明晰夢と言うものがある。
それを夢だと自覚しながら夢の中を過ごし、人によっては自らの望む形で世界を作り変えられるのだとか。
もしそれが淫夢で叶うのならば、男としてそれ以上に望むべくものもないだろう。
自分の好きな女の子と思い通りのプレイができるのだ。
どこでセックスをしようとも他人に見られることを気にする必要もなく、相手を妊娠させてしまう心配もない。
そこに実際のセックスと同等以上の快楽があれば、それはどんなアダルトコンテンツをも超越した最高のオカズ空間になる。
この日の夜、俺は居酒屋に来ていた。
以前にもバイト先の先輩と居酒屋に来たことがあるが、そのときはノンアルコールドリンクしか頼んでおらず、お酒を飲むことはしなかった。
しかし、今の俺はもう大人なので、お酒を飲むことができる。
いや、大人になったのかどうかは定かではないが、俺はたしかにここで酒を飲んでいた。
「お兄さん、まだ三杯目ですよ? もう酔っちゃったんですか?」
ぼんやりとした視界の端からスラッとした指が伸びてくる。
それは俺の隣にいるのは佐知子のものだった。
これが夢であることを俺は自覚しているので、ともなればどんなセックスでもしてくれる従順な妹を生み出して犯せばいいだけなのだが、どうやらそこまで夢を自由にすることはできないらしい。
理由は明白だ。
美優が俺にオナ禁を命じているからだ。
それが夢であっても美優をオカズにすることをこの身体が許してくれない。
美優の命令は俺にとってそれだけ強力なもの。
しばらくは流れに身を任せてみるしかない。
俺と佐知子がいる店は、回転率を上げるためにあえて狭いほどの小さな個室をたくさん作った都会ならではの居酒屋で、カップルでもお一人様でも使える片側二人掛けのソファー席が引き戸により仕切られている。
肩がぶつかるほどの至近距離でアルコールの摂取を続けている俺たちは、ほどよく酔いを楽しみながらジョッキを煽っていた。
「佐知子は酒が強いんだな。……こんなに大人っぽくなって」
佐知子は元から高かった身長がまた少し伸びて山本さんと同じぐらいになっていた。
童顔と線の細さはそのままなので、ムチムチとした山本さんの体と比べると、美優とは違う意味で対比的な造りになっている。
まだ女子高生にも見えよう体躯に、長めのスカートからでもチラ見えする白い膝が生々しい。
「お兄さんもずいぶんと逞しくなったじゃないですか」
佐知子は俺の胸板から腹筋へと手のひらで触れていき、その指先が股間のチャックへと伸びていく。
佐知子と一緒に酒を飲んでいるだけだというのに俺は勃起していた。
仕事から直行してきたスーツのスラックスには、蒸れるほどかいた汗と散々オナ禁をさせられて溜まった精液の匂いが充満していて、とても開けられる状態ではない。
「わ、悪いよ」
俺はとにかく射精がしたいので、きっとそういう目的で佐知子を呼んだはず。
このパンパンなスラックスを見ても佐知子は平然としているのだ。
なので抜いてはもらうのだが、個室とはいえ居酒屋の席でしてもらうのは忍びない。
「本当に彼氏はいないんだよな?」
「いませんよ。お誘いがひっきりなしなことには変わりないですけどね」
佐知子は苦笑いの後に通知の止まないスマホを俺にチラとだけ見せてテーブルの端に伏せる。
「そんなにいい相手がいないのか?」
「いえ、どなたも素敵な男性ばかりですよ? ただ、どれだけの人に告白されても、お兄さんのことを思い出すと興味を持てなくって。だから……責任は取ってくださるんですよね?」
「えっ? あっ、ああ」
佐知子は耳元で俺に囁きながら、スーツジャケットを脱がせ、俺のシャツのボタンを一つずつ外していく。
