた山本さんの横で、辺り一面を汚してしまっているお互いの粘液を拭きさり、できるだけ部屋をキレイにしておいた。
場合によっては、俺たちのエッチしてる声が漏れてたかもしれないからな。
証拠はできるだけ消しておくに限る。
「ソトミチくんのそこ、あんまり膨らんで見えないね?」
服を着た山本さんが、俺の股間に視線を落として呟いた。
たしかに、想像していたよりは膨らみが目立っていない。
俺の勃起が反り上がっているおかげで、ズボンの中にどうにか収まっているようだった。
「ベルトで引っ掛けたらバレないんじゃないかな」
「なるほど」
ベルトを一つ緩くして腰の位置を下げ、亀頭をその隙間に引っ掛ける。
すると、ほぼ垂直になったペニスを、ズボンの布を押し上げることなく隠すことができた。
「でもこれ、歩くと痛いな」
「バスに乗るまでの辛抱だから、どうにかならない?」
「頑張るけど、敏感な部分だからツラい……」
せめて竿の方を固定する仕組みだったら問題はなかったのだが、よりにもよって最も刺激に弱い部分を挟んでいるだけに、このまま歩くのは困難だった。
それに俺はこの最大まで勃起した状態を維持し続けなければならない。
一気に萎んでくれればそれでもいいが、しばらくは半勃ちで外を歩き回ることになる。
俺だけが恥ずかしい思いをするだけならまだしも、並んで歩く山本さんも微妙な気分だろう。
「そういうことなら、もうこれしかないね」
山本さんはポケットからヘアピンを取り出すと、せっかく穿いたパンツをわざわざ脱いで床に落とした。
「まさか、ノーパンで帰るつもり……?」
「そっちのほうが興奮するでしょ」
たしかに、そんなエロい子が隣にいるとなったら、肉棒が萎えてベルトの引っかかりから外れることはない。
そのためにノーパンで街を歩くとか、どんだけ献身的なんだこの人は。
「あとは、これをこうして」
山本さんは俺のズボンも脱がせてきて、ガチガチに勃起したペニスに脱ぎたてのパンツを巻きつけ、それをヘアピンで止めた。
淡い赤色のパンツが俺のペニスを包み、ぐっしょりと濡れたクロッチが亀頭をガードしてくれている。
「死ぬほど変態っぽいんだが……」
「んふふ。お似合いのカップルでしょ?」
その状態でまたベルトを巻き直すと、今度は安定して痛みなく勃起を維持できるようになった。
片やノーパンスカートで、片や女性物のパンツをペニスに巻いている。
立派な変態カップルだった。
それから部屋を出て、俺たちは受付で会計を済ませた。
そこにいたのは、電車に乗っていたときと同じ、見た目だけは清楚可憐な淑女と、真面目そうなスーツ姿の男。
服の中にとんでもないイチモツを隠し持って、俺と山本さんは仲良く手をつないでバス停に向かった。
エスカレーターに乗るときには、山本さんが周囲に人が少ないことを猛アピールしてくるので、スカートの中をひっそりと弄らせてもらった。
わかりきっていたことであっても、実際に触ってみて布がない感触はゾクッとする。
割れ目に触れるとそこには当然のように濡れた穴があって、指を押し込めば簡単に挿入ができてしまうのだ。
短いエスカレーターだったのでそれ以上はできなかったが、あのまま山本さんに手マンをしていたらどうなっていたのか、想像するだけで山本さんのパンツに精液が滲んでしまう。
そうやって、周囲にはわからないような性遊戯を、二人で楽しみながらバス停にやってきた。
前と違って深夜帯ではないためそれなりの人が並んでいたが、どうにか座ることはできそうだった。
「なんだか、ソトミチくんとのバスの思い出って、エッチなことばかりだね」
停留所にやってきたバスに、山本さんはスキップでもしそうなほど気分を浮わつかせながら、俺の手を引いて椅子に座った。
「山本さんがエッチすぎるせいだと思う」
俺は鞄を膝の深くに乗せて、後追いの乗客に勃起がばれないように隠した。
ここまでくれば、もう安全圏だ。
