修学旅行の三日目の朝。
俺が目を覚ますと隣のベッドは布団がめくれていて、そこにいたはずの山本さんがいなくなっていた。
薄暗い部屋に洗面所のドアの隙間からうっすらと明かりが漏れている。
そこから聞こえるこもったドライヤーの音に俺は起こされたらしい。
俺は寝ぼけた頭が冴えるまでスマホをイジり、あれだけ熱心に通話をしてくるわりに朝は美優から連絡がこないなとか、埒があかないことを考えながら体を起こす。
ドライヤーの音が止んだ頃を見計らって俺も洗面所に向かうと、山本さんが髪を巻いているところだった。
美優に負けないほど質の良いロングヘアをカーラーに巻いて熱が冷めるのを待っている。
「おはよう。女の子の準備は大変だね」
「おはよ、ソトミチくん。もうこれくらい慣れたものだよ」
山本さんは鏡越しにニコッと微笑んで、さきほどまで使っていたものであろう化粧品をポーチにしまっていった。
生地の柔らかい室内着が山本さんのボディラインを強調していて、大きさで言えば美優より数割増しはある胸の丸みが目の端でさえ俺の興味を引いてくる。
日常の中に山本さんのような美人がいると細胞が活性化するな。
「そうやって巻くタイプもあるんだな」
「私は癖がつきにくい髪だからこれでちょうどよくて。美優ちゃんはやらないのかもね」
洗面台を整理してからカーラーを取り外し、サッと手櫛で毛先をほぐすと、たしかに学校でよく見る緩い内巻きの山本さんがそこにいた。
山本さんの部屋にお泊りした一週間ではセックスをするか寝るかのどちらかしかしていなかったから、こうした山本さんのルーティーンを見るのは初めてだ。
この互いに信頼しているからこそ相手の存在を気にせずにいられる特別な距離感が、不思議なようでもあり心地良くもある。
山本さんの後に俺も支度を始めて、美優に仕込まれた洗顔やら保湿やらを通し、ずいぶんと手早く済むようになったワックスでのスタイリングまでを終えてから居室に戻った。
山本さんはナイトブラからワイヤーブラへの着け替えをしているところだった。
豊かな膨らみとともに上半身の肌を包み隠さず露出していて、射精を禁止されていることで抗いようのない興奮を覚えている俺に、からかうような笑みを向けてくる。
「射精禁止じゃなければ、一発出すタイミングなのにね」
「ぜひパイズリでお願いしたい」
「挟むだけならいいよ。擦ったりしたら叱るけど」
「ぐうっ……な、悩ましい……」
およそ恋人のいる男のセリフではないがオナ禁をさせるのが悪い。
今夜も俺はエッチな射精管理でイジメられるのだろう。
これを苦痛と捉えるか幸福と捉えるかは人次第である。
そんなこんなやり取りをして、廊下が生徒たちで溢れる前に部屋を出た俺たちは、朝食のために集まる宴会場へと一足先に向かった。
今日の活動内容は自由行動なので俺たち学生からしたら全日程の中で最も楽しみになる日だ。
チラホラと集まってきた他クラスの生徒たちもとても活き活きしている。
食事はテーブルを挟んで班の六人で固まってすることになっていて、生徒がひとしきり揃うと、俺の隣に山本さんとその隣に川藤が座り、対面に鈴原たち三人が座った。
といっても学校の机をくっつけるのとそう変わりないぐらいには近い距離になっている。
「各班での自由行動が始まったら、まずは市内のバスで神社に行くんだよな」
俺は誰へともなく、強いて言うなら高波に声が聞こえるように、今日の予定を尋ねた。
すると反応してくれた高波は眉根を寄せていた。
「なに言ってんだお前は」
「提出した予定表だと最初はお参りだろ? それから屋敷跡で展示を回って……」
「はぁ……これだから真面目男は……」
高波は大きなため息をつく。
それに同調するように鈴原と小野崎が反応した。
「このあたりの観光ったらカフェ巡りだろ。スイーツ有名だし写真映えもするし。食べ歩きできそうなとこもサーチしてあるぜ」
「あっ、私はご当地限定のまったりカフェフィギュア買いたい」
「よっし! じゃあこれから順路決めるぞ~!」
対面のバカ三人が真ん中に座る高波のスマホを覗き込んでいる。
「レポートはどうするんだ」
