※この作品はR-18です。

俺の妹が最高のオカズだった   作:風見 源一郎

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しとしとと雨の降る

 

 雨は続いて、デートに行くこともできずに三日目。

 予報ではまだしばらく降り続けるらしい。

 

 俺は美優とセックスするとき以外は部屋にこもり切りになっていて、学校の宿題も終わりが見えている。

 

 恋仲になったのでもっと一緒にいる時間を増やすべきだとも思うのだが、俺たちは他の人よりも間があるほうが適切なようだった。

 美優がドライな性格だからというのもあるけど、俺たちはこれまでずっとそれぞれの都合で暮らしていたため、必要なときに側にいるほうが体に馴染んでいる。

 

 それに、美優は理解している。

 男の愛は性欲と結びついて切り離せないことを。

 施しと渇きはどちらも適切な量だけ必要で、壁一つ分であっても離れて過ごしていたほうがムラムラと湧き上がるものによって愛情も強くなるのだ。

 

(昼までにはまだ時間があるか……)

 

 俺は学校の問題集を閉じて、受験勉強用の参考書を机に広げる。

 

 この頃は問題文を読むことにも抵抗がなくなって進みは良い。

 自分で言うのもなんだが、美優の兄である俺の脳の作りは悪くないみたいだ。

 とはいえ、ゲームをやるのに知能とは別のゲーム勘があるように、勉強を効率的に行うためには勉強脳を鍛える必要があるみたいで、これまでサボってきたツケはそう簡単に払えそうにはなかった。

 

 そんな俺にも実は救いの手が差し伸べられている。

 山本さんから勉強会をしないかと提案されているのだ。

 俺がデパートで勉強道具を買っていたことを山本さんが覚えてくれていた。

 

 これが勉強会という名目のエッチを楽しむ会であることは明らかなのだが、勉強もできて美優の計画も進められるなら一石二鳥なので断る理由はない。

 俺は前向きに検討しているとだけ返事をして、午前中は勉強に集中することに。

 昼飯のタイミングで美優に今後の予定を聞くことにしよう。

 さすがに美優とのデートより優先するものはないからな。

 

 不慣れに参考書に蛍光ペンを引いて切りのいいところまで進めてから、俺は勉強道具を片付けて部屋を出た。

 

 隣の部屋のドアをノックしても返事はなかった。

 料理当番の美優はもう一階に降りている。

 

 俺がリビングに行くと美優がキッチンに立っていて、下味をつけた肉やスープを保存パックに入れて冷凍し、余った野菜を切っては混ぜて別のパックに小分けにしていた。

 

「勉強、お疲れさま」

 

 俺に気づいた美優が労いの言葉をかけてくれた。

 

 昨晩も一緒に寝ていたので、朝から俺が勉強をしていたことは美優も知っている。

 

 今朝の美優はまたずいぶんと寝ぼけていて引き剥がすのに二十分ほどかかったが。

 

「宿題は片付いたよ」

 

 俺が返事をする先には、髪を二つに結んだ美優がいる。

 毛量が多いので結う時は束を分けたほうが楽らしい。

 

「それはよかった」

 

 美優は「これで残りの時間は他のことに使えるね」と、ほのかに口元を緩めて下準備を続けた。

 他のことというのが、受験勉強を指すのか、仲直り計画を指すのか、はたまた美優とのエッチを指すのか。

 

 それはともかくとして、エプロン姿で料理に励む美優は眩しいくらいに可愛かった。

 

「献立にない食材も出してるな」

「性欲旺盛なお兄ちゃんのせいで献立の意味もなくなってきたので」

 

 野菜の処理が終わって、美優は包丁を洗い、水滴を拭ってからケースにしまう。

 

 一昨日からの二日間で俺と美優がセックスした回数は六回。

 事後はそのまま寝てしまうこともあって、日に三度の飯が遅れたり、食べられなかったりして、もはや用をなさなくなった献立が冷蔵庫の中身を余らせていたのだ。

 そのためこれからは作り置きをメインにして必要なときに食べる方針に切り替えたらしい。

 

「やりすぎかな」

「それはもう。妹を相手にやりまくりですよお兄さん」

 

 俺が美優のすぐ後ろに立つと、俺の鎖骨より下に美優の頭頂が来る。

 そこから艶やかな髪が流れ落ちて、お人形のような小さく整った顔があって、その下は元気に発育した胸部によって見えなくなっていた。

 

 これで痩せ型なんてことがあるのか。

 俺とエッチするようになってからはむしろムッチリ度が増している気がするのだが。

 肉体が性熟しているからこそ、白いTシャツに飾り気のない無地のスカートとエプロンでも、妙なフェチズムを感じてしまう。

 このエロスを凝縮したような妹が、にゃんにゃん甘えてくれる女の子だったらな……いや、普段の美優がこれだけクールだから、そうした欲望が湧いてくるわけなんだけど。

 

 美優は俺が邪悪な妄想をしていても、体をベタベタと触っても、気にせず洗った調理器具を拭いていた。

 どこか他人行儀でも愛情を感じるのはこの妹にしかない魅力といえよう。

 

「美優は今日また一段とエ……エプロンが似合うな」

 

