※この作品はR-18です。

俺の妹が最高のオカズだった   作:風見 源一郎

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素顔の私の最初の本音

 

「まずは、こんなところか」

 

 俺はホテルに備え付けのフェイスタオルを長細く折り畳んで、由佳の目を覆うように頭部に巻きつけた。

 目隠しに使うにはだいぶ短いが、結び目が擦れないように正常位以外を選べば外れることはなさそうだ。

 

「言っておくけど、目隠しをしたら誰だって感度は上がるんだからね。私がイクぐらい気持ちよくならなきゃ、多少具合が良くなってもノーカンだから」

 

 由佳はベッドに正座して、背後にいる俺に話しかける。

 こういう痩せた体型の子が目隠しされて正座をしていると、奴隷商に躾けられた薄幸の少女のようで嗜虐心がくすぐられるな。

 

「イッたかどうかはどうやって判断すればいいんだ?」

「私が『イキましたー』って手を上げてあげる」

「お前な……」

「どうせイクことなんてないんだから細かいこと気にしないの。感覚でわかるでしょ」

「なら、もしものときは正直に言えよ」

 

 由佳が負けを認めなかったら俺が縛られて好き放題されてしまうので、できれば明確なジャッジの基準がほしいところ。

 とはいえ、俺も今日は由佳とイチャつきながらエッチをするつもりだったので、どうにも強く出ようという気にならない。

 

「言っとくけど、痛くしたら即お兄さんの負けだからね」

「俺が圧倒的に不利じゃないかそれ」

「私がお仕置きじゃないと気持ち良くなれないとか、失礼なことを言うのが悪いんでしょ。なんなら、変な実験の代わりにディープで情熱的なキスをしてくれたら、許してあげないこともないけど?」

「なんとなくだがそれは断る」

 

 この勝負は由佳が負けを認めなければ決着がつかない。

 ほとんど敗北イベントみたいになってしまった。

 どうにかソフトSMくらいの遊びにとどめて、円満に終わらせられないだろうか。

 

「ていうか、もしこれで気持ちよくなったりしても、それはそれで大問題なんですけど」

「まあな」

 

 それはそれで責任を取れとか言われそうだが、そこはさすがに美優というか中学生組が悪いので俺の関知するところではない。

 

 俺は由佳の顔の前に黙って手をかざして、何も反応しないことを確認すると、今度は由佳の両手を後ろにしてフェイスタオルを手首にかけて、備え付けのヘアバンドを捻り重ねることで簡易的な拘束具にした。

 

「意外と、キツくなるものね」

「強引に腕を引き抜けば外せるけど、ここにある道具じゃ完全には縛れないから。無理はするなよ」

 

 さて、ここから由佳を押し倒してバックからハメてもいいが、残念なことにまたペニスが萎えてしまっている。

 

 由佳の体でも触って自分で回復させるか、フェラで勃たせてもらうか。

 せっかくなら、お仕置きっぽい後者だな。

 

「由佳、悪いけどまた口でしてもらえるか」

「どんだけフェラさせるのよ。ゴムのニオイがするからイヤ」

 

 由佳は声のする方から顔を逸らしてそっぽを向いた。

 

 たしかに、一度コンドームをつけたモノを舐めさせるのは忍びない。

 お風呂で洗ってこよう。

 

「ちょちょっ、どこ行くの」

「風呂でキレイにしてくる」

「そんなの縛る前に済ませなさいって! こんな状態で女の子を放置するとかどういう神経してるの!? って、あ、こらー! 戻ってきなさいー!!」

 

 由佳が見えない相手に向かって文句を言っている姿がなんだか面白かったので、俺は黙って風呂場に行くことにした。

 由佳のためにもじっくり洗っておこう。

 

「っと、バスタオルを忘れてた」

 

 風呂を上がってからソファーに置きっぱなしだった。

 せっかくだから由佳の分はハンガーにかけて干しておくか。

 

「あ、ほんとに戻ってきたのね。ならさっさと準備して。勃たないならバイアグラ飲んでいいから」

 

 部屋に戻ると由佳が一人で偉そうに喋っていた。

 これは擬似的なお仕置きで感度が上がるかを確かめるのが目的とはいえ、俺は由佳をイジメたいわけじゃないからな。

 無視するだけの放置プレイはしたくない。

 

「由佳」

「な、なに」

 

 俺が返事をしたことへの安堵と、短く名前だけを呼んだことへの不安で、由佳は喋るのを止めた。

 

「俺もそれなりに女の子としてきたけどな。どうにもフェラが一番好きみたいなんだ」

「だからなんなの」

「なんとなく言っておきたかった」

 

 俺はそれだけ由佳に告げて、浴室に向かった。

 

 セックスは尽し合いだ。

 たとえそれがSMプレイであったとしても、二人の中に信頼や思い遣りがなければ心からの快感は生まれない。

 由佳の反抗的な態度がただの性格の悪さでないのなら、さっきの一言でそれを察してくれたはず。

 あいつはむしろ、人の心情は汲めるほうの人間だと俺は思う。

 

 風呂場で下半身を丹念に洗って、バスタオルで拭いてから、ドライヤーで水気を完全に取り去った。

 

 部屋に戻ると、由佳はベッドの上で正座のままクネクネしていた。

 

「何してんだ」

「べ、べつに」

 

 由佳は俺が声をかけるとその動きを止めた。

 放置をしたことにもっと文句を言われると思っていたが、予想に反して大人しくしている。

 まさかもうエッチな気分になり始めているのだろうか。

 

 そんな簡単なわけがないか。

 

「お仕置きを再現するといっても、俺は由佳を犯したいわけじゃないからな。あくまで形だけだ」

「わかってるっての」

 

 俺はベッドに乗り上がると、サイドテーブルに置いていたコンドームを取って、袋をちぎった。

 

 目の前には、素っ裸で後ろ手に拘束されてる女の子がいる。

 両膝でバランスを取るために広げられた股には、いつか見た薄っすらとした陰毛がチラと見えていた。

 髪と同じで茶色がかっているので、この明るい髪も地毛なのだろう。

 

 全身がほっそりした由佳の体は、比較対象があのエロ要素の塊みたいなムチムチの二人であるせいか、その肉付きに妙なリアリティを感じた。

 

「んで、この状況でどうやってフェラすればいいの」

 

 由佳は口をモゴモゴさせて、不服そうに尋ねてきた。

 可愛いやつだな。

 

「まず前に上体を倒して。それから俺が手で誘導する」

「こんな、感じ……?」

 

 由佳が顔を下げてきたので、俺はその唇に半勃ちのペニスを触れさせた。

 すると由佳は舌を出してその先端の形状を確かめ、亀頭を口に含んで吸い込みながら奥まで咥える。

 目隠しされた女の子が股間に顔を埋めるようにモノを舐めてくれるなんて、いくら不本意な拘束プレイでもエロい気分になってくる。

 

「んっ……あ……むぐっ……」

 

 俺のペニスは由佳の口の中ですぐに大きくなって、由佳はそれでもすぐにフェラを止めなかった。

 フェラをしてもらうのが好きだと言っておいたおかげか、由佳はすっかり勃起したペニスを、不安定な姿勢でどうにか頑張ってフェラをしてくれた。

 

 由佳もフェラが下手な女と思われるのは嫌なようで、目で見えない肉棒を相手に、舌を出して探るように舐り上げてくれる。

 体幹の筋肉を使いながら、ただでさえ呼吸のしづらいフェラを続けることで、徐々に由佳の息遣いは荒くなっていった。

 

 必死に首を前後させて、いつもよりもすぼんだ口で肉棒を咥えながら、先走りに漏れるカウパー腺液を吸い取っていく。

 数分ほどそうして肉棒がしゃぶられて、亀頭の傘がパンパンに腫れるぐらいまで勃起が膨らむと、ようやく由佳はペニスから口を離した。

 

「くっ……なんだか、前にも増して屈辱的だわ」

 

 そこから出てきた第一声は恨みたっぷりだったが、舐めてもらっている最中は少なからずご奉仕の気持ちが窺えたので、俺としては満足だった。

 

 満足ではあったのだが。

 

 ついには俺の心にも、抱きたくもなかった感情が芽生えてしまった。

 

「中断されると萎えるんだ。本番が始まったら口は自由になるから、喋りたいならそれから喋ってくれ」

「うぐぐっ……こんのぉ……!」

 

 由佳は歯ぎしりをして俺を威嚇してから、呼吸を整えてまた舌で俺のペニスの位置を探り、不服そうにそれを咥えた。

 

 美優を相手に勝負事をやってきた由佳だ。

 “手番”というものを理解しているはず。

 つまるところ、「あなたの番のときに私は大人しく従ったのだから、私の番にも同じだけの命令に従ってもらう」と主張するために、自分がしたくないことでもある程度は受け入るのだ。

 

