※この作品はR-18です。

俺の妹が最高のオカズだった   作:風見 源一郎

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ラブホテル、初体験、イチャラブセックスの予定

 

「それなりに楽しめたわね」

 

 お土産を両手いっぱいに抱えて、由佳はふわふわのツインテールとワンピースを翻し、遊園地の入退場口を振り返った。

 

 俺はあれからも由佳には振り回されっぱなしで、空いてるアトラクションや通りがかったショップがあれば口を挟む余地すらなく連行された。

 

 元気モードの由佳を相手にするのは尋常ではなく疲れた。

 ホテルに着いたら一時間ほど仮眠させてもらえないだろうかと、俺は薄い望みを由佳に向けて念じてみる。

 

「ん、なに。まだ遊びたかったの」

 

 由佳は申し訳なさそうに低姿勢で視線を送ってくる。

 

 違う、そうじゃない。

 

「遊びすぎて疲れたから、どこかで休めたら助かるなって」

「そうね。晩飯はコンビニで買って、ホテルに直行しましょ」

 

 由佳は荷物を抱えて駅へと歩みを速める。

 遊園地の近くではなく、地元のホテルを利用するつもりのようだ。

 

「いいのか? 外食して休んでからのほうが、ホテルの時間を無駄にしなくて済むけど」

「早く入ったほうが無駄にならなくない?」

 

 由佳はポカンと問い返してくる。

 

 俺と由佳との食い違い。

 ホテルの利用方法は、二つあるのだ。

 

「あ、言ってなかったけど、今夜は宿泊だからね」

「そんなの聞いてないぞ。デートは一日の約束だろ」

「一日ったら朝まででしょ。オトナのデートなんだから。遊園地だって行くことを教えてなくてもオーケーしてくれたのに、なんでラブホだけダメなの」

 

 由佳は強く言い切る口調で尋ねてくる。

 

 この聞き方をされると言い返しが難しい。

 直情的でわかりやすい主張のために、時間稼ぎのための質問すら思い浮かばない。

 

 会話ベースの議論で物を言うのは瞬発力。

 その場でなんとなく納得してしまうと、後は相手のペースで流されるまま。

 それに加えて、小さい要求を飲み込んだ後は次の大きな要求を断りにくくなるという、人間の心理的性質まで突いてくるのだ。

 

 本当に根がイヤらしい女だなこいつは。

 

「……まあ、そういうことなら、美優には明日帰るって連絡しておくよ」

 

 しかし、そんな言葉の巧さとは関係なく、俺は宿泊を否定するつもりにならなかった。

 早く家に帰っても何かが解決するわけでもないし、由佳から宿泊で入ると言われたとき、嫌だという感情が湧いてこなかったのだ。

 

「ずいぶんと物わかりがいいじゃん」

 

 由佳が怪訝な表情で俺の顔を覗き込んできた。

 

 もう少し抵抗されると思ったんだろう。

 俺としてもここまでの心境の変化は予想外だった。

 

「身勝手に振り回されるだけのデートだったら帰ってたよ。でも、今日は楽しかったからな。もう少し一緒にいてもいいかなって」

「はあ、そう。よくわかんないのね」

 

 由佳は俺の言葉に納得して、頬をポリポリとかいてから、何かを誤魔化すようにそっぽを向いた。

 

「あんた、男のくせになんで私より身軽なの。荷物持ちなさい」

「構わないけど」

 

 由佳は俺と目を合わせないまま、手に持っていたお土産を全て渡してきた。

 俺も由佳のヒールを入れた箱とか色々と持っているのだが、何かに難癖をつけなければ気が済まなかったようだ。

 

 それは駅に着いても変わらずで、電子カードを出すのに手間取っている俺にチラチラと目配せをしながらも、由佳は手伝おうとはしてくれなかった。

 

 褒められて照れているのとは違う。

 ここまで露骨だと、由佳が無理にそうあろうとしているのがよくわかる。

 

 電車に揺られながらも手すりに掴まることのできない俺が、発着時の速度変化で体勢を崩すと、由佳はその瞬間だけアワアワと俺を支えようとして、それをグッと堪えて手を引っ込めていた。

 そんなに心配なら素直になってしまえばいいのに、何を守りたくて意地になっているのか。

 

「一個ぐらいなら、持ってあげてもいいけど」

 

 由佳は目を凝らすように俺を睨んで、手のひらを差し出してきた。

 

「軽いやつにしてよね」

「助かるよ。なら、これを頼む」

 

 俺は重量はないけどかさばって邪魔だった靴箱を由佳に預けた。

 

「ありがとうな」

「ど、どういたしまして」

 

 俺が感謝を述べると、由佳は気まずそうに目を泳がせた。

 この荷物が自分で押し付けたものであることを由佳も自覚している。

 そして、こんな恩の売り方をされれば誰だって苛立つはずだということも、由佳はわかってやっているんだ。

 

「なんか、優しすぎるんだけど。逆に私への関心が薄れてるんじゃないかって心配になってきたわ。泣いちゃいそう」

「怒る気にならないのは、わざとやってるのが明から様だからだよ。それに、荷物が多くて困ってる俺を心配してくれたのは、どうあれ事実だろ。その気持ちは嬉しかったから。だから泣くな」

「ううっ……そんなこと言われたら違う意味で泣いちゃうわ……」

 

 由佳はわざとらしい演技で目蓋を擦る。

 このめんどくささが、ちょっと癖になってきた自分に危機感を覚えてきた。

 

「ま、まあ、お兄さんは私のこと好きみたいだし? これから待ってる甘い甘い男女の交わりにも、期待が高まっちゃってたりするのかしら?」

「そこは特に楽しみにはしてない」

「ここまできたらノリ良く優しさを見せなさいよ!」

 

 気づけば由佳はいつも通りになっていて、アホで自己中なままの姿がそこにはあった。

 

 このやりとりでなんとなくわかったのは、由佳は自分が主導権を握れている時だけ調子良くなるということだ。

 そのためにはある程度の反応を予測する必要があって、由佳がわざと相手に反発させようとするのは、その方が返される言葉を想定しやすいからなのではないかと、頭の端で考察してみる。

 

「ホテルに着いたらヒィヒィ言わせてやるんだから」

 

 たしかイチャラブセックスがしたかったはずの変わり身の早い女を、俺は生温かい目で見守りながら、見慣れた駅に降りて荷物いっぱいに後ろを歩いていった。

 

 夏の空が暗くなるほどの刻に、俺は由佳と一緒にホテル街を練り歩き、満室だらけのラブホテルを回ること四軒目、ようやく空室を見つけることができた。

 

「どこも一時間待ちだなんて信じられない……! おかげで三十分も無駄になったわ! どんだけセックスしたいのよ世の中の奴らは!」

「需要が多いんだよ。どんな人間だって利用の対象者だからな」

 

 俺も山本さんとエッチをする場所を探し回ったとき、シャワーとベッドが置いてある個室があればどれだけいいかと、その有り難さを改めて思い知った。

 学生はもちろん、持ち家のある夫婦でも、会社を経営しているような金持ちでも、密かに欲望を満たせるような場所は欲しくなるもの。

 由佳ではないにしても、ラブホテルそのものの薄暗い雰囲気が好きな人もいるだろう。

 

「あ、悪いけど、お金は払ってくれる? お土産を買いすぎてもうお財布が空なの」

「最初から俺が払うつもりだよ。ホテルかネカフェに来るのはわかってたからな。でも、自分で払う予定だったんなら、もっと計画的に使うか多めに入れておくかしとけよ?」

 

 ホテルのエントランスで、俺はパネルの中から無難なモダン調の部屋を選び、発光している四角いスイッチを押した。

 

「しょうがないでしょ。今日のデートのために全財産はたいたんだから」

「どんだけ楽しみにしてたんだ……」

 

 もしかしたら、由佳はヒールだけではなく、ワンピースやポーチも新品で買い揃えたものかもしれない。

 美優や遥のせいで感覚が狂っているだけで、元からデートできるだけの貯金が無かったとも考えられるけど。

 

 受付に行くと、おばちゃんが休憩レストか宿泊かと聞いてきて、俺は宿泊で答えて先払いの会計を済ませた。

 俺が相手でも年齢を疑われることはなく──気付いてても営業上はわざわざ確認などしないかもしれないが──すんなりと部屋の鍵を渡してもらうことができた。

 

 もとより三人以上で乗ることを想定していない狭いエレベーターに乗り込み、俺は由佳とともに上の階へと上がっていく。

 指定の階に着くと、予約した部屋の番号がピカピカと光っているのが見えた。

 

「人生初のラブホテルよ。正直、遊園地にいるときよりワクワクするわ」

「俺は緊張するよ。ついに来てしまったかって感じがする」

 

 俺には縁のない場所だと思っていた。

 ただのキモオタでしかなかった頃からまだ半年も経っていないのに、とうとう俺もこんな建物に来るようになったんだな。

 

「いざ、夢のラブホテルへ……!」

 

 由佳は鍵を差し込んで右に捻り、目をキラキラと輝かせながらドアノブを掴んで引く。

 