「そんなんネットで調べて感想書きゃいいだろ。修学旅行だぜ?」
高波が肩をすくめながら答える。
先生が近くにいないとはいえなんと堂々たる悪党ぶりよ。
行く場所も行く場所で陽キャっぽいというか、鈴原たちもすっかりと夏休みの間に染まってしまったな。
以前まで俺たちが陰気なオタクの集まりだったのが嘘のようだ。
「なら私はこの駅に寄りたいな~! ここの雑貨屋は店舗規模が全国最大なんだって」
ともなると乗っかるのが山本さんである。
都内ほど土地が高くもなく、かつ観光客も多い場所だからこそやたらと大きい複合施設がある。
「川藤も何かあるのか?」
流れが流れなので一応尋ねてみる。
「そうね、カフェに行く分、昼食の時間を遅くして……」
山本さんの向こう側にいる川藤は、炊き込みご飯を箸で口に運んでから、咀嚼しつつスマホで調べて出した口コミサイトが映る画面を俺たちに見せる。
「ここのラーメンを食べに行きたいわね。塩が美味いらしいの」
短い髪を揺らしながらどこか得意げな表情だった。
「おおっ、ウマそ~! 俺もそこ行きてえ!」
「なら昼はラーメンで決まりだな!」
「私も意義なし~」
対面の三人も実に楽しそうである。
成り行きで構成された班だったが、想像していた以上に俺たちの相性は良かったようだ。
「ソトミチくんはどこか行きたいとこはないの?」
唯一発言していなかった俺に山本さんが会話を回してくれた。
俺は美優の相手をするので精一杯だったから何も考えていなかったが、俺にも修学旅行での目的があった。
「予定通りにはなるけど、陶芸店には行っておきたいから、そこを通るようにしてくれると助かる」
「ソトミチは皿に興味なんてあったのか? まあなんでもいいけどよ、なら後はルート決めするだけだな!」
食事の手を進めながらも今日の新しい行動計画が練り上がっていく。
後はモチベーションの高いメンバーに任せよう。
俺も日中は学校のことを楽しまないとな。
自分の人生が充実していないと他人のためには生きられない。
朝食を終えて俺たち生徒たちは最初の出発地点へと集合し、そこから許される移動範囲の中で自由行動へと移った。
いくら美優に焦らされていても日中に大勢といれば性欲は落ち着く。
知らない街を歩くだけでも気持ちがいい。
青空が広がっていて、秋への移り変わりを感じる涼しい風が心地良かった。
一角に出ればノスタルジックな和風な建物が並んでいて、一角に出れば夜景に似合いそうなLEDの飾られた街路樹が並び、観光名所を抜ければその土地の人間に馴染みのある飯処やスーパーを見つけることができる。
山本さんは相変わらず俺に射精をさせないためにどこへ行くにもついてきているが、そんなことをしなくてもシコる気になどならなかった。
俺たちは目的のルートを通ってひたすらに遊び歩いて、山本さんも俺のムラっけのなさを察したのか、気づけば俺に構わず鈴原たちと並んでお喋りをしていた。
そうともなれば俺の話し相手になるのは川藤だったりして、この修学旅行での一番の成果はこれになるだろうか。
いまさら女の子と仲良くなるのが嬉しいわけでもないが──いや嬉しいには嬉しいが──、川藤がいてくれると俺の知らないグループのことを知れるのがありがたい。
山本さんは会話のベースも俺たちに合わせてくれるタイプの人だからな。
「昨晩は奏と二人で寝たのね」
「やっぱ知ってるんだな」
「私はね。で、どうなの? ヤったの?」
「や、ヤってはいないよ。ベッドは別々だったし」
「そう」
川藤は風に乱された前髪を整えながらショーウィンドウに飾られている人形に視線を移す。
美優とはまた違ったタイプのドライさがあって、特に意味はないけれどそういう部分だけは俺の性癖的にとても好ましかった。
今のところ山本さんのグループで山本さんが非処女であることを知っているのは川藤だけらしいが、俺にフラれたことまで聞いているらしい川藤からすると、俺ってどんな印象なんだろうか。
「川藤は山本さんの男性遍歴は知ってるの?」
「あなたが思ってるほどには。中学の頃は親友というほどではなかったし、愚痴っぽく悩みを聞かされてただけだもの。あんなに拗れるとわかってたらもっと真面目に話を聞いてたかもしれないけれどね」
