※この作品はR-18です。

俺の妹が最高のオカズだった   作:風見 源一郎

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お兄ちゃんの好きなところ

 

「んっ──、お兄ちゃんの部屋だ……」

 

 俺のベッドで目を覚ました美優が、眠たい目を擦りながら起き上がった。

 寝起きに弱い美優でもすぐに俺の部屋だとわかるぐらいに、美優もこの部屋で過ごすことに慣れたらしい。

 兄妹としての関係に落ち着いているので──特に美優からの兄妹で愛し合いたいという要望が強く──仕方ないといえば仕方ないのだが、恋人としての関係性の進展としては地味だけど嬉しい変化だった。

 

「おはよう。休めたか?」

「うん。……えっと、まだ夜だよね? 私、なんで寝てたんだっけ……?」

 

 美優は寝ている間に着せられていた俺のTシャツとスウェットを不思議そうに眺めている。

 ドレスは着たまま寝かせるのは、シワになるし美優も寝づらいだろうしで、俺が着替えさせておいた。

 ついでに体もある程度は綺麗にしてある。

 さすがに奥に溜まっている精液を掻き出すまではできなかったが。

 

「あっ……そうだった! お兄ちゃんとの約束があったのに、ごめんね! すぐにシャワーを浴びてくるから……!」

「いいって、ゆっくりしてきなよ」

 

 時刻は夜の十時を回った頃。

 日付が変わるまでの約束だったので、時間が無駄に過ぎてしまうことにはもったいなさもあったが、存分に楽しめたし美優も疲れただろうしで、俺も美優が起きたらまたセックスをしようとは考えていなかった。

 ゴスロリ衣装で中出しを懇願する美優がエロすぎて、もうほとんど出てしまったこともあるしな。

 だから、余った時間で楽しめることを楽しめればいいと、俺は思っていたのだが、やはりというか義理を重んじる美優としてはそうはいかなかったようで、部屋を飛び出して体を洗いに行ってしまった。

 

 俺は美優が寝ている間にご飯も済ませて、風呂にも入って、余った時間にネットサーフィンをして暇を潰していただけ。

 それも、ちょくちょく美優の寝顔を眺めていたら、時間が過ぎるのなんてあっという間だった。

 

「──お待たせしました。時間がかかっちゃってごめんね。お兄ちゃんのが……なかなか流れきらなくて……」

 

 慌てて戻ってきた美優だったが、部屋でまた二人で落ち着く頃には二十三時を過ぎていた。

 化粧を落としたりスキンケアしたり、特に髪の毛を乾かすのには時間がかかったようで、そこに俺から中出しされまくった膣内部をキレイにするという作業も含まれていたとなると、文句も言えない。

 

「ご飯はいいのか? 軽いものなら、ゼリーなりサラダなりあっただろ?」

「そこは大丈夫。お兄ちゃんに中出しされすぎてまだお腹いっぱいだから」

 

 胃袋と子宮にはそんな関連性があったのか。

 まあこの妹をして今さら驚くことでもないが。

 

「それより、お兄ちゃんはいいの? 約束の期限まであと一時間もないよ?」

「エッチに関してはもうかなり満足してるからな。でもせっかくだし、できることはさせてもらうかな」

「ぜひぜひ」

 

 美優は意外にもノリノリだった。

 せっかくの機会だから、という想いは美優にもあるのだろう。

 アソコを舐められて、コスプレさせられて、中出しされまくって、そうしたプレイも、美優からしたらあのチケットを渡した時点で想定済みだっただろうしな。

 美優だってこの状況を楽しんでいるんだ。

 

 風呂から上がった後も、美優は下着以外は俺の服を着ている。

 お堅く見えてこの妹も彼シャツとか俗っぽいものが好きだった。

 

 そうした美優らしさは気づきにくいところにも随所に現れている。

 たとえば、こうして話をしているときだって、いつものようにベッドの縁に腰をかければいいものを、俺より頭を低くするために美優は好んで床に正座をしている。

 屋外では意識して俺の半歩後ろをついてくるタイプだからな。

 愛する男に従っている自分という在り方が、美優にとってはしっくりきているみたいだ。

 

「なら、また一つ命令があって。正直に答えてもらっていいかな?」

「……嘘偽りなく答えることが命令?」

「その認識で合ってるよ」

 

 起きてすぐエッチをしようとは考えていなかった。

 でも、もし日付が変わる前に美優が起きたら、命令をしてでも聞こうと思っていたことがあった。

 

「美優って、俺のこと好き?」

 

 俺の問いかけに、美優は何を言われたのかわからない様子で、大きな眼をパチパチとさせた。

 

「答える前にそれを聞いた理由を教えてもらってもいい?」

「トイレで、エッチしてたときとか、舐めてたときとか。だいぶ、嫌いとか、好きとか、言われたし……本音のところは、どっちだったのかなと……」

「あー、なるほど」

 

 美優はしばらく考え込んで、口を開く前に立ち上がって、俺と席を代わるように目で訴えてきたので俺はベッドに移ることにした。

 それから美優は机の棚からルーズリーフを取り出して、ボールペンで何かを書いてから一枚めくってそこに円を描き、俺の正面でペタン座りをすると俺にそのノートを見せてきた。

