バスから下車した俺と山本さんは、まだ暗くなる前の街を歩いてラブホテルへと向かっていた。
車内で二時間近く焦らされて、当然サービスエリアなんかに抜いてもらえる場所があるはずもなく、散々性欲を煽られまくった俺はもう山本さんとセックスさえできればいいぐらいの気持ちになっていた。
バスに乗っている間にラブホテルの候補はいくつか見繕っていて、あとはそこに向かうのみ。
ラブホテルに行くことを合意しておきながら「エッチはしないよね?」なんて初潮前の女の子でも聞かなそうな無理を主張する山本さんの腕を、俺は強く引っ張って早足で歩き続けた。
勘違いしてもらっては困るが、イラついて乱暴にしているわけではない。
こうして無理やり連れ込むみたいにすると、山本さんが喜びをひた隠しにしてエッチな顔をするので、もはやこれは前戯なのだ。
かつてこれほど女の子がレイプ願望を持っていることを確信したことはないし、なんならこの場でペニスを挿入しても三秒で山本さんをイかせられる自信がある。
「満員の表示も出てないから、あそこで大丈夫そうだな」
比較的新しいホテルには電光掲示板で『FULL』か『OPEN』の表示が出されていて、内部を伺うことなく部屋の空き状況を確認することができる。
せっかくヤル気満々で女の子を引っ張ってきたのにエントランスで待たされたのではシラけてしまうからな。
俺は入館して即スイッチを押し、受付で鍵を受け取ってエレベーターに乗り込んだ。
山本さんはなされるがままに付いてきてモジモジしている。
俺の勢いに圧されて淑女的な振る舞いをするようになった、この黒髪ロングがTシャツの出っ張りに乗っかっている淫らな美少女を相手に、俺は肺が浮くような加虐心に追い立てられていた。
充血した肉棒はもはや勃起というより筋肉の隆起と表現したほうが適切に思えるほどギチギチに膨らんでいる。
不思議な感覚だった。
まるで美優を相手にしているかのように山本さんに欲情している。
山本さんが美優と似ているからだとか、そんなどころのレベルではない。
性欲が発散できれば誰でもいいわけではなくて、山本さんとセックスをして、山本さんの身体を使って射精がしたいのだ。
朝から一日中一緒にいたはずなのに、今になって山本さんの整髪料の香りが漂ってくる。
興奮のし過ぎで感覚器官が鋭くなっているのか、山本さんのうなじからほのかに漏れ出す汗の匂いまで感じ取ってしまって、俺の本能はその濃厚なフェロモンに激しく揺さぶられていた。
目的の階へと上昇していくエレベーターの中で俺は山本さんにすり寄って、髪の毛の匂いを嗅ぎながらおっぱいを鷲掴みにするという変態じみた行動に出てしまうほどだった。
「ひゃっ……ソトミチくんっ……」
驚く山本さんをよそに、Tシャツの丸みを下側から支え上げて、指をいっぱいに開いておっぱいを揉む。
ペットボトル二本分を注ぎ込んだ水風船に近い重量感があって、両の指先から巨乳を揉んでいる実感が伝わってくる。
その高揚感が下半身にまで届いて疼きへと変わると、いよいよ俺は我慢しきれなくなって山本さんのお尻にペニスを擦り付けた。
「あ、あんっ……ソトミチくん、ダメ……あっ……」
自分で勝手に開発してしまったのでお尻が敏感になっている山本さん。
ラブホテルに来たのはあくまでもカラオケをするためという建前があるので、こんな状況でも山本さんは形だけの抵抗を見せる。
そんな約束は連れ込んだ時点で反故にしてしまってもよかったのだが、言い訳をして抵抗する山本さんに悪戯をするのは隷属させるのとはまた違った興奮があった。
「ごめん、エレベーターが揺れるもんだから、ついふらついて」
こちらも言い訳をして合わせると、山本さんは「なら、仕方ないよね……」で済ませてくれた。
どんな理屈でもこじつければ許してもらえそうなので、さっさと部屋に連れ込んでフェラをしてもらおう。
エレベーター前には監視カメラもあるため俺は一旦山本さんを解放し、ドアが開くのを待った。
山本さんがスカートを穿いていればもっと悪戯ができたというのに、今日はあいにくとパンツスタイルなので股座に手を突っ込むこともできない。
エッチをする上でスカートというものがどれだけ偉大かを思い知らされた。
次からはスカートを穿くようにお願いをしておこう。
ラブホテルの中身が建物毎にそう変わることもなくて、部屋に入ると大きめのベッドを中心とした見慣れた空間が広がっていた。
前と同じようにソファー近くに荷物を置いてから、山本さんは「疲れたから少し横になろっか」とベッドへ向かった。
「山本さん、待って」
俺は山本さんに背後から抱き止めた。
「わっ……あ、はい……」
次第に雄としての本能が強くなっていく俺に感化されて、すっかり雌になった山本さんは、ほわほわの乙女顔をして赤面する。
「そのズボン、シワになりやすそうだから脱いだほうがいいよ」
山本さんを脱がせられればなんでもよかったので、適当な理由をつけてまずはズボンを下させる。
本音ではエッチがしたい山本さんは何の疑問も挟まずに同意して脱いでくれた。
床に落ちたそれを拾うついでに、肉厚な尻に食い込んだパンティを見上げると、クロッチの部分だけが違う色の作りなのかと思うほどそこは愛液に濡れていた。
「そんなに見ちゃヤダ……」
山本さんは内股をすり合わせてアソコを隠す。
なんでもしてくれる山本さんも大好きだが、やはり乙女の恥じらいは良いものだ。
「パンツもだいぶ汚れてるよ」
俺は山本さんの腰に指をかけて、有無を言わさず脱がしにかかる。
展開の早さに山本さんも何か言い訳を挟もうとしたようだが、俺がそれより早く山本さんのパンツをズリ下ろすと、観念して脚を開いてくれた。
