美優が熱を出して、夜になっても体温は高いまま下がらなかった。
俺は消化がいいようにおかゆを作って美優の部屋に持ち込み、ベッドで体を起こした美優の隣に座る。
「そろそろお腹が空いただろ。食べられるだけでも食べたほうがいいよ」
テーブルを引き寄せてそこに器を置き、美優の頭を撫でながら、寝ぼけまなこの美優が覚醒するまで待つことに。
美優は俺の手が髪に触れるたびに、猫みたいに目を閉じてのっぺりした顔になった。
「頭がぽわぽわする……」
こんなのんびりした姿は俺以外に見せることはないんだろうな。
でも、本当は美優だって、人と接するときもこうして気を抜いていたかったんじゃないかと思う。
俺がそのための相手として少しでも長く側にいてやりたい。
「お腹すいた。お兄ちゃん。ん」
美優は俺にアイコンタクトで「食べさせて」と要求してきた。
俺はスプーンで一口を掬って、ふーふーしてから、それを美優の口に運ぶ。
美優は俺のことをジッと睨むばかりで口を開けなかった。
「食べないのか?」
「そうじゃなくて。あーん、ってしてほしい」
美優はパッチリした目で一途に俺を見つめてきた。
真顔なので真面目に要求している。
熱に便乗してどこまで甘えてくるつもりだ。
「わかったよ。はい、あーん」
俺も照れ恥ずかしさを隠しきれないまま美優のわがままに付き合ってやると、美優はパクっとスプーンを加えて、嬉しそうに頬を緩めた。
ずっとニコニコしていて、やけに上機嫌だった。
「そんなに嬉しい?」
「私はあんまり風邪を引かないから。こういうのちょっぴり憧れてたんだよね」
美優は普段からクールで毒舌で、理知的かつ事務的な行動しかしない。
その反動なのか、美優は恋人として定番の俗っぽいやりとりやプレイに、人並み以上の憧れがあった。
俺は美優の要望通りに「あーん」を繰り返してご飯を食べさせ、食事を終えた。
その後の美優はまだ物足りなそうにしていて、俺に体をひっつけてくると、少し長くなった前髪を分けてから「あのあの」と上目でまたおねだりをしてきた。
「熱が出てるときの、定番のアレをやりたいをやりたいのですが」
美優がそれを遠回しに求めてきたのは少なからず俺の性欲を刺激してしまうからだった。
しかし、俺に断るという選択肢があるはずもなく。
「お湯を持ってくるから、大人しくしてるんだぞ」
「はーい」
美優は子供みたいに素直な返事をして、また布団にくるまった。
俺は洗面器にお湯を入れて、そこにフェイスタオルを浸けて、食器と入れ替わりに美優の部屋へと持ってきた。
定番のアレとはもちろん、お風呂に入れないときの体拭きだ。
俺はテーブルに洗面器を置いて、美優の服を脱がそうと、パジャマに手をかける。
めくり上げた肌に下着が見えるぐらいのところで、美優が少しだけ抵抗をした。
「恥ずかしすぎてまた熱が上がりそう」
「自分で言いだしたんだろ」
まあ俺も半ばプレイのようなものとしてやっているが。
美優が自分で脱ぐ気配はなく、下着も俺が脱がせることに。
俺がブラジャーのホックまでを外すと、美優はバストトップを隠しながらカップの方を外した。
俺が美優を脱がせる機会はほとんどないので、無言の中でもお互いに感じるものがあるというか、静かな室内で女の子の生肌が一方的に晒される状況はどうあってもエロティックだった。
成熟した乳房を抱えた背中の生肌が艶かしい。
昨晩に限界まで精液を絞っておいてよかった。
二日ぐらいならまだなんとか耐えられそうだ。
俺は絞ったタオルを滑らせて、長い睡眠で少し赤い跡ができているだけの美優のまっさらな肌を拭いていった。
すると美優はくすぐったかったのか「んっ」と身をよじりながら色っぽい声を漏らす。
そこからは理性との格闘だった。
「下も俺がやっていいのか?」
「うん。全身やって」
美優は俺の質問に答えながらパンツに親指を差し込んで、ズボンと一緒に脱ぎ下ろした。
重たい乳房を抱きかかえている背中の筋肉と、後ろ姿に見える押し出されてきたお尻の脂肪が、お饅頭のような曲線を形成して艶めいている。
