※この作品はR-18です。

俺の妹が最高のオカズだった   作:風見 源一郎

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雨の日は兄妹のセックスがよく似合う

 

 窓を叩く雨の音に起こされた、いつもより暗い朝。

 

 俺の肺は異様に苦しかった。

 

 その原因は俺に覆いかぶさって寝ている美優にあって、よく朝まで眠り続けられたものだと我ながら感心してしまうほどに重い。

 美優とはもう何度も朝を迎えてきたけど、日を重ねるごとに距離が近づいていて、ついにはもうこれ以上ないところまで来てしまった。

 

 主に胸のあたりを中心にして全身がぷにぷにしている美優に抱きつかれるのは至福の極みではあるのだが、身体中の血管が圧迫されて痺れているため長くは耐えられそうにない。

 

「んぁ……お兄ちゃんだ。おはよう」

 

 美優は瞼をうっすらと開けて、下敷きにしている俺の姿を確認する。

 熟睡すると体を揺すられたくらいでは起きなくなる美優だが、どうしてか朝は俺の意識に合わせて目を覚ますのだ。

 

「おはよう、美優。体は大丈夫か?」

 

 俺は狭まった呼吸器官から空気を絞り出して尋ねる。

 

「へいきだよー。おにぃちゃん……」

 

 美優は寝ぼけ調子で顔を近づけてくると、その唇を俺の首に這わせて、吸血鬼みたいに強く吸い付いてきた。

 

「こら、美優」

 

 ガッツリとキスマークをつけてきた美優を、俺は優しく引き剥がした。

 

「お兄ちゃんだって、私に所有の証を刻み付けたんだから。キスマークの一つや二つぐらい……」

 

 そこまで言いかけて、美優は「あっ」と何かに気づいたような表情で目を見開いた。

 そういえば、美優にキスされたところ以外にも、首の全体に痒みにも似た違和感がある。

 

「ひ、一つや、二つぐらい……」

 

 美優は流れのままに誤魔化そうとしたが、俺が寝ている間にたくさんのキスマークをつけたのは明らかだった。

 首の腫れぼったい感覚からして五箇所以上、そして、鎖骨下の辺りにも、薄らとだが内出血の痕が複数残っている。

 

「いつの間にこんなにつけたんだ」

「それがね。まったく記憶にないんだよね」

 

 美優は頭の軽そうな真顔でそう言った。

 

 嘘をついている様子はない。

 どうやら、俺が熟睡している間に寝ぼけた美優がキスをしまくったようだ。

 

「どんなテンションになればこんなにキスマークをつけるんだ」

 

 俺は美優の背中をタップして、呼吸の限界であることアピールし、横に寝かせる。

 

 これだけ何箇所にもキスをするぐらいなのだから、バカップルも顔が青ざめるほどの(しかも一方的で非常に愛の偏った)ラブラブっぷりだったに違いない。

 

 なぜ俺はこれだけのことをされておいて目を覚さなかったのだろうか。

 美優が俺にベタベタしながら、あるいは聞くだけで砂糖を吐き出したくなるほどの甘い言葉を囁いて、何度も繰り返しキスをしてくれていたかもしれないのに。

 

 などと考えていると、いつの間にか美優が俺に冷ややかな視線を送っていた。

 

「妹で邪悪な妄想をしてはいけません」

「美優の可愛い惚気姿を想像してるだけだよ」

「絶対にお兄ちゃんが考えてるようなことはしてない」

 

 美優は羞恥心を押し殺して不貞腐れる。

 体こそ正直になってきているが、まだドライな感情が抜けきっていない。

 そこがまた可愛かったりもするのだが。

 

「よっぽど俺のこと好きじゃないとこんなにキスしないよな」

「やめてやめて。そんな無慈悲な……」

 

 美優は手で顔を覆って小さくなる。

 寝起きてすぐにキスマークをつけてきたわりには、寝ぼけた様子もなく意識がはっきりしていた。

 むしろどこか、軽い興奮状態というか、落ち着いていない感じだ。

 

「いい? 現実はこうだよ」

 

 美優はまた俺の上に覆いかぶさる。

 鳩尾にいい感じのダメージが入るようにダイブされて、そんな激しさも俺への好意の照れ隠しだと思えば可愛いものだ。

 

「これは初体験で犯された分の恨み……」

 

 美優はそう呟いて俺の首に強く吸い付いた。

 

 うつ伏せにおっぱいが押しつぶされて楕円形にはみ出している。

 

 妹がエロくて俺は朝から勃起していた。

 もはや美優は俺の股間が膨らんだくらいでは何も言ってこない。

 

「美優は朝からセックスするのに抵抗はないかな」

「ん? したいの?」

 

 美優は恨み云々はどこかへやって、ベッド脇に置いていたコンドームを一つ取って見せてきた。

 

「したいと言うか、しときたいと言うか……」

「とりあえず射精ができればいい感じ?」

「正直に言うとそんなところ」

「そういうことなら好きにお使いください」

 

 美優は軽い返事でコンドームの袋を破り、中身を取って俺に渡す。

 お好きにお使いくださいって、会話の文脈から考えると、このコンドームじゃなくて美優の体をってことだよな。

 所有物扱いされるのが好きな女の子って意外と多いのだろうか。

 

「私は朝からするのに抵抗はないから、したかったら言ってね」

 

