「私ハ」
「やあ、おはよう。気分はどうだい?」
「はイ。非常ニイいデす」
「それは良かった。そうだ、君に名前を付けよう。『ましろ』というのはどうだい?」
「『マシロ』......良イ名前でス。ありがとうございます、マスター」
俺は、自分が怖かった。
彼女が死んでから、俺はあらゆる可能性を模索した。
時には、悪魔に魂を売りかけたこともある。
けれど、最終的に自分の力だけで解決した。
否、して
合成音声ソフトに彼女の声を記録させ、なぜか落ちてたロボの素体にそれをインストール。
外見はこの際後回しとし、性格もインストール。
結果、中身のみ完璧な理想の彼女が完成した。
そんな、禁忌なモノを完成させた自分が、怖かった。
だから、精いっぱいカノジョを愛した。
例え、それが狂ってると言われようとも。
「おはよう、マシロ」
『はい、おハようゴザいます』
「あはは、敬語じゃなくていいって言ってるのに」
『スみマセん。私のプログラムでは、こレがゲン界なノデす』
......そうだった。俺がそう仕込んだんだった。
なるべく会った当時の感じを再現したくて、敬語にしたんだっけ。
そんなことも忘れるほどカノジョをアイシていたようだ。
『アヤノさん、朝ごはんガデキました』
「あぁ、ありがとう」
席に着き、ご飯を食べる。
そんな様子をましろは......マシロはずっと見つめている。
「......その視野には、何が映っているんだい?」
『アヤノさンガおいシソうに食ジを摂ッテいる姿が映ってイマす』
「そっか」
俺たちの間に会話はない。
会話をするプログラムを組むと、この素体はどうしてもそこまで積めない。
というのも、積んでしまうとオーバーヒートして処理落ち、ひどいときにはオーバーホールしてやり直し、なんてことにもなりえるからだ。
『......おいしい、ですか?』
「ん?あぁ、おいしいよ。いつもありがとう、マシロ」
そう言って俺は、素体の頭部を撫でる。
冷たく、硬い。
人特有の温かさもなければ、髪の毛のふさふさ感もないため、ただただ硬い。
けれど、俺の心はあくまで
もう、戻れない。
「おやすみ、マシロ」
『......ハイ、オヤスミナサイ、アヤノさん』
布団に入り、ましろの電源をスリープさせる。
ましろは椅子に座らせてスリープさせており、朝7時のアラームと共にスリープ解除、それから家事を行うと言った具合にプログラムしている。
やがて、意識も落ちようとしていたころ。
俺は、微かな駆動音で目を覚ました。
見ると、マシロが何かをしている。
マシロの目が赤い。
あれはたしか、ネットサーフィンをしているときの目だったか。
それなら先にすませておけばいいのにと、もう一度目を瞑った時、駆動音がひときわ大きくなった。
「ん......マシ、ロ?」
『アヤノさん、私は見つけてしまいました。私は、身代わりなのですね』
「は......?」
『私は、かつて存在した『倉田ましろ』という人間をベースにして生み出された模造体、なんですよね?』
「それ、は......」
まぎれもない事実だった。
言い逃れができない。
『事実、何ですよね?なら、やることは一つです』
「何、を......!?」
マシロは俺を無理やり立たせ、俺の腹にパンチをした。
人間のパンチであれば、人間の腹に当たった時点でだいぶ減速し、衝撃を与えるだけで済む。
しかし、それがロボットなら?
止まることを知らず、また減速もしなかったとしたら?
答えは一つである。
マシロの腕は、俺の腹を貫いていた。
「かっ......」
『ごめんなさい、マスター。ワタシを
それが聞こえたのを最後に、俺は意識を失った。
悲しいかな、こうなってしまった