 「可愛いよ」と褒めようと思っていたのに直前の邪念のせいで「エロい」と舌が滑るところだった。

 

「ただのエプロンがそんなにいいの?」

 

 美優はエプロンを両手の指で摘んで、顎を上げて上目で俺を見る。

 

「ただのエプロン姿だからいいんだよ」

 

 昨今、エプロンといえば有無を言わさず裸エプロンだが、俺は普段着にエプロンを重ねている格好のほうが可愛いと思うし、その姿のままで興奮する。

 

 なにより日頃からおっぱいが目立たない服を着ている美優が、エプロンの紐を縛ることでその膨らみを強調させているのだ。

 

「それはおっぱいに興奮しているのでは」

「おっぱいにも興奮しているというのが正しいな」

 

 こんな妹がいるのでは否が応でも勃起してしまう。

 もはや俺は日常生活でこの妹に勃起を強いられていると言ってもいい。

 

「あの、お兄ちゃん」

「いやほら、今日はまだしてなかったから」

 

 着衣のまま勃起を押し付けるのは、セックスとはまた違った興奮と快感がある。

 男の性感とはそういうものなのだ。

 

「いま作ったのは明日からの分だからね。お昼ごはんはこれからお料理するんだよ」

「だからちょうどいいタイミングかと思って」 

 

 キッチンの上も片付いてキレイになっているし。

 

「私はお兄ちゃんとエッチすると、変にお腹いっぱいになるんだよね」

「なら飯を食う前とか後とかは控えるか?」

「いえまあ別にいいんですけどね。兄の性欲を満たすのは妹の義務なので」

 

 美優はなんだかんだ言いつつもその気になってくれたようで、俺を後ろに引かせるとキッチンに手を付けるだけの幅を取った。

 

 そして、スカートの中に両手を入れて、パンツをずり下ろし、太ももの付け根にある臀部の肉の盛り上がりが見えるくらいに背面のスカートをたくし上げた。

 

「はい、どうぞ」

 

 セックスをするまでの準備はそれだけだった。

 前戯もなし、脱衣も最小限で、誘い文句も極めて簡潔。

 

 女の子に挿入口を差し出されておきながら、俺はウブな男児のように混乱していた。

 

「挿れればいいのか……?」

「そのための穴ですので」

 

 それはそうだけどさ。

 

「ゴムは持ってるよね?」

「持ってはいるよ」

 

 この数日、俺がベッド以外の場所で欲情しすぎるせいで、コンドームは常に持ち歩くことになった。

 美優からの雰囲気を壊すなという旨のお達しである。

 

「なら、はい。早くつけて」

「お、おう」

 

 俺は促されるままにコンドームをつけた。

 勃起はしているし、セックスもしたい。

 しかし……。

 

「なあ、前から思ってたんだけど。美優は前戯とか要らないのか?」

「お兄ちゃんに触られてるときから濡れてるから」

「美優が濡れやすいのは知ってるんだけどさ」

 

 前戯をするのは挿入の痛みを緩和させるためだけではない。

 セックスを盛り上げる前準備でもあるし、オーラルの時点から本番と同じように楽しみたい人だって多くいる。

 男としてのテクニックの見せ所でもあるのだ。

 

「少しぐらい、指でする時間があってもいいんじゃないか」

「えー……だってお兄ちゃん変な触り方するし……」

「しないって」

 

 美優は恥ずかしがり屋なのだ。

 これまでのやりとりからしても、されたくないわけではないはず。

 

「指でするの上手いって美優も褒めてくれただろ?」

「嘘はついてないよ。でも私は一度たりとも『してほしい』とねだったことはないからね」

 

 なるほど、たしかにそれはその通りだ。

 美優の態度があからさまに誘っていたことはあったが、指でされたいとお願いされたことはないし、舐めることに至っては凄まじい勢いで拒絶された。

 

「だったら、俺がしたいから、少しだけ指でさせてくれないか」

「もー。仕方ないな。少しだけだからね」

 

 美優は諦めた様子で承諾してくれた。

 これまではセックスするとなったら即挿入だったけど、美優だって慣れれば触られたくなるはず。

 

 そう信じて俺は美優のスカートに手を突っ込み、下腹部から美優の股に指を触れさせた。

 美優はやや前屈みになって、二つに結んでいた左右の髪が背中から滑り落ちる。

 

「んっ……」

 

 美優の反応は悪くなかった。

 今でも変わらず毛の一本も生えていない陰唇が、指触りの良いぷっくりとした緩い丘を作っていて、俺は割れ目の左右に二本の指を滑らせて美優の感度を高めていった。

 

「あっ……んあっ……だから……そこ……だ、だめっ……」

 

 指先を押し込むと弾みの良い肉がぷにぷにと返ってくるのがたまらない。

 その秘部は本人のドライな性格に似たのか侵入者を拒むようにぴっちりと閉ざされていて、しかし、指の一本でも入ることを許せば、卵の黄身を割るようにトロッと熱い粘液が垂れてくる。

 

「にゃぁ……あんっ……だめだってば……! やっぱりそういう触り方する……!」

 