 

「ん? 丸? 好きって意味の、オッケーマークか何か?」

 

 なぜ言葉にして教えてくれないのだろうか。

 俺からすれば慣れたことなので別に構わないのだが、どう理解してやればいいのかわからない謎行動に、俺がしげしげとノートを眺めていると、美優は解説を挟むことなく丸の中に縦線を入れた。

 

「えっ……なんだ……天気記号でもないだろうし……、ってなると、やっぱり、嫌いって意味?」

 

 俺が不安になっているところで、美優は円の左半分を斜線で塗りつぶした。

 そして、そこに矢印を引いて、その矢印の根本に文字を書いた。

 

『どうしようもないシスコン』

 

 まさかの罵倒だった。

 

「いや、ごめんて。でも、しょうがないだろ。美優が相手だと性欲がどうにもならないのは体質なんだし。恋人になった今ではむしろ望ましいことんだと思うんだけど……」

 

 美優はいつだか言っていた。

 自分は一生で一人しか愛せないタイプだから、捨てられたら死んでしまうと。

 そのせいで、俺が由佳や山本さんと関係を持っている間には不安があって、それが解消された今だからようやく俺とラブラブになる決心がついたのだと。

 であれば、俺がどうしようもないほどのシスコンなのは、美優にとっては望ましいことのはず。

 

 そうやって考えを巡らせているところで、美優は残りの半円を更に半分にするように横に線を引いて、次はその下半分を格子状の線で塗りつぶして新しい矢印を伸ばした。

 矢印の根本にはまた新しい文字が書き込まれる。

 

『毎日エッチのことばっかり考えてる』

 

 コメントが追記されるたびに申し訳ない気持ちになった。

 美優のことを女の子として大事にしたいとは思っているのだ。

 それでも、夏前と比較して何倍にも増幅してしまった性欲を持て余しておくことはできないし、美優以外の女の子で発散するわけにもいかないし。

 そもそも俺をここまで絶倫にさせたのは美優なので、その責任は恋人として取ってもらわなければならない。

 

 要はすまないとは思っているが改めるつもりもないのだ。

 これからも毎日俺の性欲は美優に処理してもらう。

 それが俺たち兄妹にとって最重要の決定事項だ。

 

 そして、四分の一になった円の残りを、美優はまた半分にして、その下側を雑に塗りつぶして三本目の矢印を足した。

 

『プレイの要求が普通に気持ち悪い』

 

 ズンと胸にきた。

 否定のしようがないマイナスだった。

 妹にアソコを舐めさせてくれとこれだけ頼み込んでしまったので、これは仕方のないことと言える。

 

「あの、美優? 俺の良いところが書かれる余地が、あと八分の一しかないんだが?」

 

 俺に対する文句なのか、彼氏としての評価なのか。

 ともかくとして、俺の印象が書き連ねられているその円の残り八分の一に、美優は最後の矢印を伸ばして四つ目のコメントを書いた。

 

『お兄ちゃんとしての色々』

 

 雑っ……。

 

「まあ、なんだ。俺も、これまでやりすぎたとは、思ってるからさ。美優とは、これから恋人として、先のことを話し合っていきたいというか……」

 

 せめて、エッチは二日に一回ぐらいに留めておいた方がいいのかとか、考えたこともあった。

 それでも、射精量が多い方が美優は喜ぶので、美優のためだとも考えて俺は毎日のようにエッチをしてきた。

 しかし、ここまではっきりと言葉にされてしまうのでは、やはり性欲を抑える方法を考えるべきなのかもしれない。

 

 と、ようやく日々の行いを省みることにした俺に、美優はルーズリーフのページを一枚戻して、恥ずかしそうに顔を隠しながら、最初に書き込んでいた文字を見せてくれた。

 

『お兄ちゃんの好きなところ』

 

 ルーズリーフの上から顔の半分だけを出した美優と目が合った俺は、まさかの告白にドキッとしてしまった。

 

 ついさっきまで俺は罵倒されまくっていたはずなんだが。

 そう思って美優に近づいて、ページを捲ると、どうしようもないシスコンだとかなんだとか、俺が先ほど認識したままの文句が書いてあった。

 

「えーっと……。俺のこと、好きなの?」

 

 最初の質問に戻って、俺が改めて美優の本音をうかがうと、美優は照れ顔に目尻を下げながらようやく口を開いた。

 

「お兄ちゃんのことは大好きです。これ以外に答えはありえません」

 

 どストレートな愛の告白に、俺は自分で赤面しているのがわかるくらいに体が暑くなってきた。

 さっきまで不安でいっぱいだったのに、好きだと言った美優からの本気が有り有りと伝わってくる。

 こんな可愛い妹に愛され過ぎているな俺は。

 

「この、どうしようもないシスコンっていうのは、まあ両想いの証だからいいとして……、いつもエッチのばっかり考えてるとか、プレイの要求が気持ち悪いとかは、普通に悪口では……?」

「それはですね」

 

 美優は照れ顔を直すように咳払いを挟んでから話を続ける。

 

「お兄ちゃんの性欲を相手にするのは大変ですが、これがなくなった生活を考えると寂しくて仕方がないので、好ましい部分として考えています。……それに、その…………私も……したいので……」

 