 美優は体質的に、俺とイチャイチャしてれば濡れるし、唾液の分泌量が多いから寝起きで口が乾くこともないらしい。

 そのため、寝起きからフェラもセックスもできるようだ。

 

「指で軽くイジろうか?」

「いいよ、もう挿れちゃって」

 

 美優はそれだけ言って、指をキュロットの裾から入れて、パンツを股座からズラした。

 どうやら着衣でするみたいなので、俺は何も言わずにコンドームを装着し、美優の肉穴へとペニスを入れた。

 

「ふぅっ……」

 

 挿入した直後に、美優は細く息を吐いて刺激を緩和させる。

 美優の膣内のキツさは、俺も美優の膣壁の温度やザラ付きがわかってしまうほどだ。

 

「お兄ちゃんの、もうちょっと小さくてもよかったのに」

「男同士で比べるとサイズが気になるんだよ」

「私とエッチできるんだからもっと誇っていいんだよ」

「それはそうなんだけどな」

 

 挿入をしたのに続けられる日常会話。

 

 俺たちは動かなかった。

 美優は「しないの?」という表情で首を傾げている。

 

「騎乗位で動いてくれるのかなと」

「やだよそんなエッチな女の子みたいに」

 

 美優はあれだけ激しく乱れた夜を過ごしても、自分がエッチな女の子だということを認めない。

 あるいは、生殖本能の暴走という言い訳ができてしまうが故に、素の淫らさをどれだけ俺に見せてもノーカウントにしているのか。

 

 お互いに相手が動いてくれると期待してくれている。

 

 別に自分からするのが嫌なわけではない。

 だが、せっかく女の子側が自由に動ける体位になっているのだから、してもらいたくなるのがオスの心理というものだ。

 

「ディルドで遊ぶぐらいの感覚でいいんだよ。色っぽく腰を前後させたりしなくていいから」

「お兄ちゃんがしたくて始めたんだよ。なら、お兄ちゃんが動くのがスジでしょ」

「それは、そうだが……」

 

 さすがに美優を口で言い負かすのは難しいか。

 

 とはいえ、美優の騎乗位をどうしても味わってみたい。

 

 ピストンを始めてしまえば美優も快楽に負けてエッチモードになるだろうし、そこで腰を止めれば美優が自発的に動くようになるはず。

 

 でも、違う。

 そうじゃないんだ。

 美優の理性が残っているうちに、恥ずかしがりながら腰を動かす様を見てみたい。

 

「動いてはくれないか」

「動きません」

 

 膠着した二人の攻防戦。

 挿入したままのペニスが、美優のキツい膣に圧迫されて、なおも勃起を維持しようと下腹部の筋肉が収縮して血液をポンプさせる。

 

「ん、あっ、ちょっと。ピクピクさせないで」

「無理を言うなって。ただでさえ美優の締め付けが強いんだから、血管がなんかむず痒くってくるんだよ」

「うぅ……だからって……」

 

 膣内に挿入したままじっとしていると、ペニスが空の射精をするように動き、海綿体に血液が送られて一時的にペニスが肥大化する。

 そうして膣穴を広げられる感覚が、美優にとってはもどかしい快感になるようだ。

 

「ふぅ……。きょ、今日は、雨だね。一日、どうしようか。デートなら明日かな」

 

 美優は気を紛らわせようと、突然の話題を振ってくる。

 たしかに、俺たちはまだデートらしいデートをしたことがないし、夏休みの間にどこかへ遊びに行きたいものだ。

 

「デートってどんなとこに行けばいいんだろ。一般的にはカラオケとか水族館とか、遊園地とかなんだろうけど。美優はもう行き飽きてるか?」

「そんなこと、ないよ。お兄ちゃんとならどこに行っても新鮮だろうし。だから、その、水族館とかで、いいんじゃないかな……涼しいし……」

 

 美優はところどころで息を切らしながら、スマホを手に取って喋る。

 どうやら近場の水族館を探してくれているらしい。

 ちなみにまだペニスは美優の穴に入っている。

 

「都内のね、この西海浜水族館は、今年の夏にリニューアルされて。夏休みに入ってすぐは、ものすごく混んでたみたいだけど、そろそろ人も減ったかも」

「へー。それは良さそうだな」

 

 俺は美優からスマホを受け取って、会場ホームページを眺める。

 物心ついてからは水族館など行ったことがないが、はたして美優を楽しませることができるだろうか。

 魚に関する知識もないし、俺はデートの経験自体もまだ少ない。

 イルカやペンギンのショーでも見ればいい思い出になるかな。

 

「近くに温泉もあるみたいだな。水族館のそばに作れるものなのか?」

「温泉っていっても、スパだよ。んっ……近くの、アミューズメント施設に、併合されてて……」

「なるほど」

 

 俺は美優から受け取ったスマホを弄って、デートスポットを検索していた。

 

 俺に覆いかぶさっている美優は、最初こそ気を紛らわせることに成功していたが、しばらくペニスを入れっぱなしにしているうちに息が荒くなってきた。

 

 なによりも、挿入しっぱなしにしていることで俺の性欲も高まり、美優の膣内でピクピクとペニスが動く頻度が高くなってきているのだ。

 

 美優はそのたびに快楽に顔を歪ませ、しかしそれを悟られまいと、必死に平静を装って我慢を続ける。

 

