美優が妊娠したという衝撃の事実が判明してから数分後のこと。
トイレを済ませて戻ってきた美優が部屋のドアを閉めて、直後に俺と目が合ったその頬は、バスタブにピンクの絵の具を一滴垂らしたような色づきをしていた。
照れと恥ずかしさを混ぜ込んだ感情である。
なぜ照れ恥ずかしそうにしているのかは知らないが、兄の精子で孕んだ上にその兄のペニスを咥えてフェラ抜きしようとしていることに対して不埒な思考でもよぎったのかもしれない。
俺との子供という美優が望んでいたものがようやくできて、だからこそ美優はあれだけ上機嫌にしていたのに、俺の胸に込み上げてきたのは喜びを上回る焦りだった。
本当なら今すぐにでも抱きついて祝福するべきだとは思うのに、それが正解であることに確信が持てない。
いや、どちらも正解なんだ。
喜ぶことも、悩むことも、どちらもすべきことで、でもそれは行動にすると正反対のものだから、体が硬直してしまっている。
「どうかした?」
性欲を溜めまくってきたはずの俺が脱ぐそぶりも見せないので、美優も不思議に思ったようだった。
上機嫌にフェラチオをしてくれるつもりだった美優はベッドに腰掛けている俺の前に膝を折っている。
洗濯物を畳む前の母親みたいなたおやかな一連の仕草だった。
「ああ、いやな。結局、前の中出しのとき、なんで美優が俺にオナ禁をさせたのか聞いてないなって」
妊娠したことと正常位セックスに関係があるのかは俺にもわからない。
ただ、デキないと思っていたら受精してしまったので、一つの区切りとしての真正面からのセックスをしておきたかったのだと、俺は推測している。
美優はセックスの前にあの検査薬を意識していたわけだし、無関係ということはないだろう。
「ん……まあ……それは……その……。心の準備ができたら言うから、もうちょっと待っててください」
どうやら美優もタイミングを探っているみたいだ。
俺に孕めと命令されるまで妊娠しないと言っていたのにデキてしまったという予想外が、告白を難しくさせている。
ならば、すでにその事実に気づいている俺が何をすべきか。
考えているうちに、焦りも段々と落ち着いてきた。
こうなってしまったからには何かのサプライズの形でそれを明かすつもりなのかもしれないし、ならば俺もそれを全力で祝福できるように準備しておかなくては。
喜ぶことも悩むこともどちらも必要なら、まず喜ぶことに全力を尽くして、それから一緒に悩んだっていいはずだ。
「そういうことなら、急かさないよ。いつもに通り頼めるか」
俺はできる限り簡単に脱衣してペニスを露出させた。
兄の性欲を口で処理するのは妹のありふれた責務であり、これからも日常的に行われていく作業であるため、簡易的かつ業務的であることが望ましい。
俺のペニスを見て、美優はパジャマの上からしきりにお腹を触っている。
そうして柔らかい生地のそれが揺らめくたびに、その奥に俺の精子で孕ませた受精卵が入っていることを意識してしまう。
パジャマの緩い生地がマタニティウェアのようでイメージが掻き立てられるのだ。
美優のお腹が俺の精子で膨らんだ姿が。
ある種、神聖でさえあるこの妹を、俺のペニスで悦ばせては辱め、性快楽に溺れさせることでピルの薬効さえも超えて排卵を促させた。
臨月を迎えてお腹が丸くなってさえ美優は俺の性処理のためにペニスを咥えるのだろう。
陰茎で穢されてこそ背徳的な昂りをもたらすその姿が、俺のペニスを瞬く間に膨れ上がらせた。
「急におっきくなった」
「美優に口で抜いてもらえるとなればな」
「まあ頼もしい限りではあるけどさ」
美優はブツクサと言いつつもすんなりペニスを咥えてくれた。
まずは両手の指先で優しく陰茎を支えて亀頭をチュパチュパする。
それから裏筋からタマの筋までを舐めて、竿全体を口に咥える。
初めの数分は美優が好きなようにしゃぶるので、目線も陰茎の根元に集中していて、しばらくすると俺と目を合わせてしゃぶってくれるようになるのだ。
視線を交えたままペニスを咥える女の子の表情はなぜこれほど男心をくすぐるのか。
普段でも可愛い女の子の顔はフェラをしていると一段と可愛らしく見える。