 その先にあったのは、ドアだった。

 

「……ドアね」

「二重になってるんだな。間違って開けたときの事故防止とか、防音のためだろ」

「たしかに喘ぎ声とか全然聞こえないのね。密かに期待してたんだけど」

「聞こえてたらこっちも困るだろ」

 

 俺も自分でセックスはするようになったけど、他人がしているところを直接見聞きしたことはない。

 知らない人の生の喘ぎ声なんて聞いたらどんな気分になるのかな。

 

「私は別に聞かれてもいいんだけど。まあいいや。さ、今度こそ夢の扉を開くわよ」

 

 由佳が二枚目のドアを開けると、まず目に入って来たのは大きなベッドと液晶テレビだった。

 モダンな部屋を選んだからか、ベッドの上側に例のスイッチ板が置いてあること以外は、ビジネスホテルとそれほど変わらない装いになっている。

 

「セックスするためのベッド!!」

 

 由佳はコンビニで買ってきたドリンク類をテーブルに置いて、部屋の中をあちこちと動き回った。

 

 こんなに大きいベッドは俺も初めて見た。

 横に寝てもまだ幅に余裕があるほどだ。

 クイーンサイズというやつだろうか。

 

「ビジホよりアメニティも充実してんのね。もう普段からラブホに泊まった方がいいんじゃないの?」

 

 由佳は部屋に置かれた化粧台を物色して、商品宣伝用の乳液サンプルを眺めながら呟く。

 

「どっちを選ぶにしても良し悪しじゃないかな。値段はそんなに変わらないし、この部屋で何人もセックスしてるのが気にならないならラブホを選ぶのもありだと思うよ」

「どうせビジホでだってみんなセックスしてるでしょ」

「いらんことを言うな」

 

 俺も由佳に預けられていた荷物をソファーに置いて、空いたスペースに腰かけた。

 ソファーも二人用にしては大きすぎるくらいのサイズがあって、その場で行為を始められるだけの広さが取られている。

 

「そういや、急に泊まりって言われたから着替えがないな。買ってくればよかった」

「要らないっての。私だって持ってきてないし」

 

 由佳が俺の前で自信ありげに仁王立ちする。

 

「ラブホテルってのは、行きずりの男女が終電の無くなった夜を過ごすためにあるの。そして本能のままにセックスに及んで、朝には昨日と同じ服を着て家に帰るのよ。それがいいんでしょうが」

「こだわりがあるのは伝わってきたよ」

 

 言われてみれば、ラブホテルに準備万端でお泊まりするほうが違和感がある。

 これに関しては由佳の言い分の方が正しそうだ。

 

「ところでなんだけど」

「どうした?」

 

 お互いに身軽になって落ち着いたところで、由佳が会話を仕切り直す。

 

「セックスってどうやって始めればいいの?」

 

 由佳から飛び出したまさかの疑問。

 しかして俺も答えを知らないのだった。

 

「どうかな。風呂とか入るんじゃないか?」

「風呂! そう風呂よ! 大事なことを忘れてたわ! スケベ椅子とかあるかしら……!」

 

 ウキウキ気分で風呂場へ駆けていく由佳に、俺も気にはなっていたので後をついていく。

 脱衣所のドアを開けると、透明な壁ごしの風呂場が見えた。

 

「広い!! でもマットもローションもスケベ椅子もない!!」

「ないのか。俺も置いてあるのかと思ってたよ」

「フロントに電話すれば持ってきてもらえるかな?」

「さすがに無理だろ」

 

 マットも特殊プレイの一環だからな。

 普通のカップルは使わないだろうし、ローションを散らかされたら掃除も大変そうだ。

 

「とりあえずお湯を入れとくぞ」

「はーい」

 

 ベッドルームに戻っていく由佳の返事には、すでに風呂場への興味がなくなっていた。

 飽き性というより、気の移り変わりが早いんだろうな。

 

 お湯張りはタイマー式で、時間を指定してボタンを押せば自動的に止まるようになっていた。

 風呂の様子を見にこなくて済むのは、ホテルに入ってすぐに行為に及びたいカップルへの配慮だろうか。

 

 ボタンを押してから俺はカゴに入っていたバスマットとタオルを持ってきて、手に取りやすい位置に移動させておく。

 泡風呂用の液体パックなんて物もあったので湯船の端に置いてみた。

 

「お兄さん! ヤバいの見つけた! 来て来て!」

 

 浴室にいた俺に背後から由佳がタックルしてきた。

 テーマパークではしゃいでいたときよりもテンションが高い。

 

 脱衣所から出ると、お湯の出る音で誤魔化されていた卑猥な声が聞こえてきた。

 液晶テレビには裸の男女が後背位で交わる様子が映し出されている。

 

「AVが映った! アダルトビデオが映ったわ!!」

「繰り返さなくてもわかるよ」

 

 俺は由佳に促されるままにベッドの縁に座り、並んでAVを鑑賞する。

 

 俺も誰かと一緒にAVを観るのは初めてだ。

 さすがの由佳が相手でも、女優の喘ぎ声だけが室内に響くようになると気まずい気分になってくる。

 

「これね、メニューボタンを押すと、好きなAVを選べるようになってるの」

 

 由佳がリモコンのメニューボタンを押すと、AVのパッケージがずらっと並んだ選択画面に切り替わった。

 それから由佳はそのリモコンを俺の手に委ね、期待の眼差しで俺を見つめてくる。

 

「選んで」

 

 絶対に言われると思った。

 自分の性癖をこんな形で暴露することになるなんて。

 俺も空気が読めないわけではないから断りはしないが、美優に報告とかされたら余計なイメージを与えかねない。

 

 ……いや、美優には俺のお気に入りのAVもエロアニメも全部バレてるんだったな。

 

「俺は内容よりも女優で選ぶんだけど」

「御託はいいから選びなさい。どうせ背が低くて巨乳の女が好きなんでしょ」

「どうせとか言うな。それに年下系が好きなのは二次元の話であって、現実では普通にキレイな人が好きだよ」

「あのエロ女みたいに?」

「山本さんだって」

 

 みんなしてエロエロちゃんだとかエロ女だとか失礼な。

 否定できないぐらいエロい人ではあるんだけど。

 

 リモコンのボタンをポチポチと押してページをめくっていくと、見たいようなそうでもないようなタイトルが続き、ようやく目についたのが『受験勉強にきた真面目な眼鏡っ子が図書館でレイプされる! 閉館しても終わらないアクメ地獄!』という非常にわかりやすく性癖を突いてくるものだった。

 

 由佳が無言で急かしてくるので、俺は決定ボタンを押して映像を再生する。

 

「女優で選んだ」 

「露出プレイが好きなんでしょ」

 

 場面は女優が図書館で本を選んでいるところから始まり、客として配置されたエキストラを挟んだ本棚の物陰で、男優が女優の口を塞いで無理やり服を剥いでいく。

 

「地味で巨乳のギャップが良いな」

「巨乳と露出プレイが好きなんでしょ」

 

 まるでこれまでの俺の性体験を見てきたかのような由佳の言及に、上手い言い訳が思い浮かばなかったので俺は口を閉ざした。

 

 途中から口が自由になっても女優が叫ばないあたりにAVらしいご都合感を覚えながら、一つのプレイを鑑賞し終え、次は助けを求めたはずの利用客に代わる代わるレイプされるシーンへと移っていく。

 

「どう? 興奮してきた?」

「微妙だな。人と一緒だからってのもあるけど、肝心の部位が隠れるようなカメラワークになってるのが気になる」

「やっぱりそうよね。ラブホのAVのくせにエロくないってどういうことなの」

 

 二人して真顔でAV鑑賞をしているこのシュールさ。

 これを行為のきっかけとして使うのは難しそうだ。

 

「他にもないのかな」

 

 由佳は俺からリモコンを取り上げてまたメニュー画面に戻る。

 ホテルで観るAVは新鮮さがあって最初は楽しかったけど、慣れてくるとどれも似たような内容に思えてきた。

 

「身長140センチのKカップアイドルだって。お兄さんめっちゃ好きそうじゃん」

「好きな人がロリで巨乳だっただけであって、ロリ巨乳が好きなわけじゃない」

「絶対に好きでしょ。興奮したらシコっていいからね」

「この野郎……」

 

 数字を盛っているとしか思えないアイドルのとんでもないスリーサイズに、俺はそこはかとない興味を抱きながら、再びAVを鑑賞した。

 

 今回は女優そのものが売りのようで、プレイ自体はベッドで男と交わるだけのオーソドックスなものになっていた。

 

「美優の方がエロいわ」

「それは同意する」

 

 残念ながらこちらも股間にピクリと来るものはなかった。

 美優と山本さんを知ってしまったせいで、興奮するAVのハードルも上がってしまったようだ。

 

 というより、今の俺はAVをオカズに抜くことができるのだろうか。

 

「シラけるからやめやめ。私はまずなにより普通にセックスがしたいの。普通に」

 

 これまでお仕置きエッチしかしたことがない由佳にとって、恋人らしくイチャましいセックスをするのは悲願だった。

 