 どちらかというと最後のが本音だろうな。

 エッチが好きな妹でよかった。

 

「その次のは?」

「お兄ちゃんのエッチの要求が気持ち悪いのは本当に気持ち悪いと思っているので、記載の内容は偽りのない事実です」

 

 うん、まあ、そうだろうな。

 そうだろうと思っていたよ。

 

「でも、お兄ちゃんとエッチするのは楽しいし、少なくともそうしたプレイは私からはお願いできないから、感謝している面もあって」

「別に、美優からエッチのおねだりをしてくれても、いいんだぞ?」

「それは……まあ……考えてはいるから……」

 

 美優はまた小声に照れを滲ませる。

 エッチに正直になることについては、美優も努力をしてくれているのだ。

 だから、俺としては焦ることもないし、急かすつもりもない。

 

「ってことは、俺がしたいことは、どんなエッチなことでもとりあえず美優にお願いをしてみればいいわけだな」

「いえ、無理なものは無理なので。一度きりの人生だからとどうしてもご所望なのでしたら、奏さんにしてもらってください」

 

 まさかの切り返しだった。

 そこは「どんなプレイでもお申し付けください」ではないのか。

 

「山本さんをどんな扱いしてるんだ……」

「変態プレイ専門かつお兄ちゃん専用の性処理係?」

「酷いな!?」

「ご、ご本人がそう仰っていたので。私自身は、奏さんのことは人として尊敬しています」

 

 美優は慌てて注釈を足して、メッセージでのやり取りでも証拠があると教えてくれた。

 まあ山本さんに頼んでしてもらえない変態プレイはないだろうしな。

 

 ちなみに、美優は今でも山本さんと密に連絡を取り合っているらしい。

 しかも、恋人である俺に隠れるように、こそこそとだ。

 いったい何について話をしてるのかな。

 浮気とかじゃないよな。

 別に山本さんとしてても俺は怒らないけどさ。

 

「ともかく、美優に愛されてるのはわかったよ」

「愛しておりますよ」

 

 美優は淀みなく口にして、その表情は得意げだった。

 照れ照れな美優もよかったが、夫婦然として愛の言葉を囁き慣れている妹というのも、また風情があって良い物だ。

 

「兄としての色々ってのは、少々複雑だったがな」

「そこは私としても難しいところで」

 

 美優はルーズリーフを机に戻して、俺の横に座った。

 

「具体的にどこが好きっていうのは難しいんだよね。たとえば、いまの私たちって、イチャイチャしてるじゃない?」

「間違いなくイチャイチャしてるな」

 

 誰が何と言おうと俺たち兄妹のイチャイチャはこうなのだ。

 適切な距離感での、適切な言葉の投げ合い。

 それと同時に、恋愛経験が少ない俺たちにとって重要な、恋人としての相手の気持ちの埋め合いをして、お互いの好きを実感している。

 

「こういう事をしてるときのお兄ちゃんの対応が、私にとってはちょうどよくて。お兄ちゃんと一緒にいると、気楽だし、楽しいし。正直、そこが魅力的すぎて、あとはおまけみたいなところで」

 

 美優は「エッチに関する部分はまた別ですが」と小声で付け加えた。

 

「だから、言葉にするのは難しいだけで、本当はいつも好きだなって思ってるんだよ」

 

 美優の声は澄んでいた。

 このイチャましいやり取りの中で、心と一緒に口も頬もほぐれてきたようだ。

 他人には理解されなくとも、俺たちは順調に愛を育んでいる。

 

「好きって言葉ぐらいは言ってくれてもいいんじゃないか?」

「それは、だって。恥ずかしいもん」

「……そういうことならさ」

 

 大量の中出しを決めたときみたいに、美優がエロエロモードになっているときでもなければ、お兄ちゃん好き好きちゅっちゅをしてもらうことは難しい。

 美優だって恋人だからもっと好意は口にするべきだとわかってはいて、これまで蓄積されたクールな自分という壁が、それを難しくしているのだとも、俺はわかっている。

 

「美優にもっと好きって言ってもらいたい。残りの時間で、それが命令……ってことで、いい?」

 

 俺からの、お願いに近い命令に、美優は不思議そうに首を傾げた。

 

「命令で口にした好きなんかでいいの?」

「いいんだよ。美優からしたって、命令だから仕方ないって思えるだろ?」

「それは、まあ、そうだね」

 

 美優は俺を見つめてきた。

 

「じゃあ言うね。……好き」

「うん、いい調子」

「お兄ちゃんのこと好きだよ」

「俺も美優のことが好きだよ」

 

 見つめあって、想いを伝え合って。

 口にした後で脳内にこだまする自分の声に、照れ恥ずかしくなる。

 ただ、これだけでは、心の距離を詰めるには足りない。

 

「キスも、頼む」

「はいはい」

 

 美優は「しょうがないなぁ」という顔で承諾してくれた。

 でもそれはいつものような嫌がりながらの渋々の承諾ではなくて、美優からも「ようやく調子が出てきたね」と俺を励ましてくれるような表情だった。

 

「お兄ちゃん、好きだよ」

 

 美優はそう言って、俺の頬に両手を添えて。

 唇に、そっとキスをしてきた。

 

「もっとしてほしい」

「……はい」

 