特に何割増かに見えるパッチリした目がいい。
そんな愛らしい瞳で太い竿を口にしているギャップが俺を萌えさせる。
「んちゅ……ふんっ……んっ……」
この前のセックスでは美優は俺に無言を要求していた。
それは自分だけの世界に浸りたいという要望からくるものだった。
今回のフェラはそうではない。
しかし、俺たちはまだ言葉を交わしてはいなくて、というより、最近では自然と喋らないフェラが定着しはじめている。
これまで俺は美優が咥えてくれるたびに「気持ちいいよ」と言うようにしていた。
それは沈黙の気まずさを埋めるものであると同時に、フェラを褒めることで美優が恥ずかしがるのを楽しむ目的があった。
最近ではフェラをしてもらうのが当たり前になってきたので、もはやそういうフェーズを通り越している。
美優が口を引いたときに、唇の隙間からにゅるっと表れる肉棒を目で見て楽しむ、という余裕もできて、むしろそっちに集中したいから会話がだんだんと邪魔にさえなってきたのだ。
まあ、フェラは元よりペニスで口が塞がるので、女の子に喋らせないほうがいいというのもある。
「んちゅっ……はむっ……ちゅぷっ……」
美優もそれをわかっているからあえて聞いてはこない。
俺が何も言わないからといって、気持ちよくないのかとか、体調が悪いのかとか、そんな心配はしないのだ。
たぶん、このペニスを射精させたら、どれだけ濃い精液が出てくるのかなぐらいしか考えていない。
自分を孕ませた精子を舌でも味わうという響きの淫靡さよ。
それを美優がやるからこそ余計にエロく感じる。
結局はそうした裏腹の性癖を宿した妹の、清楚で凛とした目が射精のトリガーになり、俺は美優の口内に射精するのだった。
「うっ────ふぅ……!」
どぷっ、どぷっ、どぷっ、と精液が美優の口の中に吐き出されていく。
射精の瞬間にあえて口を開けさせたりはしなかった。
美優がペニスを咥えているその唇の奥で精液が出て、高い粘性と共に喉奥へと流れているという、その事実を脳内で思い浮かべることが格別の快感となるのだ。
無論、美優が開けた口に精液を注ぐのも最高なのだが。
ともかくこの妹は精液を飲ませた後の余韻がいい。
賢者タイムに向けて急激に冷めるのではなく、氷の床を滑るように長く緩やかな興奮が続いていくのが満足感を高めてくれる。
「んくっ……ふぅ。久々にマズいの飲んだ」
「俺もスッキリしたよ。ありがとう」
やはり濃いのを飲ませるのはいいな。
エッチをするようになってからは薄いのを飲ませることも増えてたし、口で受けてもらえるようになったばかりのあの頃のように、また欲望の全てを美優の口内にぶつけるのもいい。
「次は四日ぐらいオナ禁してみるか」
「えっ、いいよ」
口元の精液を指で拭って、正座をしたままバッサリ。
高揚感のまま提案したので、まさかのはたき落とすような言葉に、俺は数秒ポカンとしてしまった。
昔の美優は、性欲を溜めて口に出すほど怒っていたけど──それでも本人はその後の一人遊びを楽しんでいたんだが──いまこの瞬間に至って俺の自発的なオナ禁を良しとしないとは考えもしなかった。
「お兄ちゃんがしたいなら拒まないけどね。今回は、色々あって、変なテンションでお願いしちゃっただけで……してみるとこう、やっぱり違うなって思って」
「どこが?」
「うーん、とね」
射精は俺が性欲を発散したくてするものであって、美優が濃い液を飲むために俺が性欲を我慢するのは本意ではない。
美優はそう言ってから俺に服を着るように促してきた。
美優に苦い味が恋しくなるときがあるのは間違いないはずだし、陽性になった現実が少しばかり美優の頭をおかしくさせていたのも事実としてあるのだろう。
それでも実際にオナ禁をさせてからのフェラ抜きをしてみると、処理に使われていない自分の方がしっくりとこないと主張するあたり、この妹の性癖の捻じ曲がりようも相当なものである。
「まあ、美優らしくて安心した」
「ご心配をおかけしました」
お腹に子を宿したことによってまた暴走状態になるかと思ったが、その心配はなさそうだ。
思い悩んでいる風でもないし、俺はできる限り寄り添って、美優が頼れる男であることに努めよう。
