『今日、遊びに行ってもいい?』
とメッセージが飛んできたのは、金曜日の朝方。
送り主は、倉田ましろ。
俺の彼女で、現在大学2年生。
高校1年からの付き合いだから、なんだかんだ5年ほど続いている。
考えてみたら、すごい長い。
『了解。俺は5限まであるけど、ましろは?』
『私は4限までだよ』
『ましろがそのあと何もなきゃ、先家いていいぞ』
『わかった!先にお邪魔しておくね』
最後のメッセージに既読を付け、一応確認の意でスタンプを送る。
『可愛いスタンプだね』というメッセージを見なかったことにして、大学へ行く準備をする。
いつもは少し気だるげになりながら行くところだが、今日は違う。
今日を乗り切るための力は、今貰ったからな。
自分で進んで受けている講義とはいえ、少し億劫になってしまうのも事実ではあると思う。
それゆえ、少し頭が揺れてしまってはいるが、何とか意識は繋ぎ止めている。
きちんと講義の重要事項はメモをし、実技の部分はそれとなくこなし、なんとなく内申は取る。
なんとなく、とは言っているが、やるべきことはちゃんとしている。
最近の講義はだんだんやることが減ってきているため、教科書の一単元を終わらせたら解散というのが多い。
そのままなんとなくの加減で5限まで受け終え、今日のご飯は何にしようか、なんて考えてたら、携帯が震えた。
画面を見ると、電話がかかってきている。
イヤホンを挿し、電話に出る。
「どうしたましろ」
『あ、今帰り?』
「うん。なんかほしいものある?」
『ううん。できれば今日は、どこにも寄らずに帰ってきてほしいなぁ...なんて』
「ん、OK。すぐ帰る」
『うん!ふふっ、楽しみにしてて!』
「?了解」
楽しみにしてて、とはどういうことだろうか。
まあ、どのみち帰ればわかることか。
とりあえず、帰路を急ぐとしよう。
愛しの彼女が、何かをして待っているんだからな。
「っと......ただいま」
帰った意を表する言葉を口にしても、返答がない。
「何してんだろ」
呟き、リビングへのドアを開けると......
「あ、お帰りあやくん!」
「......料理してたのか」
リビングに入ると、ましろがエプロンをつけて料理してた。
眼福だね。
なんか、結婚1年未満って感じがする。
「なんで未満なの?」
「しれっとメタるな。いろいろあんだよ」
「ふーん、まあいいけど」
というか、ましろの恰好、今更だが眼福通り越して毒だな。
眼の癒しは時として毒になるというが、こういうことか。
推しとやらを愛でる友人の気持ちがよく分かった。
「ん?どうしたのあやくん?」
「いや。友人の気持ちがようやくわかった気がするって話」
「?」
ましろは頭の上にクエスチョンを浮かべているが、それは無視することにする。
「んで、何作ってんの?」
「夜ごはん!」
「別にそこまでやらなくても......というか、まっすぐ帰ってこいってそういうこと?」
「......うん。あと、ね」
ましろは冷蔵庫からとあるものを取り出した。
「私も、ほら。二十歳、なったし。飲んでもいいかなぁ、なんて......」
取り出したのはいわゆる缶チューハイと言う奴だ。
まぁ、お酒と言う奴だな。
「......わざわざ買ってきたんだ、それ」
「うん。......ダメ、だった?」
「いや、だめとかじゃなくて。飲みたいなら度弱いの買ってきたのに」
「......え?」
彼女が持っているのは、度が強い有名なやつ。
少なくとも二十歳一発目に呑む物では、絶対にない。
俺ですら、完飲するころには意識が定かじゃないというのに。
「......これ、そんなにダメなやつだった?」
「ダメ......じゃないけど、デビューで飲む奴ではないな。夜飯食い終わったら、素直に弱いの買いに行こうな」
「......うん」
残念そうな顔をしたけど、後でいっぱい甘やかせば機嫌も直すかな。
推しに酒を飲ませたかった、それだけだ。
連続投稿、ビビった?
俺もビビった。