足首にかかるまでパンツが落ちると、アソコから糸を引いていた粘液を隠すように山本さんはまた膝を閉じて俺のほうを向く。
「ソトミチくんのも、ズボンが破けちゃいそうだよ」
三角定規でも内側から当てているのかと思うほど立派なテントを張っているズボンは、腰周りを留めるボタンが弾けそうなぐらいに張り詰めていて、早く脱がないと本当に壊れてしまいそうだった。
「実はさっきから、トランクスのボタンが先っぽに当たってかなり痛くて」
「それは大変だね、ズボンもパンツも脱がないと……」
「屈むと痛みが強くなるから、脱がせてもらっていいかな」
着々と進んでいくセックスの準備。
山本さんとのやりとりはどれもエッチをするための建前ではあったが、ズボンを脱がないと陰部が怪我をしそうなほど勃起しているのは事実だった。
どうしたことか興奮が凄まじい。
山本さんを相手にこれほど欲情したことは今までなかった。
「そういうことなら、脱がせるね」
竿が引っかからないように腰の布を引っ張って、ひと思いに脱がせてもらう。
その直後に、自分でもわかるぐらいの汗と精液のニオイが部屋に広がった。
「はぁ……ソトミチくんの匂い、すごい……」
俺のズボンを下ろすためにしゃがんでいた山本さんの目の前には、勃起した俺のペニスが反り立っている。
無意識だったのか山本さんは鼻を亀頭に近づけて、その裏側に付着している粘液のニオイを嗅ぐと、顔を蕩かせて秘部からとろりと愛液を漏らした。
「だいぶ汗をかいたからな」
この暑い時期に長いこと外で過ごしていたため、いつもより発汗量が多く、そこに山本さんの焦らしが加わった結果、パンツの中は雄のニオイで充満していた。
「ずっと窮屈そうだったもんね」
自分でやっておいて他人事のように俺の肉棒を愛撫する山本さん。
汗まみれのパンツの中で長時間勃起させられるのはかなりしんどかった。
「そのせいか、股のあたりが痒いような、ひりつくような感じで。もしかしたらかぶれたりしてるかも」
「そうなの? どうしたらいい?」
山本さんは期待の眼差しで俺を見上げてくる。
バスで焦らされたのは俺だけではなくて、山本さんも俺のペニスを咥えたくて仕方がなかったはずだ。
「デリケートな部分だから、できるだけ染みない方法で汗を取りたいかな。我慢し通しでもう限界だから今すぐお願いしたいんだけど」
「そう言われても……染みないようにって言われたら、人肌ぐらいの温度で触れるしかないし……今すぐって言われると……お口で舐め取るぐらいしか……」
それぐらいしか思いつかない。
そんなはずはないのだが、今の俺たちはそういう思考回路をしている。
もうそれでよかった。
「なら舐めてもらっていいかな」
「ソトミチくんのためになるなら、したいけど……それだと、ふぇら……みたいで……」
「いいから。頼むよ」
「そ、そうだよね。急がないとだもんね」
強引に迫った分は俺の責任になる。
だから、山本さんは素直に願いを聞き入れてくれて、俺の腰を掴んでペニスに顔を近づけた。
その嬉々とした従順ぶりに尻尾を振っているのが見えるようだった。
「どこを舐めればいいですか……?」
「いまは、ちょうど股の間が辛くて。足の付け根の内側のあたり」
「付け根っていうと、このあたりかな」
山本さんは少し俺に足を開かせて、金玉の横側から鼻面を突っ込むと、舌を伸ばして俺の股下を舐め始めた。
「んっ……んんっ……へろっ……むちゅっ……」
舌を出し入れして股の奥から陰嚢の裏までを丹念に舌で愛撫する山本さん。
鼻から大きく息を吸い込んで、精液の臭気を堪能しながら、ペチャペチャと卑猥な音を立てて股座に顔を埋める。
「うっ……いいよ……山本さん……」
山本さんのエロさはその容姿の艶やかさからくるものだけでなく、献身的な可愛さにドロドロの淫乱さを混ぜ合わせているからこそ強烈に性欲を掻き立てられるもの。
その卑猥さは屋外でのエッチを通してさらに強まっていて、これほど乱れた姿を俺以外に見せたことはないだろう。
そもそも、俺以外の男が相手ならバスでの焦らし行為すら耐えられず、射精をして終わってしまっている。
山本さんからしても、俺がこうした行為が好きだというある種の信頼があるからこそ、ここまでの素を晒してくれるのだ。
このエロさが俺が引き出した山本さんの魅力だというのならば、男としてこれほどまでに誇らしいことはない。
「もっと全体的に汗を舐めとってもらえると嬉しい」
「はむっ……うん……」
山本さんは唾液が漏れそうなぐらい口を広げて睾丸を含み入れ、絶妙な愛撫で陰嚢全体を舌で舐め回す。
常人なら痛みを与えてしまうであろうその行為も、山本さんにかかれば性感帯全体を刺激する絶技に変わった。
「山本さん……ああっ……すごい、イイっ……」
山本さんが俺の玉袋を舐めて、勃起したペニスに遮られたその顔面に、悦びの表情が滲んでいる。
鈴口からトロトロと溢れ出した先走り汁がツーと糸を引いて、山本さんの頬に垂れ落ちてもなお、山本さんは構わず玉フェラを続けてくれた。
山本さんはパンツを脱いだだけで、Tシャツはまだ着衣したまま。
上から見下ろすその姿はTシャツの裾でギリギリ秘部が隠れていて、そこからスラッと伸びた生足がほぼ丸見えになっている。
なぜだかはわからないが、そんな絵面を眺めていると無性にムラムラした。
「や、山本さん……そろそろ先っぽの方も……」
山本さんに思い切りフェラチオをして、いつもみたいに美味しそうにペニスにしゃぶりついてほしい。
「んっ……ちゅっ……、先っぽも汗でかぶれちゃった……?」
もはやエッチをすることが最優先になった俺にとってはペニスを咥えてもらえればなんでもいいのだが、理由があってエッチを拒んでいる(ことにしている)山本さんとしてはそうはいかない。