悩みを打ち明けてもらうためには信頼を高めることが必須。
もし美優の口からはっきりと「妊娠した」と言われても、今の俺ならどっしりと受け止めてみせるさ。
そうして俺は日常生活をいつも通りに送ることにした。
俺が妊娠に気づいた昨夜から朝の通学までの間、美優はしきりに俺をチラ見しては考え込むことがあって、俺が重大な何かに気づいたことに関してはもう勘づいている節がある。
妊娠の事実が言葉として伝えられるのも時間の問題だろう。
学校生活でも俺はいつも通りだった。
いつも通り友達と会話して、いつも通り勉強をして、いつも通りに放課後を迎えた。
本当にそうできていると俺は思っていた。
山本さんと二人の放課後を迎えるまでは。
「ソトミチくんはどうしてそんなに緊張してるの?」
近頃、俺が勉強熱心なので、学校が終わってからの三十分ほどの面倒を山本さんに見てもらうようになっていた。
モデルの仕事までの時間調整にも使われていたりする。
元からよからぬ噂を流されていた俺たちではあったが、修学旅行で仲良くなったことが広く認められると、俺と山本さんが二人で話していることには誰からも文句を言われなくなったのだ。
山本さん曰く、俺が妹ばかりに性欲を向けていて他の女の子に色目を使わなかったことが今の結果にも繋がってもいるそうだが、その辺りは俺にはよくわからない。
本当のところは川藤のやつが上手い具合に俺の存在を周囲に説明しているのだと思っている。
ともかくとして、美優を妊娠させたことへの焦りは、俺が自分でも感じていなかったほど体に表れていたらしい。
「そんなに緊張して見える……?」
「うん。声とか身振りとかが大袈裟というか。私にはそう見えるな」
「そ、そうか。まあ、大した話ではないんだが」
とは誤魔化してみるものの、指摘されてしまうと自分の置かれている状況を再認識してしまって、その問題のリアルな深刻さが俺を更に焦らせるのだった。
鼓動の高まりと共に体温が上がって、動いているわけでもないのに額から汗が垂れてくる。
「いやな……その……大した話ではない……ことはないんだけど……」
「そうだろうね。ここからでも心臓の音まで聞こえてきそうだもん。また何か悩み事? 美優ちゃん関係かな?」
さすがは山本さんというか、この指摘がなされた時点で、もう嘘をつくことはできない。
山本さんは相談を受ける気でいてくれているし、この場をやり過ごしてもいつかボロを出してバレてしまうのだろう。
何より誰よりも頼るべき山本さんに隠し事をするのは誠実さに欠ける。
しかし、この場で言ってしまっていいかはまた別の話。
山本さんなら必ず良い方に捉えてくれる確信はあるが、こんな会話の流れで暴露するのではなくて、きちんと時間をとって真剣に相談をした方がいい事態なんだ。
俺に真剣みがなければ美優に対してだって失礼というもの。
ならばまずは仕切り直しだ。
「実はその通りでな。真面目に相談したいことがあるんだ。また時間があるときに話をさせてくれないか?」
「ソトミチくんのためなら喜んで。ただ、一応聞いておくんだけど、私に関係のある話ではないんだよね?」
「ああ、もちろん……」
と、言いかけたところで、俺の頭の中が真っ白に吹っ飛んだ。
山本さんに関係ない話とは断言できない。
しかも、もし関係のある話になってしまっていたら、悠長にまた別の日になんて言っていられる状況ではないんだ。
「あ……えっ……と……念のため、確認なんだが……」
「もし生理がどうとかの話ならまだではあるんだけど。もしかしてそういう話?」
「本当にそういう話なんだ」
「あらまあ」
山本さんは驚いて、その後に言葉が出なかったのは多分、ピルを飲んでいたのに美優が妊娠したので自分の立場も楽観視できるものではなくなったからだろう。
複数の女の子と性行為に及ぶというのはそういうことなんだ。
さすがに佐知子と由佳は問題ないはずだが、状況が状況だけに無視もできない。
急に真面目になったのは俺との子ができて美優との関係が確定したから、ということはさすがにないと信じているけど、ともかく一度は関係を持った身として何も聞かないわけにはいかなかった。