「はむっ……ぐじゅ……んく……っ」

「この短時間でずいぶんと上手くなったな」

 

 この状況に俺の性感が高まっているだけなのかもしれないが、由佳のフェラは最初のときよりも格段に気持ちよくなっていた。

 由佳にはこれまでお仕置きで何度も精液を飲ませてきたし、そのことを体が覚えているせいで、油断をすれば容易く搾り取られてしまいそうだ。

 

 本番が始まってからは特にそうだけど、美優の命令でお仕置きしたときのことは、思い出さないようにしないとな。

 すぐに射精してしまうようなことがあれば、由佳は難癖をつけて俺の手番を終了させるかもしれない。

 

「ちゅぶっ……ぐちゅ……こんなこほ……させられへ…………んちゅ……ほめらぇはっへ……ぐっちゅ……うれひくなんか……はぁ……んむちゅ……」

「でも、気持ちいいのは事実なんだよ」

 

 由佳の声音からは不機嫌な響きが感じられる。

 それでも俺のペニスを咥え続けてくれている事実が、歓喜と快楽を同時に俺の性感帯に与えてくれる。

 

「はむっ……んぐじゅ……ぜったい…………じゅるっ……あほぇなかへてやる……じゅっ……じゅるるっ……ぐぢゅっ……」

 

 後ろ手に縛られながら、口だけでご奉仕を続ける由佳。

 頭の動きに合わせて左右から伸びるツインテールが揺れ、その先端はベッドにまで達してくるりと丸まっている。

 ペニスを咥え込むために頭を下げて、それと連動して腰が上下に動いていた。

 そのお尻の動きを目で追っているうちに、まるで催眠術にかけられたように由佳を犯したい欲求が湧き上がってくる。

 

「もう挿れるから、ゴムを付けるぞ」

「んっ……ずじゅっ……ちゅぱっ。ふぅ。さっさと終わらせてよね」

 

 由佳はフェラをやめて唾液を吸い上げた。

 

 俺は袋から取り出したコンドームの上下を確認してペニスに装着し、由佳の後ろに回る。

 両手を拘束された由佳と後背位でセックスするためには、ベッドに突っ伏すような姿勢にさせるしかない。

 お仕置きっぽくするためにはそれぐらいは必要か。

 

「苦しいだろうけど、我慢してくれ」

 

 俺は由佳の背中を押して、ベッドに頭をつけさせると、腰を掴んでグイッと持ち上げた。

 由佳の頭がベッドに沈み込んで、なんとか呼吸を維持しようと顔を横に向けて身じろぎするその様を見下ろしながら、俺は蜜口に亀頭までを軽く挿入する。

 

「あっ……」

 

 ごくごく小さな音量で、色っぽく漏れた由佳の声。

 その蜜穴は、さきほどセックスしたときにくらべて、溢れるほどに愛液が満ちていた。

 

「いま声出したか?」

「し、知らないし」

 

 否定する由佳の声は、どこか焦っているようだった。

 由佳自身もここまで感度が上がってしまうのは予想外だったのだろう。

 この時点ですでに“多少具合が良くなった"の域を超えている気がするのだが、由佳は『声なんて出してません』といわんばかりにキツく唇を結んでいるし、ここで追及してもけむに巻かれるだけか。

 

「始めるぞ」

 

 俺はひとまず疑念を棚上げして、由佳とのセックスを進めることにした。

 由佳がマゾヒズムに目覚めたのかどうかは挿入してみればわかることだ。

 

 俺は由佳の腰を掴み直して、これから挿入することを暗に伝えてから、先端までしか入れていなかったペニスを膣内へとズプッと挿し入れた。

 

「ひぁ……ん、あっ……」

 

 俺のペニスが子宮の入り口をコツンと突いたところで、由佳は再び微かな喘ぎ声を上げた。

 そしてまた、唇を噛み締めて、俺が腰を振るたびに、二度、三度とやってくる快楽に必死に耐え続ける。

 

「ふぅ……っ……ぅっ……」

 

 どうにか声に出すことだけは我慢して、息荒く呼吸をする由佳。

 もうこの時点で俺が正しかったことが証明されたのではないだろうか。

 

「気持ちいいか?」

 

 俺は徐々に腰を動かす速度を上げながら由佳に尋ねる。

 

「はふ……そ……そんなわけ、ないでしょ…………こんな、恥ずかしい格好をさせられて……っ……気持ちよくなんか……」

 

 両手を縛られ、ケツを突き出して、秘所からトロトロと蜜を漏らして、なお気持ち良くないと否定をする由佳。

 縛る前と比べて感度が違わないのなら、ほれみたことかと調子に乗って俺を煽ってきそうなものだが、由佳はふぅ、ふぅと息をするばかりで何も喋ることはなかった。

 声を出そうとすると嬌声まで漏れてしまいそうなのか、声帯が震えないように必死に身を縮こまらせている。

 

 それから俺と由佳との間にあったのは、セックスの運動に息を速める俺の息遣いと、由佳の愛液に気泡が混じる音だけだった。

 由佳の表情はベッドに埋まってなお緩んでいて、どう考えても快楽に浸っているようにしか見えなかった。

 

「そろそろ良くなってきたか?」

 

 俺が尋ねると、由佳は十秒ほど息継ぎのタイミングを測ってから口を開いた。

 

「股に棒が入ってるぐらいにしか、感じないっての…………どんだけ……ぁっ……セックス、下手なのよ」

 

 いつもより切迫した高い声で、それでも由佳は平常を装って返事をした。

 こんなに濡らして気持ちよくないはずもないのに、負けを認めるのが嫌だからと意固地になっているな。

 

「嘘をつくと俺も容赦しないぞ」

 

 パチン! と俺は強く由佳のお尻を叩いた。

 色白だった臀部の丸みに、うっすらと赤く手の跡が残される。

 

「ひやぁ……あっ、あっ……!」

 

 由佳は声を上擦らせて、膣穴をキツく締める。

 俺はその肉の壁をこじ開けるようにグリグリと勃起したペニスを押し付けて、繰り返し由佳のお尻を叩いた。

 

「あ、ひぃっ……んひゃ、や、ひゃめ……!」

 

 由佳の膣内はペニスの挿入を繰り返すごとにぐちょぐちょとほぐれて、名器と呼んで差し支えない仕上がりになっていった。

 普通にセックスをしていたときとは比べ物にならないぐらいに、肉襞が絡み付いてペニスを吸い上げてくる。

 愛液の役割はただの潤滑剤でない。

 液体で膣内を密閉することで、ペニスの前後によって生まれる空洞がなくなり、その溝を埋めるようにして膣肉が這い寄ってくる。

 

「っ……あっ……ぁぐっ……!」

 

 顎を上げて喉奥に声を押し込める由佳は、足の指を上向きにピンと反らせて、縛られた両手を過剰なまでの力で握り込んでいた。

 

 そうでもしないと、由佳はもう喘ぎ声を我慢することができない。

 

 由佳が気持ちよくなっているのを認めるのも時間の問題だった。

 しかし、それと同じくらいに、俺の射精欲も我慢の限界が迫ってきていた。

 

 ペニスを出し入れしているうちに、由佳の肉穴の柔らかさが、段ボール詰めをして処女を奪ったあの状態に近づいていく。

 意識をしなくても、美優の「出して」と囁く声が頭の内側から聞こえてくるようだった。

 そんな風にされたら、我慢なんてできるはずがない。

 射精する前にどうにか由佳に負けを認めさせないと。

 

「由佳も気持ちよくなってるんだろ……いい加減に認めろ……!」

「はぁ……あっ……はぅぅ……いっ……いや……こんなの、気持ちよくない……あうっ……んぁ……気持ちよくなんて、ないんだから……ッ!」

 

 俺が腰を打ち付けて、結合部がぬちゃぬちゃと粘液の擦れる音が鳴っても、由佳は頑なに負けを認めようとしない。

 

「ああっ、あぁ……あっうぅ……!」

 

 由佳の全身の筋肉がピクピクと痙攣して、膣内の締まりが急激に強くなっていく。

 

 由佳もイキそうになっているんだ。

 イカせてしまえば、さすがの由佳でも一方的に勝ちを宣言することは出来なくなる。 

 俺は射精したい思いを振り払うように、激しいセックスに切り替えて一心不乱に腰を振った。

 それはあるいは乱暴と呼べるほどに強く、由佳の子宮にペニスを打ち付けていく。

 

「あっ……あがっ……うっ……ううっ……! きもひ、よぐなんがぁ……あぅ、ああっ……んああっ……ッ!」

 

 ビクンビクンと体を跳ねさせながら、由佳はなおも抵抗する。

 俺のペニスへの射精命令は、すでに脳から発せられていた。

 

 俺は由佳の下腹部を抱えて覆いかぶさり、睾丸から排出された精子が尿道にたどり着くまでのタイムリミットで、由佳の肉壺を力一杯に掻き乱した。

 

「由佳……由佳ッ……!」

「あああっ……はぁ……うっ……あ、はっ……もうや……ひゃめっ……きゅ、けぃ、させ……あっ、らめえぇ……ああっ……んっ……あぁぁああっ!!」

 

 ──びゅく、びゅるるっ、びゅく、びゅっ……!!