だから、どんな行為をするにも理由が求められた。
「それは、だな……」
しかし、このやりとりを面倒なものだとは思わなかった。
なぜなら、俺はあの美優とずっとエッチをしてきたのだ。
むしろこうして謎の抵抗をされると燃えてくる。
「ボタンが擦れたせいか痛くて。股のとこは山本さんに舐めてもらって楽になれたから、竿もお願いしたい」
「そうなんだ。なら、頑張るね」
山本さんは優しいので、ペニスが痛くなったら優しく舐めてくれる。
我慢汁の滴る精液の出口を、山本さんはカリ裏まで丹念に舐ってから口に含んだ。
「あああっ……やっぱ、すごい……気持ちいい……!」
フェラなら昨日もしてもらったはずなのに、山本さんもフラストレーションが溜まっているおかげか舌捌きがエゲツなくて腰がガクつくほどだった。
射精をせずとも精子が少しずつ漏れ出していて、それを味わうように山本さんはディープスロートで竿の全体を吸い上げてくる。
「あっ……ああっ……ッ……!?」
俺の身体に異常が起こり始めたのはそこからだった。
いや、正確には、もうとっくに俺の脳はおかしくなっていて、それが肉体へと顕著に表れ始めたと言うべきか。
射精しそうだった。
山本さんの口内に精液を思い切りぶちまけたい欲望が噴き上がって、それと共に強烈な射精欲が俺の下腹部を襲っていた。
「ん、んちゅ……ちゅぶっ……ぐっ……ちゅっ……じゅるる……っ!」
フェラをする大義名分を手に入れた山本さんは容赦がなく、一心不乱に俺のペニスを味わうことだけに集中している。
隆々と屹立したペニスが根元まで山本さんの口に丸呑みにされているその景色が、俺の脳内を酷くエロティックにさせていた。
「ソトミチ、くんの……ふぐっ……んぶちゅ……じゅるっ……きょうは……ひゅごくおっきぃ……んっぐっ……」
肥大化したペニスを、これまでないぐらいに苦しそうに、懸命にフェラをする山本さん。
亀頭は喉に入りっぱなしで締め付けられ、裏筋はぬるっとした舌で撫で回されるのがはっきりとわかるぐらい、山本さんは力強く俺の肉棒をしゃぶっている。
その様は飢えた動物のようでもあり、生殖と無関係の行為であるという面では非野生的で、フェラこそが人間特有のエロさであることを再認識させられた。
そして、雌を孕ませることができるわけでもない口の中に、射精をすることも。
「じゅるっ……ちゅぶ、じゅるるっ……んっちゅ……んぐっ……!」
「ああぅあっ……山本さん……俺、もう……!!」
限界をあっさりと超えてしまった。
俺の体はいつもとすっかり変わっていて、今日は射精を我慢しなければならないのだと、そう悟った瞬間にはもう遅かった。
「出るッ……出るッッッ!!」
「んっ、んんっ!?」
山本さんは驚いて、以前に空からイキを繰り返した俺のことだから、まだ耐えられる余裕があると判断して口を離そうとした。
しかし、もう尿道にはカウパー腺液が打ち水のように塗り広げられていて、あとはもう精液が押し流されてくるだけの状態。
脳からの発射命令は下っているし、Tシャツを着ている山本さんに精液を掛けるわけにはいかないという想いが強く働いて、気付けば俺は山本さんの頭を両手で掴んでいた。
「出すよ、山本さん……飲んで……!!」
「んんんーー!! んっー?!」
ドピュドピュッと遠慮なく山本さんの口の中へと放出された精液は、無許可で口内射精したという事実を認識した瞬間に爆発的に興奮が高まり、追い打ちのように濃い精液を山本さんの舌に垂れ流していった。
「うっ……ううっ……んぐっ……!」
俺のペニスを奥まで咥えたまま、頬を膨らませないと溜めきれないほどの精液を出されて、山本さんは肺を引き攣らせながら俺の射精を受け止めた。
しかし、
「うぶっ……げほっ……!」
山本さんの反応も予想だにしないものだった。
俺の精液をどうにか飲み込もうと頑張っていた山本さんが、手のひらを器の形にしたかと思うとそこに精液を吐き出してしまったのだ。
「ううっ……ごめん……」
気管に入ってむせたわけではなく、拒絶反応から吐き出してしまったようだった。
手の受け皿に溜まった白濁液を、それでも懸命に飲もうとする山本さんだったが、体が拒絶してしまっているので口を近づけることもできない。
そんな山本さんの姿に俺も申し訳なくなって、何としてもごっくんしようとする山本さんをなだめて洗面所にまで連れて行った。
「あぁ……ソトミチくんの濃いのが……」
蛇口を捻って山本さんの手を水で洗い流す。
分離させた卵の白身を捨て去るように、ドロっとした半透明の液体が排水溝へと消えていった。
「ほんとにごめんね」
ベッドに連れ戻した山本さんは意気消沈して力なく俺に抱きついてきた。
俺が飲んでもらうのが好きだからというのもあるだろうが、山本さんまでもが精液を飲めなくなったとなれば、あとはもう俺の精液を口で処理できるのは美優だけになる。
そのあたりの悔しさなんかもあったのだろう。
「不味すぎて飲めるものじゃないってみんなに言われてるから」
「そうだけど……なんで今日は飲めなかったんだろう……」
意気消沈する山本さんの疑問に、俺の脳内では一つの答えが出ていた。
俺の精液を飲んだときに言われる「苦い」には味覚としての不味さの他に、俺の精子が体に合わないために引き起こる生理的な拒否反応がある。
味だけが問題ならどれだけ苦くても山本さんは笑顔で飲み込んでくれただろうが、残念ながら俺の精子の適合者は美優しかいないようで──美優は俺の精液を不味い不味い言うが吐き出そうとする素振りすら見せたことがない──、俺が興奮して濃い精液を出すほどみんな極端に苦さを感じるようになる。