「ふぅっ……じゃあ、もう……その水族館と、温泉でいいよね」

 

 美優はベッド端の何も無いところを見つめて、必死に膣内の感覚を無視しようとするも、ついには我慢ならなくなって俺にしがみついてきた。

 

「お兄ちゃん、動いて。お願い……」

 

 美優に必死の表情で頼まれて、さすがにこれはもう俺が折れるしかなかった。

 

 俺はスローモーションに近い動きで腰をグラインドさせ、キツい美優の膣壁を押し広げるように、剛直化したペニスを奥へと進める。

 すると、亀頭が子宮に近づくにつれて、美優の反応が一気に良くなっていく。

 

「あっ……ああっ……!!」

 

 自分でも恥ずかしいくらいの声を出して、美優の顔が真っ赤に染まった。

 それでも挿入を止めずに、じっくりと美優の濡れた淫肉を堪能しながら、俺はペニスを深くまで差し込んだ。

 

「い、ひやぁ、それだめッ……、ゆっくりはだめ……っ!」

「なら、もっと速く出し入れしようか」

「うん、うん……!」

 

 美優は何度も力強く肯く。

 

 緩慢な動きで挿入したほうが、俺のペニスを細部まで感じることができる。

 そうなると、美優にとっては刺激が強くなりすぎるのだ。

 それなりの速さでピストンをしたほうが、美優が耐えられる快感になるらしい。

 

「なら、こう……」

 

 俺は工夫も激しさもない淡々とした腰の動きを続けた。

 

 それでも美優の穴はびちゃびちゃといやらしい水音を立てるし、それが美優の羞恥を煽って快感を増幅させている。

 

 美優の子宮ギリギリ手前にある快感スポットにもペニスを届かせて、美優の体は激しくビクついているのに、美優はまだイかない。

 

 昨日の感覚からするともう何度か絶頂していてもおかしくないのに、美優の体はギリギリでイかない状態が続いていた。

 

「はうぅ……ひぁ……恥ずかしい……もうイカせて……」

 

 美優が泣きそうな顔で懇願してきて、さてどうしたものかと俺も思案する。

 俺も意地悪しているつもりはないのだが、美優が達しないのだ。

 

 なぜかと考えると、ふと、美優はいつでも俺を気持ちよくする立場だったことを思い出す。

 美優のことをイかせるようになった今でも、そのタイミングは俺を射精させた後ばかりだった。

 

 ならば、こうして美優をかわいがるのではなく、一緒に気持ちよくなるセックスに切り替えれば美優もイクかもしれない。

 

「美優。俺も、もうイクからな」

 

 俺は美優の体に両腕を回して拘束し、膣コキとでもいうべき自分本位への挿入へと切り替えていく。

 美優の狭い肉穴に、カリや裏筋などの敏感なところを擦り付けて、射精に向けた準備運動を続けた。

 

「ああっ……ひぃっ……んああっ、あっ……お兄ちゃん……!」

 

 美優が敏感に艶声を上げて、膣内の肉が蠢き始める。

 全身の痙攣と、その酸素の足りなさそうな呼吸が、演技ではない本物の絶頂を迎えようとしていることを示していた。

 

「気持ちいいよ、美優……締まってて最高に気持ちいい……!」

 

 ラブドールを抱くように、美優に何度もペニスを出し入れする。

 ただ快楽を貪るようにピストンをするほど、美優の感度は増していって、その表情は喜びに蕩けていった。

 

 エッチをするようになったばかりの美優は、性欲の処理と精液の処理は違うと言っていた。

 それほど美優にとっては性処理に使われるだけの行為が特別なものだったんだ。

 

 美優とは何度も肌を重ねているのに、まだまだ知らないことがたくさんある。

 そしてそれを知るたびに、美優のことが可愛く思えて、心から好きになる。

 

 もっと美優を性欲の処理のために使ってあげたい。

 俺の性欲のすべてを美優に委ねて、精液が枯れるまで処理してもらいたい。

 

「んあっ、あっ……! お兄ちゃんの、また、おっきくなってる……もう、だめ……だめぇ……ああうぅあっ……んあああっ!!」

「美優……もう、射精するからな…………イクぞ……美優ッ……!」

「あっんっああっ……お兄ちゃん……! きひぇ……ああんっ……あっ……んひゃぁああっ……!」

 

 ドクン、ドクン、と射精するたびに、美優の膣肉がそれを吸い上げようと狭い肉穴をうねらせる。

 俺の精液が大好きなこの妹は、ついには溜まり切った性欲を発散させて、額にうっすらと汗を浮かべて俺の胸に沈み込んできた。

 

「はぁ……ふあぁ……すっかり、朝からエッチをしてしまった……」

 

 美優は湯上り後のような顔で全身の力を抜く。

 まだ芯の残ったままのペニスを引き抜くと、「あっ」と小さく声を漏らしてから唇を噛み締めた。

 

「朝から可愛い妹とエッチができて幸せだよ」

 

 俺は美優の頭を撫でてからまた横に下ろす。

 着衣でのエッチだったので、コンドームを外して精液を拭ったらすぐに寝るときと同じ状態になった。

 

「妹が可愛くてよかったね」

「あとはこの日常がゲームに迷い込んだ夢でないことを祈るだけだな」

「お兄ちゃんが持ってるゲームは妹モノばかりだったもんね」

 