「とりあえず、おめでとうだね。ソトミチくんも美優ちゃんも。素直に喜んでもらえるかはわからないけど、私からは祝福しておくね」
「え、あっ……ありがとう。そう言ってもらえるのは、心強いよ」
山本さんは実に落ち着き払った様子だった。
無理をして言ってくれているわけでないことはいつも通りの柔和な笑顔を見ていればすぐにわかる。
俺だって美優の前では同じように喜ぶべきだと理解はしていて、この対応は実に参考になるものだった。
「ピルは飲み続けてたんだよね?」
「これまでの美優を見る限りではまず間違いなく」
「で、見事に貫通しちゃったんだ」
「貫通というか、引きずり出したというか」
「ソトミチくんの精子ヤバいね?」
ああ、ヤバい、ヤバすぎる。
美優ほど管理がきっちりしている子を相手にさえ孕ませてしまうなんて、どれだけ受精させる能力が高いのか。
「山本さんは次の生理はいつ来そうなんだ?」
「来てみないとわからないかな。服用をやめてすぐ来る人もいれば、遅い人は何ヶ月かこないって話も聞くし」
「となると……」
「ちゃんと結果が出るかわからないけど、検査はしてみるね」
「ありがとう。そして……申し訳ない」
「んふふ。大丈夫だよ。ドキドキ半分、ワクワク半分って感じだし」
山本さんは謎にブラウスの上から楽しそうに自らの胸を揉んでいる。
弾むような心の動きを胸の柔らかさで表している──のではなく、リアルに母乳が出るようになった自分を想像して歓喜しているんだな、これは。
もし二人を同時に妊娠させていた場合は俺の法的な立ち位置はどうなるんだろうか。
それどころか、極めて低い可能性とはいえ、三人や四人が同時だったら……。
「もし、山本さんも陽性だったら、どうするつもりでいる?」
「私は誰が何と言おうと産むよ。美優ちゃんには悪いけど、これだけは絶対に譲らないから」
俺と真正面から視線を交えての強い断言だった。
かつての告白は俺にとって一つの過去になってしまったが、山本さんの中の熱量はまた別の形に変わっただけで、少しも失われてはいなかったらしい。
「ってことだから、ね? ソトミチくんも、わかるよね」
──美優ちゃんにどう接してあげるべきか。
それが山本さんからの答えでもあり俺へのアドバイスでもあった。
さっきの山本さんの答えは美優の立場でも一緒なんだ。
将来のことでどれだけ悩むことになろうとも、美優に産まないという選択肢はない。
だから、俺が美優にかけてやる言葉も「おめでとう」しかあり得ないし、こんなところでアタフタしていてはいたずらに美優を不安にさせるだけ。
美優は告白するタイミングを迷っているんだと俺は思っていたけど、本当は俺が頼りないから言い出すきっかけを掴めなかっただけで、今日この瞬間だって俺に妊娠したと伝えたい想いでいっぱいなのかもしれない。
「……学校のことも、法律のことも、俺が全部知っておかないと」
人を安心させるために大事なのは何を考えるかじゃない。
どんな行動で示すかだ。
「紙に書いてまとめてみるよ。俺がやるべきことを。調べたことはノートにでも書き溜めて、美優からの話があったときに渡してみるかな」
「いい心がけだね。さすがはソトミチくん」
「もっと前に気づくべきことがあったけどな」
無避妊で中出ししまくるほど肉欲に溺れたわけではない。
現実的な範囲で守れるものは守ってきた。
これは誰にでも普遍的に起こり得ることで、人はどれだけ想像力を働かせていても、誰しもそれが己が身に降りかかるまでは自分事としては考えられないものだ。
とはいえ、俺と美優の体の相性が良すぎることを考えれば、他の人では仕方ないことも、俺たちにとっては仕方ないで片付けられないものだったりする。
それでも事前に避けられたかと言われたら難しいのだが。
「今までのことがあったからこそ美優ちゃんは幸せなんだから」
もっと胸を張って美優に寄り添っていればいいんだと。
そう山本さんに言ってもらえて、俺は「ありがとう」と心からの感謝を返事にすることができた。
俺が自信を持って美優を幸せにすることが、美優のためにもなることだし、山本さんのためにもなることなんだ。
そこまで話をして、それが山本さんと話せる時間のリミットだった。
