ま、気にしない
「さて...どうしようか」
一か月前、チョコと共に告白された日のことを思い出した。
あの時は互いの素性も知らないし、俺が彼女のことをもっと知りたかったから、デートという形で彼女もことを掘り下げてみた。
印象は悪くない。むしろいい。
少なからず色目を使ってくる女のような、気持ち悪い感じはなく、どこまでも暖かい日だまりのようだった。
まぁ、ひたすらに隠されてる部分があったら、それを見抜けなかった俺の落ち度、というわけだ。
そもそも、一目惚れだったわけだし、今更理由立てて彼女を好きになろうとする俺の心理も、若干意味が不明だ。
「よし...さて、お返し作るかぁ...」
「お、お邪魔します...」
「あはは、そんな畏まらなくていいよ。誰もいないし」
「えっと...はい」
倉田さんを部屋にあげ、座って待っててもらう。
座ってもらったはいいけど、どこか落ち着かない様子だ。
「倉田さん?」
「は、はい!」
「あぁ、そわそわしてるから、どうしたのかなと思って」
「あ、えっと...先輩のお家、というか、男の人のお家って、入るの初めてで」
「あぁ、じゃあしょうがないね。っと、出来たよ」
「え?...出来た?」
「うん、バレンタインのお返し」
そう言って、彼女に渡したのはイチゴ飴。
「イチゴ、飴...あ、ありがとうございます」
「ゆっくり食べてね」
送ったのはイチゴ飴。
飴だし、イチゴも好きだろうなと思ってそうした。
まぁ、飴をお返しにする意味は、分かるよね。
キャンディも飴も、一緒でしょ?
「どう?」
「えっと...おいしいです」
「良かった。初めて作ったからおいしくできたか不安だったけどね」
まぁ、砂糖溶かしてイチゴに絡めて冷やすだけなんだけどね。
彼女の前に座り、顔を眺めてみる。
「...?あの、先輩...?」
「あぁ、ごめん。恥ずかしい?」
「えっと、はい...」
「可愛い顔だったからね、ちょっと見てたいなぁって」
「ふぇっ...?あ、ありがとう、ございます...?」
この様子だと、気づいてないような、気づいてるような。
さて、本題に入ってみるか。
「ねぇ、倉田さん。お返しするものに意味があるって、知ってる?」
「え、そうなんですか?」
「結構複雑なんだけどね。まぁ、好きか嫌いかを伝えるだけだったら楽でいいんだけど」
「えっと、その...嫌いって言うのは...?」
「それはもちろん恋愛的に。有名なのはグミかな」
グミは安価で手抜きと思われるため、そこからだという。
「へぇ...じゃあ、好きっていうのは...?」
「あぁ...確か、マカロンとか...バームクーヘンとか...だったかな?」
「調べてるんですね...えっと、それじゃあ...」
「もちろんそれも調べて贈ってるよ。何なら今調べる?」
「は、はい」
彼女はスマホを取り出し、意味を調べ始めた。
約5秒後に色が変わるであろう彼女の顔を見る。
予想通り、彼女の顔色は赤くなり始めた。
「せ、先輩...こうやって出てきたんですけど...?」
「ん?」
そこには、ホワイトデーのお返しするものの意味一覧のサイト。
一番上の、キャンディの部分を見ると、「アナタのことが好きです」と書いてある。
「あ、あの...えっと...私の思い違いじゃなければ、ですが...」
「うん」
「その、先輩は、私のことを...す、好き...と?」
「うん」
彼女は顔を赤くしたり青くしたり忙しいようだ。
なら、少し落ち着かせてあげよう。
「倉田さん...あぁいや、ましろさん」
「は、はいっ!」
「ちょっと、目閉じてじっとしてて」
「は、はい...」
目を瞑ったのを確認して、彼女の唇を奪う。
イチゴ飴の味が残っているようで、ほんのり甘い。
「んっ...!?」
「ん...は...どう?俺の気持ち、伝わったかな?」
「あ、あぅ...はい」
どうやら、彼女には刺激が強すぎたようだ。
「あ、あの...先輩、今度は...」
「あぁ、いいよ。時間はあるし、たっぷり楽しもうか」
ホワイトデーだというのに、今日は微塵もホワイトな日じゃなかった気がするが、まぁそんな日もある。
...続きは、また、どこかで。
よし、ノルマ達成()