 ピロートークにしては慎ましさのない会話をして、心地よい疲れを深い息と共に吐き去る。

 ゴムの口を縛ってティッシュに包もうとすると、美優が慌てて俺の腕を引っ張った。

 

「ゴムは縛らないで、中身をティッシュに吸わせちゃって。もし私の頭がおかしくなったら、こっそり中身を使っちゃうかもしれないし」

 

 美優とのエッチには細心の注意を払う必要がある。

 生殖本能により増幅する美優の性欲は、想定外の妊娠をするリスクが高くなるのだ。

 

「それはわかったけど。俺が直接出した精子で受精しなくていいのか?」

 

 そう尋ねたことに、深い意味はなかった。

 俺もそれなりのエロゲ脳になっているから、昨晩のようにエロ漫画みたいな受精をねだる美優の気持ちを考えると、コンドームから絞り出した精液で受精するのは本意からズレると思ったのだ。

 

「あっ……そ、そっか。その通りだね」

 

 そんなエロゲ脳の言葉に、美優は即座に食いついて俺の手を握ってきた。

 

「その考えがあれば、大丈夫かも。私、お兄ちゃんに中出ししてもらった精子以外で妊娠しない。お兄ちゃんが『孕め』って命令しながら射精してくれたら、私はそれで受精するね」

「そうか。わかったよ」

 

 美優の誓いは、元オタクの俺には理解のできるものだったが、一般的な男性が聞いていたら困惑の極みだっただろう。

 やはりエロゲやエロアニメでセックスの勉強をしたのは失敗だったのではないか。

 

 しかしまあ、この美優がはっきりと口にした約束を無かったことにするとは思えないし、ひとまず美優が俺の精子をこっそり使う心配がなくなったのは大きいな。

 

「ところで、妹モノの何が良かったの?」

 

 美優は途切れていた会話の続きを聞いてきた。

 なんだか理性側と本能側が混濁しているようで危なっかしいけど、これぐらいは精神的な安定だと考えておくべきか。

 

「なんだろ。時間を共有してることに違和感がないからじゃないかな」

 

 改めて考えてみると、俺は妹という属性そのものに惹かれていたわけではない気がする。

 

「妹なら一緒にいて違和感がないの?」

「可愛い女の子と親密な関係になるには、それなりに恵まれた才能が要るものだろ? でも俺はコンプレックスの塊だったし、そういう主人公には感情移入ができなかったんだよ」

 

 険悪な関係から喧嘩を通して仲良くなっていく物語にしても、そもそも『美少女が嫌いな男にいがみ合うだけの時間を割いている』ということ自体に違和感を覚えるのだ。

 

 俺がそう話すと、美優は神妙な顔つきでコクコクと頷いた。

 

「お兄ちゃんが妙に冷静で客観的なのは、ダメなお兄ちゃんに可愛くて引きこもりでエッチしてくれる妹がいたからでしょうか」

「その影響はデカそうだな」

 

 努力に対して得られているものが大きすぎるからな。

 これだけ恵まれた環境にいれば、多少の理不尽も気にならなくなるものだ。

 

「お兄ちゃんは私のこと、都合のいい恋人だって思ってるよね。でも本当は、お兄ちゃんのほうが私にとって都合のいい恋人なんだよ?」

「そうなのか?」

 

 美優ならどんな男だって引く手数多だ。

 持っているものを考えれば、どう考えてもこの関係は俺の方が恵まれている。

 

「お兄ちゃんは、お兄ちゃんが見てきたままの私を好きになってくれるから。そんな人、他には絶対にいないって、私は確信してるの」

 

 美優はしっとりとした声音でそう口にする。

 

 それは美優にとって、何を於いても重要なことのようだった。

 

「奏さんがお兄ちゃんのことを好きな理由も同じなんだよ」

「それは遥からも聞いたよ。世間的には、俺に男らしさがないだけって思われそうだけどな」

 

 俺が山本さんの過去や美優の価値観を否定しないのは、結果的にそうだっただけでしかないように思うのだが、どうにも美優も山本さんもそれが俺の性格に由来しているものだと主張するのだ。

 

「そのあたりの微妙な違いは、恩恵を受けてる側にしかわからないのかもね。奏さんのハマりっぷりを見ればお兄ちゃんの良さもわかろうものだよ」

 

 美優は優しく微笑んで俺の胸に人差し指を突き立てる。

 その二人が現にこれだけ俺を好いてくれているのだから、間違いはないんだろうけどな。

 

「その山本さんなんだけど、このままで仲直り作戦は上手くいくのか?」

「もちろん。たまにイチャイチャしてるのも、その作戦の一環だからね」

「へえ。そうだったのか」

「うん」

 

 真顔でジッと俺を見つめてくる美優。

 なにやら意味ありげな目だ。

 

「イチャイチャは作戦の一環なのか」

 

 念の為に問い直してみる。

 

「いえ、まあ。したくてしてる部分は割合として少なくないのですが。計画の一部ということにしておかないと、恥ずかしさに耐えかねるので」

「なぜそこで素直にならない」

 

 美優のことはたくさん知ってきたけど、精液を飲んでもらうようになったあのときから、その感性だけは不思議なままだ。

 そこも俺が美優のことを好きになったポイントだったりするのだが。

 これまで謎掛けみたいに伝えられてきたあれこれも、美優からしたら独自の合理性に則って適切に選ばれた言葉だったんだろうな。

 