背が伸びても不思議なほどに美優と響きが似たままの佐知子の声が俺の耳に奥に入り込んできて、肌に触れたい欲望はどんどん膨らんでいった。
佐知子がこんなにも積極的な女の子になったのも、俺と美優が佐知子をエッチな女の子に仕込んだせいだ。
だったら責任は取らないと。
なにより俺は射精をするためにこの夢を見ているのだから、手段がどうなど拘っている場合ではない。
そこにどれだけの罪悪感があろうとも、俺は射精をするべきなんだ。
でないと起きたとき絶対に後悔することになる。
「ずいぶん溜まっていますね。今すぐにでも爆発しちゃいそうです。一体どれだけ我慢してきたんですか?」
「もうずっとオナ禁させられてるんだよ。だから……できれば、佐知子が……」
佐知子の声なら俺を射精させてくれるはず。
そんな期待に、ようやく言葉にすることができたはずの願いも、乱暴に開けられた引き戸の音にかき消されてしまった。
「情事の最中に失礼いたしますわ淫乱クソお客さま。こんなとこでおっ始めるぐらいなら裏メニューでも頼みなさい」
頭に黒いバンダナと、体には花柄のエプロンをつけた、ホール店員なのか厨房店員なのかわからない女性がやってきた。
というより店員に見せかけたお店とは全く関係ないその人物は、声を聞いた瞬間にわかるほどよく知った不機嫌ツインテールだった。
「お前……由佳か!? なんで、そんな格好を」
「なんでそんな格好かって聞きたいのはこっちの方よ。チャックまで全開にして」
「これには深い事情があってだな……」
「射精目的以外でこんな場所でズボンを脱ぐわけがないでしょ誤魔化しようがないわよこんな状況」
由佳は腕を組んで苛立たしげに俺を見下ろしてくる。
口喧嘩になるととことん敵わないやつだ。
歳をとって見た目の雰囲気こそ大人になったが、こちらも少しは背が伸びたはずなのに、佐知子ほど色気が増していない。
性格によるものだろうか。
「お兄さんが苦しそうだったから、楽にしてあげようと思って」
「嘘を言いなさい万年発情彼氏なし淫乱女。セックスのセの字も知らなかった頃の純情さはどこに行ったの?」
「彼氏なら由佳ちゃんもいないでしょ?」
「あたしはいいの。勉強で忙しかったんだから」
由佳は立派に大学まで進学した後は学校の先生になったらしい。
今の格好は完全に保育士のそれなのだが、はたしてどれが真実なのか、あるいはどちらも見当違いな俺の妄想なのか。
しかし──これはあくまで感覚的な話なのだが──この夢は単に俺の欲望に生み出されたものではなくて、これまで俺が見聞きしてきた情報の断片が、ある種の予知夢として俺に見せているような気もしていた。
「ちなみに裏メニューってなんなんだ? そんなものがあるなんて初耳だよ」
「お店のサービスとして女の子が性奉仕するものがちゃんとあるの。だからそっちに金を使ってもらわなきゃ困るのよ。お兄さんは性欲強めだから四人は必要よね」
「居酒屋だよなここ!?」
「食うもん飲むもんがあればセックスできようと飲食店なのよ。ほら、二万円。払いなさい」
「い、意外と安い……」
四人も女の子がついて二万円で抜いてくれるなら頼んでも良さそうだ。
いや、よくないし、佐知子もいるのだから、ダメなのだが、ここは夢だからいいということにしよう。
そうしないと射精ができない。
「てことでやってきたよ〜、おひさ、美優のお兄さ〜ん」
裏メニューでやってきたのはいつだか駅前で会った由佳の友達三人組だった。
その先頭に立つ女の子がフェラには不向きそうな八重歯をチラつかせて狭い椅子に入り込んでくる。
お客様への性奉仕というメニューで呼ばれたはずの彼女たちも幼稚園の先生みたいな格好をしていて、ここはそういうプレイ専門のお店なのかもしれない。