山本さんがだんだんと自分の人生を楽しめなくなってきてからは、これまで彼氏を作らせようと手を尽くしてきたのと似たようなことを続けていたようだ。
男の人がすぐイクから恋愛が上手くいかないなんて、山本さんの器量を知ってる川藤からしたらなおのこと理解できなかっただろうしな。
「私からも改めて聞いておきたいんだけど」
俺の横を歩く川藤は遠くではしゃぐ山本さんたちを軽く顎を上げて見ている。
「昨晩はともかく。奏とはどんな関係だったの?」
「どんなって聞かれても、付き合ってたわけじゃないし……」
山本さんが元彼の話を川藤にしていたとして、俺のことまで赤裸々に語ったとは限らない。
むしろ隠していた部分も多いのだろう。
鈴原には事情を聞かないあたり、最近になってからは男関係の実情を聞かされていない可能性もある。
まあ彼氏を作れと言われるのを面倒そうにしていたぐらいだしな。
「奏と同じ部屋にいて何もしない時点で普通の関係じゃないでしょ」
「うっ……す、鋭いところを……」
「別に正直に話してもいいのよ。私、口は固いから」
たしかに川藤は、クラスでは清楚可憐な純潔美少女として認知されていた山本さんの男性関係の悩みを知っていながら、ここまで隠し通してきた一人だからな。
山本さんの不利益になるようなことをするとも思えないし、信頼に足る人物であることに変わりない。
でも、せっかくならもっと仲良くなってから種明かしというのも、悪くはないだろう。
「女子のフロアはどうだったんだ? 色んなとこで部屋のシャッフルしてたんだよな、男子も混じって」
「ん……そうね。変な声は聞こえなかったけど。私は朝まで男バス連中の麻雀に付き合ってただけだから、乱痴気騒ぎのことは詳しくないわ」
「そんな硬派な遊びまでするんだな」
「ずっとってわけじゃないのよ。始めは普通にボードゲームしたりして、飽きたから出せるものを出して勝負してただけで」
どうやら川藤が混じっていたのは学生らしく夜まで遊ぶグループだったようで、美優たちほどではないほどほどに不健全な賭け事に興じていたらしい。
男側も女の子と一緒に夜を過ごせれば、二人きりでエッチなことができなくても満足できる思い出にはなるだろうしな。
「意外とそういうの楽しむタイプなんだな」
「別に修学旅行だからって特別な青春を過ごさなきゃいけないと思ってるわけじゃないのよ。今夜は消灯時間の前には寝るつもり」
付き合いがいいだけでサバサバしてるのには変わりないらしい。
他の部屋の状況は鈴原と高波にでも聞くか。
あいつらも楽しい夜を過ごしてたはずだしな。
そんな他愛もない会話が思いのほか途切れることもなく続いていき、やってきた陶芸店の前に着いたところで、先に着いていたはずの鈴原たちの集団に山本さんがいないことに気づいた。
となれば必然、こうなる。
「モテない男を相手に楽しそうじゃんかよ~! 乳揉むぞここで~!」
本旅行で二度目となる背後からの乳揉みである。
すでに乳房を鷲掴みにされていることに川藤が言及しないあたり日常的によくやられているのだろう。
俺もそろそろ見慣れてきた。
女の子同士でいえば美優とのもっとすごいのを見てしまっているしな。
「や、やめなさい。仕方ないでしょう、成り行きで同じ班になったんだから」
「成り行きの割には楽しそうなんですけど」
長年の付き合いからかスキンシップも大胆で、噂は噂で終わったものの山本さんも俺との交際疑惑が噴出してからは男に関係する話をしやすそうにしている。
実のところ川藤も普段からするとはしゃいではいるそうだった。
山本さんがありのままの性格に戻ってくれたことは川藤にとってよほど嬉しいことだったらしい。
そこからは例によって山本さんが俺の隣に代わって、他の奴らは近くの土産屋に行ったりと、時間を取り決め手の各自の自由時間となった。
俺が陶磁器で作られたカップを見ている横で山本さんも熱心に他の焼き物を観察している。
「焼き物ってもっと土鍋みたいなものかと思ってた」