下手をすれば自分も妊娠しているかもしれないという状況で、あれだけ楽しそうに仕事に行けるなんて。
円満別れという形で、最後の最後まできちんと山本さんとも愛を育めたことは、こうした結果からみるとよかったことだったのかもしれないな。
(美優の卒業までのことを考えると、学校に隠し通すのは難しいか)
公立の義務共育機関だから無理な退学や休学はない。
美優の成績なら最悪通わないでも卒業はできるだろう。
進学校を受験するつもりじゃなかったのは幸いだった。
なにより美優にとって最終就職先となっているこの俺との関係は絶対的なものとして約束されているんだ。
それが美優にとっての安心材料になるならばその支えを一番に大事にしなければならない。
といっても、美優の性格を考えれば、卒業まで通学はするって言いそうなんだよな。
そうなると校内でのサポートが必須になる。
やはり妊娠していないかの事実確認も兼ねて、由佳たちにも相談はしておかないと。
遥も含めて三人に連絡をしておいて、あとは……親への説明か。
美優にやらせるわけにはいかないからな。
子供を作れと言われている身とはいえさすがに早すぎる。
歓迎されるばかりではないことは覚悟しておくべきだ。
「──美優。帰ったぞ」
まずは美優を安心させてやらなければならない。
妊娠しても俺が絶対に幸せにすると示してやるんだ。
「お、おかえり、お兄ちゃん」
いつも通り玄関にまで出迎えにきた美優はどうしてか身構えていた。
少し声を張っただけのつもりだったが、美優からの告白を引き出す幕開けとしてはイマイチだったようだ。
制服姿の美優は今日も自然体でクールな雰囲気を纏っている。
こんな妹がお兄ちゃんとのセックスにハマりすぎて妊娠してしまったなんて。
他人事ではないのだが、その姿をエッチだと思わなければ、俺たち兄妹の関係としてはいけない気がした。
「美優はまだ風呂に入ってないのか?」
「お湯は張ってあるよ」
「なら一緒に入ろう」
「うん? いいけど」
「ついでにマッサージでもどうだ」
「なんで……!?」
「美優も脚が浮腫んだりするだろ」
帰り道にネットで調べた限りの知識しかないものの、妊娠すると様々な変化が体に表れるらしいことはわかったので、まずはそこを労るのができる旦那の第一歩と判断した。
ホルモンバランスも崩れて精神的に不安定にもなるようだし、俺がいればなんとかなると思ってもらえるぐらいには頼り甲斐のあるところを見せつけなければならない。
「お兄ちゃんがなぜそんなにハッスルしてるのかわかりませんが。そういう気分なのでしたら、妹は覚悟しておきますので、今夜は好きなだけお使いください」
どうやら勘違いさせてしまったらしい美優は、それでもお風呂には一緒に入ってくれるようで、脱衣所のドアを閉めて先に服を脱ぐと、俺に断りもなく浴室に入ってシャワーを浴び始めた。
同時に二人がシャワーを使うのが難しいからではない。
美優にとっては服を脱いでいる姿を見られることが裸を見られるよりも恥ずかしいのだ。
あるいは身体的な変化を湯面で隠したかったということもありうるか。
長く見積もってもまだひと月しか経っていないのでお腹は膨らんでいないはずだけどな。
「俺も入るぞ」
浴室のドアを開けて見えたのは美優の後ろ姿だった。
お湯に濡れた長い髪が背中に垂れて、毛先がちょうど美優のお尻の上あたりにきているのがとてもエッチに見える。
正面の鏡には見ているだけで頬っぺたがこぼれ落ちてしまいそうになる豊満な胸の膨らみがあって、夏休みに入れていたピンクのインナーカラーもいつの間にか消えており、黒く輝く美しいロングヘアがそこにはあるのだった。
「エッチをしてないときの美優の体ってなんでこんなにエッチなんだろうな」
「そんなに頭がおかしくなるぐらいムラムラしてるならいっそこの場で挿れてください」
美優は鏡越しに俺を睨みながら、ネットで泡立てた石鹸を腕に滑らせて、お尻を上げるようにして軽く腰を引いてきた。
それは今すぐ立ちバックでハメろということだろうか。
実にそうしたい気分ではあるが当初の目的はそうではないのだ。
お風呂で手を出すのは控えておこう。