 

 ゴムの中に吐き出され精液を、そのまま子宮に押し込むように、俺は目一杯にペニスを突き立てた。

 

 直後、ベッドに押し倒されていた由佳の背中が、大きく反り上がって激しく身を震わせた。

 

 互いに息を切らし、気づけば全身にしっとりと汗が浮き上がっている。

 

 由佳はだらしなく口を開けて、犬のように浅い呼吸を繰り返していた。

 喘ぎ声を出さないようにするあまり、まともに息ができていなかったんだろう。

 

 これでもうはっきりした。

 由佳はお仕置きをされたり無理やりされたりしないと性的な興奮が高まらないのだ。

 

 わかったというだけであって、何かの解決になったわけではないのだが。

 

「由佳がイッたんだから、今回は俺が正しかったってことで、ひとまずはいいよな?」

 

 俺はゴムを外して口を縛り、ティッシュで包んでからゴミ箱に放り投げた。

 

 まず事実を確認したうえで、それからどうしたら由佳が満足するイチャラブエッチができるかを考える。

 具体的に何が由佳の悩みで、どうすれば解決できるのかはわからないけど、少なくともお仕置きエッチだけで終わらせて美優と同じ立場の人間になることだけは避けないとな。

 

「い……イッて、ない……」

 

 まだ痙攣の収まりきらない体で声を震わせながら、由佳はどうにか首を横に向けて口を動かす。

 

「由佳が認めないと終わらないだろ。セックスが気持ちよくてイきましたって正直に答えろ」

「こんなに、辱められて……っ……気持ちよくなるわけ……ないでしょうが……! ましてや、イクなんて、ありえないし……」

 

 ここまであからさまにイッておいてまだ抵抗するのか。

 想定していなかったわけではないが、いざとなるとどう対処したものか難しいものだ。

 

「そ、それより、お兄さんはイッたんでしょ? ゴムを外してティッシュを取る音が聞こえたもん。だから、私の勝ちよね」

 

 由佳は早く拘束を解けと言わんばかりに腕を上げてアピールしてくる。

 

 ここで由佳の好きにさせるわけにはいかない。

 由佳を負かさないとこの不毛なやりとりを延々とやることになる。

 

「負けを認めないなら、まだ続けるぞ。俺とのセックスが一回で終わるなんて思ってないよな?」

「へ……? なに、それ……ズルくない……?」

「ズルくない。いいから、これをキレイにしてくれ」

 

 俺は由佳の口に、まだ勃起したままのペニスを近づけた。

 由佳はゴムを外したばかりの精液にまみれた肉棒のニオイに顔をしかめる。

 

「イヤだ、そんな、精液とゴムの味がするのなんて……ふぐっ……!?」

 

 そんなことにお構いなく、俺は由佳の口にペニスを突っ込んだ。

 

 由佳もその勃起の硬さを認識してからは、これがまだセックスの途中なのだということを理解して、嫌がりながらもお掃除フェラをしてくれた。

 歯を立てることもなく、恐る恐る俺のペニスをしゃぶり、精液を舐め取る。

 

 美優と同じ道を辿るわけにはいかないけど、少なくとも俺が由佳に好き放題されて、事態が好転する未来は想像できない。

 だからまずはとことんまで由佳を負かせる。

 

「ううっ……うっ、じゅぶ、ちゅぷっ……はぁ、あぐっ……! んっ、ぢゅぱっ……んはぁ、うぅ。射精したのに、こんなにおっきいとか、バカじゃないの。どんだけ女をレイプするのが好きなのよ」

「こんな体質になったのは由佳のせいでもあるんだ。次、始めるからな」

 

 俺は二個目のコンドームをペニスに装着した。

 

「もう少し、お休みさせて? 今お股を使われると、ちょっとマズいというか……」

「できないならこのまま口に出すけどいいのか?」

「よくないよくない! でも、今はまだムリなの……! お願い、休憩させて」

「イッてないなら続けられるだろ」

 

 俺は由佳の後ろに回ってお尻の肉を鷲掴みにし、両手の親指で先ほどまで犯していた穴を広げた。

 そこからはまだ変わらない量の愛液が溢れている。

 

「こ、こら、やめなさい! そんなことをして、タダで済むと思ってるの!?」

 

 まるで囚われの姫のような口ぶりで叫ぶ、由佳の感情の昂りに合わせて、トロトロと蜜が淫裂から垂れてくる。

 こんなことでも由佳は興奮してしまうらしい。

 俺はお尻の穴のほうにも指を添えて、腸内に空気が入り込むぐらいに大きく広げてやった。

 

「ひやぁ……やめッ、やめて……! そんなとこ見ないで……!」

 

 案の定、お尻の穴がヒクつくたびに、由佳の肉穴から愛液が漏れた。

 どこまでもしつけ甲斐のある体だ。

 続けていたら目的を見失ってハマってしまいそうになる。

 

「こっちも美優たちに開発されてるんだったら、使ってみても良かったんだけどな」

 

 俺は膝立ちして、由佳に肉の薄い尻肉を掴み直すと、間髪入れずに由佳のヴァギナにペニスを突き立てた。

 

「ひぎぃっ……!! あ、あああっ……んあっ、ひぁっ……! ん、あぁぅぅ……はぁうぅ……あっ、あっ、あぅぅああっ!!」

 

 由佳は激しく悶え、淫らな声を部屋中に響かせた。

 そして、その声が由佳自身の耳に入って脳が認識したところで、ようやく由佳は息を止めて嬌声を抑える。

 頭がまだ整理しきれていないうちにセックスを始めたせいで、由佳は喘いではいけないことを忘れていたようだ。

 

「そんな声が出るぐらいなんだから、気持ちいいんだろ?」

「はぁ……ふぅ……き、きもち、よく……うっ……んぁ……な、ない……ぜんぜん……きもちよくない……!」

「いつまでそうやって強情でいるつもりだ」

 

 俺は前よりさらに水気が多くなった蜜壺を、ぐちゃぐちゃと肉棒でかき回すと、由佳の全身の筋肉がまたイク直前のようにビクンビクンと跳ねた。

 たとえダメだとわかっていても、由佳は喘ぎ声を抑えきれなくなってきている。

 

 こうして実際にセックスをするようになって、十八禁のゲームやアニメで出てくるエロシーンなんてものは、たしかに男を興奮させるためのファンタジーだったのだと知った。

 それでも、ひとつだけ、二次元とリアルの両方で通用する知識があった。

 それは、女の子は一度絶頂を迎えると、次のオーガズムまでの間隔が短くなるということ。

 イクのに慣れたその体は、続けざまにペニスを挿入されると、たまらず次の絶頂への準備を始めてしまうのだ。

 

「あぅ、はぁ……はぁ……ふぅっ……んっ、いひゃ、ああっ……らめぇぇ……あぅ……や、やす、ませて……んんっ……あああっ……!!」

 

 口元に唾液を滲ませながら快楽責めに耐える由佳。

 俺は由佳の腕を両手で掴み、馬の手綱を引くようにして持つと、ストロークを大きくして何度も腰を打ち付けた。

 できうる限りオモチャで遊ぶように雑に。

 由佳の肉穴をオナニー用の道具として男本位のセックスを続けていく。

 

「気持ちいいかっ……由佳っ……!」

 

 そう尋ねるときほど強く腕を引いて、激しく腰を振る。

 もはや答えなど求めていないことが伝わるぐらいに、乱暴にペニスを出し入れする。

 

「ああっ!! ひぃ、あ、き、きもち……よぐぅ……やぁひぃぃ……ッ!! んっ、あんっ、あっ……はぁうぅ……!!」

 

 快楽に抗えず乱れる由佳の感度は更に上がって上がっていき、また体がビクついて二度目の絶頂を迎えようかというところで、俺は由佳と繋がったまま腰の動きを止めた。

 その空白の時間に由佳の体は快楽の余韻に包まれ、わけもわからず犯されているだけだった脳が冷やされていく。

 

 そうして呼吸を整えたところでセックスを再開して、俺は由佳が喘ぎ狂う姿を堪能しながら、硬い肉棒を何度も膣肉に擦り付けた。

 次第に速くなる腰の動きに、また由佳の体が痙攣し始めて、イキそうになったところで俺は腰を止めた。

 それを何度も何度も繰り返しているうちに、由佳は俺がピストンを止めても腰を動かし続けるようになった。

 

 イキたいのにイかせてもらえない。

 だから自分で動いてイこうとする。

 そんな意思だけが由佳の白んだ思考の中に残されている。

 