「俺もネットで調べた程度だから、こんなに色鮮やかで形も整ってる物が多いとは思わなかったよ」
「美優ちゃんへのお土産だよね?」
「ああ。美優は美優でこだわりがあるだろうから、あくまでも思い出品として渡すつもりだけど」
「ソトミチくんが選んだものなら美優ちゃんは大事に使ってくれるよ」
どうにも予防線を張る癖の抜けない俺に、山本さんが慣れた様子で励ましを入れてくれる。
山本さんとはこれ以上にないほど仲良くなったつもりだったけど、修学旅行でこんな可愛い女の子と横並びでお店を回れるなんて、想像もしなかった青春の時間だ。
今は肉体関係を持った女性としてではなく、クラスメイトの女子学生として山本さんとのお喋りを楽しんでいる。
「というよりむしろ、いい感じのティーセットを土産に、美優ちゃんのコスプレを見たい欲望を垂れ流しにするぐらいがちょうどいいんじゃないかな?」
「さすが美優のことをよくわかってるな」
美優と山本さんは3Pをしてからというもの、それまで以上に親密そうにしており、二人で遊びにいったりもしていたらしい。
熱が出てどこか様子がおかしくなってからはどうかわからないが、美優と山本さんはもうお互いのことを知り尽くしているほどの仲になっている。
「ならアドバイスに従うとするか」
ティーカップも茶請けも俺の趣味で選んで一式を揃えた。
最近の様子からするとむしろエロコスでもさせたほうがいいだろうか。
これだけオナ禁をさせられているのだから普通にエッチをするだけでは俺の気が収まらない。
なんなら俺がプレゼントしたものならそれをエッチに使っても許されるはず。
夕刻に近づくにつれて思い出したように性欲を催してきた俺は、その邪気を振り払うように、買い物の後は鈴原たちの写真撮影に加わってそれなりに思い出らしいものを残すことにした。
最後には中途半端に余った時間でたまたま見かけたアニメショップにも寄り、女子グループにもオタク文化というものを理解してもらった。
なお小野崎が実はアニメや漫画に詳しかったことは言うまでもないだろうか。
あとは帰りのバスに乗るために所定の場所に再集合をするだけ。
その帰り道にテンションの落ち着いた鈴原と俺は歩いていた。
「鈴原はどこの部屋で寝てんの?」
「俺は……ごちゃっとしたとこで、色々とな」
鈴原は言葉を濁しながら答える。
いかがわしいことをしているのは明白なのだからストレートに言えばいいものを。
「なんつうかこう、男でも女でも、遊びはしたいけどできない、陰と陽の間のグループってあるだろ?」
「言わんとしてることはわかる」
「そういうやつらをいい感じに集めた八人組で、いわゆる王様ゲームというものをやってだな」
「そこまでベタなことをやるとは」
鈴原は抜けきらない癖なのか単に疲れているのか眉間を指で押して、上げた前髪を後ろに流す。
「お前が山本さんとよろしくやってる間にこっちも青春らしいことをやってんだよ」
「それ酒が飲めるようになった大学生の遊びな気がするけど……。んで、どこまで楽しんだんだ?」
「ゲームのほうは、ちょっとエッチな部分が見れたり軽く揉ませてもらったぐらいで、後の美味しいところは高波に取られちまったけど」
「うん? うん」
困惑する俺をよそに、鈴原はスマホの画面を見せて意味ありげにニヤけた。
「そのときの一人の女の子と連絡交換して、今夜はその子と同室の予定だぜ」
「おお、やったな」
もはやその前段から充分にやることやれてた気もするが、何にしても進歩があるのは素晴らしいことだ。
なんだかんだとハルマキさんが寂しがらなければいいけどな。
俺はあの清楚系巨乳ムチムチ美少女と夜を共にしながら射精が許されない身の上なので、今夜は俺の代わりに他の奴らがたくさん出してくれたらいい。
俺はその後に妹にたっぷりと出させてもらう。
そうして終えた自由行動の一日に、夕食を済ませた俺が戻った部屋には、なんと山本さんの姿がなかった。
そういえば俺についてくることはなく女友達と話し込んでいて、さすがに連日女子グループに顔を出さないようでは純真な少女としての体裁が保てないかもしれない。