「私ってほら、恥ずかしい思いをするたびに知能がアレになるじゃないですか」

 

 自覚はあったんだな。

 

「なので、計画を破綻させないためにも、そう簡単にお兄ちゃん大好きモードになるわけにはいかないのですよ」

「そうか……」

 

 美優にとって、美優らしく生きることと、義理を貫くことは同義だ。

 たとえ思う存分イチャイチャしたい気持ちがその心の奥底に燻っていたとしても、成すべきを成すまでは自己を律する。

 それが美優の言った俺が見てきたままの姿ということなんだろう。

 

「作戦が終われば、簡単にお兄ちゃん大好きモードになる美優に会えるのだろうか」

「変な期待をするものではありません」

 

 やんわりと厳しく叱られてしまった。

 そんなガードの硬い妹は、ベッドから起き上がってグッと背伸びをして俺の方を向く。

 

「私も私で、ようやく遥に返すものが見つかったからね。お互いにこれが最後の戦いになるわけだよ」

 

 美優は力強く拳を握る。

 

「返すものか。裁縫関係なのか?」

「まさか。あの遥は私じゃなきゃ満足しない。でも、もう体を売ることもできないから。となればあとはもう、魂を売るしかないんだよ」

「魂を……!?」

 

 それは事態が悪化している気がするのだが、魂を売るとはどういうことなのか。

 いや、売るもの単体の価値を上げることによって、継続的に求められる関係を改善できるとなれば、なるほど納得はできる。

 

「とりあえず、朝ごはんにしましょう」

 

 美優はカーテンを開けて朝陽に目を細める。

 その提案に賛成して俺は美優と一緒に階段を降りた。

 

 今朝は美優が朝食係なので、鮭を焼いてオーソドックスな和風の料理を作ってくれた。

 

「なあ、美優。作戦のために俺とイチャイチャするのって、どんな意味があるんだ?」

 

 山本さんと俺が円満に友達関係に戻るために、きっとこれからやることが最後の頑張りになる。

 でも、俺と山本さんの仲は会うたびに睦まじくなっていくばかりだし、解決に向かっているとはとても思えなかった。

 

「お兄ちゃんの女性経験は大半が性行為なわけじゃないですか」

「間違ってはいないな」

 

 歯に衣着せぬ物言いをするのも昔から変わらない妹だ。

 

「裏を返せば、エッチの経験値は足りているわけですよ」

「つまり、恋人らしいイチャイチャの経験が少ないから、今はそっちの修行をする番だと?」

「まさしく」

 

 理は通っているのだろうが因果関係はまるでわからない。

 それでなぜ山本さんと友達復縁できるのか。

 

「お兄ちゃんが奏さんと一番イチャイチャしたと思うのは、どんなとき?」

「えっ……そうだな……」

 

 山本さんと過ごした最も新しい記憶は、カラオケやバスでエッチをしたこと。

 でもそれはイチャイチャしたというよりは互いの性欲を発散させただけに近い。

 

 やはり、デパートで過ごしたあのデートが、山本さんとのイチャましい思い出としては鮮明にある。

 

「遥に呼び出されたあの日に、山本さんとデパートで色んな店を回って、そのときの、なんというか……」

 

 そう話し始めたものの、舌の回りがどうにもよろしくなかった。

 たしかにあのデートは恋人がするそれと遜色ないものだったが、美優のことが常に頭にチラついていたし、どうにもギクシャクした時間を過ごした印象のほうが強かった。

 

「いや、違うな。俺がまだ美優以外の彼女を作ろうと必死だった頃に、一週間近く泊まったあの期間かな」

 

 最後の最後で俺は美優を選んだが、あのとき何か別のきっかけがあったら、俺は今ごろ山本さんと付き合っていてもおかしくなかった。

 それぐらいにあの時期は俺と山本さんの心の距離が近かったんだ。

 

「山本さんの部屋はフローリングにカーペットを敷いて過ごすタイプだったからさ。一緒にご飯を食べるときは、いつも二人でぴったり並んでて。たぶん、それかな」

 

 美優に聞かれたのでつい真面目に答えてしまった。

 あのとき、最も衝撃的で印象的だった出来事は、山本さんとセックスをしながら美優と電話したことだったはずだが、どうしてだかそっちはなんてことない話のように思えてしまう。

 

「ふむふむ。では今から同じようなことをやってみましょう」

 

 美優が食器をキッチン側のテーブルから背の低いテーブルへと移していくので、俺も美優と横に並ぶように食器を移動させることにした。

 同じようなことをするってことは、美優に「あーん」をして食べさせてもらえるということなのだが。

 マジなのか。

 

「もう何度か聞いてるけど、山本さんのための作戦ってことでいいんだよな」

 

 俺は高さの違う二つのテーブルを行き来しながら尋ねる。

 

「もちろん。私だって奏さんには恩があるし。なにより、奏さんのことは私も好きだから。だからこそ妥協をするつもりはないんだよ。やるからには、徹底的に」

 

 美優はカーペットの上に正座して、俺を見上げながら微笑む。

 

「山本さんとの接し方も前と同じでいいと」

「デートもエッチも奏さんの望むままに」

 

 迷いなく美優は肯く。

 