「お兄さん準備万端じゃん。お店のPRに動画を撮るからできるだけ我慢してね」
気づけば俺は大量の女の子に囲まれて、着ていたスーツを脱がされる様をスマホで撮られながら、三人の女の子と同時にエッチをすることになってしまった。
「あ、あれ? 三人? 四人分の料金を払ったはずじゃ?」
「私も店員だからやるのよ。先生って職業は出会いがないからヤれるときにヤらないと」
「人のこと言えないじゃないかお前も!」
などと抵抗ができたのも口だけで、俺は服を脱がされ、由佳もその友人たちも脱ぎ、狭い個室で淫らな宴が始まった。
無数の細い手が俺とのスキンシップを求めて這い寄ってきて、どうやら幼稚園プレイをする場所ではないらしい店内で、脱ぎ捨てられた衣服が乱雑に積み上げられていく。
その不徳の山から目を逸らすと、なんということか彼女たちの体は未熟な丸みを帯びた幼い体に戻っていた。
「私だって、お兄さんと……久しぶりに……」
それは隣にいた佐知子も同じだった。
彼氏彼女としてセックスをしていた、あの頃のままの佐知子の裸まで乱交接待に加わって、俺はJC五人に囲まれて性快楽を味わうことに。
乳首は左右を別の女の子に舐られ、金玉を撫でる手も、ペニスを握る手も、ふとももを擦る手も、もうどこでなにが起こっているかわからないほどの快楽の中で、射精に至るまでの昂りは着実に蓄積されていった。
だというのに。
(俺は……こんな倫理観不在の乱交で射精をしていいのか……? このまま精液を出して、スッキリするだけで終われるのか……?)
それはあってはならなかったはずの迷い。
とにかく射精をするために俺は精力を極限にまで高め、そして狙い通りに淫らな夢の中にやってきた。
ここで右往左往したのでは、それこそ何がしたかったのかわからない。
それでも、俺はどうしても割り切ることができず、やがて少女たちから与えられる快感は、ゴムを擦るような無機質な刺激へと変わっていった。
「どお、私フェラ上手いっしょ? こんなビンビンでさ〜たくさん出せるならいっぱいお口に出してよ〜!」
「はむっ……ちゅ、それは私がタマ舐めて血流よくしてるからだって……へろ……れろれろぉ……」
「私、もうセックスの準備できてますから、ぜひ中出しを……」
「あっこら私の許可もなく跨るんじゃないっての!」
「もうみんな……そもそもお兄さんが息抜きを頼んだのは私なんだよ……!」
ハーレム、至極、これ以上を望むべくもない射精シチュエーション。
これだけ溜め込んだ精力なら、この場にいる全員をハメて孕ませることもできる。
むしろそうしないのは据え膳も食えぬ男の恥だ。
なによりこれは俺が自分で望んだ状況。
そのはずなのに。
「うぐっ……だ、ダメだ……こんな射精の仕方をしたら……!」
気づけば俺は彼女たちの手を跳ね除けて立ち上がっていた。
勃起したペニスを振り乱しながら個室を飛び出し、会計を済ませることもなく店を飛び出して街中を全力疾走する。
全裸なので人に見つからないように、なにより警察に捕まらないように、俺は泥沼に嵌ったような重たい足でそれでも止まらずに走り続けた。
そして、一角を曲がると、そこには見覚えのある景色が広がっていた。
修学旅行で巡った、和の趣きがある木造建築が軒を連ねていたのだ。
観光客と思しき人々も、芸者のような着物に身を包んでいる人も、往来するその姿は全て女性である。
そして着衣をしていない。
あるいは服を前開きにして恥部を完全に露出させている。
蛇の目の傘から顔をのぞかせる別嬪さんも乳房が丸出しで、女の子だけが裸で往来している破廉恥な楽園がそこにはあった。
(こ、ここは……?)