ともなるとこれはオナニーチャンスでもある。
俺は浴槽にお湯を溜めながら脱衣所続きの便器に座り、柔らかいままでも手に乗る重さがずっしりと増した陰茎を持て余していた。
ここでサッと出すことは難しいことではないが、どうしたことかシコる気にならない。
こんな千載一遇のチャンスを逃すべくもないのに、俺はふにゃけたままのペニスを硬くできずにいる。
オナ禁をさせられてムラムラしたまま精液を出せない現状はツラい。
しかし、だからといってここで雑に射精をして、それでどうなる。
せっかく溜めた精液なのだから、やはり美優に出すべきではないかと、この体はそう調教されているのだ。
美優が大好きでいてくれる俺の精子を粗末に扱うのは、美優と精子たちのどちらにも不義理だ。
そんな余計な思考に気を削がれてしまった俺は、用を足し終えて、便器から立ち上がろうとした。
そのとき、スマホの画面が急に切り替わって、受話器のボタンが二つ表示されたのだった。
(通話……? 美優からか)
俺が帰ってくる時間ではあるとはいえ、どこかで見ているような間の良さ。
パンツを穿く寸前の俺は、それを優先するよりも先に通話開始のボタンを押した。
「あ、お兄ちゃん出た。もう帰ってきてたんだね」
「いま部屋に戻ってきたところだよ。美優も学校お疲れ様。そこは……また俺のベッドか」
「それはまあ。するのも寝るのもここなので」
美優は風呂上がりに白いTシャツを着て、ふっくらとした胸元に黒のブラジャーを透けさせている。
下は穿いていないのかふとももまで丸見えになっており、オナニーをするのには適した格好ではあった。
「また俺を煽るために通話をかけてきたのか」
「そのつもりだったんだけど、お兄ちゃんに見せようと思ってた下着がエッチすぎて、少々躊躇しておりまして」
「なんだと」
美優はベッドにペタン座りして、カメラの角度を高い位置から斜め下に全身が見える向きに変えた。
その映像の中で美優はふとももに掛かったTシャツの裾をしきりに気にしていて、ズボンを身につけていないようだから、きっと見せるのも恥ずかしい下着を穿いているに違いないのだ。
なんだってこの妹は自分でエッチな服を用意するのか。
パジャマにしたってナースコスにしたって、もっとお兄ちゃんを欲情させない服があっただろうに。
「美優。どんなパンツを穿いてるんだ」
「気になるなら見せてあげます」
俺と会えない日が続いたせいか、昨日までのハイテンションはどこかへ姿を消し、慎ましやかな雰囲気に戻っていた。
そんな美優がカメラの向こう側でTシャツの裾に手を入れて、ベッドに女の子座りをしたままアソコだけは見えないようにして片手でパンティーを脱いでくれた。
正面に向きを揃えて美優が全容を見せてくれたその下着は、ほとんど布のついていない紐パンに申し訳程度のメッシュを貼っただけの、透け透けでエッチな黒いレースショーツだった。
「浅すぎてお股の溝が隠れきれないんだよね」
「どうしてそんなパンツを買ったんだ。お兄ちゃんにも黙って」
「それは、ごめんだけど。奏さんとお出かけしてるときに、良いやつ買ってあげるって言われて、断りきれずに……」
「やはりあのスケベ女か」
親しい間柄だと押しに弱くなる美優の性格までよくわかっている。
エッチのことならつけ込めるだけつけ込むだろうな。
「ブラジャーもセットなんだよな? わざわざTシャツで隠してるってことは、上は乳首まで透けてるんだろうな」
「お兄ちゃんのそういうときだけ鋭い洞察はちょっと引くけど、実のところその通りではあります」
きっと肩紐と下乳を支えるための申し訳程度のカップがついているだけで、ほとんどおっぱいが丸見えなのだ。
それがTシャツの中にあると想像するだけでもうエロい。
便座に腰をかけたまま俺は勃起していた。
日ごとに密度を増すそれはもはや警棒のようですらある。
「抜いてもいい?」
「それはダメ」
「頼む。もうこんななんだ」
俺がカメラ越しに陰茎を見せつけて、ついでにその隆々とした勃起を美優の目の前で擦った。
美優はぼーっとそれを眺めて、ゴクリと喉を鳴らしている。