 俺だって、美優のエロさに触発されて興奮が抑えきれなくなったときは自分から誘ったこともあるが、こうして落ち着いた状態からセックスを始めた経験はない。

 

 普通のセックスに関しては、お互い処女と童貞みたいなもの。

 だからといって、ここで「わからない」と言ってしまっては男が廃る。

 やはりリードするならこちらからだろう。

 

「セックスっていったらまずスキンシップだ。これから由佳に触るけど、構わないよな?」

「と、当然よ。いつでも、かかってきなさい」

 

 両手を上げて身構える由佳に、俺はベッドの中央に移動するように指示して、そこで改めて向かい合った。

 

「手から少しずつ体の方に触っていくからな」

 

 普段から露出している部位のうち、最も触れ合うのに抵抗がないのが腕だ。

 手を繋ぐのは人前でもできるが、脚をさすったりキスをしたりすることはほとんどない。

 それぐらい習慣化されたイメージが脳には刷り込まれている。

 

 俺は由佳の手を甲の側から握り、それから手首に指を回して、前腕から肩に向かって触れる場所を徐々に上に移していく。

 二の腕にまで俺の手が触れると、由佳の体がわずかにビクついた。

 

「わ、わかってると思うけど、男にこんなに触らせたのはお兄さんが初めてなんだからね。そのあたり、噛み締めながら触りなさいよ」

 

 偉そうなことを言いつつ仔犬のように不安げな目で見つめてくる由佳を、俺はできるだけ刺激しないように、二の腕のあたりからは少し長めに触るようにして肌の触れ合う感覚に慣れさせていった。

 

 腕の露出している部位のどこを触れても由佳の体が強張らなくなったところで、次は服の上から、ワンピースの輪郭をなぞるように腹部を触っていく。

 

「ねえ、これって普通のセックスなの? もっとこう、情熱的なキスをしながら、ベッドに倒れ込んでくんずほぐれつするんじゃないの?」

「それはドラマの見過ぎだと思うが……」

 

 しかし、このセックスの仕方に違和感があるのは事実だ。

 相手が由佳というもあって慎重になりすぎたかもしれない。

 

「そういうことなら」

 

 俺は由佳の手を正面から恋人つなぎして、反対の手で腰を支えながら由佳をベッドへと押し倒していく。

 

「暴れるなよ」

「わ、わかっ、わかってるっての」

 

 由佳は反射的に手を跳ね除けそうになるのを堪えてベッドに横たわった。

 下半身を密着させると、自然と由佳の脚が開いて、俺はその間に入るように覆いかぶさる。

 

 その瞬間、由佳は自分の股を隠すように、ワンピースのスカートを引っ張った。

 

「ちょっ、まっ、やっぱダメ!!」

「またそんなこと言って。いつまでも進まないだろうが」

 

 俺はふくらはぎから由佳の脚を上へと触れていって、股座にまで手を近づけると、スカートを引っ張る由佳の手をどかしにかかった。

 しかし、由佳は抵抗する力を緩めることはなく、頑としてスカートをめくらせようとしない。

 

 いざとなると奥手になるこのわがままな女に、いつまでも従っていたら終わるものも終わらないので、俺は膝の両側から由佳のお尻を撫でるようにワンピースの中に手を差し込んでいく。

 

 その指先に触れたのは、スカートの下にあるものとしてイメージしていた女性用下着の刺繍の硬さではなく、ごくごく細い、たった一本の繊維質だけだった。

 

「……由佳、お前まさか、これ」

「あの、これは、気の迷いというか……!」

 

 由佳が履いてきたのは紐パンだった。

 しかも、この布がまるで手に触れない感覚からして、Tバックであることはまず間違いない。

 それどころか、極小マイクロビキニの可能性すらある。

 

 俺が覆いかぶさったときにスカートがめくれて、その中にあるものを由佳が改めて目にしたときに、思っていた以上に恥ずかしい格好だったことに気づいて羞恥心が爆発したのだろう。

 

「ちょっと、調子に乗りすぎたみたい! だから、その、タンマで!」

 

 由佳は額に冷や汗を浮かべて、スカートの中に突っ込んだままの俺の手を掴み、行為を中断しようとしてくる。

 

 このセックスは由佳の要望で決まったものだ。

 だから、どんな流れでするのかも、由佳の望み通りにすべきだと思う。

 

「……由佳。このまましよう」

 

 俺は由佳の意思に反して、ワンピースを脱がしにかかった。

 遊園地デートでの由佳とのやりとりを思い返すと、俺がしたいことを主張したほうが由佳が喜んでくれる気がしたからだ。

 

「待って待って! 普通のパンツを買ってくるから! それから再戦で!」

「途中退室はできないって受付で言われたろ」

 

 俺は腕を掴んでいる由佳の手を、無理な力は入れないように剥がしていく。

 

「なら、脱衣所で脱いでくるから……!」

「脱がなくていい。そのままの姿の由佳が見たい」

「へ、変態! 私のエッチな下着姿がそんなに見たいの!?」

 

 涙目で抗議をする由佳に、俺は脱がす手を止めた。

 このままだとレイプしているときと変わらなくなってしまう。

 やはり服を脱がせるには北風ではなく太陽にならなくては。

 

「見たいよ。こんなに由佳の体に興味を持つことになるとは思わなかった。できれば、包み隠さず全部を見せてほしい」

「そう、なの……?」

「ああ。今日だって、由佳のことは何度も可愛いって思ってるから。女として意識し始めてるのかも」

「ば、ばか。美優がいるのに、私にそんなこと……」

 

 由佳はチラチラと部屋の隅に目をやって気を紛らわしながら、満更でもない顔で体の力を抜いていく。

 

 はたしてこれも雰囲気を出すための演技なのか、本気で俺に惚れ込んでいるのか。

 我ながら酷いたらし込みだと思うが、嘘を言ったつもりはない。

 素直な気持ちとして、今の由佳はエロくて可愛いく感じている。

 

「そんなに言うなら、見せてあげないこともないけど」

 

 由佳は「せっかく買ったし」と呟いて、ワンピースの裾をお腹あたりまで捲り上げた。

 

 その細い体でまず目が行ったのが、一本の紐だけが巻かれている腰骨だった。

 皮膚まで薄い由佳の、骨張った下腹部の逆三角形が、まだ未発達な体を生々しく感じさせる。

 局部を隠すために申し訳程度に付けられた黒い布は、一応は股下まで伸びているようだったが、そのほとんどが割れ目に食い込んでいた。

 

「中学生なのに、エロい体だよな」

「お兄さんが、ロリコンなだけでしょ」

「さすがにもう否定できないかもしれない」

 

 俺は他愛無い話で気を逸らしながら、内側に重ねられたキャミソールごと服を持ち上げていく。

 その胸部には、乳首だけをギリギリ隠す三角形の布が三つの頂点で支えられていた。

 わずかな高低差があるその丘の頂点を凝視すると、うっすらと小ぶりな突起が浮いているのがわかる。

 

「マジに興奮してきた」

 

 羞恥に耐えながらも下着姿を晒す由佳を見ているうちに、俺のズボンの中で愚息が熱を溜め込み始めていた。

 これまで何度も美優の命令で由佳とエッチをしてきたせいで、体がもうセックスをする相手だと認めてしまっている。

 

「なら、これを買ってよかったわ」

「由佳だから似合う格好だと思う。エロいし可愛いよ」

「もう、わかったってば」

 

 俺がワンピースを脱がせて取り去ると、由佳はベッドのシーツを掴んで、隠したい想いと見せたい想いの板挟みに戸惑いを滲ませた。

 

「私ばっかり脱がされるの、不公平じゃない……?」

 

 由佳から漏らされた不満に、俺はハッとさせられる。

 女の子を一方的に脱がせるのは配慮が足りなかった。

 

 俺はまずポロシャツを脱いでベッドに投げ置いた。

 その裸になった俺の上半身に、由佳がペタペタと手を触れさせてくる。

 

「案外、しっかりと筋肉がついてるのね。もっと引きこもりみたいな体をしてるかと思ってた」

「脂肪も筋肉も付きやすい体質なんだよ。今は色々あって少し引き締まってる」

「セックスのしすぎでしょ」

 

 由佳はそう口にしながら、山のように張っている俺の下腹部に視線を落とした。

 薄っすらとその頬が紅みがかって、わずかに緩む。

 

「なんだかんだ言っても、体は正直ね」

 

 そのズボンの膨らみに手を添える由佳。

 由佳は女としての自分に性的興奮をしてもらえることに、わかりやすく悦びを感じるタイプだ。

 

「脱がせてもいい?」

「いいよ」

 

 由佳は体を起こすと、俺のズボンのチャックを下ろして膝まで脱がせた。

 生地の薄いパンツには、勃起の具合がよりリアルな形になって表れている。

 

「生のモノを見るのは、初めてだから。緊張するわ」

「カラオケのときに見てなかったか?」

「あのときは、遥の乱入があったからよく見えなかったの」

 