 美優は義理堅くて、俺の命令を絶対に聞かなければならないから。

 即承諾するのが当然だった。

 

「んっ……ん、ちゅっ……はぁ……。お兄ちゃん、大好き。ずっと好き」

「俺も美優が好きだ。一生、愛してるから」

 

 キスをしては、見つめ合って、想いを伝えて。

 その想いを確かめるためにまた、俺たちは唇を重ねる。

 

「美優。もっと」

「んふっ。何回すればいいの」

「日付が変わるまで、ずっと。何度でも」

「わかった。じゃあ、命令のまま従うね」

 

 美優は俺に抱きついて、チュッとキスをして、俺をベッドに押し倒して舌を奥まで絡ませてきた。

 

「好きだよ、お兄ちゃん……んっ……はぁ……ちゅっ……ん……大好き……お兄ちゃん……好き……んむっ……はぁ……」

 

 永遠にも似た長いキスではなくて。

 キスをしては、見つめ合ってを短く繰り返し、息継ぎの代わりに愛を囁く。

 お互いの情熱が絡み合って、それは生殖器を繋げ合うことなんかよりずっと恋人らしいセックスだった。

 

「んっ……ちゅっ……美優…………好きだ………………、あっ」

 

 気にするつもりなんてなかったのに。

 目に入ってしまうと、どうしても意識してしまって。

 俺の気持ちが一瞬だけ落ち着いたのを感じとった美優からも、キスが止んだ。

 

「ん? どうしたの?」

「ああいや、その……時間が……」

 

 美優が俺の命令を聞く期限として定めた深夜零時の直前になっていることを、壁掛けのアナログ時計を見て気づいてしまった。

 美優がこうして好き好きしてくれているのは俺の命令があってのことなので、時間を過ぎてしまえばその効力は無くなってしまう。

 無論、気づきさえしなければ二人でこのままラブラブの世界に入り込めたのだろうが、約束は約束、というのが俺たちの中で大事な遵守事項だったので、ある意味ではこれは必然的にもたらされた中断だった。

 

「どうして気づいちゃったの」

「ごめん、つい、目に入っちゃって」

 

 美優もこのやりとりを楽しんでいたから、俺が時間のことに気づいてしまったことには不満そうだった。

 

「時計、取って。お兄ちゃん」

 

 美優に指示されて、俺は壁掛けの時計を外して美優に渡した。

 美優はその背面を確認して、衛星通信を切るボタンを押してからツマミを回し、分針を反時計回りに一周させた。

 そして、それを俺に手渡してきた。

 

「時計が壊れている気がしたので直してあげました」

 

 俺はまだ美優とのイチャイチャタイムに戻れるようだった。

 

 その気持ちは、嬉しい。

 

 でも、このままだと、俺たちはずっと最初の頃のままな気がした。

 

「美優。これは、間違ってないよ」

 

 俺はスマホの時計を確認して、分秒まできっちりと揃えてから、また衛星通信のボタンを押した。

 それを壁にかけてから、またベッドに戻る。

 

「……もう、しないの?」

 

 美優は不安げに視線を仰いできた。

 

 したくないわけがない。

 理性的なままの美優に好きと言われながらのキスなんて、次はいつしてもらえるかわからない至福の時間なのだ。

 だがそれは、俺からの絶対命令があるから、美優がしてくれているだけ。

 美優の本心がどうあれ、今の状況はそういうもの。

 でも、充分に恋人らしくなった俺たちなら、そんな誓約がなくともできる気がした。

 

「美優。また、俺のことを好きって言って。キスしてくれないかな?」

 

 その瞬間に、日付が変わった。

 美優もそのことは気づいていた。

 

 美優は視線をそらして、ギュッと胸の前で拳を握って、即座に否定の言葉を返してくることはなかった。

 俺だってもう、美優が俺のことを好きでいてくれているのは知っている。

 それでも美優としては、時間のことなんて気にせずに勢いのままに済ませてしまえば、たとえその最中に日付が変わっていようと、なんだかんだと言い訳をして全部を俺のせいにすることもできたのだ。

 でも、美優も約束の効力がなくなったことを認識してしまっているので、もうそれもできない。

 

「俺は美優のことが好きだよ。一人の女の子としても。妹としても」

 

 今度は俺から告白をして、美優の頬に手をかけた。

 そして、精一杯の勇気を込めて、美優の唇にキスをした。

 

 唇を離すと、美優は、嬉しそうにして照れた。

 

「私だって、お兄ちゃんのこと好きだもん。お兄ちゃんとしても、男の人としても。だから……」

 

 んっ──、柔らかい紅が触れて、吐息だけが抜けて。

 触れ合った口づけは、もう離れることがなかった。

 

「お兄ちゃん……好き…………これからも、もっと……いっぱいキスしたい……んちゅ……ちゅっ、ぷちゅ……へろっ……あむっ……んっ、んんっ……はぁ……大好き……」

「んむっ……ちゅぅ……っ、はぁ……美優……んっ……好きだよ……美優……」

 