……明日あたりには性欲の限界がきてしまいそうだな。
俺は美優の素肌をできるだけ見ないように薄目で体を拭いていった。
前部分に腕を回すと、必然的に二の腕に美優のおっぱいが当たる。
視界を塞ぐことで、肌に触れる小柄な身に不釣り合いな乳の巨大さが更に際立った。
揉みしだいて勃起したペニスを挟んで射精したい。
「終わったぞ」
「ありがと、お兄ちゃん」
美優は新しい下着とパジャマに着替えて、布団を被り直した。
俺の股間は当然のごとくパンパンに張っている。
「んふふっ。妹が射精させてくれなくて残念だね」
「今日ほど残念だと思った日もないな」
「自分で出すなら飲んであげてもいいよ」
「風邪で寝込んでる妹には頼めないよ」
「じゃあ私が元気になるまで出さずに溜めておいて。ぜんぶ飲んであげるから」
小悪魔みたいに微笑んで、美優は「今はしてあげません」と言わんばかりに布団を引き込んで丸くなった。
熱を言い訳にして妹が調子に乗っている。
治ったら飲んでくれるとのことだが、もし熱が引いて正気に戻っても主張を変えたりはしないだろうな。
本当に溜まった分が空になるまで飲ませるからな。
「俺も風呂に入ってくるから。そしたら、また勉強の続きをやりにこっちに来るよ」
「私は嬉しいけどお兄ちゃんは勉強ばっかりで飽きない?」
「やらないといけないことを整理してると意外とな」
今の世の中では効率のいい勉強方法が本でもネットでもたくさん出回っているが、それが現実として高効率になるかは勉強する本人の性格による部分も大きい。
この頃は山本さんに教わった方法に従って、目標までのノルマを設定し、それに従ってワークブックを進めていた。
俺のゲームでのコンプ癖などを考えると理に適った方策ではあった。
「そこは奏さんに感謝しないとね」
「だな」
せめて名の知れた大学へと行くために、俺のような偏差値半数以下の人間はスタートを早めて頑張らなくてはならないわけだが、闇雲にペンを握っているだけだとどうしてもモチベーションが保てない。
その問題を解決してもらってからは学校の課題の消化も速くなった。
インターバルとなる休憩の合間に、俺は性欲発散のための簡単な運動を自室でしてから風呂に入った。
それからまた着替えを済ませて美優の部屋に戻ると、美優はスマホを手に「おかえり」と言ってくれて、またそこから就寝までの勉強を始めることに。
美優が布団をかぶって横になったので、できるだけ美優の睡眠を邪魔しないように静かにページを捲り、ペンを走らせて、何分かが経っても美優が声を発することはなかった。
眠ってしまったのかとベッドを見ると、そこには布団にくるまったまま俺を熱心に見つめている美優の姿があった。
「人がいると気になって眠れないか?」
「ううん。お兄ちゃんの横顔に見惚れてただけ」
「そんなにいい顔でもないだろ」
「カッコいいよ、お兄ちゃんは。妹補正を抜きにしても逞しくなった感じがあるし。いくら見てても飽きない」
熱があるだけあってストレートな物の言い方だった。
妹補正が何なのか、むしろ一般的にはマイナス方向に働きそうなそれについては、例によって言及しないでおく。
美容やファッションに関する知識を仕込まれ、筋トレより効果のあったセックス三昧の夏休みを通し、何よりこうして口にしている以上に自分には自信がついてきていることが俺の雄としての姿を成長させているようだった。
俺は自分の容姿や能力にはこだわってこなかったし、美優だって俺に兄以上の役割を求めたりはしないはず。
それでも、美優の横を歩く男として恥ずかしくないステータスを獲得することは、美優のためにも、ひいては俺自身のためにも必要だった。
「お兄ちゃんに甘えられるならもうちょっと風邪を引いててもいいかも」
「風邪なんか引いてなくても甘えさせるし熱がツラそうだから兄は妹に早く治ってほしいよ」
「看病されてるのと単に甘えるのとは違うんだってば」
美優は俺にお世話をされていることそのものを楽しんでいるようだった。
家族っぽい付き合いというか、兄妹らしいやりとりがそこにあるからだろう。