「あぅ……はぁ……んあっ……」

「自分から動くなんて、そんなに膣内に刺激が欲しいのか?」

「こ……これは……違くて……その……」

 

 由佳は俺の問いに戸惑って、一瞬だけ動きを止めると、何かを思いついたようにわざとらしく自分から腰を動かし始めた。

 

「お兄さんが……乱暴にするから……んっ……ああっ……こうして、衝撃を和らげてるの……あんっ、あああんっ……」

 

 壁に張り付いた突起でオナニーをするように、結合したままお尻を擦り付けてくる由佳。

 ここまで追い込んではみたものの、さすがに由佳に言い訳の隙を与えると有耶無耶にされてしまう。

 変化球で上手く墓穴を掘らせられないかと考えたが、もっと快楽堕ちさせて思考力を奪わないとダメみたいだ。

 

「由佳。こっちを向いてくれ」

 

 俺はペニスを抜いてから、由佳の体を転がして仰向けにさせた。

 それから、ぐったりして重たくなった上体を抱え上げ、対面座位の体勢になる。

 背中を仰け反った由佳のツインテールが真っ直ぐに垂れていて、巻かれていた髪はもうストレートに戻っていた。

 

「ふぁ……なに……するの……」

「なにも。セックスを続けるだけだよ」

「うぐっ……あ、んんっ……いひゃぁああっ!!」

 

 俺は由佳の正面からペニスを挿入して、その体をオナホのように上下させて根元まで深く突き刺した。

 お腹を上にして挿入したほうがポルチオを刺激しやすい分、由佳の感度も段違いに良い。

 男性器に伝わってくる快感も高まるため射精を我慢するのもツラくなるが、そこはもう由佳との根比べをするしかない。

 

「あ、ああぅ、ああひゃぁ……! こ、こひゃの、じゅるい、のぉ……あっ……あひぃ……ああうぅあぁっ……!」

 

 天に向くほどに反り上がったペニスで、由佳のお腹を内側から抉るように、腰をグラインドさせて何度も性感帯を刺激する。

 全身に残った筋肉のありったけを使って、休みなくひたすらに、呼吸する隙すら与えないほど激しく由佳の子宮を突き上げる。

 

「あうぅぁああっ、あんんっ、ひひやぁあっ!! ああっ……ぐひゃぃぁあっ……いいひぎぃあッッ!!」

 

 由佳の体が跳ね上がって、嬌声が途切れても、なおもセックスを続けた。

 

 どれだけ由佳がイッても腰を振るのをやめない。

 ひと突きで絶頂するほどイキ狂ってもなお気にせず、オスの性欲のありったけを由佳にぶつける。

 

「由佳っ……もう素直になれ……! っ……はぁ……気持ちいいって、言え……!」

「いひやぁあ、イヤ、やぁんっあっ!! みひょめにゃ、いっ……んあっ……み、みと、みとめにゃあぁあっ……ッ!!」

 

 由佳は頑なに否定をし続けた。

 もはやイエスと言わないことに全神経を割いている。

 

 もはやどれだけ喘がせても意味はない。

 何回イかせても、同じ問答を繰り返すだけだった。

 

 そんな由佳の強硬姿勢を見ているうちに、俺の脳裏にふと思い出されるものがあった。

 

「……由佳。俺たちがしたかったのは、イチャイチャしたセックスだっただろ」

 

 俺はピストンの速さを緩めて、意識の朦朧とした由佳を両腕に抱いて囁く。

 

 その言葉に、由佳はピクリと反応した。

 このお仕置きプレイは元々、由佳がそうしないと気持ち良くならないのかを確かめるために始めたものだ。

 そして、もう由佳がマゾヒズムな特殊体質であることは明白になった。

 

 だとしたら、もうこのセックスの行く末としては、由佳が気持ちいいと認めさえすれば何でも良いのだ。

 

「由佳が嘘をつくのをやめたら、俺は由佳にキスをしてもいい」

 

 あくまでも軽く唇を接触させる程度のものだが、恋人らしいイチャましさを演出するだけならそれで十分だろう。

 

「き、きしゅ……してくれるの……?」

「由佳が正直になったらな」

 

 俺はそれだけ告げて、セックスを再開した。

 もう無理な力を入れることもしない。

 これで由佳が負けを認めなかったら、俺が非を認めてしまおうという諦めも込めて、ごくごく普通にセックスらしい最後のピストンを由佳の膣内に送っていく。

 

「ああっ……んっ……あああっ……」

「可愛い声が出るようになったな……由佳……気持ちいいか……?」

「あっ……き、きもちいい……んあっ、きもちぃでしゅ……あっ、あっ……お兄さんのセックス……しゅごくきもちいい……!」

「はぁ……はぁ……正直になったほうが、由佳のためにも…………んっ? あ? 気持ちいいのか?」

 

 こいつ、あれだけ意固地に否定していたにくせに、あっさりと手の平を返しやがった。

 

「本当に気持ちいいんだな? これがいいんだな?」

 

 俺はペニスの硬さを由佳にわからせるように、膣内深くまで剛直を挿入する。

 

「あっ……ああんっ……お兄さんのカタいの……すごくきもちい……すきぃ……!!」

 

 さきほどとは打って変わって蕩けたような表情で俺のペニスを受け入れる由佳。

 俺の腕に抱かれている体をこちら側に倒してきて、自ら俺の肉棒に騎乗するように腰を振ってくる。

 

 そうだった。

 自分に利があると判断したら、恥も外聞もなく身の振り方を変えるのが由佳という生き物だ。

 結果的には俺とセックスができて、キスもできるようになって、由佳にとっては良いこと尽くしで勝負が終わっている。

 

 しかし、ここまで苦労を掛けさせられて、由佳だけいい思いをするのは納得がいかない。

 

「だったらさっきまでのは嘘だったんだな?」

「あっ、あっ、はひぃ……嘘でしたぁ……ごめんなひゃぃ……!」

 

 由佳は微塵も悪びれずにヘコヘコと腰を振る。

 もう俺はこの生意気な女を懲らしめずにはいられなくなった。

 

「お前はいつも、そうやって調子に乗って……!」

 

 俺は力いっぱいに由佳の膣を犯した。

 苛立ちに硬度を増した剛直が由佳の性感帯を擦り、その乱雑さが由佳を悦ばせるとわかっていてもなお、パンッ、パンッ、と破裂音が鳴り響くほど強く腰を打ち付けるのをやめられない。

 

「ああっ……ひぃああっ……!! あうぅごめなひゃぃ……あっ……ああんっ……もうひわけ、ごぎゃいま、ひぇん……でひぃ……んあああっっ!!」

 

 由佳は目隠し用のタオルを涙で濡らしながら、緩んだ頬と甘い声で悲鳴を上げた。

 

 俺には美優のようにとことんまで追い詰めるようなことはできない。

 だからこの性悪女は、心にもない謝罪を繰り返しながら、かつてないほど嬉しそうに犯されている。

 淫肉は俺の肉棒を歓迎するようにうねりくねり、謝りながら快楽責めされているその様が、かつてレイプした記憶としてフラッシュバックした。

 

 その記憶が俺のペニスをポンプアップさせて、充血してエラ張ったカリが由佳の腹部を擦り、重たくなった陰茎が結合部に鈍く響いていく。

 

「おおっぐ……うぅあぁっ……ひいぃぃぐいゃ……いっひゃ……いっひゃうっっ!!」

 

 由佳の「イク」と叫びながら体を細かく跳ねさせる。

 俺はもうこの状態の由佳を何度も見てきた。

 

「はぁ……由佳っ……それで、イクの何回目だ……!」

「あひぃ、あ、うぅ……わ、わかりまひぇん……もうイキすぎてわかんないよぉ……!!」

「だったら最初のもイッてたんだな……!」

「んっ、ああっ、い、イッてまひたぁ……! じゅとさいしょ、から……きもひよすぎて…………なんかいも、ひぎぃ……イってまひたぁっ……!!」

 

 由佳は強がって嘘をついたことをわびながら大声で喘ぎ狂った。

 もはや否定の余地のない完璧な陥落っぷりだった。

 俺は仰向けにしたまま由佳をベッドに押し倒して、後ろに縛られている手首をあえて自らの両手で動かせなくすると、残された筋力のありったけを使って由佳を責め立てた。

 

「あああうぅっ、ごめにゃひゃひぃっ……!! いひゃぁあああ……んああっ……あぁあううぅあぁっ!!」

「はぁっ……あっ……由佳っ…………俺ももう、イク……ッ……!!」

「があぁっ、ぐあっ、いひゃぁああっ! ああんっ!! んやぁあああっ!」

「ッ……由佳っ、で、るっ……出るっ……!!」

 

 びゅっ、どびゅっ、ぐぴゅっ、びゅっ、びゅびゅっ──!