 由佳は口先が上手く回っているときは余裕綽々で煽ってくるくせに、いざ実際にする場面になって雰囲気が出てくると、途端に女の子らしい恥じらいを伺わせる。

 美優も山本さんも、エッチをするときに恥ずかしがり屋になる点では共通しているが、どのような行為に対して恥じらいを感じるのかがそれぞれに違うんだよな。

 する方としてはどの反応も新鮮で楽しい。

 

「えいっ」

 

 間をおかずに由佳は俺のパンツをずり下ろし、そこからついに生のペニスが晒される。

 トランクスのゴム紐に弾かれてブルンと飛び出した、そのカサの付いた肉の突起物に、由佳の瞳孔が大きく開いた。

 

「おぉ……すごいえっちな形してる……」

「毎日見てる側としてもそう思うよ」

 

 性器を晒すことをなぜヒトが恥らうようになったのか知らないが、その一つの要因としてこの卑猥な形状が関係しているはずだ。

 もう少し、見るほうも見られるほうも抵抗のない器官になっていれば、世の童貞率も性犯罪率も減るのではないかと、なんの根拠もないことを考えてしまう。

 

「ほんとに、硬くて熱い……」

 

 由佳は俺の肉棒に指を絡めて、竿を覆う皮をカリに被せながら扱いてくる。

 

 AVを見たことがあるだけあって知識は豊富のようだ。

 

 指まで細くて長い由佳の手に触れられるのは、また違った気持ちよさがあった。

 山本さんと違って体温も低めだから、手のひらから指先まで、触られているのがはっきりと感じられる。

 

「ねえ、なんか、変なニオイしない?」

 

 由佳が俺の肉棒の先に鼻を近づけて、スンスンと匂いを嗅ぐ。

 初めての人からすれば、汗と一緒に漂う精液のニオイは異臭だよな。

 

「ちゃんと洗ってるんでしょうね」

「洗ってるよ。夏場とかはどうしたってこうなるんだ。どんな男でもそうだよ」

「あらそうなの」

 

 由佳は怪訝な顔で俺のペニスを扱きながら、何かを言いたげにチラチラと俺に上目の視線を向けてくる。

 

「どうした?」

「いや、その。ほら。アレ、あるじゃない。アレ」

「アレって?」

「だから、いわゆる、ぶろーじょぶってやつ」

 

 よくそんな難しい言葉を知ってるものだな。

 要するにフェラチオのことを言いたいんだろうが、フェラなんて単語ぐらい何度も口にしてきただろうに。

 自分がする行為として口にするのは、勇気がいるのは理解できるけどな。

 

「それがどうかしたのか?」

「美優も、佐知子も、したんでしょ?」

「してもらったよ」

「へぇ。ほんとに、してるのね。……こんなの、舐めるんだ」

 

 どうやら、由佳が想像していたよりもペニスの見た目やニオイが気持ち悪くて、及び腰になっているようだ。

 

「俺はみんなにしてもらったけど、できない女の子もいるみたいだから。無理はしなくてもいいよ」

 

 俺の周りはエッチに積極的な女の子が多かったので、山本さんなんかはむしろ率先して咥えてくれるぐらいだったが、世の中にはフェラができない人も珍しくないらしい。

 

「風呂で洗ってからならフェラができるとか、そういうタイプの人もいる。段階的に慣れていけばいいよ」

「ふーん。でも、その口ぶりじゃ、普段はこのまましてるんでしょ」

「まあそうだな」

「なら、私だって、するしかないじゃない」

 

 由佳は舌をチロリと出して、露骨に嫌悪感を滲ませながら口を近づけてくる。

 

 対抗意識というよりも、友達がみんなしているのに自分だけできないのが嫌なんだろう。

 あるいは、セックスがしたいというのも、単なる憧れよりもコンプレックスに近いものがあったのかもしれない。

 

「う、うぅっ……へろっ……んっ、うぅ……」

 

 亀頭の先を、ペロッと舌で舐めた由佳の顔が、さらに苦々しく歪む。

 

「おしっこの味がする……こんなのみんな舐めてるなんて信じらんない……」

「最初だけだよ。排泄器官だから、そこはどうしても仕方ないというか」

「ほんとにみんなしてるんでしょうね? 嘘だったら承知しないんだからね」

 

 由佳は文句を垂れながらも、どうにかペニスを舐め続けてくれる。

 知識源がAVだけあってか、たどたどしいフェラなのに根元から舐め上げてくる艶めかしさがあって、雄としての性欲と庇護欲を同時に刺激されてしまう。

 

「気持ちいいよ、由佳」

 

 美優や山本さんにされているときほどの刺激はないにしても、唾液で濡れた舌で舐められる物理的な快感は、誰にされていてもあるもの。

 それに、由佳の元々の可愛さに加えて、極小布のランジェリーを身に着けた子にフェラをしてもらっている、その絵面が純粋に興奮する。

 

「あー……れろ、ちゅっ……ん、それは、よかった」

 

 由佳は手順に従い俺のペニスを舐め上げると、両手で根元を抑えて先っぽを口に含んだ。

 

「はむっ……ふんっ……むちゅ……」

 

 これでよいのか迷う気持ちを、俺と目線を合わせることで訴えてくる由佳。

 フェラをしてくれるのは嬉しいし、気持ちよくはあるけど、まだ亀頭分しか咥えられていないのでもう少し頑張ってほしいところだ。

 

「あとちょっと奥まで咥えられるか?」

「んー。わりと限界なんだけど。どこまですればいいの?」

「半分くらいかな」

「わかった。頑張ってみる」

 

 由佳は少しずつ深くへとペニスを咥えていって、どうにか半分くらいまでは口に含んでくれた。

 しかし、その時点でもう軽くえづきそうになっていて、後は先端から半分の位置までを舌と唇で刺激してくれるだけになった。

 フェラが好きな俺としては根元まで咥えてもらいたものだが、それほどサイズがない俺が相手でも、普通の女の子が相手ならこれぐらいが限界なのだろう。

 美優たちは器量が良いので最初からフェラを上手にしくれたし、苦しい姿を見せることもなかったが、こうして由佳みたいに何が辛いのかをわかりやすく示してくれるのはありがたいものだ。

 

「あとは、できればでいいんだけど、竿じゃなくて腰を掴んでくれると嬉しいかも」

「ん? 腰を支えるの? それって意味ある?」

「いや、単にそっちのが興奮するだけなんだけど」

「えー……。お兄さんの、手で支えてないとぴくぴくして舐めづらいのよね」

 

 由佳は不満を口にしながらも、俺の腰を持ってフェラを続けてくれた。

 いわゆるこのノーハンドフェラというやつは、男を興奮させるためだけにあると思う。

 

「むちゅ、ちゅぶ……。なんだか、フェラをするのって、屈辱的な感じがするわ」

「征服欲がフェラの興奮につながるって話もあるから、女の子側は逆にそう感じるのかも」

 

 フェラは女の子が男を自由に快楽責めできる行為であると同時に、ご奉仕精神がなければできないような変態プレイでもある。

 しかもこれは即尺をしてもらっている状況だからな。

 俺が優位に感じるのも仕方のないことだ。

 

「由佳のおっぱい、触ってもいい?」

「……こんなものでもよければどうぞ」

「なら、遠慮なく」

 

 俺は由佳のマイクロブラの表面をなぞり、布の上からその膨らみに触れる。

 

「んっ……はぁむっ……あっ……」

 

 フェラをしながら感じる由佳に、俺はそこはかとない性欲の昂りを覚えながら、薄いながらもふにっとした乳房の肉を指で揉んでいく。

 

 男にはまだ誰にも触れられたことのないその部位。

 山本さんは経験豊富だったし、美優たちも女の子とはしたことがあったから、俺は処女好きというほどではないと思っていた。

 それでも、その女性の初めての記憶に自分が刻まれるのは、雄の本能が歓喜して止まない。

 

「あぁ……はぁ……由佳、ちょっと、マズいかも」

 

 由佳の体の中でも、特におっぱいを見たり触れたりしていると異常に興奮する。

 美優からの命令で初めてオカズにしたその影響は、思っていたよりも大きかったようだ。

 

「ふぇ……んっ……イきそうなの……?」

「ごめん、もう出そう」

「はむっ……ちゅるっ……じゅぶ……。まだ、我慢しなさい……じゅるるっ、ちゅぶっ、ぐちゅぶっ……」

「ああっ、由佳、待て、待って! あっ……!」

 

 由佳は俺が射精しそうだと言ったことに対して、逆に責めてるようにフェラを激しくしてきた。

 リアルな経験がないことが、射精を放尿と同じような感覚で我慢できると勘違いさせたのかもしれない。

 

 浅くフェラをしている分、自由に動く舌で由佳は俺のペニスを舐め回して、唾液をたっぷりにグチュグチュと音を立てて顔を前後させる。

 さすがに知識だけはある由佳の雄の興奮のさせ方は、俺の射精欲を一気に限界にまで高めていった。

 

「由佳、もう駄目だッ……! 出る、出るっ……!」

「んんっ!? こ、こはぁ、あっ、ん、んんっ……!!」

 