「もうだいぶ親密な感じになってるんだが……」

 

 俺は食器を運び終えて美優の横に座る。

 一軒家だと広さがあるので山本さんの部屋の再現にまではならないが、どうしてだか美優が隣にいてくれるこの形はしっくりきた。

 俺が山本さんと仲良くなったときも振ったときもこうやってご飯を食べていたし、俺にとって横並びで食事をすることは特別な意味ができていたみたいだ。

 

「それで大丈夫なんだよ、お兄ちゃん」

 

 美優は自信ありげに答える。

 

「奏さんには魔法が掛けてある。だからお兄ちゃんは自然体のまま、奏さんのしたいようにイチャイチャすればいいの」

「ま、魔法……?」

「お兄ちゃんも知ってるアレだよ。気づかないなら、教えないけど」

 

 そこで話を区切って、美優は箸を手に持って鮭の身をほぐす。

 

 山本さんも言っていた満足するまでやらせる作戦なのだとしたら、その先には解決がないことは俺にもわかる。

 なぜならこの作戦は、「そうしたほうがいい」という程度の小さな合意が絶妙に支え合っているだけのもので、誰かの強い欲望を叶えるものでもなければ、必ずしも解決しなければならない課題でもないんだ。

 

 誰もが簡単に手を降ろせる。

 俺にも山本さんにも余裕がある。

 そんな状態が続いていく。

 だからあえて何かを決断する必要もない。

 

 これまで俺が美優に与えられていた謎とは全く毛色の異なる状況だ。

 強いて言うなれば、美優の矜持を守るための作戦となるわけだが、そんな押し付けがましい考えで美優のプライドが守られるとは到底思えない。

 

「まあまあ、難しく考えずに。可愛い女の子とイチャイチャしてればいいだけなんて楽な仕事ではないですか」

 

 美優がほぐした鮭を箸でつまんで、空いている手を受け皿にしながら目の前に差し出してくる。

 

 山本さんには魔法が掛けられている──しかもそれは俺が知っているもの──というのが気になるが、今は美優とイチャイチャするのが先か。

 というか美優とイチャつくより優先するべきものなど一つとしてない。

 

 よし、美優とイチャイチャするぞ。

 

「はい、お兄ちゃん。あーん」

 

 思いのほか楽しそうに美優が箸を運んでくるので、俺もそんな気分になってきた。

 

 口を開けるとそこにご飯が入れられて、ずいぶんと偉い立場になったような気さえする。

 美優に主人として慕ってもらえているからなのだろうか。

 

「美味しいよ。外でどんな料理を食べても、この味が一番染みる」

 

 取り立てて上質な素材を使っているわけではないけど、美優の作るご飯は美味しい。

 長年二人で料理を作り合ってきたおかげで俺の好みを把握している。

 

「お兄ちゃんが作るご飯も同じだよ」

 

 俺が味噌汁を飲んで、美優が鮭をご飯の上に乗せ、それを食べさせてもらう。

 これまで俺が作ってきた料理でも、美優が同じように思ってくれたのなら嬉しい。

 全国を飛び回っている美優に料理が美味いと評価してもらえるのはまた格別な喜びだ。

 

 俺が咀嚼している間に美優も自分のご飯を食べ進めて、それから、半分ほど食べ進んだところで各々の食事に戻った。

 

「『あーん』をするならスプーンのがいいかな」

「それもあるし、食べさせてもらうというよりシェアするってイメージがあるな」

「ではデザートにしましょうか」

 

 美優はおもむろに立ち上がると、冷蔵庫にあったプリンを取ってきた。

 そして、両手のそれぞれにカップとスプーンを持ち、ジッと俺の食事姿を眺めながら待機している。

 正座で。

 

「この飯は食べ終えたほうがいいか」

「そうしてください」

 

 美優は俺が朝食を食べ終わるのを待っている。

 そんな姿が飼い犬のようで健気だった。

 客観的に物事を眺めているときは神のような全能さを持ち合わせているのに、自分の恋愛感情が関わるとどうにも不器用な妹だな。

 

 ボサッとしていると美優のご飯が冷めてしまうので、俺はかき込むように残りの食事を片付けた。

 

「よし、いいぞ」

 

 美優に食べさせてもらうためとはいえ色々と本末転倒な気がしてならないが、こうして謎の作戦に付き合っているのも面白いので、雨の日にできる恋人との過ごし方の一つだと思えば悪くはない。

 

「お兄ちゃん、あーん」

 

 カラメルソースに包まれてツルンと口に入ってきたプリンは、舌でほぐすとほのかな卵の香りを伴って甘みが広がっていく。

 一口食べると、美優がスプーンで次を用意してくれて、俺が飲み込むの確認してからまた同じように口に運んでくれる。

 

「美味しい?」

「美味いよ」

「じゃあ私も食べるね」

 

 美優はまたプリンをひと掬いして、スプーンの先を数秒だけ凝視してから、パクっと自らの口に放った。

 

「どうした?」

「んや。間接キスだなと思って」

「今になってそんな淡い感情を抱くとは……」

 

 しかしまあ、わからないでもない。

 何かを介するだけで物の印象は変わるもの。

 精液を飲むことに抵抗のない女の子でも、コップに出されたものは飲みたくないだろうしな。

 