 美優が力一杯に太ももを閉じて来たので、俺は美優の腰を抱えたまま指を止めた。

 美優は恥ずかしそうにしながら俺を睨んでいる。

 

「人のコンプレックスをねちねちと……!」

 

 美優が子供っぽい自分のアソコを気にしている。

 それは俺も知っていた。

 

 しかし、これまで愛撫を拒んできたのは、感じている姿を一方的に見られるのが嫌だったという理由が主だったはず。

 

 気持ちよくなっている姿を俺に見られることに慣れてきたために、残されたコンプレックスが大きな存在になってしまったのかな。

 ならば、それをコンプレックスでないものに──いや、むしろ長所として誇れるものにしてあげたらいい。

 

「美優、聞いてくれ。巨乳で“つるぷに”は男のロマンなんだ」

 

 パイパンなだけでも、あどけないだけでも足りない。

 美優のように大人びた女の子のアソコが、新雪を思わせる白肌でぷっくりした縦スジになっているのが好ましいのだ。

 

「下が“つるぷに”なら上は“つるぺた”で然るべきなんです女の子は」

 

 二人の性癖は噛み合わなかった。

 これは言葉で交わした以上に根深い方向性の違いがありそうなので無理に踏み込むのは危険だった。

 

 しかし、だからといって俺が指を触れるのを諦めるわけにはいかない。

 

 俺には確信がある。

 これまでの経験でようやく自信を持てるようになった考えがあるのだ。

 

 このイヤイヤは、いつもの範疇であると。

 

「なあ美優。他の人には見せたくなくて、ましてや男には絶対に触れさせたくないような、その可愛らしい“つるぷに”をだな」

「可愛らしいは余計です。あと妹の陰部を指して“つるぷに”を強調するものではありません。自分が一番よくわかっています」

 

 それは申し訳なかった。

 

「そんな誰にも見せたくない、体の一部をだ。俺にだけ触らせるところにしてくれたら……その、俺と美優の関係にも、もう少し特別感が出るんじゃないかな」

「もう十分に特別な関係だと思うけど……」

 

 美優は釈然としない様子で、しかし、万力のように俺の手を締め上げていたふとももの力は緩んでいく。

 

「私もお兄ちゃんと本番エッチするようになったら、もう少し大人っぽくなると思ってたんだけどね」

「驚くほどぴっちりつるつるしたままだよな」

 

 おまけに膣のキツさも変わらないし。

 

「一生この白桃みたいなお股と過ごしていくのかと思うと気が重い」

「温泉以外で見ることがあるのは俺ひとりだけだよ」

「まあそうなんだけどね」

 

 美優と会話する空気もマイルドになってきた。

 この流れならいけるか。

 

「というわけで、続きをするからな」

「えっ、あ、ちょっ……私は、まだ許可したわけじゃ……んっあっ……」

 

 俺は再び美優の股に手を這わせて、奥に手を入れるときは全体を撫でるように指を伸ばし、引くときは指を曲げてクリを刺激した。

 

「あっ……あっ……だ、メッ……おにい、ちゃん……それ……だめぇ……」

 

 美優の喘ぎ声は先ほどより小さくなっていた。

 悦びが混じり始めたその声を、美優は自覚して必死に押さえ込もうとしている。

 しかし、俺が穴の入り口をなぞるように指先で撫で回すと、美優も我慢ならなくなって溜めていた息を一気に吐き出した。

 

「やっ……ひやぁ……やめっ……そんなに触っちゃイヤ……!」

 

 美優は腰をくねらせて俺の手を退けようとするが、背後からガッチリとホールドしている俺の優勢が変わることはない。

 俺が指の第二関節を曲げて蜜壺の表層をかき回すと、抵抗感より快感が上回ったのか美優の暴れる力が弱まって、俺は四指の全体を使って美優のまっさらな股間を撫で回した。

 

「んんっ、あっ……こら、やめなさい……!」

「美優……頼む……俺はもうこのつるぷにじゃないと満足できないんだ……!」

「いゃ、あっ! もう、お兄ちゃん……ほんとに気持ち悪い……!!」

 

 口では俺を拒絶しながらも、刺激を逃すように動いていたはずの腰はいつのまにか前後に振られていた。

 そんな正直者な妹に、俺は中指を上にしてその先端を穴に当てがってやる。

 すると、引いていた腰を突き出す動きに合わせて、俺の中指が美優の膣内にニュルッと根元まで入り込んだ。

 

「あああっ──イッ……っ──!!」

 

 美優はキッチンの縁に力一杯に捕まって、爪先立ちになりながらオーガズムに達した。

 しばらくそのまま硬直して、膣内の疼きが収まったところで踵を下ろし、美優は息を整えてから涙目で俺を睨む。

 

「ううっ……変態のロリコンめ……」

 

 まさか前戯をするだけでここまで妹に蔑まれるとは。

 

「もう怒ったんだからね」

 

 美優は頬をぷぅと膨らませて冷蔵庫まで移動し、磁石で扉にくっついていたキッチンタイマーを取って戻ってきた。

 それから、時間を0秒にリセットし、次いで『1分』のボタンを一度だけ押してキッチンに置いた。

 