 

 かつて美優の命令で何度も由佳を犯してきたその体は、拘束されて辱められている由佳に射精するのを使命として覚えたように、大量の精液をゴムの中へと送った。

 体力を使い果たした体にどっと疲れがのしかかってきて、俺は由佳を潰すように正面から倒れ込んでしまう。

 

「っ……はぁ……っぁ……由佳、悪い……」

 

 どうにか体を起こして由佳の腹の上から退いたが、由佳からの反応はなかった。

 強がる必要のなくなった由佳の脳は、負けを認めた途端に快楽に溺れ、俺に犯されるがままにトんでしまったらしい。

 キスの約束だったけど、寝ている間に済ませてしまうのはさすがに卑怯か。

 

 俺は由佳の目隠しと拘束を解いてベッドに寝かせてやることにした。

 由佳はしばらく白目を剥いて虫の息だったが、五分ほどすると安らかな眠りについた。

 

 風呂に入ったときに少し休めたとはいえ、遊園地からほとんど動きっぱなしになってしまったからな。

 俺も休むことにしよう。

 

 溜まった疲れのせいで朝まで寝てしまいそうなので、俺はアラームをセットするためにソファーまでスマホを取りに行った。

 筋肉疲労のダルさを感じながらディスプレイの電源をつけると、1件のメッセージが表示されていた。

 

『了解しました。明日はお家で待ってます』

 

 俺の帰宅が明日になると連絡したことへの、美優からの返信だった。

 淡白なのに不思議な温かみがある。

 早く家に帰って美優とイチャイチャしたい。

 

 俺はアラームを三時間ほど寝れるくらいにセットしてベッドに入った。

 由佳は小気味よく寝息を立てて、いつもの生意気な姿からは考えられないくらいに愛らしい顔で眠っている。

 二つ結びになった髪のまま寝ていると寝癖になりそうなのでヘアゴムを取ってやりたかったが、下手に外すとゴムが切れそうなほどガッチリ縛られていたので諦めた。

 

 それから、アラームが鳴るまでの間、途中で目が覚めることもなくぐっすりと眠っていた。

 ベッドに入ってから数分うとうとしていただけのつもりだったのに、気づいたら時間が飛んでいたみたいに大音量の電子音が俺たちの鼓膜を叩いたのだ。

 その音に驚いて、真っ先に飛び上がったのが由佳だった。

 

「え!? なになに!? もう夏休み終わった!?」

 

 起き抜けから騒がしくて、もしかしたら俺は由佳の声で目が覚めたのかもしれない。

 由佳が勢いよく布団をめくり上げたせいで俺の方まではだけてしまったので、その分の布を取り戻すように俺は布団を引きながら体を起こす。

 

「おはよう。と言ってもちょうど真夜中だけどな」

「あら、おはよう。私たちいつの間に夫婦になったの?」

「なってない」

 

 裸の男女が並んで寝てればそれなりの関係には思えるだろうが、残念ながら由佳はセフレでもない友人だ。

 

 起きてすぐにエッチをする気分にはならず、俺たちはベッドから降りて服を着ることにした。

 由佳はマイクロビキニとキャミソールだけを着てベッドへダイブする。

 

「ところで由佳。寝る前のことだけど」

 

 俺が話を仕切り直したところで、由佳はギクっと血の気の引いた顔になった。

 例の勝負について覚えているか聞こうと思ったが、確認するまでもなかったな。

 

「あんたたち、マジに責任取りなさいよ」

 

 由佳は体を隠すように布団を引いて壁を作った。

 

「俺とする前からそういう体質だっただろ。美優と遥に言え。俺は無関係だ」

「関係なかないわよ……! 最近は一人でするときディルドが無いと物足りなくなってるんだからね!? これがお兄さんのせい以外にあるの!?」

「わかった、俺が悪かった。それ以上に赤裸々な告白をするのはやめてくれ」

 

 女の子の一人エッチは見てみたい一方で、話題に出されるとどう扱っていいのか困る。

 

「ま、どうあっても、贖罪はしてもらうからね。こいつを見て目ん玉ひん剥くといいわ」

 

 由佳はまた慌ただしくベッドから降りてソファーの近くに向かった。

 その隣にあるテーブルの、テレビやらカラオケやらでごちゃごちゃしているところに紛れて、カバーのないスマホが紛れるように立て掛けられていたのだ。

 

「そんな小細工までして録画してたのか」

「とーぜんでしょ。この由佳ちゃんを何だと思ってるの」

 

 ソファーに投げられていたのはカバーだけだったのか。

 細かいところにまで知恵が回るんだよな。

 

「三時間以上放置されてたけど、録画容量は平気なのか?」

「お兄さんは何も知らないのね。デフォで入ってるタイマーで自動的に止められるのよ」

「ほう」

 

 感心している俺の前に由佳はやってきて、ばっちりお仕置きプレイが録画された動画を見せつけてきた。

 映像だけを見ていると、まるで俺が年端も行かぬ少女をレイプしているようだ。

 

「こいつがあれば、お兄さんはもう私の言うことを聞くしかないの。勝負だのなんだのは忘れなさい」

 

 由佳が得意げにスマホをかざして目を細める。

 

「俺が言うことを聞かなかったとして。どうするつもりなんだ」

「どうって、それは……」

 

 そう尋ねると、由佳はいつもみたいに鋭く切り返してはこず、しばらく口をもにょもにょさせていた。

 なんとなく撮っていただけで、目的など決めていなかったのだろう。

 

「学校でも、ケーサツでも、送り先なんていくらでもあるのよ。美優に送ってもいいし」

「送ってどうなる」

「それは……騒ぎになるなりして、色々と困るでしょうが」

 

 由佳は自信なさげに答える。

 まあ実際に送られたら困ることには違いないが。

 

「仮にだ。それで俺が警察の厄介になったり、美優が嫌な思いをしたとして。由佳はそれでいいのか?」

 

 これまでの由佳の脅しや交渉は、取り引きを考えるだけの妥当な理由があった。

 だが、最近の由佳の言い分は、どうにも無理が過ぎるように思う。

 由佳が俺とのイチャラブした関係を望んでいなくて、最初の頃のように顔見知り程度の関係であれば、こうしたやり方もアリだったかもしれないが、今となってはもう筋が通らない。

 

「ん……まあ……そうね。思ったほど、使えなさそうだし。これは消そうかしら」

 

 由佳はしょぼんとしてスマホを操作し、ファイルから動画を消した。

 こいつも大人しくなったものだな。

 

「こっちに来い」

 

 俺は由佳からスマホを取り上げてベッド脇に置くと、由佳のお腹に腕を回して、ベッドの縁に座る俺の前まで抱き寄せて同じように座らせた。

 

「えっ、えっ、ええっ、なに?」

 

 由佳は困惑して手足をバタバタさせる。

 そんな由佳の頭を、俺はポンポンと軽く撫でてやった。

 

「あの、私、脅してたんですけど……? 普通は怒るとこじゃない? ちゃんと感情ある?」

「怒るようなことなんてなかったよ」

 

 由佳が色々と勝手に自爆していくだけで、俺に実害が及んだことはほとんどない。

 優しさではなく事実として怒る要素がないのだ。

 

「あっそう。変な人ね」

 

 由佳は観念して俺の腕の中に収まると、薄っすらと頬を紅潮させた。

 それがどういう感情から来たものだったのかは、俺にはわからなかった。

 

「こうして由佳と話してるのは楽しくて好きなんだよ。前に相談したときからそうだったけど、由佳の声を聞いてると元気になるんだ」

 

 怒るどころか、由佳には感謝している。

 美優とのことは当事者間でもう清算された話だし、俺と由佳との間に限定すれば、俺はむしろ由佳に助けてもらったことの方が多い。

 

「それにな。苦手なことも多いのにいつも強がってるところとか。ズル賢いようでたまに抜けてて、予定と狂うとあたふたするところとか。由佳は結構、男心をくすぐるような健気さもあるんだよ」

「うっ……褒められてるのか馬鹿にされてるのか……わかんないけどむず痒いわ……」

「褒めてるよ。もう一度はっきり言っておくけどな。由佳は可愛いし、俺は好きだ」

 

 俺は由佳の肩にかかった二つ結びを前側に下ろし、体を引き寄せて俺に背を預けさせた。

 

「だから、そういう褒め方はやめてって。なんて言い返したらいいかわかんなくなる」

「昼間は褒められて喜んでただろ」

「雰囲気を考えてよ」

「いい雰囲気じゃないか?」

「それがダメなの」

 

 またわけのわからない反応を。

 美優を相手にして慣れてる俺だから良いが。

 

「私を褒めていいのは、私が褒めてほしそうにしてるときだけ」

「難しいことを言うな。ダメな理由がわからないと判断もつかないぞ」

「だーかーらー。会話としてする分にはいいの。私が本気になるような、本音っぽい褒め方はやめてって言ってるだけ」

 