美優は両想いになった今でも男としてより兄としての俺を好きでいる。
もちろん性的な対象として。
「明日もお兄ちゃんにいっぱいお世話してもらえるといいな」
そんなデレデレな状態で一日を過ごした美優だったのだが──。
その翌日の朝のこと。
「ん。これ」
俺が美優の部屋にいくと、体温計を渡された。
三十六度五分と見事に平熱に戻っている。
「体調は問題なさそうか?」
「悪くはありません」
美優は目尻の切れたクールな視線を俺に向けてくる。
体温と共に精神状態までクールに戻ったようだった。
と、このときの俺は思っていた。
「シャワーを浴びてくるね」
美優は会話を急いで区切るように、寝汗を流すために一階へと降りていった。
美優の体調が回復したということはエッチができるということである。
本人が望んでいたほどオナ禁の日々が続いたわけではなかったが、治ったら飲むという約束なので、俺としては美優に処理をしてもらうつもりでいた。
明日からまた学校が始まってしまうと美優に飲んでもらうのは頼みづらくなるからな。
シャワーの後に脱衣所で着替えまでを済ませた美優は見慣れた普段着にスカートを揺らして階段を上がってきて、俺と廊下で顔を合わせることになった。
「あっ。お兄ちゃん」
俺の姿を見て美優は足を止めた。
どうしてだか妙な硬さのある美優と、俺は数秒見つめ合って、美優が頬を赤く染めて目をそらした。
「どうかしたか?」
「いえ、別に。何でもないです」
美優はそそくさと自分の部屋に戻っていく。
何があったのかは知らないが、今の精神状態の美優にエッチがしたいとは言いづらいな。
まだ性欲には余裕があるし、そっちに関しては出直すことにするか。
しばらくして美優に声をかけて朝ご飯を食べに一階に下りると、リビングにはもう親はいなくて、二人してどこかへ出かけたようだった。
俺と美優は互いに引きこもり体質なので無理をするつもりはないのだが、夏休み前から俺たちは家でエッチをしてばかりだったので、たまには外に出てみるのも悪くはないと思った。
「病み上がりで具合が悪くないようならどこかに軽く出かけるか?」
「それがいいかも。ぜひそうしましょう」
ことのほか外出に意欲的だった美優と、朝食を終えてから俺たちはどこに出かけるかを決めることにした。
しかし、お互いにカラオケやボウリングに行くタイプでもなく、公園や動物園に行くにはまだ暑いし、水族館にはこの間のデートで行ったばかりで、遊園地も俺が直近で二度も行っているので気分にはならなかった。
ラブホに行くのでは家でしているのとさして変わらず、美優はショッピングならいくらしても飽きないとのことで、結局はどこに行くかを決めるための参考資料を探しに駅構内の書店に行くことになった。
俺が先に着替えを済ませてリビングで待っていると、十五分ほどの後に美優がやってきた。
夏を越えて美優の服も薄着から切り替わり、秋色のチェックスカートに合わせた白ベースの服に着替えた美優は、雰囲気だけの軽いメイクを乗せている。
外向きの支度をするたびに大人っぽいなと思う俺だが、美優としては俺の好みに合わせてまだまだ甘めの装いにしているらしくて、その証拠にスカートをチェックにしたのは俺に制服デート気分を味わわせたいからだとか。
オタクの趣味をよく理解している妹である。
財布を持ったことを確認してから二人で玄関を出て、この頃は髪を巻くことも多かった美優はストレートにアイロンをかけ直し、いつもより清楚な雰囲気の妹とお出かけをすることに。
住宅街から大きな通りに抜けてバスに乗り、俺もすっかりと行き慣れた駅のデパートに着くと、室内の照明を照り返す白い床の通路を兄妹の親密な関係がわかるぐらいの近さで並んで歩いていく。
(こんなときは、手を繋ぐべきなのだろうか……)
人を避けながら歩く俺と美優の間では、まるで付き合いたてのカップルみたいに、手の甲だけが触れたり離れたりを繰り返している。