「タイマーが鳴るまでに出して」

「さすがに短すぎないか!?」

「足りるでしょ。お兄ちゃんどうせ早漏なんだし」

 

 結構それ心にグサッときてるんだが。

 

「ほら、さっさと挿れる」

 

 美優はお尻を向けて情緒のかけらもなく誘ってきた。

 悔しいことにこれだけ怒られ罵倒されてもペニスは勃起しっぱなしだったので挿入することができてしまう。

 

「奥まで挿れるのはダメなんだよな?」

「当たり前です。許容幅はカリ下三センチですので。厳に守るように。私にはわかりますからね」

 

 美優はツインテールの片側を鞭打つように振って、キッと俺を睨む。

 

 膣に入れていいペニスの長さまで決めるなんて。

 うちの妹は風紀委員にでもなったのか。

 

 いっそ制服でエッチをさせてくれたらいいのに。

 最近は着衣でするのにも抵抗がなさそうだから、頼んだらさせてくれそうだ。

 

 こんなに強気でいても、性感帯を責められると俺と変わらないくらいの雑魚になるので即落ち二コマになるのは目に見えている。

 それでも美優なりのプライドというか、素の自分はまだエッチの快感に溺れていないことを誇示しておきたいのだろう。

 

 どうせ堕ちたら本能ちゃんのせいにされるのだし。

 なんだかエロエロモードの美優が不憫に思えてきた。

 

「何をボサッとしてるの」

「わかってるって。挿れるよ」

 

 俺はスカートをめくりあげて生肌の露出されたお尻を見下ろす。

 太ももに掛かったままのパンツは床に落としておくか、このままにしておくか悩むところだ。

 セックスのときの大事なのは穴の向きとペニスの角度で、立ちバックというものは脚を広げてもらわなければきちんと挿入することはできない。

 

 とはいえどうせ半分しか挿れることが許されていないのだし、美優を軽く持ち上げてして挿れてしまうのが正しいか。

 

 これまではひたすらに愛を注ぎ続けるのが美優のためになるかと思っていたけど、性処理に使われるのが美優の悦びになるのはどうやら事実のようなので、ただ射精するためだけにペニスを出し入れしても美優は満足するはず。

 

 美優は無心に努めようと窓の外を見つめていて、あれだけ強気な態度を取っただけあって簡単に陥落するわけにはいかないと構えているようだ。

 そんな美優に俺は背面から覆いかぶさって腰に手を入れ、軽く爪先立ちをさせるくらいに持ち上げてから、タイマーのスタートボタンを押してすぐにペニスを挿入した。

 

「うっ……くぅ……っ──」

 

 軽く指でイジるくらいではすぐにぴっちりと閉じてしまう美優の割れ目には、大量の愛液がダムのようにせき止められていて、亀頭が侵入するのと同時に生まれた気泡がぐじゅりと音を立てると、美優は真顔のまま薄っすらと頬を赤らめさせた。

 

 美優の注文通りにペニスの半分ほどの深さでストロークをして、美優が俺のペニスの形まで感じてしまわないように一定以上の速さを保って行為を続ける。

 

 さすがというか俺と相性の良い美優の膣穴は、ぴったりと俺の肉棒の形にフィットして、奥まで差し込まなくてもギュンギュンと竿を搾り上げてくる。

 犬の交尾みたいに挿入するこの体位がまた俺の性本能も刺激してイキやすくさせるのだ。

 

 悔しいことに一分もあれば射精ができるのは事実だった。

 だが、そろそろ俺も兄としての威厳を示すときというか、無様に射精してばかりではいられない。

 

 ギリギリまで射精をしないように、俺も無心で腰を振った。

 

 そうしてセックスを続けること三十秒。

 

「ふっ……ぁ……ふうぅ……ん、んんっ……ぁっ……」

 

 ふと美優の横顔を伺ってみると、その表情はだらしないくらいに緩んでトロトロに蕩けていた。

 キッチン台に腕を張り、背中は真っ直ぐに上げて毅然とした態度を見せているが、脳内は快楽を叫ぶ淫らな言葉で溢れかえっていることだろう。

 

 美優はそんな状態でもタイマーだけには意識をやっていた。

 カリ首に愛液をかき出されて秘部からぴちゃぴちゃと音を立てながら、美優は六十秒のカウントダウンを確認している。

 その視線を戻すたびに、悦楽の奥に切なさを滲ませる美優は、きっと時間制限をしたことを後悔しているはず。

 

「もう、イキそうだよ、美優。ほんとに、こんな早く出していいのか……?」

 

 俺はそんな美優に背後から煽るように尋ねてみた。

 すると美優は何かを取り繕うように、緩んでいた表情を隠して強気な目に戻る。

 

「と、当然です……ん、ああっ、わたし、には……お昼を作る……役目が……あっ……んぐっ……はぁっ……」

 

 呼吸と一緒に押さえ込まれていた嬌声が美優の口から漏れ出る。

 こんな状況になっても兄にご飯を作る気でいてくれる健気な妹だ。

 

「んっ……もう、一分経つんだから……あっ、ああっ、ん、あっ……早く出さないと……!」

 

