※この作品はR-18です。

健気な彼女   作:ユイトアクエリア

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Morfonicaコンセプトライブ「Resonance」の朗読パートのネタバレを含みます。
というか、それを基に書いてます。


《parallel√》その音は、世界を変えて【N】

「音楽なんて、何の役にも立たない」

 

俺の町の長は、いつもそう言っていた。

町の発展と引き換えに、音楽を捨てた。

少し前まで、楽しそうに鼻歌を歌っていたあの人も。

少し前まで、広場で「ギターなんか買えるかぁ!」って言いながらエアギターをしていた、あの人も。

 

皆、みんな。

町の発展のために。

維持のために。

 

皆、やめてしまった。

 

「...なんで、なんだ」

 

俺には、夢がある。

いや、あったって言う方が正しい。

町長の発言一つで、簡単に今までハマっていたものを捨ててしまう。

それでは、まるで。

 

ーーロボットみたいじゃないか。

 

こんなことを口走ってしまえば、周りの大人にバカにされる。

だから、こんなことを言える奴なんて、一人だっていなかった。

 

だけど、最近できたんだ。

そんなくだらないことを言い合える、友達が。

 

「...そのギター」

「あっ...その...」

「良いと思うぞ。俺も、そうなりたかった」

 

友達は、父親のギターを抱えて、ひっそりと練習していたそうだ。

 

「すごいな、お前は。俺は無理だったよ。周りに圧されて、勇気を出せなかった」

「う、ううん。君だって、すごいよ。ずっと、練習、してたんでしょ?」

 

彼女は、俺の手を見て言った。

 

「...前のやつだよ。もう、弾き方も、持ち方も忘れた」

「でも...それは、君が音楽が好きだった証拠、でしょ?」

「...あぁ、そうだよ。周りの目を気にして行動できなかった、弱虫さ」

 

そう言ったら、彼女は立ち上がった。

 

「じゃあ、私と一緒に、音楽、やろう?」

「...は?」

「私、ギターやるから...ベースは、ここにはないから...歌う?」

「い、いやいや待て。正気か?」

 

彼女の考えが分からない。

だから、疑ってしまう。

 

「音楽は楽しむためにあるんだよ。一緒にやろう!」

「...まぁ、いいか」

「目指すはライブ、だね」

「...二人でやる気か?もう一人ぐらいほしいところだけどな」

「それなら...私、音楽やってた友達がいるの。3人なら、どうにかならないかな?」

 

そいつが了承してくれたらな、という言葉は飲み込んだ。

彼女の屈託のない笑顔に、水を差したくなかったから。

 

「...そうだな。3人でやろうか」

「...!うん!!」

 


 

「それじゃあ、今週の日曜日。集合は、町一番の広場で」

「正気かよ。あと3日でどう仕上げろって?」

「まぁ、やってみるしかないんじゃない?」

「そう、だな。じゃ、忙しくなるぞ」

 

彼女の友人を加え、仮結成したバンドの初ライブは、3日後。

 


 

音楽が廃れ切って、笑われる対象になった今、そんな奴らに響くとは思ってない。

 

静かな、楽しみのない。

そんな町で。

 

「~♪」

 

笑う奴もいた。

罵る奴だっていた。

ギターを指さして、嘲るやつだっていた。

だけど、彼女はやめなかった。

 

拙いギターと、拙いキーボードと、下手くそな歌。

 

だから、だろうか。

 

次第に、広場に人は集まっていく。

まばらな手拍子が、散らばって、まとまって、奏でる音に溶け込んでいく。

 

「...!」

 

ギターと、キーボードと目を合わせる。

 

楽しい。

廃れ切ったこの町に、俺たちが音楽を奏でている。

 

「...っ」

「あ、ありがとうございましたっ!!!」

 

ギターを持った彼女が生み出した、小さな荒らしは、街を飲み込んで。

いつしか、街には活気で溢れていた。

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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