これまで山本さんが飲めたのは、俺の射精に美優をオカズにした負い目があったからで、つまりはまだ飲める程度の薄さだったというだけのこと。
それが飲めなくなったのであれば、その結論は至極単純なところに落ち着く。
「山本さんのこと、好きになりすぎたのかも」
山本さんが好きすぎてかつてないほど精子が出てしまったという以外になかった。
「へっ……?」
涙を引っ込めて驚く山本さん。
俺が相手を好きになるほど精液が苦くなるという関係性は、山本さんの頭の中でもすぐに結びついた。
「じゃあ、その、おっきいのも……ソトミチくんが私のこと好きってこと……?」
山本さんは射精前と変わらない勃起を維持する俺のペニスを指差す。
それについては俺も戸惑っていた。
まるで薬でも飲んだかのように肉棒が怒張している。
こんなにも竿が重たくなったのは、美優を相手にしたときでさえあったかどうか。
ただ、ひとつ確実に言えるのは、山本さんと植物園を回っていたときに感じたトキメキに似た何かが、俺の性欲を突き動かし続けているということ。
だからきっと山本さんの言う通り、俺は山本さんが好きで勃起している。
「山本さん」
「は、はい」
俺は山本さんの両肩を掴んで、そのフィギュアのように可愛らしい顔と美しい体を眺める。
美優とは違って、がっしりとした体型に搭載されたその肉という肉は、見るだけで柔らかさがわかるほどにキメ細かくて色っぽい。
万人を慈しむような優しい目尻の曲線も、あらゆる欲望を受け止めてくれそうなふくよかな乳房も、いまはもどかしいほどに魅力的に映る。
「山本さん。俺……」
ビクンビクンと猛る俺の肉棒。
この女性とセックスしたいと性本能が叫んでいる。
「山本さんが好きだ」
これまで伝えてきたものとは違う。
衝動からくる「好き」の告白だった。
「それは…………あー……う~…………」
山本さんはデレっとした顔をゆるゆるにして、それから両手で顔を隠す。
何かを聞きかけたようだが、それを上回るほどの照れ恥ずかしさがあったようだ。
純情に染まって足をバタバタさせる山本さんと、ヤりたい衝動を抑えきれない俺と。
男女の悲しい宿命である。
「山本さん。そこに寝て」
俺は山本さんの体を倒して、ベッドへと横たえる。
俺が上半身を入れて山本さんの脚を開かせると、その意図を察知したのか、山本さんはごくごく軽い力で俺を押し返した。
「そ、ソトミチくん、わかってる……? さっきのは、結果的に出ちゃったけど、今日はエッチ禁止だって……」
満更でもなさそうに、それでも抵抗しないわけにもいかない山本さんは、正常位の形になってしまっていることに一応の異を唱える。
「山本さんが可愛い過ぎて。本当はバスに乗ってるときから山本さんとセックスすることしか考えてなかった」
「ふぇ……えぇ……」
山本さんはニヤけたいのを我慢して、むず痒そうな真顔で歪んだ口を閉ざす。
こうして俺が抑えきれなくなってセックスに至るのは計画の範疇だったはずだが、それでもこれだけ新鮮な反応をしているのは、山本さんも自分の感情がこれほど揺さぶられると思っていなかったからだろう。
あんな手練手管を持っているくせに、本気の恋には純情なところも山本さんの可愛いところだ。
「だから、これから山本さんとセックスする」
俺はティッシュ箱の上に置いてあったコンドームの袋を一つ取って、中身を取り出す。
山本さんは緊張した面持ちで、ゴムの装着が完了したペニスに視線を落としていた。
そうして、俺が山本さんに覆い被さり、亀頭が蜜口に沈もうかというときだった。
「待って。それは挿れたら、ダメな予感が……」
山本さんが秘所を両手で押さえて行為を中断する。
これまでの形だけの抵抗とは違って、明確に躊躇している喋り方だった。
性欲の限界だった俺はその意味を深く考えることもなく、イキリ立ったイチモツを山本さんの膣内へと挿入した。
「ああっ……ぐっ……あっ、ああんっ!!」
直後、山本さんは背中を反って嬌声を上げた。
それはほとんど絶頂に近い感じ方だった。
「ひゃっ、あっ、だめ、ああっ……ん、ああっっ!」
久しぶりの山本さんの膣肉の柔らかさに、俺は歓喜のあまり腰を何度も打ち付けていた。
以前よりも山本さんの感度が格段に良くなっていることなど気にすることもなく、山本さんの体の大きさに対して丁度よいサイズになったペニスを肉壁いっぱいに擦り付けて、猿のように盛った腰の動きで肉槌を打ち下ろす。
「山本さん……気持ちいい……ッ!! あああっ……山本さん……好きだっ……もっと……イッて……!!」
「んぁあぅっ……んっ、あっ、あっ、あああっ、だめ……いひゃ、らぇ、ひゃっ……ああんっあっ!!」
ペニスを奥深くまで突き刺せば、先端に子宮の硬さを感じる。
そこを何度もノックして絶頂の催促を入れると、山本さんはその要望に応えるようにイキ狂った。
「まっ、まって……これ、ちがっ……あっんんっ……きもひよひゅぎぃっ……ああっん、あああぅぁあっ!!」
久しぶりのセックスがそんなに気持ちいいのか、山本さんは快楽に溺れるのを恐れるように、俺の体を押し返して抵抗する。
その意思にノーを突きつけるように山本さんの腕をベッドに押し付けて、あとはめちゃくちゃに腰を振るだけで山本さんはイッた。
セックスを止めようとする腕の動きとは真逆に、俺のペニスに快楽責めされている山本さんの下半身は素直になっていて、両脚は俺を逃すまいと腰に巻きついている。
もう男の生殖器を受け入れてしまっているのだから素直になってしまえばいいのに、なぜか山本さんは無意味な抵抗をし続けている。