 あと十秒もすれば時間切れになる。

 だが、美優が俺に注文したのは「タイマーが鳴るまでに射精する」こと。

 俺も一分あれば足りることには納得したが、だからといって一分以内にイクと約束したわけではない。

 

「美優はタイマーが鳴るまでに出せって言っただけだよな」

 

 俺はタイマーに手を伸ばして一時停止のボタンを押した。

 

 これで好きなだけ美優の肉穴にペニスを入れていられる。

 

「あっ、ちょ、そんなヘリクツ……ズルっ、いッ……んやっ、ああんっ……!」

 

 一段落つけると安堵していた美優に付け込み、俺はピストンする速度を上げた。

 

「あんっ、あっ……ああっ……んあっ……! おにい、ちゃん、ヒドい……んんっ、ああっ……そんなこと、したら、怒るんだからっ……!」

 

 口では怒っていても、美優はその声音にセックスの享楽を隠しきれていなかった。

 横目で俺を睨む瞳にさえ、情欲に塗れた愛のマークが映っている。

 

「怒ってても美優は気持ち良さそうだよ」

 

 俺がほんの少しペニスを深く突き刺せば、美優はワントーン上げて絞った喉からの声を漏らす。

 私物化を望む美優でも、ただ好き勝手されるだけで喜ぶことはなくて、理屈が通っているからこそ意にそぐわないことであっても美優は受け入れて感じてしまう。

 

 つまるところ、タイマーを止めたことに言い分のある俺は、いくらでも美優にペニスを挿れてもいい。

 

「あんっ、あっ……きもちぃ、けど……んぐっ……ふぁ……それ……と、これとは……んんっ、ああっ……!」

 

 俺の肉棒を貫通させている美優の下の口が、フェラチオをするようにぐぱぐぱと蠕動する。

 俺も亀頭の先に神経が集中してきて、ひと擦りするたびに股間に響いてくる快感が増していった。

 

「やばい、もう本当に我慢できないかも……」

「ああっん……あっ……我慢なんて、してないで…………今すぐ……出しなさい……!!」

 

 顎を浮かせて涙目の美優から厳しめの命令を受けて、俺の体が急激に熱くなっていく。

 これほど強く射精しろと命令されたのは初めてだったこともあって、俺の胸のうちにはトキメキにも似た昂揚が滾っていた。

 ペニスはビクンビクンと美優の膣内で跳ね上がり、思考をするよりも早くこの体は屈服した。

 

「み……みゆ…………もう、出るからな……美優……美優ッッッ──!!」

 

 射精するまでは一瞬だった。

 俺はペニスを浅い位置で動かしたまま、美優の膣内でびゅるびゅると精子を放出し、射精の終わりに合わせて徐々にピストンのテンポを落としていく。

 さすがに動かしながらの射精ではその瞬間まではわからなかったのか、珍しいことに美優は俺と一緒に絶頂することはなく、ひとまずの行為の終わりにペニスを抜かれるとぐったりとキッチンに項垂れた。

 

 俺が美優の腰を解放すると、爪先立ちでギリギリ体を支えていた足が筋力の限界を迎えていたようで、美優はガクガクと脚を震わせた。

 コンドームを結んでゴミ箱に捨てるまでの間に美優は呼吸を整え、片手で少しずつ全体を引き上げながらパンツを穿く。

 

「お……お昼、作らないと……」

 

 セックスの直後でも構わず美優は調理に取り掛かった。

 エプロンで内股気味の脚を隠してキッチンを小幅で歩いている。

 疲れたのなら休んでから始めればいいのに、手伝おうかと言っても美優は頑なに拒むので、俺はソファーでスマホを手にぐだぐだと過ごしていた。

 

 美優とは会話をすることもなく料理は並べられ、俺は美優といつものようにお昼をすることに。

 

「そんなに無理してご飯を作る理由はあったのか?」

 

 あからさまな態度だったので尋ねてみる。

 ご飯が並べられる頃には美優の呼吸も落ち着いていて、座るときに股の辺りを気にすること以外は平常通りに戻っていた。

 

「私はイチャイチャするためのエッチと性処理は別だと思うから、どうあれ処理のほうはサクッと抜きたいわけですよ」

「なるほど」

 

 性処理ではたとえ挿入されても快楽に溺れたくはないらしく、その結果としてヘトヘトで料理もできないような状態になるのは美優の本意ではないようだった。

 俺も性欲を処理してもらうだけのエッチも嫌いではないし、深みに嵌るわけにはいかない俺たち兄妹にとって、抜き目的のセックスも今後の日常生活には必要なのかもしれない。

 

「フラストレーションが溜まったりしないかな」

「お兄ちゃんはまだまだ甘いね。エッチ初心者だから仕方ないけど」

 

 女限定に経験豊富な美優が上から目線で語ってくる。

 それなりに経験人数のいる俺がエッチ初心者とはどういうことなのか。

 これでも半野外でのプレイや、授乳、コスプレなどのエッチもひと通りこなしているのだが。

 美優は「具体的にイメージしてみればわかる」とだけ俺に告げて、ご飯を食べ終えてからは自室へ戻ってしまった。

 