 プリンがなくなるまで俺は美優に食べさせてもらって、恋人らしい時間を堪能できたものの、山本さんのときと比べると何か物足りなかった。

 それは美優も感じてくれているようで、どうしたものかと二人で首をかしげる。

 

「あれじゃないか。ある程度は美優が照れを感じないとダメなんじゃないかな」

「私にどんな恥ずかしい思いをしろと」

 

 目を細めて身構える美優。

 

 そこに俺はようやく"らしさ"を覚えることができた。

 

 山本さんに「あーん」をしてもらうことで親密な雰囲気になれるのは、あの献身的な性格と大地のように豊かな母性が根源として備わっているからだ。

 いくら徹底的で圧倒的な勝利を望もうとも、ましてやその道の天才である山本さんを相手に全勝を望むことなどできるはずがなく、やはり分野というものは考えなければならない。

 

「要は、イチャイチャできればいいんだろ? 恋人らしく、他の人では満たされないくらいの」

 

 俺が話し始めると、美優は自分のご飯をもぐもぐ食べて胃に流し込む。

 

「たとえばだ。美優が『お兄ちゃん大好き、チュッチュ』とかしてくれたら、おそらくは何者も敵わない」

「それは私が死ぬんですが」

 

 実に冷静に、冷淡に、美優は俺の提案を切って伏せた。

 

 しかし、食事が終わる頃には美優の中でも整理がついたらしく、改めて俺に向かい合う。

 

「で、具体的には何をするんですか」

 

 美優に問われて、俺は首元の小さな赤い腫れを指差す。

 

「このキスマークをつけたときみたいにしてくれればいいんだよ」

「私はそのキスマークをつけたとき『お兄ちゃん大好き、チュッチュ』なんてしてませんが!!」

 

 美優は強く否定したが、記憶にないらしいので可能性はゼロではないし、むしろ高いと俺は思っている。

 

「ならフリでいい。このキスマークのついているあたりに、形だけのチュッチュをしてくれるだけでいいんだ」

「チュッチュっていう表現がすでに気持ち悪い……」

 

 美優はため息をついて、俺を蔑むような目で見てから、横を向いてまたため息をつき、再び距離のある視線で俺を睨んでから諦めたように三度目の深いため息をついた。

 

「まあ、その案を認めましょう」

 

 認めてもらってしまった。

 

 俺と美優は一区切りをつけるために、食器を片付けてから歯磨きや洗顔などの朝の支度を終えて、それからリビングに戻ってきてソファーに座った。

 イチャイチャ作戦の第二弾を始める前に、美優は深呼吸をして心を落ち着けて、それから膝立ちになって顔を近づけてくる。

 

「それじゃあ、始めますね」

 

 美優はこれからイチャイチャするカップルとは思えないむっつりした顔で、俺の首にキスをしてくれた。

 チュッと唇が離れると、俺と美優は真顔のまま、無言で見つめ合う。

 美優も俺が言わんとしていることを理解しているようで、眉毛が不機嫌そうにピクピクしていた。

 

 やがて諦めたように美優は再び唇を近づけてきた。

 

「お、お兄ちゃん、だいすき」

 

 呪文のようにぶつぶつと小さい声で、酷い棒読みをする美優。

 形だけとはいえ、これでは成ってない。

 

「大事なところが抜けてる」

「おにーちゃんだいすきー、ちゅっちゅー! んむーっちゅ」

 

 ヤケになった美優がやぶれかぶれに首にも頬にもキスをしてくる。

 当初の目的を思い出してもっと恋人らしく振る舞ってもらいたいものだが、こんな美優でも可愛いので止めさせることができない。

 

「俺ってやっぱりすごく愛されてるよな」

「何をいまさら」

 

 美優は大きな目をパチクリさせる。

 

「お兄ちゃん。男の人にとって、女の子に愛されていることの最もわかりやすい証はなんだと思いますか?」

「愛されている証? なんだろうな……」

 

 女の子の立場を考慮するなら、一緒に居たいと伝えられることだったり、記念に残るような物を共有することになると思う。

 でも、男の人にとっての愛されている証というのなら、真っ先に思いつくのは肉体関係を許してもらうことだ。

 

「それとね、お兄ちゃん。ここに座ってて思い出すことはない?」

「思い出すことって言われてもな。それはさっきの質問に関することなのか……?」

 

 こんがらがった頭で周囲を見渡して、俺は美優の問いへの答えを探す。

 その答えは目に見えるところにはなかったが、たしかにソファーにいることで思い出されることはあった。

 

「あっ、昨日の手紙か」

 

 俺は美優に謎の小さな手紙をもらったんだ。

 

 そこに書いてある内容が、セックスに関する何かの注意文なのか。

 山本さんのことだとしたら例の魔法とやらについてわかるかもしれない。

 俺は玄関のコートハンガーに掛けっぱなしにしていた外出用のポーチから財布を取り出して、美優からもらった切手サイズの手紙を引っ張り出した。

 

「読んでいいのか?」

「うん」

 

 俺は封筒から小さい紙を取り出して、そこに書かれている美優からの短いメッセージを読んだ。

 

 そして、その文面を見て、俺の思考回路はしばらく止まることとなった。

 

『ピルを飲むので、ゴム無しでのエッチOKです』

 

 内容が想像だにしなかったものだったために幻覚すら疑った。

 しかし、何度頭を振ってじっくり読んでみても、そこにはピルを飲むことにしたから生でセックスをして膣内に射精して良いという意味の文章が書いてあった。

 