美優だってずっとお預けで、これが欲しいに違いない。
ともすると余計に美優からしたら射精は許せないだろうが、精液なんて溜めようと思えばまた溜められるものだし、ここは許してもらいたい。
「っ……はぁ……ずっと我慢させられてたから、すぐに出るかもしれない……」
「ダメだよお兄ちゃん」
「そんなこと言われたって、あんだけ煽られたら抜かずにはいられないだろ……俺は抜くからな……!」
俺はノーパンになった妹のTシャツ姿をオカズに全力でペニスを擦った。
固い陰茎の芯に響くように強く握り込み、射精に向けて神経を研ぎ澄ませる。
いよいよ金玉もせり上がって、射精感がじわじわと広がってきたところで、やはりというかバタンとドアが開かれてその人物がやってきたのだった。
「はいソトミチくんそれは禁止事項です!」
「くっ……射精警察が……早すぎる……!」
もはやこんなとっちらかってしまっては射精する気分になどなれず、俺は射精未遂の現行犯でお縄となってしまった。
そう、このお縄というのが物理的なものであり、俺は手錠をかけられてベッドへと連行されたのである。
山本さんがアニメショップの近くにあったコスプレ店で購入していたらしい。
俺は下半身裸で肉棒をおっ勃てたままベッドで膝立ちにさせられている。
まるで斬首刑を待つ囚人のようだった。
「んで美優ちゃんも通話中だったんだ。これで三日目だね、はろはろ~」
「お疲れ様です奏さん。お兄ちゃんが危なかったので助かりました」
「そこは任せてよ」
危ない状態って。
ただ射精しそうだっただけじゃないか。
こんなエロい巨乳二人がかりで射精管理されているせいか、普通にオナ禁をするより三倍は早く精液が溜まっていく感覚がある。
「にしてもまたエッチな格好だね。私が買ったやつだ。どうどう? おっぱい見せてよ」
「俺の可愛い妹に向かってなんて言葉を口にするんだ」
『Tシャツの中はこんな感じになっておりますが』
「美優も見せるな……! この瞬間に至っては女の子同士でイチャイチャするのも禁止だぞ」
体を拘束されながらもどうにか茶々を入れて話を遮る。
このまま放置していたら俺は腕に手錠をかけられてオナニーができないまま目の前で女の子二人がイキまくる姿を見せつけられかねない。
「いいじゃん美優ちゃんなんだし」
「ダメだ。するならこっちを抜いてからだ。そうしたら後は通話エッチでも乳繰り合うでも好きにしたらいい」
「……だって、美優ちゃん」
『今回はお兄ちゃんの言い分を聞くしかなさそうですね』
ゴネが功を奏したのか、二人とも大人しく引き下がってくれた。
美優と山本さんが二人でオナニーしている姿が見られるのなら見るべきだったのかもしれないけれども。
いやだいぶ惜しいことをしてしまったか。
『では私はお兄ちゃんがイけない間にいっぱいできる優越感に浸るために落ちるので、奏さんは今夜もお兄ちゃんをお願いします』
「はいはーい」
「明日帰ったら覚えておくんだぞ」
結局は置いてけぼりのまま、今日は早い手仕舞いで美優は通話を切ってしまった。
山本さんもエロマッサージの準備をしていると言っていたしここは予定調和なのかな。
美優はやるとなったら徹底的にやる主義ではあるけれど、熱を出してからというもの俺とエッチなことをするのに浮かれている感じがする。
もし次に似たようなことがあったら今度は落ち着くのだろうか。
将来のために美優がどんなことにムラムラするのか整理しておかないとな。
大人になったら最初の酒は絶対に家で二人きりで飲むことを約束しておこう。
「なあ山本さん」
「はい?」
俺が手錠を軽く持ち上げると、その意図を理解した山本さんが外してくれた。
ちなみにお風呂のお湯は俺が連行されるときに止めてある。
「あえて聞くまでもないんだけど、俺は絶対に射精させてもらえないんだよな?」
「ソトミチくんが婚姻届に判を押してくれても射精だけは絶対にさせられないね」
ずいぶんと固い決意だな。
「んで、風呂から出たらローションマッサージが待ってるんだよな」
「それはもうすごいのをご用意しております」
山本さんはキャリーケースからクリアピンクの容器を取り出して、それをおっぱいに挟んで寄せて見せてくる。