 俺はというと、勉強に戻るでもなくウダウダとまたソファーに寝転ぶことに。

 

 このまま雨が止むまでデートを控えていたら夏休みが終わってしまう。

 美優との思い出を残しておくなら無理にでも外出しておくべきだ。

 とはいえ、花火大会などのめぼしいイベントは大部分が八月上旬に終わってしまっているため、ネットで調べてみても温泉旅行特集ぐらいしか見つからなかった。

 美優と一緒なら景色のいいところに電車で行って泊まるだけでも楽しいかもしれないけども。

 

 そうしてしばらく今後の予定を考えてから、俺は天井を見上げてボーッとしていた。

 

(そういえば……そろそろアレの日だって美優は言ってたな……)

 

 いわゆる女の子の日と呼ばれる、俺たち男にはその実態の秘匿された生理という名の現象。

 男側が生活する上で意識することといえば、ホルモンバランスが崩れて体調が悪くなることと、数日間はセックスができなくなるということくらいだが。

 この生理が明けるのに合わせて、美優はピルを飲み始める。

 

 そうすれば俺は美優に中出しできるようになるんだ。

 あれだけAVやエロアニメでは見てきた行為なのに、いざ自分がするとなると実感がわかない。

 美優が「イメージしてみればわかる」と言ったのは中出しをするようになった後の関係だと思うが、はたして中出しと淡白なセックスはエロく結びつくものだろうか。

 

 中出しセックスといえば、エロゲでもエロ漫画でも濃厚なラブシーンとして描かれるもの。

 それが陵辱のような一方的なものであっても、とにかく“濃い”交わりとして扱われていて、それだけ女の子の膣内に精液を流し込む行為には特別な意味がある。

 

 そんな中出しを、セックスとしての行為とは切り離して性処理のためだけに使う。

 それはもはやオナホのように扱うですらなく、ただ精液を流し込むだけの作業と言っていい。

 

 ……いや、たしかにそれは、エロい行為なのかもしれないけれども。

 

 中出しなんてしたら、膣内に残った精液がパンツに滴り落ちて、美優はトイレに入るたびにセックスしたことを思い出すことになる。

 あの体質でムラムラせずにいられるのだろうか。

 

 美優が他の子たちと違うところはいくつか挙げられるけど、オナニーが好きなのは女の子にしては珍しい性格だよな。

 山本さんだって俺と会うまではほとんどすることがなかったって言ってたし。

 

 もしかして、今も部屋に戻ってしてたりするのかな。

 あんな中途半端なセックスでは美優も欲求不満になるはず。

 俺と一緒に居るときはTシャツを基本としたシンプルな服ばかりだし、一人でするときぐらいはまた可愛い服を着てたりして。

 

 そういや、山本さんと勉強会をするために美優の都合を聞くつもりだったのに、すっかり忘れていた。

 

 今部屋に行ったら怒られるかな。

 まだしてると確定したわけではないけど。

 確認をするためには、聞き耳するかドアをノックしなければならない。

 

 同じ家に住む恋人がオナニーをしている声をこっそり聞くのは盗み聞きになるのだろうか。

 直接性器を擦りつけ合ってエッチをするのも、面と向かって自慰をし合うのも、お互いをオカズにしてこっそりオナニーをするのも、恋人の関係からすれば似たようなもの。

 ならば、バレないように確認するぐらいならいいか。

 

 と、こじつけのような理屈を捏ねて二階に上がることに。

 美優たち中学生組のせいで俺の人間性も捻れてしまったようだが、いまさら後悔することもない。

 

 階段に登るとドアが二つ見えて、その手前側が俺の部屋、奥が美優の部屋になっている。

 この家は古い建物ではないのだが、我々子どもたちにとって致命的な欠陥を抱えている点といえば、やはり小部屋のドアに鍵がないことだろう。

 自慰行為を覚え始めた思春期の少年少女からしたら心穏やかならぬ環境だ。

 それでも俺は美優が自分の部屋に入ってくることなどないと思って堂々とエロゲをやっていたんだけどな。

 

 足音を立てないように近づいて、美優の部屋の前まで来ても、喘ぎ声らしいものは聞こえなかった。

 俺が初めて美優のオナニーを目撃したときは俺がバイトで帰ってこないと美優が思っていたからこそあれだけ大胆にしていたんだ。

 

 外出する予定のない俺がいつ二階に戻ってくるかわからないこの状況では、美優もさすがに声までは出せないか。

 

(オナニーしてる前提ってのがまず失礼なんだよな)

 

 俺はこれまでの邪悪な思考を深呼吸と共に吐き捨てて、美優の部屋のドアをノックした。

 

「美優。今いいか?」

 

 声を掛けて、反応がないまま十秒、二十秒と時間が過ぎた。

 部屋にいないはずはないのだが、まさか俺の部屋にいるわけもあるまい。

 

 念のために自分の部屋に行ってみたが、やはり人影はなく、使用された形跡もなかった。

 となればもう、美優がオナニーをしていたところに俺がノックをしてしまったから、すぐに出られなかったと考えるほうが自然か。

 そう思っているところで隣のドアノブが回る音がして、ギギギと重たく扉が開かれていく。

 