俺たち兄妹の在り方としては、無理に恋人らしく振る舞うべきではないのだが、もし隣にいるのが山本さんだったら腕を組んでひっつくぐらいはしているよなと思うと、美優とも公的なスキンシップを少しはしてみたくなった。
いつか遠くに出かけることがあったら、そのときは、チャレンジしてみてもいいかもな。
駅構内を進んで書店の入り口まで辿り着いた俺たちは、旅行の特集をやっている雑誌コーナーに立った。
海の写真を表紙に飾った青色で埋め尽くされていたそこは、一転してブラウン調の落ち着いた場所になっている。
「この時期だと紅葉なんかは見れるのか?」
「場所によりだけどまだ先かな。私は寒い日の露天風呂とかが苦手だから、去年はまだ暖かいうちに温泉に行ってたよ。ロープウェイで登れる範囲なら屋外のカフェテラスも良かったかな」
美優は手に取った雑誌のページを捲って、視線を下に落としたまま俺と喋っている。
(温泉か。この間は日帰りだったし、旅館に泊まりもしてみたいよな)
そんなことを考えながら、俺は美優が見ている雑誌を一緒になって眺めていて、しばらくしてからチラッと俺を一瞥してきた美優と目が合うと、美優はまた照れた様子で視線を本に下ろした。
「なあ。さっきから俺と目を合わせてくれない気がするんだが」
「そ、そうかな」
美優は髪を耳に掛け、瞬間的に目元を隠すことで思考を悟られまいと誤魔化した。
今の美優は野外仕様のクールモードで、思考回路は理性が九割以上を占めているはずだが、ときおり見せる恥じらった微笑みはデレモードのそれだった。
これは家に帰ったら問い詰めなければならないな。
「露天風呂って、個室にも付いてるところがあるんだよな」
「あるよ。おっきなベランダに木製のお風呂があって、そこにお湯が流れてるの」
「ほほう」
雑誌の中にも露天風呂付き客室の紹介ページがあったのでそこに飛んでもらうことに。
リゾート系ともなるとそれなりの値段にはなるものの、一万円そこそこでもかなり良い雰囲気の旅館に泊まることができそうだ。
美優は山本さんと違ってどこでもエッチをしてくれるタイプではないけれど、他人に見られる心配がなければ、あるいは客室露天風呂でならしてくれるかもしれない。
「どうせエッチなこと考えてるでしょ」
「バレたか」
露骨だったし、俺も隠す気はなかったしな。
でも、俺はこの頃の美優の、たまに理性を残したままエッチな気分になる姿を見て、思うのだ。
「美優だってしてみたい気持ちはあるんじゃないのか?」
旅行シーズンも終わって人も疎らになった行楽エリアに、俺たちは至近距離でくっついて話をしている。
美優は俺の問いに頷きはせず、ムッとした赤ら顔で俺を睨んできて、それからお決まりのようにまた雑誌に視線を戻して口を開いた。
「まあ、あるけど」
やっぱりあるんじゃないか。
いやまさかの肯定だったけど。
普通に罵倒されると思っていたのに、これは美優からの新しい境地に踏み入ってみたいというアピールなのか。
「してみたいエッチがあるなら、美優から言ってくれてもいいんだぞ。俺なら多少変態っぽいことでも喜んで付き合うから」
「その点だけはお兄ちゃんに絶大な信頼を置いていますが…………その……なんというか……」
美優は読みもしないページを捲り続けて、羞恥心との葛藤を終えると、口元の緩んだ顔で言葉を続けた。
「お兄ちゃんにエッチをせがまれて、やむにやまれず事に及んでしまう……という流れが、結構、好きだったりしまして……」
美優は小声でそんな本音を暴露してきた。
こんな可愛い顔をして性処理に使われるのが好き──兄限定ではあるが──というちょっとした変態性癖を持った妹としては、『断っている体で強引に迫られてなあなあでしてしまうシチュエーションそのものが好き』という難しい好みに理解を示してほしいとのことだった。
俺は理解しよう。
「ただ、懸念があるとしたら、外でするときに美優が声を我慢できるかどうかだな」
下の階で寝ている母親に注意されるぐらいだし。
「私の声がうるさいようなら、頭をお湯に沈めていただいても」
美優は顔を雑誌で隠してそうのたまった。
いや死ぬって。