「こ、これは?」

「中出し許可証?」

 

 そんな単語をどこで覚えてきたんだ。

 いや俺のやってたゲームにもそんな言葉があったっけな。

 己の汚れた過去を強く反省しなければならない。

 

「どこから突っ込めばいいのかわからないんだが……。これを手紙にした意味はあるのか?」

 

 口にするのが恥ずかしかったのだろうか。

 でもこれは将来にも関わる大事なことだし、生でするにしてもきちんと話し合ってからにするべきだと思うのだが。

 

「理由はたくさんあるよ。お兄ちゃんは私がそれを渡すときに言ったことを覚えてる?」

 

 この手紙を渡されたときに美優に言われたことか。

 そう問われるまでは忘れていたが、美優は「理性があるときの私が書いた」とわざわざ口にしていたんだったな。

 

「お兄ちゃんと本番をするようになって、私が急にピルを飲むから中出ししていいなんて言い出したら怪しいでしょ? 子作りしたくて嘘をついてるかもしれないし」

「する前に言えばよかったのでは」

「それについても色々ありまして」

 

 どうやらそう簡単な話でもないらしい。

 

「お兄ちゃんにどれだけ知識があるかわからないから、念の為にお伝えするのですが」

 

 ピルには生理周期を安定させる目的もあるため、原則としては生理明けから服用することになる。

 排卵日から十日ほど経っていれば服用前から中出ししても安全だったが、生理周期自体に不確定要素が多すぎることと、美優の生殖本能が強すぎるので中途半端な生セックスは極めて危険だった。

 それに加えて、美優の理性がセックスに耐えられるかをまずゴム付きで判断しなければならず、そのためにも不要な情報は先に入れておきたくなかったようだ。

 

「他にもまだ理由はあるんだけど、安全と雰囲気を考慮した結果ということで」

「そうだったのか」

 

 残されている理由が気になるところだが、ひとつ謎が明らかになったのはよかった。

 

「ん? もしかして、これって最初の質問につながってる?」

「そうだよ。妹がお兄ちゃんに中出しを許したんだから、これはもう愛されている以外にないではないですか」

 

 そんな愛情の伝え方があってたまるか。

 

「美優と生でセックスしていいのか」

「いますぐはダメだからね。お兄ちゃんと昨日した感覚からすると、まだ受精する余力が残ってるから」

「そんなことまでわかるとは驚いた」

 

 生殖能力の全てを兄とのセックスに注いでいるだけあるな。

 エロゲのラベルとして貼るなら近親交配特化妹とかになるだろうか。

 

「お兄ちゃん。外は雨だね」

 

 美優が身を預けてきて、俺は流れのままにソファーに横になった。

 

「ああ。雨だな」

 

 両親のいない家。

 その外側を、雨粒がカーテンのように囲っている。

 

「兄妹のセックスが一番似合う天気だよね」

 

 美優は俺の喉元をジッと見つめて、そこにゆっくりと唇を落とした。

 

「今日は丸一日、声を我慢しなくていいからな」

「ばか。一日ずっとなんてするわけないでしょうが」

 

 呆れたような、怒ったような、そんな声で叱りながら、美優は五月雨のようにキスをする。

 

「お兄ちゃん。大好き」

「俺も好きだよ。美優」

 

 俺が口を開くと、それを塞ぐように美優がキスをしてきて、そこからは舌を絡めてくちづけを貪りあった。

 

 密着したわずかな空間に満ちる蒸し暑さに、俺の股間は膨らんで、それでもすぐにセックスを要求することなく美優の体を弄り続ける。

 こうやって、やんわりと叱られながらイチャイチャすることが、俺と美優の恋人らしさだと再認識することができた。

 俺と美優の間だけにしか生まれないこの愛の形を、今は大切にしていたい。

 

「お兄ちゃん。そろそろ、妹を襲える頃合いですよ」

 

 美優が小声で心の内を伝えてくる。

 エッチがしたいのだろうか。

 

「いまは俺と美優の愛の形を確かめ合う時間かなって」

「そんなこと言ったってほら。ピルを飲み始めたらゴムを使わなくなるんだし。いっぱい買ったじゃないですか」

 

 美優がなりふり構わない薦め方をしてくる。

 エッチがしたいんだな。

 

「美優が要るって言うから」

「私は棚に二箱あるよって言っただけですが」

「どうしても兄をエッチな男にしたいらしいな」

「エッチな妹であることを認めたくない乙女心を察するのも兄の役目です」

 

 口にしてしまったら意味がないだろう。

 

「わかったよ。でも、一日中することになっても怒るなよ?」

「怒るけどしてほしいの選択肢はありませんか……?」

 

 まったく難儀な妹だ。

 でも、そんなところがまた可愛い。

 

「だったら、美優が怒らなくなるまで、美優が怒るたびにするからな」

 

 俺は合意の意味を込めたくちづけをして、美優と一緒にソファーに沈んだ。

 

 美優との淫愛の日々が始まって、消費されていくコンドームと、その分だけゴミ箱に捨てられていく精液が、俺たちにとって文字通り必要な経験値になるとは。

 こんなやりとりが、美優の思い描いていた大きな計画のすでに中腹にあったことに、俺が気付くのはまだ先のことだった。

 

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