 ベッドに移動する時間さえ惜しく感じるほどに、互いの口内をまさぐって、舌を吸い合う。

 射精の代わりに分泌される唾液を美優に貪られて、俺はそのお返しに最奥までねじ込んだ舌で口内を舐り、ビクビクと性感に震える美優の反応を堪能する。

 美優に精液を飲んでもらう関係が始まってからも、それどころか、恋仲になってからでさえほとんどキスをすることがなかった俺たちにとって、兄妹でキスをするという行為は生殖器での触れ合いよりよっぽど背徳的だった。

 

 セックスは快楽を享受するための行為として割り切れる。 

 一方的にキスをするだけなら、それだってプレイの一部としても思うことができた。

 でもこうして、互いを乱暴なぐらいに抱きしめて、息を乱しながら舌を絡ませていることは、俺たちが兄妹でありながら男と女として繋がっている何よりの証拠だった。

 

 きっとこれからも俺と美優にとってキスをすることは、兄妹として──その兄妹という関係をダシにして気持ちよくなっている、ふしだらな兄と妹の関係として、背徳感を感じるための愛情の確認行為になるのだろう。

 

 それは最終的には性欲という形に還元されて、俺の精液量を増幅させていく。

 密着する腹部に服の中で勃起した肉棒が割り込むまで時間はかからなかった。

 

「んっ……むっ……はぁ……んんっ……っ……あぁ……み、美優……ごめん、また、出したくなってきた……」

「んん~……んっ……もう……あれだけ妹の膣内に射精しておいて、まだ出したいの……?」

 

 俺を軽く叱る美優は、だらしない笑顔だった。 

 男である俺は勃起という形で目に見えて興奮しているのがわかるが、美優だってもうパンツを替えなければならないぐらいに愛液を漏らしてぐちょぐちょになっているはずだ。

 

「お兄ちゃんは実の妹を相手に性欲ばっかりなんだから」

「ごめんな。出せるものは出したはずだったんだけど、これだけキスをされるとさすがに興奮は抑えられないみたいで」

「へーそうなんだぁ。ふふふ」

 

 美優は俺をギュッと抱きしめてきて、それから、襲いかかるようなキスをしてきた。

 

「ちゅぅっ……はむちゅ……ぢゅるっ……ぷはぁ……。でも、そんなお兄ちゃんも、好き」

 

 美優は嬉しそうに勃起したペニスを撫でている。

 絶倫じみた性欲の強さは美優にとって好ましい俺の一部分だ。

 なにせ体質のせいとはいえ俺をこんな体にしたのは美優自身だからな。

 

「射精できるかはわからないんだけど、挿れてもいい?」

 

 俺は美優の股座から指を這わせる。

 キュロットパンツの上からでさえ湿っているのがわかった。

 

「今日は特別に、私から挿れてあげる」

 

 床に寝転された俺は、その上で下半身の衣類を脱ぎ捨てる美優を眺めていた。

 美優がこんなに積極的にセックスをしてくれる日が来るなんて。

 初めて精液を飲んでもらったときには想像さえできなかったのに。

 

 俺の方もパンツをずり下ろされて、美優は俺の勃起したペニスでぴっちりしたアソコの肉を自ら広げていった。

 見るからに狭そうな膣の入り口に、サイズだけは立派になった俺の肉棒のエラ張った亀頭が、無理矢理に押し込まれていく。

 竿の硬さ任せに膣口をこじ開けたら、あとはたっぷりの潤滑油のおかげで膣道を貫通するまではすぐだった。

 

「ああっ……あっ……ああああっ!! お、お兄ちゃん、のっ……おっきいのが…………入ってくる……っ!!」

 

 美優は苦しそうにしながらも顔を綻ばせて腰を上下に動かす。

 騎乗位に慣れていない動きが、美優にしてはぎこちなくて、そんな姿が愛おしかった。

 

 最初は一生懸命に膣壁でペニスを擦ってくれた。

 勢いをつけて、AVの真似事みたいに四つん這いになって、腰を前後にくねらせながら肉棒を搾り上げていく。

 それが続いたのは三十秒ほどで、挿入して即射精しそうになる早漏男子みたいに、その後の美優は動きを止めての休憩を挟みながら、またひと擦りしては止まってを繰り返す。

 膣から受ける刺激に耐えるのに必死なのもあっただろうが、美優にとって我慢しなければならない最大の苦痛は、そこではなかった。

 

「ふあっ、っ、はぁ……お兄ちゃんので……奥ぐりぐりしたい……」

 

 美優にとって、俺とのセックスにおける性感帯はGスポットではなく子宮にある。

 その入り口に触れないように杭打ちをするのは、美優にとって耐え難い焦らしプレイなのだ。

 美優以外で射精しない体質の俺が、これまでのエッチで味わってきたような空イキ地獄のようなもの。

 俺のためだから美優は頑張ってくれているが、もう美優の脳内は俺のペニスを膣の最奥に届かせるために腰を下ろしてしまいたい欲求でいっぱいになってるはず。

 

「奥で擦ってもいいよ。でも、腰は止めないでもらえると嬉しい。俺も射精したいから」

「う、うん……わかった……」

 

 美優は俺からの許可を半ば命令のように受け取って、床に手のひらをいっぱいに広げて体を支えてから、お尻を俺のペニスの根元に当たるまで下ろしてきた。

 