「そうでなくてもタオルで口を塞ぐとかあると思うし。最悪、どうにもならなかったら、お口のご奉仕だけしてみるとかもありかなって」
「わりと乗り気だったんだな」
温泉のワードを出したのは美優なので、俺が客室露天風呂を要求することになったのは、もはや誘導された結果である可能性さえあった。
妹がますます性欲に正直になってくれていて兄は嬉しい。
「念のための質問だけど。旅館とかホテルとかじゃないと外でするのは嫌だよな?」
「そうだね。ドキドキすることはお兄ちゃんと経験してみたいけど、エッチしてるところを他の男の人に見られるのは嫌だから」
「納得した」
美優は行為を見られる恥ずかしさがどうの以前に、俺以外の男にエッチな姿や生肌を晒すことを嫌う。
これまでも他の男には握手さえ拒んできた美優のことなので、どれだけエッチな関係になろうともそこだけは守らないとな。
「奏さんなら人目さえなければ山の中でも裸になってセックスさせてくれそうですが」
「否めんな」
あの人は好きな男を悦ばせるためならなんだってやるからな。
あのご奉仕精神だけは美優を含めて他の誰にも真似はできまい。
「とりあえず、秋向けの旅館とかグルメの雑誌を買っておくね」
美優は棚からいくつかの冊子を見繕ってレジに並び、会計を済ませてから戻ってきた。
書店のロゴの入ったビニール袋を腕に下げて、巨乳でパーカーの胸部を膨らませた髪の長い妹が俺に近づいてくる。
瞬きしているだけで可愛い。
「な……なんですか……」
美優は咄嗟に目を逸らして、帰宅をするべく下りのエスカレーターに足を向けた。
その後に追いついて、俺は周囲から変に思われない程度に美優に接近し、耳元で声量を小さく具合を尋ねることに。
美優は耳輪が熱そうだった。
「どうしてそんなに目を逸らすんだ?」
俺の息が耳の穴に吹きかかるのか、美優は首を引っ込めながらビクビクと俺の声を聴いていた。
「いえ、その……昨日と一昨日と、お兄ちゃんのことを好き好き言いすぎて……」
「思い出すと恥ずかしくなるのか?」
まあ、予想のついた話だった。
理性側の美優からしたら羞恥に耐え難いほどドロドロの甘えっぷりだったからな。
しかし、美優の回答は俺の予想とは少し違っていて。
エスカレーターをひとつ下りきってから、さらに下のフロアへ続くステップに乗るUターンの瞬間にだけ俺と目を合わせてきて、同じように美優の背後に立った俺の手を、美優は胸の膨らみの上部に押しつけるように引き寄せた。
「恥ずかしいのもあるけど。もう頭は冴えてるはずなのに、体の方はまだあの夜のことを覚えてるみたいで……お兄ちゃんの顔を見るとものすごく心臓がバクバクするの……」
俺の手が美優の胸の厚い脂肪を通してさえ鼓動を感じ取っていた。
表面上はクールに戻っていた美優だったが、その内心ではずっと俺と目が合うたびにドキドキしていたらしい。
思っていた以上に可愛らしい理由だった。
「だから、ね? お兄ちゃんを直視してると、またあの夜の私に戻ってしまいそうで」
「それの何が問題なんだ?」
お兄ちゃん好き好きチュッチュしてくれる妹の何が問題なんだ。
何が問題なのか教えてほしい。
「問題に決まっています。そんなことを言っているとこのまま腕を組んでおっぱいを押し付けたまま歩きますよ」
「なおのこと兄は嬉しいのだが」
とは言って返したものの、美優は「バカにぃ」と呟くだけで、大々的にスキンシップをしてくることはなかった。
それからも美優は照れたりボヤいたりの繰り返しで、帰り際に通ったバーガーショップで簡単な昼食を済ませてから、俺たちはバスで家に戻ることに。
バスの二人席に座って、頬杖をついて窓の外を眺めている美優が、俺の手の甲に指を滑らせてきた。
手を繋ぐでもなく、指でなじるように、控えめなスキンシップで肉欲を満たしている。
「……家に帰ったら、するか?」
それとなく距離を詰めて尋ねてみる。
美優はまだ外に顔を向けたまま。
俺の指に自分の指を絡めてきて、ギュッと握って返事をしてきた。
バスから降りて家に向かう美優の足は、俺を急かすように速かった。