「ひゃぁ、ら、らめっ、ああんんぐっ、あっ……んんあああっ、あんっ、あ、あああっ!! そ、とみちっ……くんっ……とめ、ひぇ、ああっんっ、ああっ、ひゃっ、んああああっ!!」
ペニスを出し入れすれば山本さんがイく。
その享楽に浸ってしまってた俺は、山本さんのビクビクと痙攣する体を愛おしく抱きしめて、山本さんのお願いも、自らの筋力の疲労さえ無視して、ただひたすらに山本さんを犯し尽くした。
「山本さん…………山本さん……ッ!!」
なによりその衝動は熱烈な愛情によって生まれていた。
今日までのデートを通して山本さんに抱いた好意の全てをぶつけなければ気が済まなくて、俺は繰り返し想いを叫びながらセックスを続ける。
そうして、山本さんの喉から乾いた音が聞こえ始めた頃に、自然とやってきた射精の衝動。
「ううぁあっ……山本さん、もう……ダメだっ……イキそう……!!」
「ぁあぁっ……ゅぐっ……イッ……アアッ……そ、とみちっ……くんッッ……んンンッ!!」
「もう出すよ、山本さん、あ、ああっ……!!」
最後は腕の力いっぱいに山本さんに抱きついて、俺はその柔らかな肉に包まれながら山本さんの膣内で射精をした。
さきほど山本さんの口に出した量を超える精液がコンドームに注がれたのだと、ペニスを抜いて確認しなくとも体感でわかるぐらいの射精量だった。
「うっ……ううっ……ん、あっ……」
山本さんは俺の射精後もしばらくイキ続けて、ペニスを引き抜くと愛液と空気が一気に漏れ出してグジュりと下品な音を鳴らした。
いまの山本さんにはそれを恥ずかしがるほどの余裕すらない。
そんな息絶え絶えの山本さんを見下ろして、俺の背中には冷たい汗が流れていた。
形だけの抵抗をする山本さんと、なんだかんだで楽しくイチャラブセックスをするだけのはず。
それなのに、俺はいつしか山本さんを犯すことだけに夢中になっていた。
それはこれまで由佳を相手にやってきたことと同じように。
女の子を強引にイかせまくることだけを目的とした一方的なセックスだった。
(こ……これって……)
コンドームを外して、なおもそそり立つ剛直を目にしたとき、俺は戦慄した。
俺が山本さんのことを好きになったのは事実で、その想いがこれだけペニスを肥大化させているのは間違いない。
だが、それだけではなかったのだ。
美優に調教された俺の体は、形式上とはいえ山本さんをレイプすることになったとき、山本さんへの好意を相乗効果として交配欲求を爆発的に昂らせた。
美優の指示で由佳を犯した、あのときのように。
「はぁ……うぅぅ……ソトミチくん……」
ようやく意識のはっきりしてきた様子の山本さんが体を起こす。
「ソトミチくんのエッチ、すごすぎて、私……」
山本さんは何かを言いかけて、そして、俺の勃起したままの肉棒を視界に入れると、わずかに奥へと身を回避した。
「ソトミチくん……どう、しちゃったの……?」
まるでサイズの変わらない肉棒に、山本さんも怯えている。
本来であれば俺がこうして性欲を持て余すのも山本さんの計画通りだったはずだ。
ここに至るまで散々俺を煽ってきたのは、こうして無理やりセックスをさせられたかったからに他ならない。
俺が性欲を抑えきれなくなって、山本さんに迫って、情けなく腰を振る俺を宥めながら、最後には愛のあるセックスをする。
そうしたシチュエーションを思い描いていたのに、現実は獣の如き暴れっぷりで快楽地獄を味わわされた。
結果として、俺から本気の恋を引き出そうとした山本さんが、それに成功してしまったがために墓穴を掘ったことになる。
偶発的にそうなったわけではない。
おそらくは、ここまでが美優が思い描いていた図式のうち。
山本さんが直前になってセックスを止めようとしたのは、計画外に絶倫状態になった俺を見て、この身体に仕込まれた美優の作意を感じ取ったからだったんだ。
「自分でも、不思議なんだけど」
それを理解したところで、山本さんが好きな想いと、犯したい欲望は変わらなかった。
俺はどうしたって山本さんが好きで、そのことになぜか一切の負い目がなくて、このパンパンに血液が詰まったペニスでもっと山本さんの膣内を掻き回したかった。
「山本さんのことが可愛くて仕方ないんだ」
俺は枕の上に座る山本さんに近づいて、二個目のコンドームを手に取った。
そして、迷わずにそれをペニスへと装着する。
「それは、嬉しいけど……今日はエッチ禁止だから……!」
山本さんは俺の脇を抜けて、四つん這いになって俺から距離を取ろうとする。
俺はその後を追いかけてお尻を鷲掴みにした。
「とりあえずこれだけ鎮めさせてくれ」
「そとっ、ソトミチくんは、そういう人じゃないよね!?」
山本さんの言う通り、俺の人間的本質はマゾ寄りなので、これは美優の策略によって後付で与えられた性的衝動だ。
それは俺が山本さんを相手に自然と射精していることからも証明されている。
だからこそ一層にタチが悪い。
俺がそこに免罪符を見出してしまうからだ。
要するに、これは美優本人と、美優を本気にさせた山本さんが悪いので、俺のレイプは正当化されるということ。
「すぐ終わらせるから。挿れるよ、山本さん」
「え、あ、だめっ……だめえっ……!」
雄の生殖器を欲しがるようにグパッグパッと伸縮する蜜口に、俺は後背位で肉竿を挿入した。
「うっ……はあぁぁ……! 気持ちいい……っ!」
「あああんっ、あっ、ああアアッ……!!」
挿れた瞬間から体をガクつかせて、支える力を失った山本さんの腰を持ち上げてペニスを打ち付ける。
「あっ、ひやっ、だめっ……! こんなのぉ……だめ、なの……ああん、んあ、ああうぅっ!!」
自らの肉棒の硬さを顕示するように。