「うぎゅっ……うっ、あああっ……か、かたい……おっきいぃ……!! んっ、んんんっ、あっ、あひゅごひっ、奥……ぐるっ……うっっ……!!」

 

 それからの美優は大きく腰を上下させることはせずに、ゴリゴリと子宮に肉棒を押し付けるような動きに切り替えていく。

 美優は濡れやすい体質だから、セックスをするときにいつもアソコがグチュグチュいって、普段はそれを恥ずかしがって隠そうとするのに、今では自分で腰を振って卑猥な音を立ててくれている。

 

 俺にエッチな姿を見られることを少しずつ許してくれていた。

 美優が進んで騎乗位をしてくれているというだけで奇跡なのだ。

 俺は衝動的にペニスを突き上げたくなるのを我慢して、美優の不慣れな騎乗位に心を震わせながら身を任せていた。

 

「はぁ……ひゅごぃろ……んんっ、あっ、あっ、あだめっ……っ……!! ふーっ……っ…………!! アアッ……ぅぅ、じぶんれうごかひてりゅろに……ぃ、イッ……いひゃうっ……ぅ、ぁああっ、アッ、アアッ……!!」

 

 自分ので腰を振りながら喘ぐ美優は、まだ何分と繋がってもいないのに、もう呂律が回らなくなっていた。

 

 イクたびに膣内がギュッと締まって、美優は動きを止めて膣痙攣が収まるのを待ち、落ち着いてから力を振り絞ってどうにか腰を持ち上げる。

 しかし、引き抜くペニスのカリに膣壁を擦られて、美優はまた抗いようもなく絶頂してしまった。

 イキすぎて疲労の限界を迎えた脚から力が失われて、今度は美優の意志とは関係なく腰が結合部にグジュッと落ちてくる。

 するとまた美優はイッて、ぜんぜん俺のペニスを膣で擦れないことに泣きそうになりながらも、懸命に体に鞭を打って動かして、また俺のペニスに嵌まってはイクの繰り返しだった。

 

「ごめっ、らひゃい……おにぃひゃん……ぅ、うぐっ……わたしっ……ばっかりイッて……でも、もうむり…………イかせられ、なくて……ごめんな、さいっ……」

 

 絶頂のしすぎて体力を使い果たして、美優は腰を振れなくなってしまった。

 もう可愛いし締まりが良すぎるし犯したいしで滅茶苦茶にしてやりたかったが、そんな身勝手な性衝動より、いまの俺は兄としてエッチに素直になった妹のためにありたかった。

 

「ありがとう、美優。俺ももう少しでイクから。あと少しだけ頑張ってイかせてほしいんだ」

 

 俺がそうお願いをすると、美優はまた「うぅ……わかりました……」とツラい体に無理を利かせて、限界を迎えた身体でなおも動こうとしてくれる。

 

「もう動くのはツラいだろうから、また……キスを、してくれないかな? たぶん、それでイけると思う」

「キス……? いいの? えへへ。それでいいなら、いくらでもできるもん」

 

 美優は俺に倒れ込むようにして顔を近づけてきて、首に腕を回してから舌を入れてきた。

 口内の器官が擦れるたびに美優が性懲りもなくイッて、俺の首ごと抱きしめてくる腕が力んで呼吸が苦しくなる。

 その分だけ俺は美優からの愛情を感じて、口内に送り込まれる唾液が精液に変換されていくように、美優の膣内で肥大化する勃起は射精を熱望してそのサイズと硬さを増していった。

 

 俺も射精のときが近づいていた。

 膣内でペニスがビクつくたびに、狭い膣道を押し広げられた美優が快感に喘ぎ声を上げる。

 その悲鳴にも似た嬌声が俺の性欲を爆発させて、ビクッ、ビクッ、と跳ね上がる肉棒の先端からお漏らしをするような我慢汁が溢れて、俺の精子の排出を感じ取った美優の絶頂が止まらなくなった。

 

「あああっ、ああっ、んっぐぅううあっ!! ああんあっ……おにい、ちゃん……っ!! い、イクっ……い、くっ……んっ、ううっ、んああっああっあっ……と、とまりゃいぃ……っ!!」

 

 キスを続けることさえできなくなった美優に、俺は最後まで責任を果たさせようと頭を抱きしめて舌をねじ込んで、劣情の限りに舌をかき混ぜるその最中に、びゅくびゅくッびゅくぅッ──!! と精液を注ぎ込んでいった。

 

 美優は俺に射精された刺激で最後にまた激しくイって、ぐったりを気を失って倒れる美優を抱き止めようとした俺の体は、もうイメージした通りには動かなかった。

 もう出ないはずだった体に無理に射精をさせて、限界を超えてしまった俺は、脱力に頭をゴツんと床にぶつけたその衝撃で夢の世界にまでトんでいってしまった。

 

 ──それから俺が目を覚ましたのは、夢の中でまでキスをしまくっていた美優とのイチャイチャによって、夢精のスイッチが入った直後だった。

 

「あっ……ヤバっ……!!」

 

 目覚めと同時にペニスがビクビクと脈打って、その精液は裸で繋がったまま寝ていた美優の膣内に吐き出された。

 コンドームのような役割をしている美優のおかげで、床を汚さずに済んだわけだが、まさか朝まで騎乗位のまま下半身裸で寝てしまうなんて。

 セックスでかいた汗と冷房で体が冷えてしまっている。

 

