ーー放課後、教室内。
俺は一人になった教室で、机に突っ伏しながら考え事をしていた。
俺には想い人がいる。
名前を、倉田ましろ。
morfonicaのボーカルだ。
しかし、いわゆる「推し」というものであり、決して恋ではない。
そのはずなのだ。
ただ、彼女が俺以外に笑顔を見せていたり、俺以外に優しくしていたりすると、なんだかもやもやするのだ。
これが恋と言う奴なのか、それとも違うナニかなのは全くわからない。
けれど、このままじゃ俺も彼女も傷つけてしまうほどには、黒いナニかは膨れ上がっていた。
「...推し、か」
もう、なにがなんだかわからなくなってしまった。
俺はどうするべきなのか。
どうしたら、この欲望は収まるのか。
分からない。
分からなくて、それで気持ち悪くなる。
推しに何かをしたい、推しに特別視されたい。
そんな自分に吐き気がする。
気持ち悪い、気持ち悪い。
けど。
「...俺には、もう...」
どうすることもできないんだ。
とめどなく溢れ出す欲望には、もうおさまりが効かない。
文字通りめちゃくちゃにしてしまいたい。
この先の将来を何も考えなくていいから、彼女の体を手にしたい。
何でもいいから、彼女に必要とされたい。
と、思っていた矢先だ。
「...なんだ、あれ」
正門付近に人だかりができている。
よく目を凝らしてもあまり見えないので、電子機器を使う用のメガネをかけて見る。
「...人、だな」
囲われた人は男性だった。
どうやら、誰かを待っている様子だが。
「一体、誰をーー」
その瞬間、息を飲んだ。
声が出せなくなった。
ーーそこに向かっているのは、白髪を揺らした俺の推しだったから。
「...ははっ、なんだ...」
それはそうだ。
あんなかわいい人に、彼氏がいない訳なかったんだ。
そうだよ、考えれば当たり前の話だ。
「は、ははっーー」
体が崩れ落ちた。
力が入らない。
呼吸が浅くなる。
心臓が早い。
体が冷えてくる。
「は...は...ぁ...」
目から雫が零れ落ちる。
ーー何故?
なぜ俺は泣いている?
ごく普通のことを目にしただけで、なんで泣いてるんだ?
ただ、倉田さんに彼氏がいただけで、俺は何を悲しんでいるんだ?
推しなら、どんな場面を見ても推し続けることが出来るはずだ。
なのに、何故。
「あー...そっか...」
俺、ちゃんと倉田さんが好きだったんだなぁって。
推しというフィルターをかけて、自分の気持ちを偽っていた。
告白したわけでもないのに、勝手に振られた気持ちになって。
「ぁ...っあ...」
また、涙が溢れた。
Q:これはなんだ
A:脳破壊概念です