山本さんの柔らかい膣肉の隅々にまでペニスを擦りつけて、抉るようにストロークさせていく。
もとより体力があったわけでもない俺は、呼吸も筋力も限界近くなって、それすら快感になって山本さんを犯し続けた。
「ああううぅ……あっ……ああアアっ……ひぃ、ああぁぅ……ああンンッッ!!」
快楽が脳天にまで響き渡ってしまっている山本さんは、言語らしい声を発することもできなくなった。
そんな堕ちた姿がまた愛らしくて、まだまだ俺のペニスがパンプアップされていく。
「ひぃぁああっ、ん、あああっ……!! ああひぃいうんぐっ、がはあふっ、んあっ……ああんんうぅあっ……!!」
ひと突きするごとに山本さんの嬌声が更に激しくなり、涙に頬を濡らしながら悶絶する山本さんの表情を見て、どうしようもなく堪えがたい射精欲が湧き上がってくる。
それでも即座に射精にまで至らなかったのは、この体がまだ山本さんを犯し足りないと感じていたからだった。
それはもはや使命感のようでもあり、しかしその実態は、美優が俺の体を使って間接的に山本さんを犯していると言うほうが適切だ。
俺一人の力でこんなに山本さんをイキ狂わせられるはずがない。
だから、こんなにも簡単に山本さんがイクようになったのは、俺のせいではなく美優のせいだ。
それだけではない。
強引に俺を引き剥がそうと思えば山本さんになら簡単にできたのに、山本さんはそうしなかった。
たとえそれが確実に美優への敗北に近づくとわかっていても。
つまりは山本さんは、もう俺とのセックスがやめられないぐらいに俺のペニスに嵌ってしまっているということ。
故に、完全無罪。
完全合意のレイプだ。
「ああんあっっ……あひぁああぐっあっ……!! んんっ、んあぁううぅあっ……アアッ、ンンンぁああっ!!」
「山本さん……イッて……もっと……!!」
そこにはもはや相手を気持ちよくしようなどという気遣いはなく、俺は更に数十分をかけて山本さんを犯した。
山本さんは四つん這いの姿勢も維持できなくなってベッドに沈み込み、それでも俺は寝バックの体勢で強引にペニスをねじ込んで、全身をプレスするようにピストンを繰り返す。
そして、大袈裟ではなく山本さんの絶頂回数が百を超えた頃。
山本さんは全身を痙攣させる力さえなくして、そこで俺はようやく射精に向けた挿入として、ペニスの重さをすべて子宮に叩きつけながらコンドームの中に精液を撒き散らした。
「あっ……ああっ……ぅっ……」
目も虚になった山本さんをうつ伏せのままベッドに寝かせる。
ペニスを引き抜くと、先端に精液が溜まりすぎていたのかコンドームが外れてしまい、膣口からはポコポコと中出しをしたかのように白濁液が流れ出てきた。
それをティッシュで拭ってきれいに取り去ったところで、俺は全身の疲労感にベッドに倒れ込んだ。
今日だけで体に蓄えていたエネルギーのすべてを使い切ってしまった気がする。
明日になれば筋肉痛で二日は寝たきりになりそうだ。
「うっ……トイレ……」
しばらくして意識を取り戻した山本さんが、なんとか体を起こして、まずはベッドの縁に座った。
そして、脱衣所の奥にあるトイレに向かおうと、立ち上がった。
そのときだった。
「えっ……わっ……! うそ……ッ!?」
筋力の一切が言うことを聞かず、数秒ほど脚をプルプルとさせて持ち堪えていたものの、山本さんは耐えきれずに床にペタンと座り込んでしまった。
「やっ、ヤダっ……待って、あっ、ダメッ……!!」
緊迫した声に切なさが混じって、山本さんはシャツを両手で思い切り下に引っ張るが、そんな行為に意味はなく。
「どうした!?」
俺が駆け寄ったとき、山本さんは泣いていた。
顔を真っ赤に染め上げた本物の羞恥からくる涙だった。
床一面が水浸しになっていて、その範囲はなおも広がり続けている。
山本さんは口をギュッと一文字に結んで俯いていた。
「あっ……、と、とりあえず、タオルを……!」
俺はとっさに脱衣所からタオルを取ってきて、湯上り用のバスタオル一枚を残して他を床に敷いた。
ほんのりとレモン色が広がり重たくなっていくそれを、なんとも言えない気分で俺は見つめる。
「うぅ~……ソトミチくん……」
潤んだ目で俺を見上げる山本さん。
そんな顔をされても俺にはどうしようもないのだが。
もう自力で立ち上がることもできなくなった山本さんの腕を引っ張り上げて、ふとももから伝う聖水──山本さんは聖女なので──を気にしないようにお風呂場まで連れて行ってから、俺は給湯のボタンを押すだけしてまたベッドルームへと戻った。
山本さんがシャワーを浴びている最中に洗面所とベッドルームとを何度か往復して、最後には消臭剤を撒いてどうにか気にならない程度に掃除を終わらせる。
もう疲労困憊でこのままベッドで寝てしまいたい気持ちを振り払い、風呂場の様子を確認することに。
山本さんは広いお風呂の端っこで、まるで田舎によくある正方形の風呂桶にでも入っているかのように、小さく膝を折って体育座りしていた。
「入ってもいい?」
「うん」
大丈夫かと聞くのも忍びなく、しかし一人にしておくよりは何か紛らわせたほうがいいかと思ったので、俺も一緒に入ることにした。
シャワーで軽く汗を流してから、山本さんの正面に、俺も膝を折って風呂に入る。
「はぁ」
落ち込んではいるが怒っている様子はない。
まあこの人を怒らせるなんて相当なものだろうが。
「まさかこの歳でおしっこを漏らしてしまうなんて……」
山本さんは湯船の床を指で詰りながら呟く。
美優のときみたいにトイレでならここまで落ち込むこともなかっただろうが、ホテルのカーペットを水浸しにしてしまったとなれば心の傷も相当に深いだろう。
「もうお嫁に行けない」