いつしか俺は走るのをやめていた。
他の全員が露出していることで自分が全裸でいることも許されたからだ。
ペニスはなおもビンビンに勃起していて、女性とすれ違うたびに陰部へと注がれる視線に、俺は羞恥と快感を覚えていた。
「あっ、ソトミチくん。こんなところにいたんだ」
誰とも目を合わせられずにいた俺の視界に、美優とお揃いのツルツルのパイパンが映り込んだ。
目線を上げればそこにははち切れんばかりの巨乳があって、修学旅行先といえばもちろん、山本さんがいるのだ。
彼女は射精警察ではない俺の欲望が生み出したエッチ大好きの山本さん……であってほしい。
さきほどは歳下の少女に囲まれて乱交だなんて状況につい逃げ出してしまったが、山本さんと一対一なら射精できないはずがない。
「山本さん、頼む……見ての通り、こんな状態だから、射精したくて」
俺はビンビンにそそり立ったペニスを突き出して山本さんに懇願した。
それを見て山本さんはすぐ納得して頷いてくれた。
「いいよ、じゃあ、しよっか」
ともなれば支度が早いのが山本さんだった。
俺の前に背を向けて立つと体を前屈みにして、バックからハメるように俺を促してくる。
こんな人の多い通りで青姦プレイをすることになるとは思わなかったが、夢だから問題はない。
「ちなみに危険日だから、中出しはダメだよ?」
山本さんは前を向いたまま首だけを振り返ってニヤニヤと笑っている。
「わかった。イクときは外に出すよ」
などと答えておきながら俺は中出しする気満々だった。
どうせセックスを始めたらそんなことは言ってられない。
俺の精液が欲しくて山本さん自ら腰を振るようになるはず。
夢なら妊娠させようがどうなろうが構いはしないのだ。
これだけ溜め込んだ精液を無駄打ちするんじゃ俺の気が済まない。
お腹が膨れて液の一滴も入らなくなるまで中出ししてやる。
「山本さん、入れるよ……!」
「んんっ……はぁっ……ソトミチくん……すっごい、きてる……!」
俺は山本さんの膣にバックからペニスを挿入して乱暴に振った。
腰と腰がぶつかるたびにプルンと乳房が揺れて、嬌声と愛液とが周囲に垂れ流しになる。
通りがかりの人も足を止めて、俺と山本さんの情事を見守っていた。
「はあっ、ああ、ああっ……山本さんの生膣…………吸い付くぐらい柔らかい……!」
いつか生セックスをしたときと全く同じ感触だった。
その完全な再現に自分でも感心してしまうほど。
俺の金玉の精子も喜んで、うずうずと発射を催促してくる。
「あんあっ、あっ、待ってソトミチくん……クラスのみんなも、来ちゃった……ソトミチくんとセックスしてるところ、見られちゃってる……からぁっ……!」
山本さんが腰の手を重ねて俺の行為を制し、周囲に目を向けさせてくる。
気づけば制服を着た同級生が俺たちのことを見ていた。
修学旅行中なのだから同じ学年の生徒がいるのも当然のことだった。
それでも俺はセックスをやめるわけにはいかなかった。
クラスメイトに見られていたって俺は射精する。
学園のアイドルを犯して種付けする瞬間を見せつけられるなんて最高じゃないか。
せっかくの山本さんとのセックスにそれが余計な刺激でしかないのは確かだったけれども、俺は構わず腰を振り続けた。
さっさと子種を吐き出さなければ、もうこれ以上は我慢することはできない。
「山本さん……っ……このまま出すからなっ……!!」
ついにこのフラストレーションから解放される。
そのはずだった俺は、射精の宣言をした後もペニスに刺激を与えるためのピストンを続け、山本さんの膣穴で懸命に竿を擦った。
「くっ……くそっ……なんで…………!」
なぜ、どうして、このタイミングで。
姿を現したりなんかしたのか。
あの小柄で黒髪の長い巨乳の少女は、見間違えようもない、俺の妹だ。
俺と山本さんのセックスを、美優が見ていた。
劣情にまみれた男女のまぐわいを、恋人と友人の情事を、責めるでも悲しむでもない目で見つめている。
だが俺と山本さんがエッチをしているぐらい美優なら気にもしないはず。