今日の外出で唯一となった手繋ぎの時間を早々と終え、家に着く頃には俺も美優もかなりの汗をかいていた。
しかし、玄関のドアを閉めて二人きりの空間になってから、美優は空調を効かすこともなく俺に正面から抱きついてきたのだった。
俺たちは鍵も掛けていないドアの前で見つめ合って、顎を上げてキスをせがんでくる美優と待ちわびた濃密な絡み合いに及んだ。
口内で互いの唾液を混ぜあって、口蓋をくすぐるたびにビクつく美優にペニスを露出させられた俺は、流れのままに美優のお尻に両手を回してパンツに手を入れた。
汗なのか愛液なのかわからない湿り気に、俺がぐちゃぐちゃとアソコをいじっていると、感じすぎて手コキができないとクレームを入れるように美優が腰を振って俺の手を払おうとする。
キスはしたままなので言葉でのコミュニケーションをすることはできず、俺たちは互いの性器の探り合いで感情を読み取って性感を高めていくだけだった。
昨日から射精していない俺は性欲の高ぶりにセックスへの渇望を抑えきれず、ドアに追い込まれていた立ち位置を逆転させて、唇を重ねたまま美優の脚を持ち上げて下の口とも繋がることにした。
服が汚れることも厭わず、汗をかき続けながらも密着をして、挿入をするとキスをする美優の舌の動きが止まった。
俺は舌根から吸い上げるように美優の唇にしゃぶりついて、悲鳴にならない嬌声を喉の奥で響かせ続ける美優に正面からのピストンを浴びせた。
片足立ちの美優はドアに背中を預け、俺は陰茎の勃起で美優の体に芯を入れさせてセックスできる体勢を保たせた。
下半身では激しく行為に及びながら、キスの息継ぎに合わせて服を脱いで上裸になり、互いのズボンとスカートは中途半端に下ろされただけの状態で俺たちは劣情を発散させていた。
美優を抱きしめると汗にまみれた乳房が俺の胸板で滑って形を変え、そこからは硬くなった美優の乳首の感触が伝わってきた。
労りのない乱暴な突き上げに美優の表情はとっくに蕩けていて、様々な体位を可能にするために体の痙攣を抑えながら膣だけを蠕動させてイクことを覚えた美優はこの間にもう数え切れないほどイッていた。
割れ目から伝わってくる愛液が俺の下半身にまで流れ落ち、乱れに乱れたその勢いのまま、普段のように射精の予告をすることもなく終始キスを続けた状態で俺は美優の膣内に勝手に中出しをした。
射精の瞬間だけは美優にわかるように腰の動きを止めて、ドクッ、ドクッ、と陰茎の脈打ちで膣道が押し広げられる感覚を伝えてから、間髪を入れず精液を押し込むようにピストンを再開した。
もはや美優とのセックスでは一回の射精でペニスが萎えてくれない。
美優も体力的には限界だろうが、俺の性欲を処理することが俺たちにとっての最優先事項なので性交は続けさせてもらった。
とはいえ美優の筋肉にはどうしたって限界がくるもので。
体勢の崩れた美優の膣からペニスが抜けて、卑裂から白濁液がドロッと溢れて玄関のタイルに垂れて落ちた。
俺はズボンを脱ぎ切って、美優のスカートも取り払い、上がり床に美優を仰向けに寝かせてから脚の開いた美優に動物の交尾みたいな雑なピストンで剛直を打ち下ろした。
美優が何かを言いかけていた気がしたが構わずにキスでまた口を塞いで、もはや全身痙攣も抑えきれなくなった美優が絶頂しっぱなしで白目さえ向きそうなほどイキまくっている。
そんな美優の乱れた姿に興奮が最大にまで達した俺は、二人分の汗の飛沫を床にまで垂らしながらフィニッシュに向かった。
美優の膣壁との摩擦で亀頭を限界まで刺激して、ピストルから弾が飛び出すように勢いのある射精で、美優の子宮に注げるだけの精子を送った。
二度の射精にようやく俺の性欲は一段落して、キスとホールドから解放された美優は、これまでにないほど汗で長い髪を湿らせていた。
全裸に足元だけは靴下を履いたあられもない姿で、中出しされた精液を割れ目から垂らしながら床に横たわっている。
俺は呼吸を落ちつけてから忘れていたドアの鍵を掛けて、美優の服とポーチを拾うとそこにチラとスマホが見えたので、美優のスマホでだけこっそりと事後の姿を写真に収めてからお湯を張りに風呂場に向かった。