 どぷっ、どぷっ、と、ほとんど不意打ち気味に口内へと放出された精液に、由佳は怒る暇もなくその精液の不味さへの苦痛で顔を歪ませ、涙目になりながら必死で射精を受け止めた。

 

「ううううぅ……!!」

 

 口を開けて震える由佳は、両手で器を作ってそこに吐き出そうとする。

 俺も自分の精液が異常に不味いのは知っているので、無理に飲んでもらわなくても大丈夫なのだが、そこでまた「他の子なら飲んでいる」という意地が由佳を止めていた。

 

「ごめんな。無理はしなくていいから、もう出せ」

「んんっ……んー……! は、はぁうぅ……!」

 

 喉だけは動いて精液を運ぼうとしているのに、舌が精液を喉に流し込むことを許さない。

 しばらくはそんな争いが由佳の中で繰り広げられて、やがて最後には、由佳はえづきを堪えきれなくなって手のひらに精液を吐き出した。

 

「し、信じらんないくらい不味い……!」

「悪い。そればっかりは、ほんとどうにもならなくて」

 

 強制的にとはいえ、何度か俺の精液を飲んだことのある由佳なら、あるいはと思ったが。

 さすがにあの山本さんですら飲むのに苦労していた精液を、美優以外の子が飲めるはずもなかったか。

 

「なんで我慢しなかったの。ダメって言ったのに」

「できなかったんだよ。あんまり気持ちよすぎると、男はコントロールなんて利かないんだって」

「またそんな言い訳して。そんなに気持ちよかったなら、まあしょうがないけど」

 

 勝手に出されたことについては怒っていた由佳だったが、気持ちよすぎて我慢できなかったという部分には思うところがあったらしく、それほど追及はされなかった。

 

「風呂、入ろうか」

「そうね」

 

 二人で浴室に移動して、まずは由佳の手に溜められた精液を洗い流してから、服を脱いでお湯を張っていた浴槽に二人で浸かった。

 広い風呂ではあったが、結局は俺を背もたれにして真ん中に由佳が座る体勢が収まりがよく、俺としては慣れた形で入浴することになった。

 

 由佳の髪は、二つに結んだ髪をさらに上部に結い上げていて、ツインテールの先が濡れないようにしてある。

 上向きに縛られることで露わになった由佳の耳と首筋。

 髪の毛で誤魔化さなくても整ったその顔の造形は、さすがに美人な子だなと再認識させられる。

 

「ついに、裸同士になったのね」

 

 由佳は自分の体と、その横からの伸びる俺の足を見下ろして、感慨深く呟く。

 

 一方的にセックスだけを経験した俺たちにとって、こうして自然な姿で裸になるのは初めてだ。

 男の体を珍しそうにする由佳が、腕や脚を撫でてきて、なにとは言わないが回復してくる。

 

「あ、ジャグジーついてる」

「そうだった。泡風呂にできるらしいぞ」

「ぜひやりましょ。スイッチオーン!」

 

 由佳は壁に付いていたボタンを押すと、浴槽の縁に置いてあった泡風呂用の溶液パックを切ってお湯に溶かした。

 下から吹き上がってくる空気玉にお湯がかき混ぜられて、湯面に少しずつ気泡ができあがっていく。

 

「おっふろーおっふろー。あわあわーおふろー」

 

 由佳もばしゃばしゃとお湯を叩いたり持ち上げたりして、泡立ちを加速させた。

 やがて細かい気泡が山のように積み上がって、両手で持ち上げられるほどの量にまで増えていく。

 しかし、風呂場にシャボン玉のような泡が溢れるほどにはならず、ずっと続けている内に減る量のほうが多くなってしまった。

 

「ケチな泡風呂ね」

「ホテルの付属品ならこんなものだろ」

 

 由佳は残った泡を集めて、ふーっと息を吹きかけて飛ばす。

 言葉のわりにニコニコと上機嫌だった。

 

「ふふっ。ついにフェラまでして、こうして一緒にお風呂に入ってるのよ。身も心もオトナになっちゃった……ふふふふふ」

「嬉しそうだな」

「もちろん。しかもフェラだけで抜いちゃうとか、私って結構なテクニシャンかも」

「かもしれない。気持ちよかったよ」

 

 美優が関わると射精しやすくなる体質とはいえ、由佳の独特なエロさがなければイクことはできなかった。

 テクニシャンという部分への回答としてはどうかと思うが、由佳は実践になると急に弱気になるし、自信を失わせるようなことはしたくない。

 

「俺も由佳の体に触っていいか?」

「別にいいけど、なんで聞くの? 勝手に触ってよ」

「あ、ああ。すまん」

 

 山本さんにも言われたけど、俺も慎重になりすぎだ。

 美優とのエッチのためにも克服しておかないと。

 

 俺は由佳の体を眺めながら、脚や腰回りを重点に触っていく。

 美優や山本さんのむっちりした体に見慣れてるとずいぶんと細く感じるな。

 

 静かになった浴室に、ちゃぷちゃぷとお湯をかきまぜる音だけが満ちて、無言の空気にもピリつくことがなくなってきた。

 

 そして、あえてお預けしていた胸へと手を添えた。

 この摘むとふにふにする肉感がたまらない。

 

 また下半身がムズムズしてきた。

 

「お兄さんっておっぱいなら何でもいいの」

 

 再び硬さを宿した棒状の肉質を背中に感じて、由佳が呆れたため息を漏らす。

 

「由佳のおっぱいが魅力的なんだよ。誰でもいいわけじゃない」

「そうなの?」

「そうだよ。さっきだって、由佳のおっぱいのせいで我慢できなくなった」

「ふ、ふーん。そう。なら、もっと好きにしたかったり……する?」

「由佳が良ければ、正面を向いてほしい」

「バカ、もう。しょうがないわね」

 

 由佳も俺の言葉の真意は理解していて、腰を上げて後ろに振り返ると、胸を強調するように背中を反った。

 

 その小さな芽に、俺は遠慮なく吸い付いた。

 男である俺とそう変わらない程度の膨らみでも、乳首の形だけはしっかり女性らしいおしゃぶり型になっていて、舌で転がすとコリコリとした硬さを感じる。

 

「んっ……はぁ……やだ、えっちなことしてる……」

「由佳がエッチで俺も興奮してきた」

 

 すっかり勃起が出来上がった肉棒が反り上がって、裏筋が由佳の割れ目に当たっている。

 お風呂の中なのに濡れているそこは、由佳が擦りつけてくるせいで素股が始まっていた。

 

「あっ、あっ……はあぁぁ……上も、下もぉ……お兄さんに気持ちよくされちゃってる……」

「あんまり、動くなよ。俺も先走りが出てそうだし」

「むふっ。そうね、妊娠したら、危ないものね」

 

 由佳が快楽と悪戯心に染まった顔になって、ゾクッと嫌な予感に背筋を張りながらも、俺は口とペニスの両方で由佳の性感帯を刺激していく。

 

「ふあぁ………んあっ、お風呂のお湯より、お兄さんのがぁ……アツぃ……」

「ちゅっ、ちゅぶっ……変なこと、言うなって……」

「だって、気持ちいいんだもん……あ、んっ……もう、女の子の体にされちゃってる……」

 

 由佳の淫らな声が、聴覚を通じて股間に響いてくる。

 このタイプの卑猥な言葉は俺には合わないと思っていた。

 それなのに、由佳は元から嘘がバレバレな態度でイタズラをするせいか、こんなやり取りでも変わらず興奮してしまう。

 

「お兄さんの、女になりたいな」

「こら、ダメだって、由佳」

 

 由佳が腰を大きく前後させて、蜜口に俺の肉棒を埋めるように腰を沈めてくる。

 

 このままだと何かの弾みで入りかねない。

 生での挿入なんて、美優以外には絶対にダメだ。

 

「はうぁ……あああん……お兄さんの、硬い……おっきいよぉ……」

「うっ……あぁ……由佳、そんなに動いたら……!」

 

 由佳から与えられる性感は、おっぱいを弄っているせいか変わらず俺の雄としての本能を揺さぶってくる。

 

 由佳のペースに乗せられてエッチを止められない。

 でも、挿入事故だけは避けたい。

 

 そう考えたときにふと俺の脳裏に過ぎったのは、カラオケで山本さんとエッチをしたあの行為だった。

 

「由佳……ッ!」

 

 俺は由佳の腰を掴んで、あえて内側へと引き込んだ。

 その瞬間は由佳も驚きと悦びに表情を蕩かせていたが、俺が腰を上げると、それが望み通りの展開でないことにようやく由佳も気がついた。

 

「ちょっ、お兄さん、そこ、違っ……!!」

 

 由佳の愛液と先走りの精液で、粘液に塗れた肉棒。

 その先端を、俺は由佳のアナルへと、ぬっぷり挿入していった。

 

「ひやぁあ!? そ、そこじゃないってば! そこはお尻の穴ぁ……!」

「わかってるよ、由佳。もう出そう」

「バカバカバカ! は、入ってる! ちょびっと入っちゃってるから!! 抜きなさい、あ、あんっ、ふぁっ……らめっ……あっ……!!」

 