「私はこれまで付き合ってきた大勢とここまでのエッチはしなかったよ。でも、ソトミチくんは関わった女の子みんなとエッチなことをしてる。原因はどちらにあるでしょうか」
「俺のはサンプルが少ないから……」
「じゃあ、お互い様だね」
「そうしておこう」
そんな会話を交わして、それから山本さんは、俺の肩に頭を乗せてきた。
バスが発進して、バスでは話し声がすることもなく、エンジン音だけが響く静かな時間だけが過ぎていく。
これで今日のエッチは終わりだと、俺は完全に油断しきっていた。
「人がだいぶ降りたね」
座っていた人たちも席を立ち、人の影がまばらになった頃。
山本さんがおもむろに口を開いた。
俺のペニスはまだ芯の硬さを残しているものの、半勃ちぐらいには落ち着いていて、下車するまでには萎んでいると思ったのだが。
「ソトミチくんの隣の女の子、いまノーパンですよ」
ボソッと耳打ちされたその一言が、俺の肉棒にまた熱を注いだ。
そのスカートの下には、何も身につけられていない、生の肌が隠れている。
いくら夏場とはいえ涼しすぎる格好を、この少女は周囲の目を忍んでしているのだ。
「山本さん、ほんとエロすぎて堪んないから、それ以上はいけない」
「堪んない?」
「もう勃起してる」
「えへへ。正直者でよろしい」
山本さんは俺の膝と鞄の間に手を忍び込ませると、そのまま固くなった肉棒を擦った。
「ソトミチくんさ、美優ちゃんの命令があれば、射精しちゃうんだよね」
山本さんは美優から俺とどんなエッチをしてきたかすべて聞いてる。
だから、俺の射精が美優の命令にコントロールされてしまうことも知っているのだ。
最近は俺の意思で我慢することを求められるようになったが、今でも俺は美優が射精しろと命じられればするし、射精するなと命じられればどんなに刺激を与えられてもイかない。
そういう体質のままだ。
「私の場合も、同じかな」
俺は山本さんに、美優に近い何かを見出して、ついには美優をオカズにしないで射精をしてしまった。
もしその条件が俺の体質に関連付いたままなのだとしたら、俺は山本さんにも射精をコントロールされてしまうことになる。
美優のほうが優位とはいえ、二人の女の子に射精管理されるとか、いつか地獄を見ることになりそうだ。
「どう、だろうな……」
「さっきも、私が出してって言ったらすぐに出してくれたよね」
カラオケでのエッチも、俺は山本さんの「だして」という声を聞いて射精した。
たまたまタイミングが被っただけとも考えられるが、あの感覚は山本さんの意思のこもった言葉に、体が反応していたことは疑いようがない。
「ソトミチくんは、私が相手でも声だけでイッちゃうのかな」
それは悪魔の囁きだった。
もし、山本さんが断定的に射精を命じるのならば、あるいはこの場で射精してしまうことだってありえる。
「俺も美優の声で出してたときは、かなり興奮してる状況だったから、ただ命令されただけではイかないと思うよ」
美優の命令で射精をしてしまうとはいえ、それはエッチの延長線上というか、その大部分が俺に連続射精をさせるために口にされた言葉だった。
だから、たとえばこの場で「出して」と言われるだけでは、まだ不十分だ。
「このまま私のパンツに射精してみたくない?」
「そ、それは……」
山本さんは意地でも言葉だけで俺を射精させたいようで、俺も萎えるようなことを考えて心を落ち着かせればいいのに、煽られるたびにエッチな妄想が脳を支配して沸騰しそうになる。
「今なら精液でスーツが汚れることもないんだよ」
山本さんのパンツで包んでもらっている今は、コンドームを装着している状態に近い。
無論、山本さんのパンツはぐちょぐちょになるし、歩けば精液が垂れ落ちてこないとも限らないが、少なくともトランクスの中に射精するよりはだいぶ安全な状況にある。