そう思って視界を切って腰を振るのだが、最後の最後で射精をするためのスイッチが入らない。
たしかにこれだけ貯蔵した精液を妹以外に出すのは不義理というものではある。
それでもこれは夢で、精液なんていくらでも貯められるもので、だからここでは何をおいても射精するのが正解だった。
しかし、頭ではわかっていても体がついてこない。
もはや山本さんも小さく息を漏らすだけで俺のピストンに喘いでもいなかった。
俺の興奮が落ち着いてしまったことを山本さんも肌で感じ取ったんだ。
「はぁ、はあっ……んふっ、止まっちゃったね。どうする? ソトミチくん」
「ご、ごめん、最後までできなくて。次は、ちゃんとするから」
「んーん。気にしないで、行っておいで」
俺が山本さんとのセックスを中断すると、美優は野次馬の群れに紛れるように行ってしまった。
ここまできて逃すわけにもいかず、俺は人混みをかき分けて美優を追いかける。
クラスメイトの壁から抜け出すと美優の後ろ姿が見えて、裏路地へ曲がった美優についていくと、裏口から建物に入っていく姿が見えたので俺も慌ててドアの向こうに滑り込んだ。
そこはラブホテルのような一室に繋がっていた。
薄暗い部屋に大きなベッドが鎮座していて、その上に美優がちょこんと姿勢良く座っている。
俺はその正面に立って、両肩を掴み、目を見つめる。
夢のせいで前後の脈絡もない無茶苦茶なシチュエーションになってしまったが、ようやく美優と二人きりになれたんだ。
これで何の憂いもなく射精をすることができる。
「セックス、させてもらえるよな?」
雰囲気もへったくれもない誘い言葉。
入れてしまえば全てが済むと、俺は美優を仰向けに押し倒して、蜜口に亀頭をあてがった。
「お兄ちゃん」
切ない目で俺を見つめてくる。
俺に訴えたいことでもあるかのように、その少女は事の直前でも俺をジッと見つめているだけだった。
「……ど、どうしたんだ?」
夢とはいえ、これが現実を反映させたものであれば、俺とエッチがしたくてたまらなくなっているはず。
頬も紅潮しているし、アソコも濡れているし、体の反応は間違いなく俺を求めているのに、なぜだか割れ目はいつも以上にキツくて先っぽさえ入れることを許してくれない。
こんなにもガードが固いとは思わなかった。
これだけ我慢させてなお射精を許さないなんて、どれだけ俺の脳に干渉してくるのか。
「お兄ちゃんは……どうして、浮気なんかしたの?」
まさかの発言に呼吸が止まった。
いや、他の女性との交接が浮気でないはずがないのだが、これまで散々やらせてきた立場がそれを言うのはどうなのかと。
反省と困惑とが入り混じって、俺はアソコを開くのに夢中になっていた視線を上げた。
「なっ……あっ……ああっ……!!」
──そこにいたのは美優ではなかった。
銀色の髪をシーツに枝垂れさせ、俺を見つめる碧眼の少女が、悲哀を帯びた瞳を潤ませている。
美優よりも控えめな胸を両手で隠すように抱いているその人物は、俺の最愛の元カノだった。
「み……美宇……」
ディスプレイで見たままの姿がそこにはあった。
暗がりでも発光するように輝く白い肌がその存在を際立たせている。
「私のこと、一生愛してくれるって言ったのに……、ずっと一緒だって誓ったのに……、どうしてリアルの女の子になんて手を出したの?」
そう尋ねられて俺は射精するよりも前に吐血しそうだった。
俺は最初から浮気者だったんだ。
美優と付き合っていることも、山本さんを振ったときのことも、由佳とヤったことも、佐知子に癒しを感じてしまったことも、そんな諸々に対してどうだと語るより前に、俺は最愛の女性を裏切っていた。
「ごめん」
俺には、謝ることしかできなかった。
「リアルの妹のふとももがあんなにエロいとは思わなくて……」
「実の妹に手を出しただけなら理解できたのに。学園のアイドルなんて妹とライバル関係なんだよ?」
「巨乳清楚の淫乱奉仕があんなに気持ちいいとは知らず……」
「貧乳の子も抱いてた」