そうして俺が玄関へと戻ってくる頃には美優も体を起こしていて、ペタン座りしたその股からまだ精液を漏らしていた。
汗だくで張り付いた前髪を鬱陶しそうに払ってから、美優は上気させた顔でむぅと頬を膨らませた。
「二回はまずかったかな?」
「そうじゃなくて……」
美優はモジモジしながら否定する。
それほど怒っているわけではなさそうだ。
「あっ、服か……。精液は付いてないみたいだったけど、汗でだいぶ汚しちゃったな」
「それも最近は慣れてきたのでもう良いのです」
どうやら着衣でのエッチもオーケーになってきたらしい。
だとしたら何が悪かったのだろうか。
と思案していると、美優が先にその理由を口にした。
「飲むって言ったのに……」
どうやら、熱を出したときの約束として、治ったら精液は全部飲むと言っていたのに、フェラもなくひたすら中出しされまくったことに憤慨しているようだった。
「美優だってムラムラしてただろ? 挿れてほしいのかと思って、ついガッとやっちゃったけど」
「それは、間違いはないのですが。私としては、挿れてほしいのを我慢しながらお口でお兄ちゃんを気持ちよくしてる自分というのも、悪くないと思っていたので……」
そうだった。
美優の場合、エッチそのものが好きというより、エッチをしている自分が好きという側面もある。
山本さんとはまた違った理由で美優も必ずしも自分への直接的な快楽は求めておらず、何よりオナニーが大好きでもあるので、溜まった分は自己処理してしまえばいいのだ。
そうした状況が長く続きさえしなければ美優は本番行為なんてなくても充分にエッチに満足ができる。
「でも、お兄ちゃんのセックスはすごく良くなってるよ」
美優は嬉しそうに照れ笑いしていた。
中出しされた精液がそろそろ効いてきたらしい。
「そんなによかった?」
「うん。口を塞がれながら身勝手に中出しされるの、めちゃくちゃ興奮するし、死ぬほど気持ちいい」
「たしかに図らずとも美優の好きそうなやり方ではあったな」
俺だけに対してはレイプ願望のようなものもあるからな。
デレ期の今となっては、キスをされながら一方的に俺に射精されるのは、美優にとって最高の歓びだろう。
美優は俺に両手を引き上げられてなんとか自分の足で立って、俺が床の掃除をしている間に風呂場へと向かった。
先にシャワーを浴びて、ちょうどお湯が溜まったところで俺も浴室に入り、また兄妹二人して狭いお風呂に収まることに。
「私たちって仲がいいよね」
「そうだな」
性行為をしているだけではわからない美優との心の距離は、こうした日常的なスキンシップによって測ることができる。
「えへへ。お兄ちゃんとお風呂に入るの好き」
美優は俺の膝に挟まっていた体を反転させて、チュッとソフトなキスをしてきた。
外で我慢していただけあってデレデレだ。
「そこまで俺のことが好きだったら、もしかしてアソコを舐めさせてもらうこととかもできたりする?」
「えーそれはどうしようかなぁ」
美優がニヤニヤしながら渋っている。
一度したら慣れる性格は今でも健在だ。
「いいよ。お兄ちゃんは特別だから」
これまで恥ずかしくて誰にも見せられずにいたつるつるのパイパンを、美優は湯桶の中で立ち上がって、俺の真正面で晒してくれた。
体の丸みのあらゆる極点から滴り落ちる雫が、湯面を叩いて波紋を作っている。
「美優……ほんと、たまらん体になったな……」
このところは体のアンバランスさにもそれほど気にならなくなり、元のとおりに必要な脂肪を残したままのむっちりした肉体が、射精し尽くしたはずの俺の陰茎に再び熱を集中させてきた。
──そのときのことだった。
「ただいまー。……あれ。風呂場の電気がつけっぱなしだったか」
玄関からビニール袋の擦れる音と共に声が聞こえてきた。
浴室のドアの向こうで、二人分の会話がどんどん近づいてくる。
「や、やばっ……!」
美優と二人の入浴中。
両親が外出先から帰ってきたのだった。