そう考えると、俺は肉棒が布に包まれている感覚を意識してしまい、それが山本さんの膣内に挿入しているような錯覚を感じさせて、下腹部が疼いてしまう。
「だ、だめだ、山本さん、今日は……」
「ソトミチくん。出したいときに出すのが一番だよ」
山本さんは顎をくすぐるように、人差し指で俺の肉棒をカリカリとイジってくる。
そのたびに肉棒がビクついて、先端から漏れたカウパー腺液が、山本さんのパンツのクロッチに染み付いていた愛液と混ざっていく。
山本さんの下着が俺のペニス全体を圧迫し、亀頭は卑猥な水分を感じて更にその張りを強くしていく。
「あっ……ダメだ……こんなとこで……」
「いいんだよ、ソトミチくん。エッチなのは、ここも同じだから。私もソトミチくんと一緒にエッチになりたい」
俺の視界の端で、ヒラヒラと揺れる一枚の布。
それは山本さんの大事な部分を隠す、儚いほどに薄い装備だった。
ひょいと裾を持ち上げれば、そのスジのついた肌色が露わになってしまうほどに。
「ま、まずいって……!」
俺は小声で山本さんを注意しながらも、その視線は山本さんの秘部に奪われていた。
こんな公共の場で、まだ乗客の要る車内で、見せてはいけない部分を晒している。
「ねえ、ソトミチくん」
俺の手を取り、その指を蜜壺に当てて、山本さんは淫らな体液の満ちるその場所にグッと押し込ませた。
「ここに中出しするみたいに、いっぱい精液出して」
俺の耳の奥で反響するように、しっとりと囁かれた。
その声が、俺の射精のトリガーを引いた。
「うっ……!」
ドクン、ドクン、ドクンと、静かに脈を打つ俺の肉棒。
亀頭から竿の根本まで、山本さんのパンツが包んでくれているその場所に、温かなものが流れ込んでいった。
射精したのだ。
呆気なく。
俺は山本さんの命令で、一般の乗客から見えないとも限らないその中、あるいはトリガーなど無視してハンマーが振り下ろされるピストルのように、精液を吐き出した。
今日は一回だけのエッチと決めていた。
そんな強い意思があったにも関わらず、俺はついに山本さんの誘惑に屈してしまった。
「いっぱい出たね」
どれだけの量を射精したのか、山本さんにはわからないはずだった。
それでも、射精したあとの放心状態の俺を、山本さんは優しく抱き包んでくれて、また子供をあやすように俺を慰めてくれた。
俺はどうしようもなくダメな男なのに。
そうやって、山本さんに甘やかされるのが、酷く心地よかった。
「降りたら、お掃除して解散にしよっか」
それから俺と山本さんは、揃ってマンション近くのバス停に降りた。
エントランスに入ってすぐだと監視カメラがあるため、俺は山本さんにポストコーナーにまで連れて行ってもらい、そこでパンツを脱ぐことに。
部屋がすぐそこにあるのだから入ればいいと思うかもしれないが、家に入ってしまうとしばらくそこで休まなければならない気分になってしまうし、どんな都合があろうと今日は外でエッチをする日だったから、むしろここですることに違和感はなかった。
「すっかり汚されちゃった」
山本さんは俺のパンツを下ろすと、パンツを抜き取って膝を下ろした。
床に精液が垂れ落ちないよう、山本さんは片手はパンツを持ちっぱなしにして、その口を俺のペニスに近づける。
「その下着、大丈夫かな。精液って汚れが落ちにくいんだけど」
「へーきへーき。暴発しちゃったときの服とか、お洗濯するのは慣れてるし」
山本さんにとって、男が着衣状態で射精してしまうのなんて日常茶飯事だった。
だから、俺が思っているほど、山本さんはこの射精を特別なものとは思っていないんだ。
「お掃除するね」
射精をしたらお掃除をする。
それが山本さんにとっての当たり前。
根本から鈴口の隙間、尿道に残った精液まで、残さずキレイにしてくれるのが、この山本さんという女の子なのだ。
これで好きにならないという方がおかしいだろう。
「はい、おしまい。いっぱいエッチができて楽しかったよ、ソトミチくん」