山本さんはちょっぴり恨めしそうに俺を横目で睨む。
美優のように本当に心にくるような厳しい目ではなく、可愛らしく不満を訴えかけてくるようなその表情は、男心がくすぐられて嬉しくさえなってしまう。
「ソトミチくんが責任を取ってくれたら何も問題はないんだけどね」
「そうしたい気持ちはあるんだけどな」
俺のその返答に、山本さんはごく僅かな落胆の色を顔に滲ませて、それからまた普段通りの優しい雰囲気に戻った。
山本さんが泳ぐように俺に近づいてきて、膝を突いて脚を伸ばすように要求してきたので、それに従うと山本さんは俺の膝を跨いで両手を俺の首の後ろに回してきた。
「どうだった? 無理やりシた感想は」
山本さんは意地悪な顔でそう訊いてくる。
どうにもバツが悪くて俺は目を横に逸らし、それでも好奇心の収まらない様子の山本さんはずっと見つめてきた。
やがて俺も観念して答えることに。
「してる最中は楽しんでたのかもしれない。でもやっぱり俺は、山本さんに優しく抜いてもらうほうが好きかな」
「男の子って挿れてるほうが好きなんじゃないの?」
「普通の人はそうなのかもな。俺は経緯が特殊だから、本番行為にそれほどロマンは感じないというか」
俺にとっての初エッチは、美優の口に精液を注ぎ込んだあのときだ。
佐知子に童貞を貰ってもらうまではずっと自分でシゴいて美優に精液を飲んでもらっていて、だから俺にとってはその行為が特別な意味を持ってしまい、挿入以上に興奮するプレイになっている。
「そうなんだ。でも、私もなんだかんだで、ソトミチくんにご奉仕してるほうが好きかも」
山本さんはフッと笑って、俺の身体に胸からお腹まで手を滑らせていく。
やっぱり山本さんと言ったらこの包み込むようなエロスだ。
「挿れてもらってると、愛は感じるけどね」
山本さんは綺麗な瞳で正面から俺を見つめてくる。
山本さんにとってまともな本番の経験は俺しかない。
だからそう感じられた相手も俺しかいないわけで。
それが恋人としての愛だったかはわからないけど、俺が山本さんを大切にしている気持ちはたしかに伝わっていたらしい。
それをこれからの人生で形にしていけないのは申し訳なくもあり残念でもある。
俺には、そう思えるだけの余裕があった。
「今回も美優ちゃんにしてやられちゃった」
「俺もこうなるとは自分でも予想外だったよ」
俺は間違いなく山本さんが好きで、その山本さんは誰もが羨む美人で、そんな子が全裸で俺と触れ合っている。
そのうえに、山本さんも俺のことが好きで、他では味わえないほどの極上の性快楽もセットにしてそれを伝えてくれている。
にもかかわらず、俺はただ、それらのことを冷静に認識しているだけだ。
それが意味することなんてもう一つしかない。
俺はこの天才的で比類なき美の女神を相手に、精神的優位に立ってしまっている。
その結果として、俺の山本さんが好きな気持ちは強まる一方、感情は俯瞰しているというか、落ち着き始めていた。
愛を深めながらも恋を遠ざけるを実現した一つの形。
美優の指示を受けていた俺自身、こんな風になるなんて思ってもみなかった。
「でもね、ソトミチくん」
山本さんも今日の結果がどうなったかは理解しているはず。
それでも、山本さんはいつもと変わらない様子で、その顔には偽りのない笑みが浮かんでいた。
「それでもまだ、ソトミチくんは私か美優ちゃんか、あるいはその両方を選ぶことになるんだよ」
山本さんが語った不可思議。
選ぶという行為に付随する、俺が迷う余地がそこにはまだあるのだと、そうはっきりと口にした。
「どういう意味なんだ?」
「んふふ。美優ちゃんとデートすれば、思うところがあるんじゃないかな」
山本さんはそう言って、俺の手を引っ張って立ち上がった。
風呂からはもう出るようなので、栓を抜いて脱衣所に戻り、バスタオルを使い回しして体を拭いてから着替えることに。
美優とのデートについては、昨日も妙なことを言われたっけ。
山本さんとデートするほど楽しくはならない、というのが本当であれば、たしかにそれは大問題だし、あるいは山本さんを必要とする可能性にもなるかもしれない。
そりゃ美優は山本さんほどイチャラブはさせてくれないだろうが、美優とのデートには美優とのデートなりの楽しさがあるはずだ。
「ところでソトミチくん」
二人が着替え終わったところで、山本さんはベッド横の湿ったカーペットを一瞥してから口を開いた。
「私がお漏らししたのは、絶対に誰にも言わないでね」
いつにない強い目つきで山本さんがお願いしてきた。
「もちろん、口外するつもりはないよ」
「ほんと? 誰にもだよ? 美優ちゃんにも言っちゃダメだからね? 墓まで持っていってね?」
山本さんはグイグイと体を寄せて念押ししてくる。
立ち直ったようでまだかなり気にしているらしく、このダメージはしばらく引きずりそうだ。
「わかった、わかったから」
この美貌にしてお漏らしをする女子高生だなんて、また山本さんの魅力が増してしまったわけだが、これは本人には言うまい。
「ソトミチくん」
念押しにじとーっとした目で山本さんに見つめられる。
俺はこうした思考が表情に出やすいのだろうか。
気をつけなくては。
ホテルを出て、帰りのバスに乗り込んだ俺たちは、二人席に並んですっかり暗くなった夜空を何気なしに眺めていた。
美優の指示もあって色々とやってきたわけだが、山本さんはこの状況に何を思っているんだろう。
当初は恋を満足させるためにイチャラブして、今では俺と本気の恋をするためにデートをして、その未来にはまだ俺と暮らしていく道を見出しているわけだが、どうにもそこに山本さんらしさが感じられない。