俺は股間こそギンギンに勃起していたが、美優に手を出すことなくシャワーを終えた。
本当に処理しなくていいのかと心配する美優に、「気にするな」と俺は返して、後ろに座り込み、美優を抱きしめる。
お湯に浮いたおっぱいを鷲掴みにしたくなる感情は昔から変わっていなかった。
あと一年もしないうちにそこから母乳が出るようになるのだと思うとそれだけで射精しそうにさえなる。
それでも、俺は欲望を抑え、美優を襲うことをしなかった。
頼り甲斐のある兄としての姿を美優に見せつけなければならない。
「お兄ちゃん、もしかしてエッチしない気?」
「ああ。今日はその……恋人としての美優を感じたい日なんだ」
「そうですか。そういうことでしたら理解はします」
恋人の関係になるとエッチしなくなるなんて妙な関係にも思えるが、俺たちにとって性的なスキンシップは兄妹としてやるものであって、それ以上のものはない。
俺たちはそうした性癖で繋がっていることを認め合っている。
「ではマッサージも禁止です。生殺しにされたら堪りません」
「なっ……! いや、まあ、仕方ないか……それはそうだよな……」
俺に触れられるとエッチな気分になる美優はこうして一緒にお風呂に入っているだけでムラムラしてしまうんだ。
する気がないのに相手だけ発情させるのはできる男として配慮に欠ける。
「俺は先に上がってるから。風呂から出て支度が済んだら美優の部屋に呼んでくれないか」
「私の部屋? わかった」
お腹の子を労るなら美優の部屋でしたほうがいい。
美優の全身の、子宮の隅々に至るまでリラックスさせてあげて、今夜は出来うる限りの愛を伝えよう。
俺からの愛情が何よりも美優を安心させるはずなんだ。
「お兄ちゃん。上がったよ」
湯上がりの美優は、シルク生地だったパジャマを買い替えて、ピンク色のタオル生地に身を包んでいた。
全身ふわふわで抱きついたら気持ち良さそうである。
抱きつきたい。
「お兄ちゃんから性欲をヒシヒシと感じる」
「正直なところムラついてはいるんだが今日はそうじゃないんだ」
「では何をなさるのでしょう?」
二人で美優の部屋に移動して、美優のベッドに並んで腰掛けた。
いつもならもう何度となくエッチをしてきた流れである。
「色んなことが落ち着いたからな。将来のことを話しておきたくて」
「良いことですね。どこの大学に行くかとか?」
「美優とのことだよ。何歳で家を出て、どんな家で暮らして、その、何人ぐらいで暮らすのかとか」
「そっちか。また急だね。でもまあ、私もそういうことを考えないでもないよ」
美優は机の引き出しからノートを取ってきて開いて見せてくれた。
そこにはこの近辺で通える学校の偏差値だったり、一緒に住む家を賃貸にした場合と購入した場合の費用だったり、生涯のやりたいことリストの書き出しだったりが、こと細かく書かれている。
兄妹で思考回路は似るものらしい。
几帳面な美優が書いたにしては情報が整理されておらず、思いついたものを順番に並べていった感じだった。
とはいえほぼノートを埋め切るこのボリュームはいったいどれだけの時間を費やしたものなのか。
「想像以上にリアルだし量もすごいな。人生計画表みたいだ」
「リラックスタイムに筆を滑らせてたらこんな感じになってました」
美優は恥ずかしいのかパラパラとページを速くめくってじっくり読ませないようにしている。
リラックスタイムという言葉を聞いた瞬間に思い浮かんだのは自慰行為なのだが、さすがにアソコをイジりながらノートを書くというのはいささか違和感があった。
エッチなノートではないのかもしれない。
「妹を自慰中毒か何かだと思っているのですか」
「オナ禁させられたら実はツラいのは俺より美優なのかもしれないと思ったことはある」
「まあ罰ゲームでも絶対に受け入れる気はないけどね」
元からオナニーが好きだったのか俺のせいでハマってしまったのかは知る由もない。
それはともかくフェラの義務だけ残してひと月オナ禁をさせたら美優がどんな顔でオナニーをさせてほしいと懇願してくるのか興味がある。
っと、いけない。
これではいつもの兄妹の会話だ。