「取り込み中だったか?」

 

 俺が隙間を覗き込むように様子を伺うと、美優は顔を斜めにして体が見えないようにしていた。

 裸になっていたのなら服を着る十数秒だけで済むし、これは恥ずかしい服を着ていて上手く応対ができなかったパターンだな。

 

「ご覧の有様なのですが」

 

 美優は眉をひそめて答える。

 

 まあそうだよな。

 

「すまんな」

「ご用件は」

「直近の美優の予定を聞こうと思ってた」

「奏さん優先のスケジュールでいいよ」

 

 さすがに美優は俺の言わんとしていることがわかるようだ。

 

「わかった」

 

 そんな短い言葉のやり取りをして、美優がずっと目の辺りしか見せていないことに、俺は若干の引っかかりを覚える。

 

「着てるんだよな?」

「うん」

「新しいやつなのか?」

「新しいというか、魂を売るための衣装」

「ほう」

 

 例の遥との肉体契約を無効にするための取引か。

 美優は淡々と答えているが、ドアの影に隠れているのはとんでもないエロ衣装だったりするのかもしれない。

 

「服そのものはエッチではないんですけど」

「ならどうして隠すんだ?」

 

 俺も美優のロリコスはいくつも見てきているし、それなりの理解は示しているつもりだ。

 

「ひと口では言えない……。からまあ、しょうがない」

 

 美優はドアを開けて、その衣装を隙間から俺に見せてくれた。

 

 身につけているブラウスは黒い縦のストライプで、ロリータ服としては綺麗にまとまった装いをしている。

 しかし、その中でとりわけ目を引いたのは、頭に乗った三角形の小高い二つの山と、臀部から細く長く伸びたしなやかな尾っぽだった。

 いわゆるネコミミファッションと呼ばれる性癖アイテムである。

 ちなみに髪の毛はまだ二つ結びのままだ。

 

「美優、それは……どうして……!?」

 

 ありふれたコスチュームのはずなのに、それを美優が身につけていることは俺にとって衝撃だった。

 美優のこだわりというか、本来の趣味にそれが合致する気がしなかったからだ。 

 

「まあ、入って入って」

 

 美優は俺を部屋の中へ招き入れる。

 

「いいのか? 取り込み中だったんじゃ……?」

「まだ観察してただけだから平気。お兄ちゃんにどう話そうか迷ってただけ」

 

 美優は俺を勉強机の椅子に座らせて、自身はベッドに座った。

 膝を曲げてから腰を下ろすまで、美優がやたらと慎重な動作を取っていたが、まさかその尻尾はそういう仕組みなのだろうか。

 

「遥の仕事を一度だけ手伝うことになって。これはそのために支給された服なの」

「一度だけの手伝いで服を?」

「中古が値下がりするとは限らないからね。特に遥にとっては」

 

 なるほどいかがわしい事務所の仕事らしい内容だ。

 俺も実態を詳しく知っているわけではないけど。

 

「でも、またなんでネコミミなんか」

「遥の趣味だから。お兄ちゃんは私が選んだ服しか知らないけど、実際にはもっと色んな種類の服があって。遥と私のロリータの好みは似てるようで、正反対なの」

 

 美優が言うには、趣味とビジネスの趣向の両面でロリータファッションを扱っている遥にとって、結果的にロリかわいければ素体か服の一方はロリでなくてもいいらしい。

 だからこそ遥は山本さんを見てもハイテンションになっていたし、巨乳が大好きだし、ロリ巨乳の美優にはどんな服でも着せたがる。

 

「いわば遥の嗜好は、服または本人がロリであればよいという、ロリータ・オア・ロリータで。でも私はその逆、ロリとしての完成を求める、服も本体もロリ、つまりはロリータ・アンド・ロリータが好きなの。これまでその辺りはお互いに不可侵の領域にしてて」

「そこまで違うものなのか?」

「ぜんぜん違います」

 

 美優はどういう原理か付け耳を畳んだり尻尾を振ったりしながら説明を続けた。

 

 遥が順ずるのはあくまでも自らの悦であって、ロリータ好きでも少女性を突き詰めることはないし、レズを主張していてもディルドなどの道具を使うことに抵抗はない。

 趣味もビジネスも混ぜ込んで、何でも自分の都合のいいように使うのだ。

 

 これに対して、美優は現代的に意味付けされた幼さとしてのロリと、ファッションとしてのロリータを、趣味であり主義として好んでいる。

 

「美優の主義を曲げて遥の仕事を手伝えば、貸し借りなしに肉体契約が解消できると」

「詳細については聞かれても答えないけどその通り」

「その服をなんで今着てるんだ?」

「サイズ合わせのため。あとはまあ……」

 

 ──可愛いことに、変わりはないし。

 

 と照れながらに呟いたそれが、美優の本音のようだった。

 いくらこだわりがあっても、自分の性的魅力にはなかなか逆らえない美優にとって、理性的な判断と本能的な決定は別にあるのだ。

 

「その服を買い取ってエッチに使ってくれるなんてことは」

「絶対にないからね」

 

