というか、それを基に書いてます。
「音楽なんて、何の役にも立たない」
俺の町の長は、いつもそう言っていた。
町の発展と引き換えに、音楽を捨てた。
少し前まで、楽しそうに鼻歌を歌っていたあの人も。
少し前まで、広場で「ギターなんか買えるかぁ!」って言いながらエアギターをしていた、あの人も。
皆、みんな。
町の発展のために。
維持のために。
皆、やめてしまった。
「...なんで、なんだ」
俺には、夢がある。
いや、あったって言う方が正しい。
町長の発言一つで、簡単に今までハマっていたものを捨ててしまう。
それでは、まるで。
ーーロボットみたいじゃないか。
こんなことを口走ってしまえば、周りの大人にバカにされる。
だから、こんなことを言える奴なんて、一人だっていなかった。
だけど、最近できたんだ。
そんなくだらないことを言い合える、友達が。
「...そのギター」
「あっ...その...」
「良いと思うぞ。俺も、そうなりたかった」
友達は、父親のギターを抱えて、ひっそりと練習していたそうだ。
「すごいな、お前は。俺は無理だったよ。周りに圧されて、勇気を出せなかった」
「う、ううん。君だって、すごいよ。ずっと、練習、してたんでしょ?」
彼女は、俺の手を見て言った。
「...前のやつだよ。もう、弾き方も、持ち方も忘れた」
「でも...それは、君が音楽が好きだった証拠、でしょ?」
「...あぁ、そうだよ。周りの目を気にして行動できなかった、弱虫さ」
そう言ったら、彼女は立ち上がった。
「じゃあ、私と一緒に、音楽、やろう?」
「...は?」
「私、ギターやるから...ベースは、ここにはないから...歌う?」
「い、いやいや待て。正気か?」
彼女の考えが分からない。
だから、疑ってしまう。
「音楽は楽しむためにあるんだよ。一緒にやろう!」
「...まぁ、いいか」
「目指すはライブ、だね」
「...二人でやる気か?もう一人ぐらいほしいところだけどな」
「それなら...私、音楽やってた友達がいるの。3人なら、どうにかならないかな?」
そいつが了承してくれたらな、という言葉は飲み込んだ。
彼女の屈託のない笑顔に、水を差したくなかったから。
「...そうだな。3人でやろうか」
「...!うん!!」
「それじゃあ、今週の日曜日。集合は、町一番の広場で」
「正気かよ。あと3日でどう仕上げろって?」
「まぁ、やってみるしかないんじゃない?」
「そう、だな。じゃ、忙しくなるぞ」
彼女の友人を加え、仮結成したバンドの初ライブは、3日後。
音楽が廃れ切って、笑われる対象になった今、そんな奴らに響くとは思ってない。
静かな、楽しみのない。
そんな町で。
「~♪」
笑う奴もいた。
罵る奴だっていた。
ギターを指さして、嘲るやつだっていた。
だけど、彼女はやめなかった。
拙いギターと、拙いキーボードと、下手くそな歌。
だから、だろうか。
次第に、広場に人は集まっていく。
まばらな手拍子が、散らばって、まとまって、奏でる音に溶け込んでいく。
「...!」
ギターと、キーボードと目を合わせる。
楽しい。
廃れ切ったこの町に、俺たちが音楽を奏でている。
「...っ」
「あ、ありがとうございましたっ!!!」
ギターを持った彼女が生み出した、小さな荒らしは、街を飲み込んで。
いつしか、街には活気で溢れていた。