「痛って...なんだ、ここ」
目を開けると頭痛。
見渡しても何もない。
特に手足も繋がれてるわけではないが、なんとなく動かしづらい。
「...っ、なんだ、この匂い」
獣臭い、そんな感想を抱く匂い。
何か、野生の動物が食事をしたみたいな、そんな感じ。
「...逃げる方が、良いかな」
横たわってた体を起こし、寝台から足を降ろす。
床は木製だが、割と丈夫に造られてるらしく、不快な音はしない。
「...外は、雨か」
窓からのぞけば大粒の雨。
窓にも打ち付けて、割と大きめの音がしていたのに今更ながら気付く。
「...っ」
ふと、後ろに気配を感じて、咄嗟に飛び退いた。
さっきまで俺の頭があった場所は、人影が振るった爪が通っていた。
「だ、誰だ」
「...なぁんだ。起きちゃった?」
人型を保ってはいるが、狼のような耳、尻尾。
人に見えて、人じゃないそれは。
「...人、狼」
「正解。知ってるんだね」
勿論知ってる。
村の言い伝えだ。
悪いことをすれば人狼に食われるぞと言われるぐらいには、恐れられている存在である。
「...俺は、生贄?」
「そうだよ。神さまが、タダで村を守ってあげる訳、ないよね?」
「嘘だ、神様が、人狼なわけ」
神は崇め奉るもので、人狼のようなおぞましいものでは。
「いけにえを捧げるのは、私の空腹を満たすため。お腹へっちゃうと、不機嫌になって、村とか簡単に壊しちゃうから」
「そんな...」
「だから、素直に食べられて?私も、もう限界なんだ」
怒気を感じる言葉とは裏腹に、優しく組み伏せられる。
「いや、嫌だ...」
「大丈夫。痛くないように、食べてあげるから」
首筋を舌が通っていく。
頬を撫でられて、額に唇が落ちる。
「怖がらないで。すぐ終わるよ、大丈夫」
服を脱がされ、マーキングされるかのように舐られていく。
「じゃあ、いただきます」
脇腹に激痛。
叫ぼうと思っても、喉が開かなくて、かすれた声しか出ない。
「ふふ、おいしい」
もういちど激痛。
今度は太もも。
脇腹は熱を持ち、冷たい感覚も同時に襲ってきて、おかしくなる。
「ふふふ、今までで一番おいしい」
「ぁ、は、ぁ...?」
なんて言われてるかもわからないし、なんて言ってるかもわからない。
ただ、目の前の人狼が、俺の体を食ってるところを、他人事のように見るしか、俺にはできない。
「泣かないで、大丈夫。君が素直に食べさせてくれたから、君の村はいつもよりちょっとだけ、守られるよ」
「ぅ、っ」
血が付いた口で、唇を塞がれる。
「どう?君の味」
「っあ...っ」
どうも何もあるか。
気持ち悪い。
「えへへ、美味しかったよ」
もういちど、彼女は俺にキスをすると、俺の首元に狙いを定めた。
その瞬間、俺の意識は途絶えた。
意外と気に入ってたりもする