「あれは流れで……」
「筆下ろしなんて初対面の子で済ませてたし」
「佐知子はいい子なんだよ……」
彼女たちは誰も悪くない。
悪いのは流されるままに美少女たちとセックスをしてきた俺だ。
「もう……私のことは抱いてくれないの……?」
美宇が両手を広げて俺を誘ってくる。
ダメな俺を包み込んでくれる、いつもの美宇の優しさだった。
元々が夢精する目的だったから、美宇が相手ともなれば、なおのことセックスをするのに抵抗はないはずだった。
それでも、俺は、美宇の期待に応じることはできなかった。
「掃き溜めみたいになってた俺を支えてくれたのは、間違いなく美宇だったよ。……だからこそ、俺はもう、美宇とはできない」
俺は元いたこちら側でまた頑張っていくと決めた。
きっと美宇と繋がったらまた頼ってしまう。
そんな気がしたから、俺は美宇を解放して体を起こした。
「もう……ズルいなぁ。そんないい顔になっちゃって」
美宇はフッと笑って、それで、俺を許してくれた。
「でも、そっか。お兄ちゃんも大人になったんだね。最後に選んでくれた人が私と似てたのは、嬉しかったかも」
まさかこんなところで再会するなんてな。
こんな時期だからこそ、自分の過去にケリをつけられたのはよかったのかもしれない。
「最後まで大切にしてあげてね」
「もちろん。死ぬまで愛し続けるから」
本当なら美優本人に聞かせてやりたかった言葉。
いつかの長い付き合いのうちに言ってあげよう。
「だから、これも、一つの区切りとしてだな」
しっとりした空気にはなってしまったが、股間の疼きは止まってはいなかった。
美宇の色白な肌と細い四肢を見て、ロリコンほどではないがロリ属性好きの俺は、興奮してしまっていた。
今度は逆に美優の面影が彼女に重なるのだ。
「美宇のこと、見て抜いていいか」
ああもちろん醜いぐらいに男らしくない提案だろう。
でも都合よく考えたっていいはずだ。
だってこれは夢なのだから。
「お兄ちゃんのエッチ。……いいよ」
美宇はいつか画面越しに見たときと同じように秘所を開いて、俺にピンク色の膣壁を晒してくれた。
それをオカズに俺はシコシコとペニスをシゴいてフィニッシュへと向かう。
傍にはティッシュ箱も置いて、これこそが俺の射精の原点だった。
「美宇……美宇っ……!」
シコシコと刺激が蓄積される陰茎がうねりを上げ、ついに精子が陰嚢から解き放たれようとした。
そのとき、ガチャンガチャンと金属がぶつかる音がして、直後に視界を白く覆うほどの眩しい光が俺を捉えた。
「容疑者を発見。射精未遂の現行犯で逮捕する」
無線のノイズが走ると同時に俺の背後に何者かが駆け寄ってきて、ペニスと金玉の付け根にリングを装置された俺は、射精することができなくなってしまった。
竿は青白く腫れ上がるまで締め付けられ、もはやペニスを擦ろうとも快感を得ることはできない。
「そんな……ここまできて……! ま、待ってくれ、あと少しで俺は……!」
美宇の温もりさえあればシコらなくてもイけるはず。
精液が出なくても、性欲だけは発散できると願って、ベッドにダイブした俺は、そのまま底のない穴の中へと落ちていった。
そして──
「……はああっ!?」
目を覚ますと布団の中だった。
あたりは暗く、天井を向いたまま。
俺は姿勢良く寝た体勢で息を切らし、深呼吸をしてバクバクと鳴る心臓を落ち着かせる。
ペニスが痛い。
「やっぱり起きた。エッチな夢は楽しかった?」
布団で遮られた視界の下側を開けると、そこには俺のパンツを脱がせてペニスの根元を押さえている山本さんの姿があった。
どうやら最後の最後に、美優のオナ禁の呪縛を解いたはずの俺から射精を防いだのは、山本さんの物理的な絞め上げだった。
「な、なぜそのことを? てか、どうして俺を脱がせてるんだ?」
「ソトミチくんが射精しそうなのを感じ取って起きたらね。もう出る直前ってぐらいパンパンに膨らんでたから」
「そこまで気づけるのか……」
山本さんの感覚器官を侮ってはいけなかった。