 俺がわざとお尻でペニスを扱こうとしたのを感じて、由佳はたまらず飛び上がって距離を取った。

 

「ななな、なんてことするの! あんた、レイプするわお尻は使うわ、ほんとロクでもない男だわ!!」

 

 由佳は内股でお尻を押さえて、涙目で俺を糾弾する。

 やってしまったこと自体は申し訳ないが、どっちも不可抗力だ。

 

「ううっ……お尻だけは美優たちにもイジられたことなかったのに……本当の初めてだったのに……」

「わ、悪かったって。それは謝るよ」

 

 俺は由佳を追うように立ち上がって、正面から肩を抱いた。

 

「前も後ろも、どっちもお兄さんに初めてを奪われるなんて……」

「でも、ほら。他の男に奪われるよりは、よかったんじゃないか」

「まあね」

 

 やはりというか由佳の反応はオーバーリアクションだったようで、当人もそれほど気にしてはいないようだった。

 

 ポタポタと体から滴が落ちる中で、やや下の目線から瞼をパチクリさせて俺を見つめていた由佳が、口を開く。

 

「え、お尻でしてみる?」

「いやそれはいい」

「ならもう風呂から出てなさい」

「はい」

 

 俺は最後に体を丹念に洗って、追い立てられるように風呂場を後にした。

 

 ペニスは勃起したままだったが、由佳を待っているうちに落ち着いた。

 このホテルにはバスローブがなく、由佳をどんな格好で出迎えようか迷って、結局はバスタオルを腰に巻いただけの状態で待つことに。

 

 由佳が風呂場のドアを開ける音がして、それから少しの間だけドライヤーの稼働音が響いていた。

 結い上げていても、すべての髪を纏められるわけでもないので、どうしても濡れる部分は出てくる。

 髪を乾かすのが終わって、脱衣所に由佳が持ち込んだミニポーチを開閉する音が最後に聞こえると、ようやく由佳がドアを開けて出てきた。

 

 由佳はタオルを体に巻いて、髪型を再びツインテールに戻していた。

 どういうこだわりがあるかは知らないが、どうしてその髪型にするのか聞かれても由佳は困るだけだろうか。

 

「バスローブがないのは予想外だったわ」

「俺もだよ。エアコンのせいで少し冷えた」

 

 俺はベッドから立ち上がって由佳に近寄る。

 

 このラブホデートは由佳の悩みを解決するためのもので、美優が言うには俺が自然体で接しているだけで上手くいくそうなのだが、はたして進展はしているのだろうか。

 俺は由佳の悩みを、思春期によくある『自分に素直になれない悩み』だと思っていたが、それでは不十分だっただろうか。

 

 今の由佳を見てみても、前から何か変わった様子はない。

 関係性で考えても、俺と由佳の親密度が増しただけで、それは由佳が悩んでいるようなこととは無関係に思えた。

 

 そこでふと、考える。

 もし俺が真に自然体で由佳と接しているだけで問題が解決するのなら、美優は俺に何も教える必要がなかったのではないか。

 俺が美優と恋仲になったからには、由佳のこのセックスの誘いを受けることはどうあっても自然になるはずがなく、俺は美優の指示があったからこそここまで由佳に付き合っている。

 となれば、美優が言う自然体というのは、あくまでも由佳の悩みを解決するという方針の中での自然体であって、思考放棄していいわけではない。

 

「由佳」

「ん。なに?」

 

 俺は由佳の目の前に立って、できるだけ穏やかな声音で名前を呼ぶ。

 由佳は不思議そうにしながら、素直に聞く姿勢になってくれた。

 

 これまで由佳と過ごしてきた中で、美優の指示を受けてから明白に変わったことといえば、互いを甘やかすような時間を持つようになったことだ。

 俺は由佳を女として褒めて、由佳は俺を男として頼る。

 そうしているときだけは、由佳が抱えている俺の知らない何かに触れられている気がした。

 

「ベッドに入ろうか。二人で少し寝よう」

 

 俺は由佳の手を取って、体に巻かれたバスタオルを外す。

 

「急に、どうしたの。ベッドでイチャイチャしたいなら、私は構わないけど」

「うん。由佳とイチャつく時間が欲しいんだよ」

 

 由佳のバスタオルを取り去って、自分の腰に巻いていた分と一緒に、隣のソファーへと投げる。

 再び二人で裸になって、その体を隠すように由佳は俺にくっついてきた。

 お風呂場で裸になるのと、部屋で裸になるのでは、やはり恥ずかしさの質が違う。

 

「あんまり見ないで」

 

 由佳はか細い声でそう溢した。

 どうにも自分の体に自信がないみたいだ。

 

「さっきまでは気にしてなかっただろ」

「そうだけど。お兄さんの相手は、みんなグラマーな体してるでしょ。さすがに私だって気にならないわけじゃないの」

 

 由佳はキュッと俺の体を抱いて、できるだけ胸から下が視界に入らないように限界まで幅を詰める。

 

「自信を持てって俺を励ましてくれたのは、他でもない由佳だ。そんなに弱気になることはないよ」

「お兄さんのは、思い込みで自爆してただけでしょ。でも、お兄さんがエッチしてきた相手が、みんなおっぱい大きくて可愛くて美人なのは紛れもない事実だし。容姿は才能みたいにあやふやなものより、目で見て明らかなものじゃない」

 

 由佳は話すほどに俺に抱きつく力を強くした。

 

 由佳が自分と誰かを比べるなんてないことだと思っていた。

 こいつもこいつでコンプレックスを抱えてたんだな。

 まだまだ知らないことばかりだ。

 

「そういうことなら、気にするなとは言わないよ。気になるものは、どう誤魔化しても気になるものだからな」

 

 俺はひっつく由佳を引き剥がして、「でも」と続ける。

 

「俺は由佳の体に興奮してる。色々あったけど、今は由佳とセックスしたい」

「ふぇっ……な、なに、急に。そんな雑な褒め方で、女が喜ぶとでも思ってるの」

 

 由佳はむくれ面をして、それでも抵抗しようとする力は弱くなった。

 

「こんなに由佳が魅力的だなんて思わなかったんだよ。下の方も、またこんなになってる。正直、美優にも申し訳ないくらい由佳の体に興奮してる」

 

 俺は由佳のお腹に屹立したイチモツを擦り付け、背中や臀部を撫でながら首筋に軽く口付けをした。

 

「こ、こら、ダメ。こんなの、不倫みたい……あっ、ひゃぁ……」

「由佳が言い出したことなんだから。一緒に責任は取れよ」

「ひやぁ、んあっ、あぁ……そんな、いけない……私を求めないで……」

「なら、由佳から俺を求めてほしい。イタズラみたいにするんじゃなくて、本気で」

 

 由佳のペースをどうにかこちらに引き込む。

 これで由佳が求めるようなイチャラブなセックスができたら、どうにか突破口が開ける気がした。

 

「男の人を求めるって、どうすればいいの」

「えっ。ああ、たとえば、思う存分に甘えてくるとか」

 

 由佳がまるで次にするべきことをわかっていなかったので、一瞬だけ真顔に戻ってしまった。

 あれだけイチャラブセックスを熱望していたのだから、自分が理想とするセックスのイメージぐらいはあるはずなのだが。

 

「甘えれば、いいのね」

「そうだ」

「あま、甘えるって、どうすれば……」

「力を抜いて、してほしいことを口にするんだよ。今なら由佳の望みに応えてやれるから。どうしてほしい?」

 

 俺はどうにかエロチックな空気を保ったまま由佳に訊く。

 すると、由佳の思考回路がついにショートして、口を開けたまま目をパチパチさせるだけになった。

 

「こっ……コッ……」

 

 由佳は俺の目を見つめて、何かを言おうとしている。

 

 しかし、それはただ喉から音が漏れているだけで、言葉にはなっておらず、どんなに理解しようとしても意味を汲み取れるようなものではなかった。

 

 やがて由佳は、壊れたパソコンのように同じ音だけを繰り返して、

 

「…………コケッ……」

 

 最後に由佳は思いもよらない声を出して、後は瞬きをする以外の全ての動作をフリーズさせた。

 

「ゆ、由佳!? 大丈夫か? おい、待て、わかった。無理に甘えたりとかしなくてもいいから。戻ってこい」

 

 俺が必死に声かけするも、どうやら聴覚情報を処理するのに多大な遅延が発生するぐらいに思考回路がぐるぐると回っているらしく、それから1分もの間、由佳は俺の声に反応しなかった。

 

「由佳、平気か?」

「ん? え? あれ、私、どうしてお兄さんとこんなことに……」

 

 記憶がリセットでもされたのか、由佳は俺と裸で抱き合っている姿を目にして、頬を赤らめた。

 

「これまでの溜めに溜め込んだツケの清算のために、ラブホつきのデートをすることになったんだよ」

「ああ、そうだったわね。思い出したわ。お兄さんとセックスする予定を日めくりカレンダーにしたんだった」

「どうしてそう無駄な部分にばかり労力をかける」

 