「俺もなんだかんだで楽しんでしまった……」
これも、美優が言うには、予定通りの進行。
俺が山本さんに積極的に手を出して、こうしてまた仲が深まっていく。
その先にどんな解決方法があるのか、俺には見当もつかない。
ただ、どんな事情があったにせよ、個人への感謝をするのはまた別の話。
これだけ楽しくて気持ちの良いエッチをしてもらったのだから、俺は山本さんにお礼をしなければならないのだ。
「ありがとう、山本さん。気持ちよかったよ」
「こちらこそ。楽しいエッチをありがとう」
山本さんとのエッチは、精神的も、体質的にも、かなりの障害が取り去られてしまった。
なにより重要なのは、俺が言葉による命令で射精管理されてしまうということ。
山本さんをオカズに射精するようになった今でも、俺は山本さんに「我慢して」と命じられるだけで、これまで通りのエッチが楽しめてしまう。
これは山本さんにとって、あまりにも有利すぎる現実だった。
「またこんな楽しいエッチがしたいね」
「あ、ああ、ほんと、山本さんとこういうのするの、ハマりそうで怖い」
山本さんの変態性が、俺の性癖にジャストヒットしている。
家でまったりエッチするのは美優に相手をしてもらうのが一番だが、外でのエッチは山本さんとしてたほうが波長が合いそうだ。
色んな意味で合わせちゃいけない波長なんだけど。
「私がソトミチくんとのエッチにハマってるのと、きっと同じ感覚なんだと思うよ」
「これは恐ろしいものだな」
「エッチになったのはソトミチくんのせいだってのも信じる?」
「そこはさすがに半々かな」
山本さんが根っからのエロリストだったという説は、俺の中で永劫払拭されることはない。
そうでなければこんなにエッチな女の子になるはずがないんだ。
「ソトミチくんは初めてお話をしたときより、ずいぶんカッコよくなっちゃったから、実は私も少しは緊張してたんだよ?」
「そんな馬鹿な」
過去に付き合ってきた人がどんな男だったのかは知らないが、俺よりカッコいい男なんていくらでもいたはずだ。
「でも、なんだか美優ちゃんにしてやられた気分だな」
「好きな人を取られたから?」
「それもある、かな。自分で言うのもなんだけど、私とのエッチがなかったら、ソトミチくんはそこまでのいい男にならなかったと思うんだよね」
山本さんが打ち明けたその本音は、俺にも概ね同意ができるものだった。
俺の長所をたくさん褒めてくれた山本さんがいたから、前に進めたことだってたくさんあった。
「由佳ちゃんもきっとそうだよ。ソトミチくんは色んな女の子とデートして、エッチして、そうやって変わっていったんでしょ? どこまでが狙い通りなのかはわからないけど、結果的には私は、ソトミチくんの男を上げただけの女だったわけで」
不満や愚痴とは、きっと違う。
そういうネガティブな話し方ではなかった。
ただ、漠然とした悔しさを抱えていて、山本さんもそこにやりきれない想いを溜め込んでいるのだと思う。
「それでソトミチくんがそんなにいい男になっちゃうのは、ちょっとズルいかも」
最後に山本さんは、ちょっといたずらっぽい笑みで俺をからかって、
「恩返しはするよ」
「うん。いつか、長い付き合いのうちにね」
それで今日のエッチは本当の終わりを迎えた。
さすがの美優でも最初からそんな計画があったわけではないと思う。
でも、美優が言っていた、俺が他の女の子とエッチすることを許せる条件の中には、そういう要素も含まれていたんじゃないかな。
もっと本気になれと言った美優の命令だけど、こうした時間を過ごすほどに山本さんへの情が湧いてしまう。
最後は美優との純愛を守ったまま、誰もが幸せになる道を俺は進んでいるらしいが。
明日の由佳とのデートでも、俺はまた美優ではない誰かを好きになってしまうのだろう。
どこに解決の糸口が用意されているのか。
それは俺にはまだ、全く見えないままだった。