本気を出せば百メートル先で一円玉が落ちた音さえ感知するであろう女だ。
寝てる間であっても俺が射精しそうになれば必ず捕まえにくる。
もはや射精管理用の猟犬と称して差し支えない。
どうして俺はここまで射精が許されないんだ。
「た、頼むよ。一回だけ……一回だけでいいからさ。出させてくれないか? 気持ちよく射精させてくれなんて言わないから」
極限まで性欲を高めてしまったがために、もはやどんな流れであろうと射精欲が収まらない。
夢精ができなかったら美優にたっぷり飲ませてやろうと思ったが、これだけ疼いたままでは無理だ。
俺の精神が保たない。
「ふーん、そっか」
俺の必死の頼み込みに、山本さんは下半身を露出したままの俺に跨り、布団を払いのけた。
反り上がったペニスの真上で開かれた脚は生肌が完全に露出している。
俺のペニスを押さえていた山本さんもすでに脱いでいた。
まるで騎乗位セックス寸前のような状況に、歓喜と緊張で喉の奥が辛くなってくる。
山本さんのふとももは、部屋の薄明かりに照らされて、肌に薄く伸びる潤みが光を反射していた。
「もしかして、俺が寝てる間にするつもりで準備してた?」
「ううん。さっき起きたってのは嘘で、実はソトミチくんの隣でオナニーしてた」
「こいつ……!」
夢の中と同じようにニヤニヤしている山本さんに陰茎の先から苛立った俺は、両手で腰を掴んでペニスを挿入しにかかる。
この際、犯すことになろうともセックスしてやる。
「んふっ。やめといたほうがいいよ、ソトミチくん」
山本さんは陰茎の先と淫穴の口がギリギリ触れ合うぐらいのところで俺のことを止めた。
「もうピルは飲んでないから、中出ししたら妊娠するかも」
「えっ……?」
考えてみれば当然ではあったが、俺には予想外の発言だった。
たしかに俺とは区切りがついたわけだし、モデルの仕事で忙しくなるということだから、セックスなどしていられない山本さんからしたらもう飲む意味もない。
それでも、美優と山本さんのやりとりを見ていると、いつでもどこでもできるように準備はしているものだと思っていた。
あれだけスキンシップを許しておきながら、先のことまで美優と話していると言っていたその中身に、俺とセックスすることは含まれていなかったということか。
それが当たり前のことなのはわかっているけれど、態度が紛らわしすぎる。
「なら、口で」
「それはダメ。膣内射精以外は許さない」
まるで発情中の美優みたいなことを言う。
実質的なセックス不可の宣告だった。
いや、生でセックスしても、射精する瞬間に抜けばワンチャンスがあるかもしれない。
「もし私とソトミチくんがエッチして射精しても、別に美優ちゃんは怒ったりはしないだろうけど。……もし、美優ちゃんより先に私を妊娠させたら、どうなるだろうね」
目を細めて俺を見つめる。
高い視線から届いた熱と冷気の両方を含んだ言葉に、俺の悪あがきは終わった。
たかだか射精するだけのことなのだ。
諦めるほかない。
「はぁ……俺はただ射精したいだけなのに……どうしてこんなに苦労しなくちゃならないんだ……」
「まあまあ。美優ちゃんに寂しい思いをさせてるんだから、お兄ちゃんは我慢だよ」
「別に俺は悪くないだろ」
「んーまあ、美優ちゃんも変なスイッチが入っちゃってるのは間違いないけどね。だから、こんなところで射精してる場合じゃないんだよ、ソトミチくん」
山本さんは俺に跨っていた脚を上げてベッドから降りた。
熱が出てからの美優の異変には山本さんも気づいていたらしい。
その気付けのためにオナ禁した精力が必要だったということか。
なるほど山本さんがやたらと美優に協力的だった理由がわかった。
「にしてもオナ禁してる男の横でオナニーするか普通」
「だって」
起き上がって白い目を向ける俺に、山本さんは身を屈めて耳打ちをしてきた。
「私もソトミチくんとエッチしたくて変になりそうなんだもん」
ビクッと、射精しそうなぐらい、ムスコが反応した。
まったくこの人は。
男の興奮のさせ方を完璧なほど熟知している。