シーツへの汚れ防止マットまで持ってきていてかなり用意周到だ。
おそらく俺は快楽に溺れ苦しめられるのだろう。
ならそれを逆手に取らせてもらうだけのことだ。
「お風呂の前に、コンビニに行かせてくれないか」
「夜間の外出は禁止だよ?」
「ホテルの一階に売店があっただろ。あそこでいいんだ。スマホを通話にしたまま持っていくから、山本さんは部屋で待っててくれ」
「そっか。わかった」
山本さんはベッドに座って指をぴょこぴょこ振って俺を見送ってくれた。
すんなりとお願いを聞いてくれたが、俺が急に通話を切ってどこかに隠れてこっそりオナニーをしようとも、必ず見つけ出して射精を阻止する自信があるからこその快諾なんだろうな。
そして、俺がコンビニで購入してきたものは、大量の精力剤だった。
部屋に戻ってきた俺がコンビニ袋からマカ入りのグミや小さい瓶を取り出すと、ベッドでローションマッサージを準備していた山本さんもさすがに驚きを隠せない様子だった。
「ソトミチくん、どうしちゃったの?」
「いやな。修学旅行で寂しい思いをさせているとはいえ、美優が俺にツラい射精管理を強いるものだから、いっそ限界まで溜めてからぶつけまくってやろうと」
「おおー、なるほど!」
そこに嘘は含まれていなかった。
これだけのことをやったのだから帰ったらエッチなお仕置きを受けることは美優もわかっているだろうし、美優が飲みきれないほどの精液を蓄えることも目的の一つではある。
しかし、それは二段構えの二段目のこと。
真の狙いはまた別にある。
「というわけだから、風呂から上がったらマッサージも全力で頼む。特に金玉のあたりを念入りに舐ってもらいたい」
「ソトミチくんから直々にそう言われると、決意の出どころが気になるところではあるけど……。まっ、そこは美優ちゃんが解決してくれればいいことだから、私は全力でやらせてもらうね」
自分の関知しないことにはあえて触れないのが山本さんだ。
俺と美優の関係が進展していく様を楽しんでいるからこそでもある。
俺は山本さんと交互にスムーズに風呂を済ませ、施術用の白衣ワンピースに着替えた山本さんが、全裸の俺にノーパンで乗っかってきた。
すぐ横には浴室から持ってきた洗面器が置かれていて、エッチな方のローションが溶かれている。
健全なる学生各位はホテルの洗面器をこんなことに決して使ってはいけない。
「では、本日のマッサージを担当させていただきます、山本奏です。リラックスして気持ちよくなってくださいね」
「あ、ああ……」
俺に跨った山本さんが、ビニール製の手袋をピッとはめる。
「マッサージなのに、なんで手袋なんだ?」
「それはもちろん。体の隅々まで解すためですので」
山本さんは指先にローションを着けた手を、そっと優しく、処女の女の子に手マンでもするかのように、俺のお尻へと沿わせた。
「まさか、前立腺マッサージまで含まれてるなんて言わないよな? 美優に許可は取ったのか?」
「妹にお兄ちゃんのアナルをイジっていいか許可を取ってほしいの?」
「それは嫌だけど! 待て! 本当に初めてだから……! 待て待て待て待て!!」
無論、山本さんもそこまで本気ではなかった。
エッチなことで俺をイジメられるならなんでもよかったのだ。
ほんのついでのような流れで半分くらい大切な初めてを失うことになったわけだが、俺も山本さんのお尻の穴の中に勝手に射精した身なので、文句を言うこともできなかった。
それからは俺を射精させない範囲での撫で回しやフェラで全身の性感を高められ、涙が出るほどの快楽を浴びせられた俺は、疲労によって眠気が性欲を上回るまで責め苦に喘がされた。
しかし、それでも、これだけ寸止めされて性欲が飛んでなくなるということはなく、微睡の中でさえ俺の精液は決壊寸前のダムのように溢れんばかりだった。
(イける……予感がする……)
人間が唯一、どんな非現実的なことでもやりたい放題にできる世界。
夢での射精に賭けた俺は、自らに可能な限り淫らな妄想をするようにと、暗示をかけ続けることで眠りについたのだった。