 さすがに難しいか。

 しかし、コスチューム自体は似たようなものを美優が持っているだけだし、あとは耳と尻尾さえ俺が買ってあげれば同じことができるのでは。

 

「ないったらない」

 

 念押しするように否定されてしまった。

 

「ちなみにその尻尾って入ってるのか?」

「入っているかと聞かれれば入ってる」

 

 まるで聞かれなければ入っていない状態になるような答え方だな。

 

「ってことは、俺はやっぱり邪魔したんじゃないかな」

「平気だよ。生理も近いからこの格好のままするつもりはなかったし。まずは気分だけ上げて、あとはこう、流れで」

「そうか」

 

 観察をしていただけというのはそういうことか。

 美優もだいぶ気持ちを素直に伝えてくれるようになったな。

 軽く欲求不満になっているからだろうけど。

 

「そういや、あんまりこういうのは、はっきり確認しないものかもしれないけど」

 

 生理というワードを聞いて浮かんできた疑問。

 俺はそれなりに性欲が旺盛だし、美優も俺とのエッチが好きで付き合ってくれている部分がある。

 だからこそ俺は聞いておくべきだと思った。

 

「美優が生理のときって、俺は一人で処理してたほうがいいか?」

 

 大多数の女の子が体調を崩す期間だし、おりものの問題で脱衣が伴う行為は実質的に不可能になる。

 とはいえ、生理だからといって女の子の性欲がゼロになるわけではないんだ。

 そうなると、美優にとってもお預けの期間になってしまうから、必ずしも自己処理が良い選択ともならない。

 

「うーん……」

 

 美優はベッドに姿勢良く座って、目をパチクリさせて、ネコミミをピコピコさせて、しばらく考え込んだ。

 

「私の体調は気にしなくても。抜くのに使えるところを使ってもらえれば」

 

 それが上等なロリータ服とネコミミ衣装を身に着けた可愛い妹の回答だった。

 

「美優ほど物扱いされることに抵抗がない子も珍しいよな」

「お兄ちゃんが持ってた美少女ゲームに出てくる妹も実家にある便利な風俗みたいなものだったから。体が勝手に憧れてるのかも」

 

 そんなバカな。

 

「そうでなくても、自分らしさみたいな部分ではしっくりきてるんだよね。私は奏さんみたいに毎日全力ご奉仕はできないから」

 

 美優にそう言われて、理解はできないまでもどこか納得できるところはあった。

 

 美優が彼女でも、山本さんが彼女でも、どちらも抜きたいときに抜いてくれる恋人になっていたはず。

 でも、自分がエッチな女の子だと自負があって積極的に抜いてくれる山本さんと、エッチな女の子であることをなかなか認めないくせに頼めばいつでも抜いてくれる美優とでは、その関係性に大きな違いがあるのだ。

 それは俺にとっても『美優にしてもらうから興奮する』要素として大切な部分になっている。

 

「その山本さんなんだけど、一緒に勉強しないかって誘われてるんだ」

「奏さんも数日お預けでムラムラしてるだろうからね」

 

 まあそうなるよな。

 

「明日でいいんじゃない?」

 

 美優は他人事のように意見を述べた。

 この余裕は成功の確信によるものか。

 連日の雨で山本さんも家で暇をしているなら、いきなり誘われても困らないかな。

 

「山本さんとの関係には、どこかで逆転の秘策があるんだよな?」

 

 美優は俺の余計な行動を抑制するためにその全容を話してはくれないが、俺と山本さんと仲良くなるほど経過が順調ということは、どこかで山本さんが俺を諦めざるを得なくなるような決定的な瞬間が存在しているということになる。

 

「別に秘策なんてないよ?」

 

 美優は首を傾げると同時に尻尾をふにゃっと揺らした。

 尻尾が動くときに下腹部の性感帯に刺激がいくことがないのか、非常に気になるところではあるがともかくとしてまさかの秘策なしとはどういうことなのか。

 

「逆転の必要がないし」

「いや、だって、このまま行ったら、俺は山本さんとゴールインだろ」

「それが違うんだよ。お兄ちゃんはね、一歩一歩、着実に、円満に別れるためのゴールに向かって進んでるの。だから、このまま地面を踏みしめて、足を前に出していけばいいだけ」

「そんなまさか」

 

 あれだけ恋人らしい雰囲気になっている俺と山本さんが、特別なイベントの用意もなくあっさりとお別れすることなんてできるのか。

 最初に山本さんの予想にあったように、俺とのスキンシップを好きなだけ許していればそのうち満足するということであれば、むしろその目論見はマイナス方向に進んでいると言っていい。

 

 ──しかし、それは根本的な部分からの、俺の認識違いだった。

 

 仲良くなるほど関係が進展していると思えるのは、一緒にいるときの山本さんを見ているときの評価でしかなくて。

 俺がこうして何気なく美優と話している間にも、山本さんは山本さんの時間を過ごしていて、その脳には常に思考が巡り、その結果として感情が動き続けている。

 

「あの手紙はそういうものだから」

 

 憂うでも嘲るでもなく、冷淡にそう語った美優は、しとしとと雨の降る窓の外を見つめて尻尾を揺らしていた。

 

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