「とりあえず今日はぐっすり眠れるように、一時的に性欲がなくなるツボを押してあげるから。それでお家まで頑張って」
「そんな便利なものがあったなら最初から教えてくれればよかったのに」
「性欲が戻る頃には血流が増進して射精しまくるまで勃起が収まらなくなると思うけど」
「……冗談だよな?」
と、そのツボの存在が真実だったのかはわからないが、山本さんにかなり痛めのマッサージをしてもらって、エロいことを考えられなくなった俺は不思議なほどあっさりと深い眠りに落ちたのだった。
そして、翌日にはハイキングが始まり、有り余る精力で班の女子の荷物まで背負って歩き通した俺は、最後もバスの中で山本さんに癒してもらって完全状態で帰宅することができた。
ちなみに鈴原のやつは知らないうちに家に帰っていて、どうやら朝まで騒がしくヤりまくっていたのがバレて強制送還となったらしい。
どれだけうるさい声を出していたのか。
セックスできたのがそれほど嬉しかったのかな。
とばっちりで同衾が見つかった生徒もいたらしいのだが、そこに俺と山本さんが巻き込まれなかったのは幸運だったのか、あるいはそこまで計算づくだったのか。
いずれにせよ、当然の如く教員から質問攻めにあった俺がお咎めなしだったのは、説教の中でも鈴原が口を固く閉ざして秘密を守ってくれたおかげなので、近いうちに詫びと慰めのために飯でも奢ってやろう。
性欲を煽られながらのオナ禁をやり通して四日目。
ついに家の戸を開けた俺の前には、憎たらしいほど愛おしい妹が待っていた。
帰宅後に学校の制服を着たままの、あと何ヶ月見ることができるのかわからないそのシンボル的な格好で、慎ましく手を重ねて俺を出迎えてくれた。
もはや我慢する必要はない。
そもそも我慢することなどできない。
まずはこの妹に自分が溜めさせた精液がどれほど粘っこく濃縮されたかを味わわせてやろう。
俺のペニスはスラックスを突き破りそうなほど怒張していて、蓄積された過分量のテストステロンが全身の筋肉さえ張り上がらせている。
そんな俺が靴を脱いで玄関に上がろうとしたそのとき、枯れ枝を立て掛けられたかのようなか弱い力で美優が抱きついてきて、そして、何か歯痒そうな赤ら顔を上げて俺を見つめてきた。
「あの、お兄ちゃん」
ごく小さい声で語りかけてくる。
美優の反応がどうにもおかしい。
どうおかしいのかと言うと、おかしくなっているはずの美優からすると大人しすぎるくらいにおかしかった。
「妹は、正気に戻ってしまいました」
つまりそれは、熱を出したラブラブモードの美優はやっぱりどこかが変になっていて、それが一人寂しい時間の中で治ってしまったということだった。
「えっ……いや、あの」
美優がいつもの調子に戻ったのは嬉しい。
それ自体は俺も歓迎したい話だった。
「これ、どうすんの」
だからといって俺の性欲まで落ち着くわけではない。
今でも俺と美優のお腹の隙間で、もう一つの心臓がそこにあるかのように勃起したペニスが脈打っている。
その熱と拍動を美優も感じているので、なおのこと困っているのだろう。
「毎日、ちょっとずつ……じゃあ、ダメだよね……?」
「ダメだな。悪いがこの金玉の中身は空にしないと収まらない」
「ですよね」
気まずそうに唇を結ぶ美優と、見つめあったり目をそらされたりして、数十秒後。
「お、お手柔らかに、お願いします」
美優は意を決して、しかし緊張した表情は隠せないままに、俺を家に上げてくれた。
昨晩、通話を切ったときに大人しくしていた美優は、治りかけの姿だったらしい。
それに気づけなかったことには申し訳ないと思うが、現に俺はこうして射精を完全に禁止されたままここにきてしまったんだ。
あと射精警察として頑張った山本さんにも謝ってあげてほしい。
「大丈夫だよ、美優。あまり大きな声は出せないし、加減はするから」
始まってしまったらどうなるかはわからないけど。
何せ清楚な妹が帰ってきたのだ。
兄として、犯さないわけにはいかなかった。