「んっ……ふぁ……うぅ…………お兄ちゃん……」

 

 中出しをされて目を覚ました美優が、気怠そうにしながらも体を起こした。

 そして、俺が夜と朝で二度も中出しをしたお腹をさする。

 

「お兄ちゃんの精子が泳いでる気がする」

「美優ってマジに精子を感じられるの?」

「寝起きはさすがにわからないよ」

 

 寝起きじゃなきゃわかるのか。

 美優のブラコン体質も大概だよな。

 

「精子って何日もかけて卵子を目指すじゃない? ということは逆に、ほぼ毎日中出しされてる私のお腹の中でお兄ちゃんの精子が泳いでない日はないのかも」

「それを言われると恐ろしくもあるな……」

 

 あれだけ大量射精している俺が言えた義理ではないが。

 美優が嬉しそうに子宮を労っているので止めるとも言えないのだった。

 でも、頻度についてはいつか真面目に話し合わないとな。

 今は比較的に暇な学生の身分だからいいけど、大学生社会人となって忙しさに追い込まれたときにはエッチなんてしていられなくなるだろうし。

 

「んふふっ」

 

 急に美優の表情が緩んで、一晩が経った朝からも美優は上機嫌だった。

 

「どうかしたか?」

「朝からお兄ちゃんに中出ししてもらえるなんて、これまでで最高の目覚めかも」

 

 美優は乳首の勃った巨乳を腕で挟みながら照れ笑いした。

 たった一晩で妹がこんなにエッチになってしまうとは。

 

「美優は俺のこと大好きだな」

「大好きだよー、お兄ちゃん。んーっ」

 

 美優はデレデレな顔で俺にチューをしてきた。

 昨日からの勢いで、半分くらいは冗談のつもりで言ったのだが、美優はすっかりお兄ちゃん大好きモードになっている。

 俺が中出しをしたから、というのとは少し違う気がした。

 

「美優もだいぶ積極的になったな」

「これまで言えなかった分を伝えておかなきゃだからね。だから、好きって言ってほしかったら、いくらでも言ってあげるよ」

 

 美優は「えへへー」と力の抜けた笑みで俺に抱きついてきて、今度は舌を伸ばしてディープなキスをねだってきた。

 なにかがおかしい、と俺はこのとき直感的に思っていて、それは美優からのねっとりした口づけが行われた瞬間に、確信になった。

 

「んっ……ん、美優……! 口の中、熱っ!」

 

 冷え切った体との温度差で、火傷しそうなほどという表現が過分でないほどに、美優の口内は高熱になっていた。

 

「それはお兄ちゃんへの愛情のせいではないでしょうか」

 

 美優はなおもニコニコしている。

 可愛いけれどこれは看過できない。

 

「とりあえず、まずは服を着て、体温も計るからな」

「大丈夫だって」

「いいから、ほら」

 

 美優は俺に命じられて渋々と服を着て、それから自室に戻って前開きの薄手のパーカーと体温計を持ってきた。

 結果は七度五分という、元々体温の高い美優からしたら微熱程度のものだったが、それでも無理をさせることはできない。

 今日からまた土日休みでよかった。 

 

「昨日は俺まで寝ちゃってごめんな。美優に布団ぐらいかけられればよかったんだが」

「いいって、大したことないし。私だって私の管理ぐらいするもん」

「それでも昨日の状況はまた別だろ? 俺がもっとしっかりしないと……」

「ああっ、だから、そういうのは、なしでお願いしたくて……!」

 

 美優はパーカーのチャック部分を両手で引っ張って抗議の意を示す。

 前を閉めると乳袋が目立つのでチャックを上げることはほとんどない。

 

「昨日はせっかく楽しい一日だったのに。嫌な思い出みたいにしちゃヤダ」

 

 美優は俺にしがみついて甘えてくる。

 それは確かに美優の言うとおりだ。

 気遣いってのはなにも、謝罪一辺倒で済むものではないんだよな。

 

「そうだな。じゃあ、今後は気をつけようか」

「うん!」

 

 美優は花が咲いたようなパッとした笑顔になった。

 熱の影響があるとはいえ、ここまでデレるのは昨日のことがあったからだろうな。

 俺たちもいよいよ恋人らしくなってきたか。

 

「熱でも食べられそうなものと、念のために解熱剤を持ってくるから。美優は自分の部屋で待ってろ」

「はーい」

 

 美優は手を上げてルンルンと自室へと戻っていく。

 熱を出すこと自体が稀だから、微熱程度であんなに理性が溶けた状態になるとは思わなかった。

 今朝の中出しも効いてないわけではないんだろうけど、エッチの最中でなくともああもデレてくれるなんて、風邪が治っても二人きりのときぐらいはデレてくれると嬉しいんだがな。

 

(えーっと……余った薬はどこに入れてたかな……)

 

 リビングに下りて、テレビ横の棚に重ねられたケースを上から順に漁っていく。

 薬局で貰って使わなかった分はこの辺りにしまってたはずだが。

 

「こーちゃん、何してるの?」

 

 そうこうしていると母親が寝室から出てきた。

 まだ休日にしては朝早い時間なので父親は寝ている。

 