今日のデートもとても楽しかったし、山本さんらしい一面もたくさん見れたわけだけど、それは“もし山本さんと付き合えたら”という仮定に基づく非現実であって、平常の生活リアルではないんだ。
言葉悪く言えば、美優から俺を奪おうとしているわけで、成否のいずれであれ山本さんが心から望む結果が得られるとは思えないのだが。
「次のデートはどうするんだ?」
俺が尋ねると、山本さんは真っ暗な窓に映る俺と目を合わせて、それからこちらに向き直った。
「どこかテーマパークに行きたいな。海が近くて、景色のいいところ」
楽しそうに答える山本さんに、陰りのようなものは見えない。
「アトラクションメインより、ショーとかがある方がいいのかな」
「あ、そうそう。花火が上がるとこなんかがあれば、ソトミチくんと一緒に見たいなーって」
山本さんはウキウキとした笑顔で、あれやこれやとしたいことを口にしていく。
俺は罪滅ぼしになるのであればなんだってやるつもりだが、はたして山本さんは本当に今を楽しめているのだろうか。
「山本さんはさ、美優のことはどう思ってるんだ?」
「ん? それは私と美優ちゃんが勝負みたいなことをしてることへの質問?」
「まあ……そうなるな」
さすがに見透かしてくるか。
核心を聞かせてくれるのであれば願ってもないことだが。
「そうだなー。ソトミチくんの奪い合いになっちゃってはいるかな。それが望まれてたし、今となっては美優ちゃんにとっても必要なことだから」
「美優のためにやってるように聞こえるな」
「今となっては、ね」
山本さんは人差し指を立ててウインクする。
これまでのデートは、山本さんに一方的に押し付けられた、失恋までの執行猶予のはずだったが。
「美優ちゃんは私のために。私は美優ちゃんのために。お互いを想って、本気でソトミチくんを狙ってるの」
「俺の立場は……?」
「可愛い女の子二人に取り合いされて幸せじゃない?」
山本さんはさも当たり前のように切り返す。
以前にもそんな理屈を平然と並べ立てる女がいたな。
「仮に俺が山本さんのことを好きになりすぎて、もう離れて暮らせないってなったら、どうなるんだ?」
「それはもちろん、美優ちゃんは身を引いてソトミチくんを差し出すか、三人で生きていく道を選ぶことになると思うよ?」
「えっ」
それはない。
あれは義理に厚い生き物だから、しばらくの期間は俺の体を他の女の子に預けているけれども、独占欲は人一倍に強くて、本人だって俺が他の人とセックスするのは絶対に嫌だと言っていたんだ。
「お互いに全部が計画通りじゃないんだよ。それぞれに予想外があって、その過程で、自分の将来のために必要なことに気づいて。それは私と美優ちゃんが本気になって、初めて手に入るものだから、こうなってる」
最初っから置き去りにされっぱなしだったというのに、まさか知らずのうちにそんなところまで行っていたとは。
それが事実ならこれまでの山本さんの言動にも説明はつくが、なんだってそうややこしい解決しかできないんだあの妹は。
「そこに勝ち負けがあるとなったら、ソトミチくんは美優ちゃんがどんな人間かはよく知ってるよね?」
「生半可な覚悟ではやらないだろうな」
犠牲なく相手に同じレベルのものを求めない。
それが人生に関わる大事なものであっても。
美優はそういう人間だし、そういう生き方しかできない。
一般人の価値観とは覚悟の度量が違う。
「大変な妹を好きになってしまったものだ」
「男前だよね。だから私、美優ちゃんのことは、大好きだよ」
それが最初の問いへの返答。
二人は決していがみ合ってはいないんだ。
いまはそれがわかっただけでも良しとするかな。
「デートができる日はまた後で連絡するよ。とりあえず数日は筋肉痛で動けそうもない」
「自分で処理できなくても美優ちゃんがいるもんね。私のことをデリバリーしてもいいけど」
「ほんとにそういう貞操観だけは希薄だな……」
俺の周りに真っ当な女の子はいないものか。
佐知子かな。
今は佐知子が恋しい。
「あ、いま浮気した?」
「もうそんなこと言ってられる状況じゃないと思うが」
「ふふっ。そうだね」
俺は背もたれに体重を移して長く息を吐く。
美優にとって必要なことって何だろうな。
きっとまた俺が気付かなきゃならないことなんだろうけど。
直接それを言わないってことは、実感が持てなければ意味がないものなんだ。
それが美優とデートをすればわかることなら、そうするまで。
俺は美優と恋仲なのだから、まず誰よりも美優とデートするべきだ。
むしろなぜまだしてないんだ俺は。
いや俺のせいか。
決断力の無さを他人のせいにしてはいけないな。
よし次は誰が何と言おうと絶対に美優とデートするぞ。
水族館と温泉のデートだ。
「んっ……ふぁ……やばい、眠気が……」
「起こしてあげるから寝てもいいよ」
優しく頭を撫でられて、霞んでいた視界が暗く狭くなっていく。
「ねえ、ソトミチくん」
明らかに図ったタイミングだった。
その言葉に反応する必要を与えず、俺にその意味を考えさせないために。
俺が眠りへと誘われる直前、山本さんは穏やかな声音で呟いた。
「本気の恋に懸けられるのは、同じ価値の一人だけなんだよ」
お互いのための奪い合いだなんて、どれだけ体のいい形容をしようとも、それは決して水を浴びせ合うような微笑ましいものではなかった。
この二人が求める互いに足りない何かが、いったいどんなものなのかはわからない。
それでも、いまの俺には、そのために俺が求められていることはわかる。
そのどちらもが俺にしか与えられないものだというのなら、この体はいくらでも使ってもらおう。
そして、俺も考えるんだ。
この大切な二人を幸せにする、最善の方法を。