 なるほど、そうか。

 このチグハグな話ぶり、俺はこういうとき、本人の頭の中では整然とした考えがあることをよく知っている。

 ついに深掘るべき時がきたんだな。

 

「なら、それが本心からの言葉でも、褒めないで嘘をついたほうがいいってことか?」

「そういうのとはちがくて。そもそも、なに。だったら、本気で私のこと可愛いって思ってんの?」

 

 ずっとそう言ってるだろうが。

 

「いいか、由佳。俺が言ってる可愛いっていうのは、外見だけのことじゃない。由佳の反応とか仕草とか、そういう全部が魅力的なんだ。由佳への褒め言葉はどれも本気だよ」

「へえ……そう……」

 

 由佳は無関心を装って空返事をする。

 

 こうなったら、一発ガツンとやってやらないとダメだな。

 どうせ約束は果たさないといけないわけだし。

 

「由佳」

 

 俺は由佳の首の後ろから顔を近づけて、振り向いた由佳の唇に目線を落とす。

 美優のおかげで、少しは慣れた動き。

 

 あれだけ熱望されていたものを、いまさら嫌がられるかもしれないと恐れる必要もない。

 

「一度でいいから、人の言葉を素直に受け取ってみろ」

「え、あっ……んっ──」

 

 俺は由佳にキスをした。

 

 由佳が欲しがっていたほど情熱的なものではなかったが、たしかに唇が触れて、互いの朱い肉が平らになるぐらいにしっかりと。

 

「わっ……え……は……」

 

 由佳は瞠目して、瞳を震わせる。

 

 寝る前の記憶はあると言っていたから、それほど驚かれないと思っていた。

 そんな予想に反して、由佳は俺の腕を振り払うと、ベッドの上を後ずさりして俺から遠ざかっていく。

 

「由佳、後ろ、危ないぞ」

 

 俺が注意をしても、由佳はベッドの縁まで下がってなお止まらず、後ろに転がるようにしてベッドから落ちていった。

 

「お、おい。大丈夫か?」

 

 バラエティ番組みたいな盛大なズッコケ方に、いくら由佳でも怪我をしたのではないかと心配したが、由佳はすぐにムクリと起き上がった。

 しかし、混乱状態が解除されたわけでもなかったようで、由佳は室内のテーブル伝いにヨタヨタと歩きながら、浴室へと逃げていった。

 

 そんなにビックリさせてしまったとは。

 なんだか申し訳ない。

 

 俺は由佳を追いかけていって、浴室のドアを開けた。

 

 するとそこには、洗面台の鏡に向かい合い、両手で唇を押さえている由佳の姿があった。

 

「大丈夫か?」

 

 声を掛けても、反応はなかった。

 リスが種を持つように小さく、唇に指を重ねてぼーっとしている。

 

 俺が近づいてその姿が鏡に映ると、由佳はようやく俺が追いかけてきたことに気づいた。

 

「あっ……ふぉ……!」

 

 鳩みたいな可愛げのない悲鳴を上げた由佳は、泣きそうな目で俺を見つめてきた。

 

「なに、あの、私、はじめて、おとこのひと……」

 

 瞳の揺れが由佳の全身に伝わって、わなわなと震えだす。

 

 あれだけ挑発してきたくせに、されるとなったらこれか。

 俺たちはさっきまで目隠し拘束プレイまでしていたんだぞ。

 なんだそのピュアな反応は。

 

「ビックリさせたならごめん。約束だったし、寝る前のことは覚えてたっていうから」

 

 だからあれは、正当なキスだった。

 女の子とラブホテルに来ている男が言うことでもないが、下心とか他意はまったくなかったのだ。

 

「とりあえず、部屋に戻って落ち着こうか」

 

 俺は由佳の肩を抱えるようにしてベッドへと連れ戻った。

 縁に座らせても由佳はまだ呆然としていて、しきりに唇を触っている。

 

 初めて由佳とお仕置きエッチをしたとき、美優が口移しでベロチューしていたので、由佳も慣れているのかと思っていた。

 とはいえこいつの性格を考えると、まともなキスをしてもらったことは一度もなかったんだろうな。

 

「あの……お兄さんは、どうして私に優しくするの……?」

 

 由佳の口から漏らされた疑問。

 これまでと違って、少女らしい控えめな声だった。

 

「変かな?」

「だって、私が一方的に押し付けた借りを返すために、お兄さんはこんなデートに付き合って。これだけ私がワガママしてるのに、嫌気がさしてる感じ、全然ない」

 

 由佳は俯きがちに、ついにその本音を吐露する。

 

「いつもの私が好きって、みんな言うけどさ。誰も私を求めてくれたことなくて。女の子っぽくしても馬鹿にされるし。励ましても茶化されるし。イタズラするとやっぱり怒るし。私は、私なりに、その……」

 

 由佳は語気を弱めて言葉を濁そうとして。

 それでも、話を続けてくれた。

 

「どうしたら元の自分で好きになってもらえるのか考えるのやめて。私が大人になれば時間が解決するんだろうけどさ。そんな形で自分を捨てるのは、なんか、悔しいじゃん」

 

 幼いなりに頑張って、みんなに好かれていたはずの自分は、恋愛という立場になると誰よりも遠かった。

 

 由佳の悩みは過去の俺とハルマキさんが嵌っていた泥沼のどちらにも似ていた。

 いつだか俺も美優に説教をされた、自分はキモいオタクでしかないという思い込み。

 周囲から見てそれが俺らしいからと、自分で自分を悪い評価に押し込めていた。

 そこから抜け出したいと思っても、周りは“自然な在り方”を期待するし、本当に自分らしく頑張っていた部分も捨てられない。

 

「美優だけは、私の性根みたいなとこを見極めてくれてて。私が得意なことを任せてくれて、ずっと変わらずに仲良くしてくれたの。……お兄さんほど私に関心は向けてくれなかったけどね。嬉しかった」

 

 美優は優しくて、年不相応に大人で、そのせいで由佳の根っこにある人間性を認めすぎた。

 それがやがて由佳を美優に固執させて、後付けの恋心を芽生えさせた原因だった。

 

 原因がそこにあったというだけで、決して美優が何か悪かったわけではない。

 もし、美優が感情を閉ざしていたあの時期がなかったら、由佳を拗らせずに大人にしてやることぐらい簡単にできていただろう。

 

 今はもう、美優は自分の感情に不自由していないけれど。

 その長い付き合いを経て、由佳にとって美優が敬愛の対象になってしまった今では、もう美優は由佳が求める“好きになってほしい誰か”にはなれなくなった。

 

 だから、その足りなかった部分を俺が埋めればいい。

 

 これまでの由佳との付き合いで、俺の本心から生まれた由佳が好きだという想いを伝え続けるだけでよかったんだ。

 由佳の中で周囲の期待によって凝り固まった、『わがままでイタズラ好きの女』であろうとする自分が、どれだけ他人の好意を否定しようとも。

 他でもない、由佳自身が由佳のことを好きになれるまで。

 

 由佳が俺に彼氏らしい振る舞いを期待しておきながら、俺が由佳を女として扱うと反発したり、顔を真っ赤にしていたのが、そのまま答えだったんだ。

 

「俺だって、由佳には色々と思うことはあったよ。美優ほど察しがいいわけでもないし、お互いにロクでもないこともし合ったしな。でも、こうして由佳のことを知った今では、心から由佳が好きなんだ。それだけは信じてほしい」

 

 後ろから、由佳の顔ははっきりとは見えなかったけど。

 

 俺の言葉に、由佳はしばらく目を閉じて考え込んで。

 

 それから、そっと俺の腕に手を置いた。

 

「うん。ありがと」

 

 由佳は短く返事をした。

 

 それから由佳は俺の腕から抜け出して立ち上がると、どこか吹っ切れたように清々しく笑みを作った。

 

「お兄さんは、いい男ね。私が認めてあげる」

 

 そう語る由佳は明るくて、落ち着いていて、どこか誰もが理想に思う女の子の姿になっていた。

 予想だにしなかったその穏やかな反応に、俺の胸中に何とも言えないモヤモヤとした不安が立ち込めていく。

 

 ソファーに散らかった荷物をまとめる由佳の所作は、長年一緒にいたことで無意識に染み付いたのであろう、美優に似た大人っぽさがあった。

 

「えっと、気持ちは伝わったかな?」

「もちろん。遊園地のときからあんだけ好き好き言われてたんだから。むしろ『えー付き合っちゃうのー?』とか思ったくらいだし」

 

 由佳はベッドに置いてあったスマホにカバーをつけながら軽口を叩く。

 その言葉にはいつもみたいに胸に響くような鋭さはなかった。

 

「伝わったなら、よかった」

 

 そう口にしながら、俺の心には焦りが募っていった。

 俺が由佳が期待していた何かを裏切ってしまった気がした。

 

 それがきっかけで、由佳は俺に感謝を述べたあの瞬間に、大人になることを選んだのかもしれない。

 