いま俺は恋人として、ひいては夫としてここにいるんだ。
「美優は大人になったらファッション関係の仕事に就くのか?」
「普通のお仕事をやりながら趣味に生きるよ。歳をとるまで趣味は本業にしないつもり」
「だから将来の職業には会社の事務員としか書いてないのか」
美優にしてはずいぶんと夢のないことを書くと思ったらそういうことか。
義務感で趣味が楽しめなくなったら元も子もないし。
仕事が忙しくなるとプライベートとの両立が難しくなるからな。
俺と俺たちの子供との時間を何よりも大事にしたい美優からしたら、それは避けなければならない重要な問題だった。
俺にやってほしい仕事についても、詳しくは書いていない。
ただ、『あんまり忙しくない仕事だといいな……』とコメントが添えてあったのはだいぶ萌えた。
上機嫌にペンを滑らせていた美優の姿が目に浮かぶ。
リラックスタイムとはつまり、脳内に同じ快楽物質が出ているのならオナニーをしなくてもいいでしょという、性感帯への刺激を伴わない自慰を指して名付けられた実に美優らしい行為なんだ。
美優からは何も言葉はないが、ノートを眺めているその視線の端で、俺の思考を読んで無言の肯定をしてくれている。
性欲でハイになっているとき以外はいつだって美優は俺の考えていることを理解してくれるんだ。
だったら、そのお腹の子に俺が気づいてることだって。
美優はもう知っているはずだ。
「将来のことといえば、子供が生まれたりしたら、美優は俺と子供とどっちの方が好きになるんだろうな」
「ん、悩ましい質問だね」
子供のことに話題を集中させる。
普段からこうした話をしておいた方がいざ美優が告白しようとしたときの緊張も和らげられるだろう。
美優は俺との視線を切って天井を見上げた。
「でも、やっぱりお兄ちゃんだよ」
それから美優が答えを出すまでは早かった。
現実どうなるかはさておき、美優がそう思ってくれたのは素直に嬉しい。
「子供たちが嫉妬するぐらいお兄ちゃんとイチャイチャしたい。パパの取り合いをして、みんな起きてるうちは子供の相手をしてもらって、寝静まってから子供には見せられないぐらい本気で私のことを愛してほしい」
お風呂で軽いスキンシップをしたときのテンションが保たれているのか、美優は上機嫌に本音を口にしていた。
いずれ子供たちは俺たちの手から離れて別の誰かと愛し合うのだろうし、大切なのは夫婦の愛であるというのは、俺にとっても考えに相違ない。
「子供が生まれても性処理はしてもらえると思ってていい?」
「もちろん。妻の大事な役目だもん」
子供の世話をしながらセックスをするのは大変だろうし、実際に産んでみたら気が変わるなんてこともあり得るとは思っている。
でも、少なくとも美優の体質からしたらエロいことをするのはストレス発散をするのに大事なことだし、女性は三十歳になってから性欲が増すと言うので、むしろせがまれることさえあるかもしれない。
先々まで見据えれば、それこそお互いのためにセックスをするのが支え合いなんだよな。
「ちなみに美優のお腹がおっきくなったり母乳が出るようになったらそれでエロいことをしてもいいんだろうか」
「やはりだいぶ溜まっていらっしゃいますね? お兄ちゃん」
美優はいつのまにか勃起していた俺の股間を見ている。
これから父親になる身として頼れる姿を見せるつもりだったのに結局こうだ。
しかし、今日は大事な初日。
ギリギリまでは理性を保ってみせる。
妊娠していてもいいんだと美優を安心させられるまでは。
「美優は自分の卵巣の位置とかわかるのかな」
「わかるわけがないですが」
「わかるわけはないのか」
「子宮の入り口がどこかは触ればわかるので、卵管がどんな感じに伸びてるのかは確かめたことがあります」
つまるところ、オナ禁しまくった後の金玉のように卵巣が疼くことはないが、物理的な位置は推測可能で、そういうのを確認するだけで興奮できる性癖の美優は、お腹から見るとどのあたりで卵子が排出されるかを調べたことがあるらしい。
「いつも精子を出されてるのを感じるのはどのあたり?」
俺は美優のパジャマをめくってお腹を露出させる。
「だいたいこの辺」