 どうやら由佳に甘々な男女の交わりを期待するのは難しかったようだ。

 

 俺もようやく、由佳の本質の一部を垣間見ることができた。

 こいつは仕事を任せるという意味では人に頼るのになんの躊躇いもないくせに、女として甘えることに関しては、可哀想なくらいに下手なのだ。

 どれだけ頑張ろうとしても空回りしてしまう由佳の境遇を考えると、涙すら出そうになる。

 

 絵に描いたような男女の営みではなく、まずは由佳が求めるイチャラブセックスをしてあげることに集中しよう。

 

「どうする? このままセックスはするのか?」

「するする。で、思い出したついでにもう一個思い出したことがあるの」

 

 由佳は俺にベッドに座るよう指示すると、ソファーに置いてあったポーチを漁って、そこから六本の小さい薬瓶を取り出した。

 

「なんだ、これ?」

「精力剤。ネットで買っためっちゃ強いやつ」

「んなもん六本とか殺す気か……」

「私とお兄さんで半分ずつよ。夜と、深夜と、朝で一本ずつ飲むの」

「せめて深夜は寝かせてくれ」

 

 由佳に渡されたのは英語のラベルが貼られた危なそうな精力剤だった。

 知り合いが使っている物の中から選んだようなので直ちに人体に影響はないそうだが、さすがに二十四時間以内に三本も飲んでいいような物とは思えない。

 

「なによ。高かったんだから。せめて一本ぐらい飲みなさい」

「わかったって。一本だけな」

 

 俺は由佳と二人で蓋を開けて、コツンと瓶を当て鳴らしてから、グイッと飲み干した。

 

「さすがに苦いな」

「お兄さんの精液に比べればマシだけど」

「俺の精液ってこれより酷いのか……」

 

 毎回こんなドロドロの精力剤レベルの不味さを飲んでもらってるなんて、美優と山本さんには頭が上がらない。

 

「あとね、もいっこあるの」

 

 由佳は再びソファーに戻って、またポーチを漁る。

 そこから出てきたのは、青い菱形の錠剤だった。

 

「なんだそのいかにもな薬は」

「バイアグラ。五十ミリグラム」

「どこで手に入れたんだそんなもの」

「友達の兄をツテに買ってもらったの。本番の一時間前に服用する必要があるらしいんだけど、この際だからもう飲んじゃいなさい」

「いや、それは要らないだろ。こんなに元気なんだし、俺はまだまだいけるから」

 

 さっきの精力剤だけでも、俺には過ぎた効果だからな。

 バイアグラのおかげで一晩中勃起が収まらなくなったりしたら、次の日が恐ろしくてたまらない。

 

「じゃあ、これは勃たなくなったらでいいや。朝の再戦に使えるから、今夜は安心して出し切ってね」

「おう……」

 

 由佳は俺のことを無限に射精できるセックスマシーンだとでも思っているのかな。

 本来であれば、一回や二回の射精で萎えてしまうものだ。

 これまで連戦ができたのは、美優や山本さんのような超常的な魅力によって並ならぬ性欲が引き出されたからであって、俺本人の能力はそこまで高くない……はずだ。

 

「ってことで、これだけゴムは持ってきたけど。足りるかな?」

 

 由佳は最後に、ジッパーつきのケースに仕舞われていた大量のコンドームをポーチから取り出して、俺の前に並べた。

 

「お、おい。いくつあるんだこれ」

「二十個ちょっとくらい?」

「殺す気か」

 

 こんな数を一晩で消化できると思っているのか。

 こいつの思考力はどれだけ単純なんだ。

 ってか、全財産を使い果たすことになったのは、こういう無駄な買い物のせいだよな。

 

「なんなのその顔は。楽しみだったんだからしょうがないじゃない」

 

 由佳は口角に力を込めながら唇を開いて、アヒルのような声でブーイングした。

 

「まあ、そうだな。これだけ用意してもらえると、さすがに嬉しいかも」

「でしょ。ふふん。私がどれだけ待ち望んでたか、少しでもわかるなら二十回戦ぐらいできるはずよ」

「そこはせめて人間扱いしてくれ」

 

 由佳の根性論ゴリ押しは堪らないからな。

 

 俺は由佳が用意したコンドームのひとセットを手にすると、残りをベッドの上に置いた。

 網目で繋がっている包装の一つを切り取って、由佳がベッドに来るのを待つ。

 

 由佳は使わない分の薬を戻すついでに、裸でゴソゴソとポーチを漁って、スマホを弄りながら「ラブホなうって投稿すればよかった」などと呑気な独り言を呟いている。

 

 美優たちならまず見せないであろうそのだらしない姿が、どうしてか愛おしかった。

 

 由佳が歳下だからなんだろうか。

 ああいう純粋な子供っぽいところを見ると、俺の中の由佳の評価が急に上向いてしまう。

 

「しないのか?」

「する!」

 

 由佳はスマホをソファーに投げると、全裸で万歳しながら低空のボディープレスをかましてきた。

 普通に痛い。

 

「あ、こら。なんで萎えてんの。精力剤を飲んだのに」

「あくまでも精力剤なんだから、興奮しないで大きくなったら問題だろ。する雰囲気になれば勃つよ」

「ふーん」

 

 由佳は俺の股の間に座ると、まだふにゃふにゃした状態のペニスを指で突いた。

 

「お兄さんのって小さいときはかわいいくらい小さいのね」

「それ傷つくからほんとやめてくれ」

 

 俺は結果としての経験が人並み以上だからまだいいが、大抵の男にとってその言葉は即死レベルの凶器だ。

 

「心の病気でEDになる人がほとんどなんだぞ」

「えっ!? ほんと!? ご、ごめんね、あなたは立派よ。前もとても気持ち良かったから、元気出して。今夜もよろしくね」

 

 由佳は慌てて俺の丸っこいペニスを撫で撫でする。

 

 どうして君たちは俺ではなく俺のペニスに語りかけるのかな。

 そっちが本体で俺はオマケなのか?

 

「どうしたら、おっきくなるの?」

「口で気持ちよくしてもらうのが一番早いけど」

「えっ……まあ、いいけど。絶対に出さないでよね」

「わかってるって」

 

 ついに俺の精液の不味さにトラウマを持たれてしまったようだ。

 由佳は美優の命令で無理やり何度も俺の精液を飲まされてきたからな。

 こればっかりはどうにもならないか。

 

「はむっ、ちゅーっ……ちゅぷっ。ん。なんか、簡単に口に全部入るから、こっちのがいいかも」

「美優もそんなこと言ってたな」

「それだけフェラするのは大変なの。感謝しなさい」

「はい……」

 

 由佳は謎の優越感を見せつけて、ぱくっと俺の皮かむりのペニスを口に含んだ。

 

 くそう。

 フェラをお願いしただけでどうして叱られなければならないんだ。

 世界が山本さんみたいなご奉仕フェラ大好きな女の子で満たされればいいのに。

 

「ふぅ……あぁ……由佳、いいよ……」

 

 それでもペニスを丸呑みされるフェラは気持ちいい。

 小さい状態でも感度は変わらないし、柔らかいものを舌で舐めまわされるこの感覚は、俺ももう少し長く味わっていたい。

 しかし、気持ち良いが故に、ペニスは勃起してしまって、すぐに口からは離されてしまう。

 

「よし、セックスできるわね」

「問題ないな」

 

 俺は由佳のご機嫌通りにセックスをすると決めたので、意思に逆らわずすぐにコンドームをペニスにはめた。

 

 初体験は正常位が良いとのことだったので、由佳がベッドに寝て俺が体を起こす体位になる。

 

 割れ目にペニスをあてがうと、溜まっていた愛液がトロりと垂れてきて、十分な滑り気があることを確認してから俺は挿入を始めた。

 

「入れるぞ。由佳」

「え? 正気?」

「ん。まだ何かあるのか?」

「雰囲気よ雰囲気。こんな空気のまま初めてを迎えられるわけがないでしょ」

 

 出たなワガママお嬢様モード。

 他のやつならどうかわからんが、俺はきっちり最後まで付き合ってみせるからな。

 これはもう男の意地だ。

 

「いい? 女の子の初めては一生の記憶に残るんだから、ちゃんとやってよね」

「正確には初体験はあの段ボールだったわけだけど」

「知 っ て る わ よ! でも私はそんなの認めない。お仕置きとかレイプとかもう懲り懲りよ。今日が正真正銘の初エッチなんだから。記念日にして毎年祝ってやるんだからー!!」

「わかった、わかった。落ち着け。俺が悪かった。きちんと良い思い出になるセックスをしよう」

 

 俺は駄々をこねる由佳を嗜めて、柄でもないが頭をポンポンと撫でていたら由佳は大人しくなった。

 

「ぐすん……私とセックスしたいって言って……」

「セックスなら、さっきからずっとしたいよ。今日の由佳は可愛いからな。早くこれを入れて由佳の膣内を感じたい」

「あ、意外と、雰囲気が出ること言うのね。私も、したくなってきちゃった」

 