 それは由佳にとって一つの正しい道だったのかもしれないけど。

 俺は酷く、虚しさを感じた。

 

 きっと悩みは悩みのまま、由佳の心の奥底に封じ込められているんだ。

 この場で流れを変えられなかったら、もうそれを解決してやることができなくなる。

 

「シャワー浴びたくないか? お互い汗もかいたし、由佳はずっと髪を結びっぱなしだっただろ」

「そうね。このまんまじゃベタベタして寝らんないわ」

 

 由佳は二人分のバスタオルをハンガーから取って、俺に手渡してきた。

 

「どうするの? 先に浴びてくる? 一緒に入るの?」

 

 そんな何気ない由佳の質問が、胸にズキリときた。

 これまでの由佳なら一緒に入る一択だったはず。

 もうわがままを言う必要もないから、美優に配慮することにしたのか。

 

「一緒に入るか、由佳が先かでいいよ」

 

 選択肢を残して、保留に近い回答。

 

「うーん」

 

 由佳は結んでいた髪を下ろしながら考え込んでいた。

 そんな由佳の姿を見て、俺の思考が一時的に横道に逸れる。

 

「……ストレートだと、だいぶ印象が違うな」

「それみんなに言われる」

 

 左右に結んでいた分が下ろされて、イメージよりも長い髪をスッと伸ばすその清楚さに、いつもの生意気な猫目も可憐に見えた。

 

「髪を下ろしてる姿も、いいな。かなりいい」

 

 俺は素朴な感想を投げただけのつもりだった。

 そんな俺を、由佳は口をへの字に曲げて睨んだ。

 

「どーせ美優がストレートだからでしょ」

「えっ、ああ、違うんだ……! オフモードの由佳も可愛くて、もちろんツインテールの由佳も好きだし、どっちも褒め言葉で……!」

 

 俺が慌てて言葉を取り繕った。

 そんな姿の俺を見て、由佳はフッと笑った。

 

「恋人のことなんだから、そんなに必死に否定しなくてもいいのに。やっぱり、変な人ね」

 

 由佳はまた朗らかに笑って、それを見たとき、俺は唐突に悟った。

 

 俺が慌てて言い訳をしたのは、そうしないともう由佳の悩みに触れられなくなる気がしたからだ。

 でも、本人から頼まれたわけでもないのに、人の悩みを解決してやろうだなんて考えは、独りよがりでしかなくて。

 美優の願いを叶えてやりたい思いで食い下がってみたけど、それはあまりにも由佳の気持ちを軽視しすぎていた。

 

 元々、指示もなく自然に接していろと言われていただけだし、あの美優のことだからどんな結果になっても上手く事をまとめるだろう。

 

「由佳のことは、由佳のこととして褒めたかったから」

 

 下手な考えを捨てて力を抜くと、そんな言葉が出てきた。

 そんなにキザったらしいことを言うような男ではなかったはずなんだけどな。

 これまでは想像するだけで恥ずかしかったけど、由佳を相手にしているうちにすっかり慣れてしまった。

 

「お兄さんも、そうやって女を口説くようになったのね。お姉さんも嬉しいわ」

「そういや由佳は俺がダメなオタクだった頃から俺のことを知ってるんだよな」

「ほんとほんと。冴えない男だったのに、ずいぶん成長したもんよ」

「なぜそんな上から目線なんだ……」

 

 当時の俺を知っててこうして慕ってくれてるのは嬉しいものだな。

 由佳も逆の立場として、俺みたいな存在をありがたく思ってくれてるんだろうか。

 だとしたら、俺も嬉しい。

 

「なあ。シャワーの前に、もうちょっと話さないか?」

 

 俺はベッドに腰掛けて、今度は隣に座るよう布団を叩く。

 

「しょーがない。私もそんな気分だから付き合ってあげる」

 

 由佳はニヤニヤしながら俺の横に座った。

 少しは元の距離感に戻れたみたいだ。

 

「由佳はやっぱり良い奴だよ。美優が友達に選ぶだけあるというか。遥もきっと、仲良くなれたら由佳みたいに良いところがたくさんわかるんだろうな」

「いや、あの女だけは根っからの悪党だから。映画なら最後にボスを裏切って真のラスボスになるマッドサイエンティストみたいなやつよ」

 

 まさかそんなことはないだろう。

 それだけの素養があることは認めるが。

 

「由佳も遥の素の姿をまだ知らないんだよ。二人は恋敵みたいなものだったから。これからも美優と三人で仲良くしてくれたら、俺は嬉しい」

「だったらいいけど。私だってどっちとも疎遠になるつもりはないから」

 

 由佳も美優と同じ高校に通うのかな。

 美優が進学校に通うのならまだしも、俺でも通えるような公立校に行くらしいし。

 とはいえその段階にすら由佳の学力が足りているのかは疑問だ。

 最初のお仕置きのときに話していた限りだと、由佳の勉強のできなさは壊滅的なレベルらしい。

 

「そういや、由佳が美優にイタズラしたのは、宿題を写させてくれなかったからって言ってたけど。あれは本当なのか? 今にして思えば、アレもとっさに出た嘘だった気がするよ」

 

 俺もお仕置きプレイを通して、由佳が追い詰められると子供みたいに泣きわめくのはもう知っているが、このズル賢さがあって宿題ごときで美優を怒らせることはなかっただろう。

 

「さすがに気づいたのね」

 

 由佳はまた鳴らない指パッチンを掠らせた。

 

「二割は嘘よ」

「まさか八割も事実だとは」

「なんか勉強ってやる気にならないのよね。それに美優の感情を揺さぶれるなら理由なんてよかったの。当時の私にはね」

 

 美優からしたらいい迷惑だっただろうが、ああいう関わりかたをしていたのなら美優も覚悟していたのかもしれない。

 

「由佳はやることなすこと派手だからな。その下着だって、どこで手に入れたんだ?」

「通販よ。あたし身長は160あるし、買えるものは多いの」

 

 由佳はストレートにしたヘアを手でさらって「これでも、レディの体ですから」と言葉を付け加える。

 すごいおっぱいに囲まれていたせいで俺には物足りなく感じてしまうが、小さい胸が好みの人からしたら由佳もたまらない体だろう。

 

「そういうあからさまな服も、由佳は似合うな」

 

 キャミソールの開いた胸元には、紐状の下着が先端だけを隠しているのが見える。

 裾の短いキャミソールだけでは腰までしか隠すことができなくて、Tバックが股に食い込んだ深い溝が、少し目線を下げれば覗けてしまう。

 

「何度も見てもエロい」

「でしょでしょ。もう一回戦したくなってきた?」

「また調子乗って。こういうときは褒め言葉を素直に受け取るんだよな」

「今は褒めてほしいときなの。朝までは私の男なんだから、いい加減に私の扱いを覚えなさい」

 

 偉そうに威張る由佳は、確かに朝までがこのデートの約束だと言った。

 まだ俺とこうして一緒にいたいと思ってくれてるんだな。

 さっきの微妙に距離の空いた関係で終わるよりは、ずっと良い。

 

「俺が美優と仲良くなれたのも由佳のおかげなんだ。もう何度も助けられてるよ。感謝してる」

「ふふん。私からゴーサインが出てから褒めてちゃ遅いのよ」

「それでもきちんと伝えておきたいんだよ。どれだけ借りがあっても、由佳が相手じゃなきゃデートだってしなかった」

 

 俺がそう言うと、由佳はコクッと小首を下げて、斜め下から期待の眼差しを俺に向けてきた。

 

「ほんと?」

「本当」

「じゃあ生でエッチして」

「絶対に断る」 

「もー!」

 

 元の関係に戻ったと思ったら必要以上に巻き戻しをしてしまっていた。

 美優には好きにさせろと言われているけれど、生のセックスだけは美優以外の誰ともするつもりはない。

 

 由佳は子供みたいにベッドでしばらく暴れて、それから一つ深呼吸をした。

 

「はあ。楽しい」

 

 体を起こして、由佳は俺を見つめてくる。

 いままで見たことがないくらいに純真な眼差しだった。

 

「あのね、お兄さん」

 

 由佳はじっと俺と目線を交えたまま口を開いた。

 あの日、美優が本心を打ち明けたときと、同じ目と、同じ声音。

 

「本当は、気づいてたの。全部美優の命令なんだって」

 

 由佳が無理して吹っ切ろうとしていた想い。

 それが、最後まで悩みのまま残っていた、由佳の憂いだった。

 

「恋人がいるのにこんなデートまでするなんて、いくら借りがあったっておかしいもの。私に優しくしてくれたりとか、たくさん褒めてくれたりとか。美優の指示でしてたんだって、わかってた。頭では、そう理解してたはずなのに」

 

 その声は、少しずつ掠れていく。

 吐息を多く含んで、喉から絞り出すような、胸が苦しくなる声だった。

 