美優はズボンとお腹に少しだけ隙間を開けてそこを指で示した。
普段なら間違いなく抵抗するのに、律儀に俺の質問に答えてくれるのは美優も相当にムラムラしているからに違いない。
もうここまできたら責任を取るしかないか。
「排卵日には、この上あたりに卵子が来るんだよな」
「ですね。卵巣はその斜め上あたりにありますので」
「となると、こう……移動してきて、俺の精子と出会うわけか」
「はい」
美優が教えてくれた卵管の上を、指先でなぞっていく。
美優の腹筋……というより膣が収縮して、ピクピクするお腹を辿っていくと、やがておへそに辿り着いた。
この奥ではもう俺の精子と美優の卵子が交わっている。
美優は俺がベッドについていた手に自らを手を重ねて、睨んでいるとも澄ましているともとれない微妙なニュアンスの表情で、俺を見つめてきた。
手のひらがとても熱い。
「排卵したかも」
「なら中出ししてみようか」
「しないって言ったら怒る」
美優は「ほんとに妊娠しちゃうかも」とは言いながらも、下だけを脱いで、俺にも同じようにしてペニスを出させた。
正面から跨ってきた美優はそれでも自分から挿れることはしないで、俺からの挿入を待っている。
流れとしては自分からでも、俺に孕まされたという事実は欲しいらしい。
俺は対面座位のまま美優の膣に挿入して、それでもお腹の子を労るために、激しいセックスはしなかった。
子宮に精子を注ぎ込まれる瞬間を美優に感じてほしかったこともある。
すでにデキてしまった後ではあるけど、こんなやり取りをしていれば、美優だって妊娠したと俺に告げることに躊躇いもなくなるだろう。
他でもない俺が、俺の意思で孕ませたのだから。
射精をするまでに、もはやペニスを擦る刺激は必要なかった。
俺たちは舌を絡めて愛を送り合い、膣のペニスが触れ合っているその事実を確かめながら、生殖行為に集中する。
最後にはフィニッシュに向けて猛ピストンをかけるように激しく舌を絡め合って、興奮が最高潮に達したところで射精をした。
それと同時に美優はビクンと体を跳ねさせてイった。
俺は子宮口とペニスの鈴口が離れないように全力で美優を押さえつけて、それこそ強制的に種付けをするように精子を送り込んだ。
精子の一匹も逃させず、子宮の中でたった一つの美優の卵子を奪い合って、生き残った強い遺伝子が結ばれればいい。
すでにデキてしまった後ではあるけど、これは俺にとっても美優への愛と我が子への願いを示す、誓いの膣内射精だった。
「ふあ……すっごいのきた……ほんとに妊娠したかも……」
「だとしたら楽しみだな。検査薬は持ってる?」
「へっ? ま、まあ。万一に備えてのものはありますが」
美優は中出しされた余韻に浸りつつも、俺からの提案に少し驚いたようすだった。
ピンポイントで妊娠検査薬の話を持ち出したからだろう。
こうなってさえしまえば、あとは妊娠に足る期間を待つだけ。
それで美優はいつでも俺に孕まされたと堂々宣言することができる。
「お兄ちゃんが言うなら、使ってみようかな」
美優は緩んだ口元で嬉しそうに言った。
だいぶ好印象を持ってもらえたようだ。
エッチはしてしまったけど、美優との将来を全肯定できたので、十分な成果と言える。
明日からも気を抜かず、恋人として、夫として、なにより兄として、頼れる存在であり続けよう。
いつか美優はありのままの俺でいいと言ってくれたけど、この件だけは男として意識を変えるべきなんだ。
「妊娠検査薬って確か、おしっこを掛けるんだよな?」
「こんないい雰囲気で邪悪なことを考えるのはどうなんですか」
「まあほら、一生に何度もないし」
「死んでも嫌です」
まだ繋がったままの俺たちは、その膣内を精液と愛液でドロドロと濡らして、そんな最中でも兄弟としての会話ができる。
「でも、お兄ちゃんらしくて安心した」
美優はふっと微笑った。
幸せを最大限に享受して、課題は一緒に乗り越える。
それが俺たちのあるべき形。
いや、もしかしたら、世の中のカップル全てがそうあるべきなのかもしれない。
「じゃあ……使ってみるね。妊娠検査薬」
美優はその頬に特別な性的昂りを紅く乗せながら、いつか見た素直な笑顔でそう言ってくれた。