※この作品はR-18です。

健気な彼女   作:ユイトアクエリア

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行為もなければ匂わせもない、単純に俺が書きたかったのを書いただけ。
よろしくおなしゃす


駅前でイルミデート【N】

「はぁ~...案外冷えるな...結構着たんだけどなあ...」

 

さて、俺は今何をしているだろうか。

正解は、駅前の公園で彼女を待っている。

現在の時刻は、17:55と、冬に外出するには、もう日が落ちている時間帯だ。

それでもこんな時間に外出するのには理由があって、駅前のイルミネーションが綺麗だから一緒に見たい、という彼女の意見の元、ここにいる。

集合時間は18時なので、もう少し待っているかと、片耳にイヤホンを着けて、曲を流す。

曲名は『ブルームブルーム』。

知っての通り、今人気のガールズバンド、《Morfonica》の曲だ。

春のイメージで作っているらしく、この季節には若干合わないが、まあそれでもいい。

何より、普段と違う声が聞ける。

と、遠くに見覚えのある人影が見えた。

それはどんどん近づいて、俺が見えると手を振りながら走ってくる。

 

「ごめんねっ?待った、かな?」

「大丈夫、待ってないよ」

 

と、社交辞令気味に返すと、彼女は少し不満そうに、

 

「私の方が、先に着いてるはずだったんだけどなぁ...」

 

と、頬をふくらませながらボヤいた。

 

「むしろ俺が早すぎたんだ、心配すんな」

 

と、フォローしてやると、

 

「う~...綾乃くん、いっつも私より先にいる...」

 

と文句を言われた。

こればっかりは昔からの癖というか、人を待たせるのによく分からない不快感を感じるが故に早く着きすぎているだけなんだが。

まあ、待ってる人間はちょっと不安になるよなっていう話。

 

「私、もう少し早く来れるようにするね?」

「いや、別に気使わなくていいぞ?女の子は準備大変なんだしさ、もう少しゆっくり来てもいいくらいだ」

 

彼女は本当に気遣いというか、人への配慮がすごい。

配慮のし過ぎで自分に配慮できていないのは考えものだが。

 

「じゃあ、時間も時間だし、行くか」

「うんっ!楽しみだね、綾乃くん!」

 

俺に向けられた笑顔は、とても眩しかった。

 

***

 

「そういえば綾乃くん、何聞いてるの?」

「え?...あっ...」

 

待ち時間つぶしでつけていたイヤホンを外すのを忘れていた。

 

「悪いな、イヤホンなんて」

「ううん、綾乃くんが音楽好きなのは知ってるから、大丈夫。でも、何聞いてたのか気になって...」

 

そう言われたので、彼女の右耳にイヤホンを入れてやる。

曲が聞こえ始めると、だんだん彼女は顔を赤くしていく。

それもそのはず、自分が歌ってる曲を流されているんだから、恥ずかしいことこの上ない。

例えばこれが他のボーカルだったなら、そこまで恥じらいも無いかもしれない。

でも彼女は、元々表舞台に立つような人間じゃなかったと言っていた。

そんな人が、自分が歌っている曲を流されたら、当然恥ずかしいに決まっている。

 

「...さっきまで、ずっとこれ、聞いてたの...?」

「まあな」

「嫌がらせ?」

「あ〜...ちょっとからかってやろうかっていう気持ちはあったけど...ごめんな、嫌だよな」

「嫌だったけど...嬉しかった」

 

嬉しい?どういう意味だろう。

 

「綾乃くんが、私の歌、聞いてくれてるって思ったら...」

「いつも癒されてるよ、ありがとう」

「えへへ...」

 

仮にもバンドのボーカルに彼氏がいるというのはどうなのかとかふと思ったが、今更かと思い振り捨てる。

 

「いつも、か」

「ん、どうかしたか?」

「みんなを導けるような、そんな歌を歌いたいなぁって...」

「歌えるさ、きっと、ましろなら」

「...うん、頑張るね」

 

イルミネーションの場所に着くまで、ずっとこんな感じだった。

 

***

 

「わぁ...!」

「すげえな...」

 

俺たちはイルミネーションを見るや否や、語彙力が消失した状態で感想を述べている。

クリスマスツリーや雪だるま、サンタなどが忠実に再現されている。

家の近くにイルミネーションはあるはあるが、どれも家庭用のものばかりだ。

レベルが違う、光の量が、強さが違う。

 

「綺麗だねっ!」

「あぁ、そうだな」

 

ましろは目をキラキラさせながら色んな場所を見ている。

俺はふと目に付いたサンタのイルミネーションに、訳もなく手を合わせてまた訳もなく呟いた。

 

「...この日々が、ずっと続きますように。...彼女が、幸せであるように...」

「綾乃くん?何してるの?」

 

さっきまで目をきらきらさせながらほっつき歩いていたましろがいつの間にか戻ってきたようだ。

 

「いや、なんでもない」

「...そっか」

 

ましろの手を取り、そのまま自分のコートのポケットに突っ込む。

 

「綾乃くん?」

「ましろ、手冷たかったから」

 

俺は今、きっと顔がめっちゃ赤い。

いくら冷たかったからと言って、この行動はどうなのか。

普通に手袋を貸すっていう択はなかったのか。

そう思ってると、ましろがコートに突っ込んだ手側の腕に抱き着いてきた。

 

「ま、ましろ?」

「えへへ...寒いから...あっためてほしいなぁ...なんて」

「はいはい」

 

本当に甘え上手で、いちいち俺の急所をクリティカルアタックしてくる可愛さだ。

ガッツがあっても魅了ハメで殺されている。

 

「私ね、今、すっごい幸せだよ」

「どうしたんだよ急に」

「だって綾乃くん、サンタさんの前でお願い事してたでしょ?あれ、聞いてたの」

「聞かれてたのかよ...恥ずかし」

「だからね、幸せってこと、伝えたくて」

「ありがとな、ましろ」

 

健気な彼女だ、本当に。

独りよがりでしかない俺の欲を、全部叶えてくれる。

 

「だから、大好きなんだよな」

「私もっ!」

 

二人して笑いながら、駅前を後にした。

 

 




こういうことしたいよね、推しとお出かけしたいよね。
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