「美優が熱を出したから。解熱剤が欲しくて」

「それなら、ここにまとめてあるから」

 

 母親が解熱剤のシート一式をそこから取り出して、俺に渡してくる。

 それを俺はありがたく頂戴しようとしたのだが、かなりの握力で掴まれているので、取ることができなかった。

 

「こーちゃん」

 

 母親は怒るでも叱るでもない、呆れたような表情だった。

 

「もう少し静かにやりなさい」

「えっ……え、うそ、き、聞こえてた?」

 

 たしかに深夜のやつは美優とイチャラブするのに夢中で声を抑えるとか考えていなかった。

 さすがにまずかったよな。

 

「もしかして、父さんにもバレた?」

「お父さんにはあんたが大音量で変なビデオを見てるって話にしてるけど」

「そうか……。父さんは、美優とのこと、どう思うかな」

「さあね。見る限りでは勘付いてすらいなさそうだけど。昔から何を考えてるかわからない人だから、折りを見て話すことね」

 

 母親からも明確に俺から告げろとのお達しが出てしまった。

 これはますます先のことを考えておかないとな。

 

「それはそうと、騒がしくするのはやめてね。お父さんまで盛り上がっちゃって大変なんだから」

 

 満更でもなさそうに母親が注意をしてきた。

 夫婦仲の手助けができるなら喜ばしい限りだが。

 

「母さんだってまだ若いんだし、いい機会じゃないか。声とかは気をつけるようにするけどさ」

 

 俺がそう返すと、母親はむすっとした顔で黙った。

 こういうとこは美優に似てる

 

「あんたね。このままじゃ二人目の妹ができることになるわよ」

 

 ギクっと、身体の芯から震えた。

 母親は俺を若いうちから産んだので、出産のリスクを考えてもまだ大丈夫なぐらいだから、家族が増えること自体は歓迎したい。

 でも、美優みたいなのがもう一人生まれたら、十年後にはきっと俺の人生が崩壊することになる。

 

「子供作るかどうかは、母さんたちの自由だけどさ。三人目は男の子がいいんじゃないか」

 

 俺は硬い笑顔でそう告げた。

 性別を選ぶことなどできないことはわかっている。

 わかってはいるのだ。

 

「そうね、次は男の子がいいかしらね。美優ちゃんみたいに可愛い男の子だったら嬉しいわ」

 

 母親は頬に手を添えて微笑む。

 美優レベルの可愛い男の子だと。

 それはそれで何かの間違いが起こりそうだから勘弁してくれ。

 

「と、とにかく、次からは気をつけるから」

 

 俺は冷蔵庫からエネルギー飲料だけを取り出して、逃げるようにリビングを出た。

 美優の部屋に入ると、美優は布団にくるまっていて、なにやら苦しそうにしている。

 

「熱、上がってきた?」

「わかんない。お兄ちゃんが測って」

 

 美優は布団を退けるとTシャツを捲り上げて汗ばんだ肌を晒した。

 なんだか、エッチだな。

 

「──三十八度か。しばらくは安静だな」

「お兄ちゃんは大丈夫なの?」

「今のところはな」

「へえー。体が強くなったんだね。頼もしい限り」

 

 美優と山本さんとのセックスで、日が経つごとに俺の体は強靭化している。

 性欲は持て余して大変な限りだが、男として頼り甲斐のある成長ができているのなら、それに越したことはない。

 

「今日は俺も家にいるから。美優の気が散らないようならできるだけこの部屋にいるし」

「ありがと。一緒にいて……眠くなったら、寝るまで手を繋いでくれると嬉しいな」

 

 美優はベッドの縁に背中を預ける俺に抱きついてきた。

 あんなことをした後なので、もう今更になって風邪が移るからだとか気にすることもない。

 

「明日も家にはいるつもりだから。必要なものがあったら何でも言ってくれ」

「明日も明後日も明明後日もでしょ。今は一秒だってお兄ちゃんと長く一緒にいたいし、一日だって離れたら死んじゃうもん。これから毎日欠かさずチューだからね。約束だからね」

 

 美優がおっぱいで首を挟むようにギュウギュウと高体温を押し付けてくる。

 風邪が治るまではエッチができないのだから勘弁願いたい。

 

「わかってるよ。俺にとって美優より優先するものなんてないから。ずっとそばにいる」

「えへへー。やった。お兄ちゃんが近くにいてくれるから安心して寝られそう……んっ……ふあっ……んんっ……」

 

 美優は俺に手繋ぎを要求してきて、まだしばらくは眠りにつきたい様子だった。

 俺は両手で優しく美優の手を握り返して、その寝顔を眺める。

 

 熱が下がったらどうなるのかな。

 少なくとも、美優は以前よりは素直になってくれると思う。

 だから、それをゆっくりと楽しむとしよう。

 

 月曜日からも、しばらく放課後は直帰しないと、美優に怒られそうだな。

 

 その次の休みは、美優とデートがしたい。

 どこかに泊まりに行ってもいいし、とにかく先のことを考えると、楽しみしかない。

 

 そんな明るい未来を思い浮かべながら、俺は美優の長いまつ毛を見つめて、自分の恋人の可愛さに浸り続けるのだった。

 

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