「お兄さんに褒めてもらうのが、どうしようもなく嬉しかった。何回否定しても、美優の指示だってわかってても、どうしてかお兄さんの声を聞くと胸がくすぐったくて、テンションが上がって。それで、私、もしかしたらって、ありえないこと妄想して……」

 

 想いを語るその最後に、由佳は目を逸して、ギュッと拳を握った。

 

「この勘違いが、現実だったらよかったのになって。ずっとそんな馬鹿なこと考えてた」

 

 最後まで由佳が俺の言葉を信じてくれなかったのは、俺に美優という超能力じみた洞察ができる妹がいたからだった。

 

 だからすべてを俺が気づいて、俺が解決しなければならなかったんだ。

 俺は嘘がつけない人間だから、もし美優の指示で動いていたとしたら、聞かれずともそれを白状してしまっていたはず。

 

 でも、今の俺ならば、自信を持って言ってやることができる。

 

「聞いてくれ、由佳。これから話すことを、由佳がどう思うかわからないし、本当のことを言ってる証拠なんて、どこにもないけど」

 

 きっと伝わる。

 

 由佳はとっくに、それを感覚でわかってくれていた。

 

「知っててほしいんだ。俺が美優に言われたのは、由佳が何かに悩んでることと、由佳のしたいことに付き合っていいってことだけで。それ以上のことは、指示も何もなかったんだよ」

 

 俺が語りかけているうちに、下を向いて横髪で顔を隠している由佳の膝には、気づけば大粒の涙がポロポロと落ちていた。

 鼻水を啜る音も大きくなって、俺の声が聞こえているかはわからないけど、この言葉だけは告げておかなければならない。

 

「今日まで由佳に伝えてきた気持ちは、どれも俺の本心だよ」

 

 それはこれまで何度も繰り返した言葉だった。

 それでも、由佳にはこれまでと全く違う意味で伝わっていたはずだ。

 

「ううっ……うぅ……」

 

 由佳はすすり泣いて、泣き続けて。

 

「うぅぅぅぅ……!!」

 

 やがてその泣き声は地に響くような呻き声となって、由佳は文字通り俺に牙を向けてきた。

 

「えっ、なっ……どうした!?」

「こんのぉー!! そんなに女を喜ばせてー!! 彼女持ちにそんなこと言われて私はどうすりゃいいのよー!!」

 

 由佳は俺に飛びかかってきて、結構な勢いだったので普通に痛かったのだが、言っていることは尤もだったので俺にはどうすることもできなかった。

 

「心が喜びで満たされてなんだか腹が立ってきたわ」

「それは心が喜びで満たされてないんだと思うけど」

「どっちでもいいっての! もう……」

 

 俺を押し倒した由佳は、遠慮なく俺の服で涙を拭ってから、ベッドを転がって横たわった。

 俺もそれに合わせて力を抜き、寝転んで天井を見つめる。

 

「てゆか、ほんとに美優の指示じゃなかったの?」

「どこまでを指示とするかにもよるけどな。少なくとも、何をしろとか何を言えとかはなかったよ。ああ、遥からは、由佳がフられまくってることは聞いてたけど」

 

 あれを聞いていなかったら、由佳から離れていった男の話をされたとき、俺は混乱して余計なことまで突っ込んでいたかもしれない。

 他にも遥には色々と助けてもらったな。

 

「あの女……個人情報をなんだと思ってんのよ……」

 

 由佳は怒りの右ストレートを宙にかまして、パタッと腕を下げた。

 

「まあでもお兄さんに好きになってもらえたから良いや」

 

 由佳は上機嫌に俺の腕にひっついてきた。

 この切り替えの速さは健在か。

 

 由佳は俺と美優との友達になるわけだし、確執なく付き合っていけるならなによりだな。

 もしかしたら、山本さんのことについても、美優は同じような終着を目論んでいるのかもしれない。

 

「ね、ねえ、お兄さん」

 

 強張った声と表情で、由佳は俺の腕を強く掴んできた。

 その口元が少しずつ窄んでいき、やがて辛いものを食べたひょっとこみたいな顔になる。

 

「ス…………スッ……キ……」

 

 外国人もビックリするようなカタコトで、由佳は歯の間から息を抜くようにそう言った。

 

「ん? え、なに?」

 

 なんて言ったのかわからなかったのと、由佳が唐突に謎行動をし始めたので、俺は困惑した。

 そんな俺の反応に、由佳は眉を釣り上げて、痛いほどに俺の腕を掴む握力を強めた。

 

「イチャラブしたかったら『好き』って言うって約束だったでしょうが!」

「ああ、それか。そうだったな。まあ、うん。ありがとう。嬉しいよ」

「あんたの提案なのになんなのその反応はぁ……!」

 

 由佳はポカポカと俺の肩を叩いてきて、それに飽きたところで、「コホン」と咳き込んで落ち着いた。

 

「私、好きよ、お兄さんのこと。……だからどうなるってことはないけど。純粋に女としてお兄さんに惚れたことは伝えておくわ」

 

 ベッドで至近距離まで近づいて、真面目な顔で淡白に告白してきた由佳からは、それ以上の感慨を感じなかった。

 その気持ちがどういう整理になったのかはわからないが、由佳なら上手く割り切るんじゃないかと思う。

 

「ってことで、もちろん朝までエッチするでしょ!!」

 

 こんな風に。

 

 由佳は体を起こしてコンドームを掴み取ると、それを俺に叩きつけるように渡してきた。

 

「今日が最後だからな。俺もできる限りは付き合うよ」

「あ、ちなみに忘れてないと思うけど。本当の最後はホテルを出た後のデラックスジャンボパフェだからね。私はそのまま塾に行くから」

「待て待て。この遊園地とラブホのデートで、これまでの貸し分五百ポイントの支払いになるんだろ?」

 

 ってか、塾に行くってどういうことだ。

 こいつ教材どころか文房具すら持ってないだろ。

 

「それは、こういう計算になるのよ」

 

 由佳はスマホのメモ帳を再び開くと、俺とのエッチの気持ちよさや、褒め言葉の嬉しさにポイントをつけていって──もちろん帳尻合わせのためにその場で計算しているものだが──ポチポチとこれまでの貸し分を相殺していくと、なんということかちょうどデラックスジャンボパフェをおごる分が残ったのである。

 

「ほら、これでちょうど清算できる」

「ちなみにこれからするエッチはどう計算されてるんだ?」

「私が告白する約束を果たしてお兄さんが自主的にイチャラブエッチをしてくれるんだから、貸し借りは関係ないでしょ?」

「なるほど納得しかない」

 

 実は由佳って頭が良いんじゃないのか。

 いくらズル賢く知恵が働くタイプであっても、単に勉強ができないヤツがここまで上手く話をまとめることはできないはずだ。

 そこも含めて美優が選んだ友人の才知ということだろうか。

 

「じゃあほら、第二ラウンド始めよ? こいつも二本目ぐいーっといっちゃって!」

 

 由佳は例の精力剤をまた持ってきて、二人分の瓶の蓋を取り外す。

 男としては意地を見せないわけにはいかない。

 

「このまますぐ始めるぞ」

 

 俺は一口で瓶を空にしてズボンを脱ぐと、続いて精力剤を飲み干した由佳をベッドに寝かせてパンツの紐を外した。

 

「上は着たままするの?」

「せっかくエロい服だからな」

「そんなに気に入ってくれてたんだ。むふふ。好きモノめ」

 

 由佳は締まりのない顔で俺を見上げた。

 股の方もほどよく湿って緩くなっていて、これは俺の勘違いでなければ、告白のやりとりをしたあたりから出来上がっていたのだろう。

 

 正常位でまぐわう体勢になると、俺の陰茎も自然と上向いた。

 これは体質がどうこうというのではなく、純粋に由佳が可愛くて興奮している。

 コンドームを装着して由佳と密着すると、由佳が両手を差し出してきたので、俺は恋人繋ぎをしたまま由佳に挿入した。

 

「んっ……あっ……」

 

 精液を飲ませるわけでもないし、お仕置きみたいに激しいプレイをしているわけでもない。

 だから、このセックスでは由佳はイクことはないかもしれないし、俺も射精することはできないだろう。

 それでも、今こうして由佳と繋がっていることに、じんわりと胸に染みる歓びがあった。

 

「由佳は気持ちいいか?」

「うん。お兄さんとエッチするの、気持ちいいよ」

「そうか。満足できそうかな?」

「どうだろ。よくわかんないけど……なんかね──」

 

 由佳は俺と見つめ合ったまま、頬を朱く染めて、今度はその照れくさい想いを誤魔化すことなく、くしゃっと無垢な笑顔を見せてくれた。

 

「幸せ……!」

 

 満面の笑みで喜ぶ由佳と、俺はその夜はひたすらに甘いだけの時を過ごして、朝日が昇るよりも早くに眠りについた。

 

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