 由佳は体をくねらせて俺を誘惑してくる。

 まだハイテンションの余韻が残ってるな。

 もうひと押ししておくか。

 

「挿れていいか? もう、我慢できなくて」

 

 これは指示を仰ぐための質問ではない。

 エッチな気分にするための、相手から恥ずかしい答えを引き出すための問いかけだ。

 

「すっ、好きにしたら、いいんじゃないの。……それとも、私に言ってほしい?」

 

 由佳は表情こそ早く挿れてほしそうにしているのに、モジモジして正直にならない。

 

 これも想定通り。

 由佳から本音を引き出すためには、変化球が要る。

 

「どっちでもいいよ」

「えっ。ど、どっちでもいいの?」

「俺以外の男が相手だったら、由佳は自分の体を好きにしていいなんて言わない」

「まあ、ね。お兄さん以外なんて、絶対に嫌だけど」

 

 次第に由佳の体がふやけるように緩くなっていく。

 これでも、まだ足らない。

 

「答えは、わかりきってるから。でも──」

 

 俺は亀頭の一つも入りきらないぐらいに、由佳への挿入を寸止めして、焦らしながらトドメの一言を由佳の耳に吹きかける。

 

「由佳の口から言ってくれたら、俺は嬉しい」

 

 俺がそう囁くと、由佳の秘所の入り口がキュッと締まって、俺のペニスを奥へ奥へと誘い込んできた。

 

「ううっ……わ、私も……挿れてほしい……」

 

 由佳の口からアツい吐息と共に漏れた本音。

 その熱が冷めないうちに、俺はグッとペニスを奥にまで挿し込んだ。

 

「はぐっ……んっ、ああっ……入ってきひゃぁ……!」

 

 由佳がその初めてのペニスをしっかりと感じ取れるよう、俺は緩やかな動きからピストンを開始した。

 久しぶりの由佳の膣内は、美優の命令でしたときほど肉々しい柔らかさはなかったが、そのキツさが肉棒に吸い付くようで、そこには変わらない快感があった。

 

「由佳……すごく締まるよ……!」

「あんっ、ああっ……お兄さんの……入ると、見た目より、おっきく感じる……!」

 

 由佳は挿入してすぐに恋人つなぎを要求してきて、俺は由佳の両手を手綱にして腰を打ち付けた。

 

 長い二つ結びの髪がベッドの上に乱れて、俺の肉棒が膣肉を穿つたびに、由佳の声が一拍の無音を含んで荒らげられる。

 

 俺が優位になってセックスをするのは初めてだった。

 そのせいか普段より状況を俯瞰してしまうものの、あの生意気な由佳が快楽に喘いでいる姿を見るのは雄として十分な優越感があった。

 

 由佳の軽い体は、多少の筋肉が付いてきた俺には動かしやすくて、ペニスの出し入れをしながら由佳のGスポットに当たる体勢を少しずつ見極めるのも楽だった。

 女の子の膣の付き方は人によって違うけど、その日の男側の体調──もっと言えば勃起の硬さと角度を考えて、お腹の内側にめがけてどうやって肉棒で突けば気持ちよく当たるのか、コツさえ掴んでしまえば簡単なものだ。

 

「はぁ、はうぅ、あっ、ああぁ……きも、ちぃ……」

 

 由佳の穴の具合を感じ取って、反応が良くなる腰の動かし方がわかったら、今度はその状態を維持したまま別の性感帯を刺激できないかと思考を切り替える。

 最も触りやすくて快感を追加できる場所といったら、言わずもがなおっぱいだ。

 乳首だけではなく、乳房のその輪郭から舐めていくと、とあるところで急に感度が良くなっていく。

 そこから首筋にまで舌を這わせて、手はほとんどが支えに使われているものの、余裕があればふとももやアナルを撫でて可能な限りの快感を同時に与える。

 テクニックという面では、これが今までの性経験で学んできた俺の全てだった。

 

「あ、あぁっ……お兄さん……! セックス、はぁ、お兄さんと、してるの……んああっ!」

 

 由佳とのセックスは、これまでにないほどに王道的で、正しい男女の交わりだった

 

 正常位、ゴム付きで、甘い言葉を掛けながらの挿入。

 俺ももう童貞と偽れるほどに下手ではなく、そこには愛と快楽の両方が存在している。

 

 それなのに、俺のピストン運動を続ける時間には、どこか焦りがあった。

 

「あんっ、あ、あっ……」

 

 最初こそ蕩けるように熱かった由佳の蜜壺も、慣れてしまったのか特別に気持ちよくも思えない。

 山本さんや佐知子と積み重ねた本番エッチの経験で、どのようにペニスを突き上げれば女の子の性感帯を刺激できるのかはある程度は把握していたつもりだったのに、由佳のほうも声に出しているほど感じてはいないようだった。

 

「ふあぁ、あっ……あぅ……え、あの、お兄さん……? もっと……本気出していいんだよ……?」

「これで、全力だけど。気持ちよくないかな?」

「ああいえ、気持ちよくは、あるのよ? でも、なんかこう、前と違うじゃない?」

 

 由佳の気遣いのある言葉にはちょっと凹んだのだが、事実として由佳の反応が以前ほど良くはなかった。

 以前とは、由佳とお仕置きエッチをしているときだ。

 

 俺が由佳とのセックスで記憶しているのは、白目を剥くほど喘ぎ狂う姿。

 これはイチャラブセックスなのだから、そんなことにはならないのが普通だが、それにしてもイク気配すらないのはどうにもおかしい。

 

「もっと、ギュンギュンって、奥に響く感じの、あれが欲しいの」

「そうか。なら、少し激しくするからな」

 

 お仕置きでの拷問に近い性感責めに慣れてしまった由佳では、普通程度の刺激では十分に感じられないのだと俺は判断した。

 俺は腰を打ち付ける動きを大きくして、子宮口をこじ開けるぐらいの勢いで由佳の膣内を犯していく。

 

「あ……はうっ……あっ……やんっ……あっ、これ……!」

「はぁ、はぁ……由佳っ……由佳っ!!」

「ひぃ、イギっ……あ、ぐっ……イダッ……す、ストップ! あうぐうぁ、い、だ、ダメ、止めて!」

「ゆ、由佳……?」

「痛い、痛いからストップ! 一旦ヤメ!」

 

 由佳が苦痛に顔を歪ませる姿は、エッチでよくあるイヤイヤではなかった。

 俺はすぐにペニスを引き抜いて、腫れや出血がないことを確認する。

 傷つくほど強くしたつもりはないが、女の子のアソコに万が一のことがあったら大事だ。

 

「ごめんな。痛くするつもりはなくて」

「うぅっ。せっかくの初体験なのに」

「今回ばかりは本当に申し訳ない。心から謝るよ」

「わざとじゃないのは、わかるけどさ。どうしてこうなるの」

 

 由佳の要望は満たしたし、エッチな空気も十分に作れていた。

 行為自体だってごくごく自然で、決して身勝手に腰を振っていたわけではないのに、由佳のことを気持ちよくすることができない。

 

 考えても、答えは出ず。

 そこから導かれた仮説は、原因は俺ではなく由佳の側にあるのではないかということだった。

 

「もしかしたら、由佳は目隠しされたり、縛られたりとか。お仕置きみたいなプレイじゃないと、感じないんじゃないか?」

「は……?」

 

 これまでずっとお仕置きで性感帯を開発されてきた由佳にとって、愛のあるセックスで心は満たされても、脳がそれを性感に足る刺激とは判断できないのではないか。

 俺も自分のことを顧みないタイプでは決してないが、どれだけ非を漁っても、原因は由佳のほうにあるとしか思えなかった。

 

「はあー!? そ、そんなわけないでしょ! 馬鹿を言うんじゃないっての!」

「あくまでも仮説だって。一番ありえそうだから、検証してみる価値はあるかと思って」

「あり、あっ、ありえる、わけが、ないでしょうが。そんな、私がドMみたいに……」

 

 由佳は激情と混乱に頭をパンクさせていた。

 これほどまでに取り乱すのは、由佳も同じ可能性にたどり着いてしまうほどの図星だったからに違いない。

 

「そう。そんなに、試したいなら、やってみなさい。縛るなりなんなりすればいいわ。でも、それで私が気持ちよくならなかったら、お兄さんのことも同じようにして好き放題するからね」

「わかった。疑いを掛ける以上は、俺も相応の覚悟はするよ」

「よしっ、取引成立ね。絶対に気持ち良いなんて言わないんだから」

 

 由佳は境界線を引くように布団を体に巻いて、俺の準備が整うのを待った。

 俺はまず目隠しから始めようと、手頃なフェイスタオルを手にとって三つ折りにする。

 

 結局はこうして、由佳を拘束することになるなんて。

 イチャラブセックスの予定が、一転して陵辱プレイのイかせ勝負になってしまった。

 

「じゃあ、始めるぞ」

 

 俺と由佳。

 初体験のイチャラブを望んだはずの、思い出の日に。

 

 互いの尊厳をかけた戦いの火蓋が、今ここに切られたのだった。

 

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