紐パンきつねの海色バカンス 作:ナルキケーネ(ハーメルン支店)
ひと時の夢想を楽しんだ後、マリンは罪悪感に駆られて部屋の後片付けを始めた。
起き上がれるほどの気力を回復できていなかったフブキは、下半身に掛けられたタオルを握って、慌ただしく働くマリンの様子をぼんやりと眺めていた。
マリンは除菌ティッシュで部屋に飛び散った液体たちをくまなく処理し、消臭剤でセックスの痕跡を消していく。
マリンが「よし……!」と大きなため息をついたときには……大量に潮がこぼれたベッド以外は、以前の清潔感を取り戻せたように見えた。
「さて、と……フブちゃん、もう起きれる?」
「うん、なんとか……あ、んっ……♡」
「ちょ、ちょっと、もうお潮噴かないでよ……!? せっかくお掃除したんだから!」
「や、やりたくてやってるんじゃないよぉ……!! シーツと、アレが擦れちゃっただけだよ……!」
フブキはもぞもぞとしながら、タオルで股座をギュっと押さえた。
その下では、じんじんと疼いていた突起が無視できない存在感を放っていた。
「ああ、クリちゃんがね……どんだけ敏感なのよ……?」
「ふ、普通じゃないの……? おとといの夜から、上手く皮がかぶらなくなっちゃって……」
「あら、今まで包茎だったのねぇ……そしたら、慣れるまで時間かかっちゃいそうね」
「そうなの……? レッスン中とか、すっごい気になってさ……どうにかならないかな……?」
動くだけでも濡れてしまうほどに刺激を感じることは、恥ずかしすぎたので黙っておくフブキ。
マリンはそのバツが悪そうな顔から全てを悟り、眉を困らせて笑っていた。
「そうねぇ、ズル剥けでも慣れれば平気らしいけど…………フブちゃん、ちょっと後ろ向いてくれる?」
「わ、わかった……ひゃっ!? マリンちゃん、何するの……!?」
「いいから、黙って待ってて。船長からは見えないんだからさ」
「う、うん……わかった…………ぁ、う……」
フブキの恥じらいを守るタオルをめくらず、マリンは手探りで股間をまさぐった。
勃起が収まりかけている陰核に触れないように、めくれていた包皮をふもとから押し上げるようにして戻す。
「はい、これでどう?」
「……あっ……うん、大丈夫そう……! 今の、どうやったの……?」
「特別なことはしてないわよー。フブちゃんみたいに途中で戻すのを諦めてクリオナしなかっただけだもの」
「え゛ッ……!? い、いやだな、マリンちゃん……! 白上がそんな変態みたいなこと、するワケないじゃん…………アハハ……!」
「……はいはい、わかってるわよ。フブちゃんの皮、根元で引っ掛かりやすいみたいだから、それを一気に戻せば大丈夫だと思うわよ」
「そ、そうなんだ……ありがと、めっちゃ助かるよ……!」
大きすぎた絶頂のせいで重たいままだったが、懸念が消えた腰を上げて、フブキはタンスを漁る。可愛らしいパステルブルーのパンツを穿いてから、いつもの装いに戻った。
ベッドの惨状を見て、フブチュンとミテイルをメインベッドに避難させる。その後のことは一時間後の自分に任せて、動けないフブキの代わりに後始末を頑張ってくれたマリンに温かいお茶を淹れることにした。
そのあいだ、マリンはフブキの股間をまさぐっていた手を見て、手袋に染みた愛液の残滓を不思議そうに眺めていた。
「……あっ……! ばか、ばか……! そんなの見るなぁ……!!」
顔を真っ赤にしたフブキに除菌ティッシュを渡され、マリンは上の空で手指を綺麗にしてから、湯呑で湯気を立てる緑茶をすする。
「ああ、ホッとするわぁ…………ところでさ、フブちゃん……」
「はぁー、お茶がうまい…………ん、なになに?」
「さっき、好きな人とエッチしてるって言ってたけど……その相手、ホントに男の子?」
「うぐっ……!? な、なんでそう思うの……?」
「いやぁ~……恥ずかしがり方にね、ちょっと違和感があったからさぁ。同性におま×こを触られ慣れてる感じがしたのよネ」
「恥ずかしがり方とかあんのか……!? い、いやいや、お相手はね……普通に男の子ですよ、うん……。白上は、こう見えてノーマルなもんでね……」
マリンの問いを否定し、湯呑を傾けてアツアツのお茶をすするフブキ。(ちょっとおばあちゃんっぽいな……)とマリンは思ったが、本気で怒られそうだったため、口にはしなかった。
それよりも気になることがあった。フブキの想い人について、ここまでにある程度の予測はしていた。同性の可能性があるなら、かなり正確に絞り込めるだろう。
フブキのごまかしに全く動じなかったマリンが、唇に指を添えて、キラリと目を光らせた。
「……まつり先輩とレズったの?」
「ぶふッ!?」
緑茶を噴いたフブキの耳がピンと立って、すぐにへたりと倒れてしまう。言葉を探してあわあわとする顔に、言い訳のできない朱色が差していく。
そのわかりやすすぎる反応に癒やされながら、相手のことを知って、大きく安堵したマリンがくすくすと笑った。
「やっぱり~。最近、まつり先輩の目が肉食獣みたいにギラギラしてたから、不思議だったんだよねー」
「けほっ……けほっ……! だからって、そんなピンポイントでぶち抜いてくるか……!?」
「しょうがないじゃーん。明らかに距離感がおかしかったのふたりだけだったんだもーん♪ ようやく、点と点が繋がったって感じなのよ」
「……きょ、距離感……?」
「うん。最近、フブちゃんとまつり先輩がヤりまくりのカップルみたいな感じになってたから」
「そ、そうなんだ……まつりちゃん、どこでも絡んでくるからなぁ……」
「んで、フブちゃんも拒否ってなかったし。っていうか船長的に、フブちゃんの慣れ具合の方が気になってたし」
「うぐぐ……! それって結局、私の脇が甘かっただけじゃんか……ちくしょう……!」
フブキはお茶では癒やせそうにないカラダの渇きを潤わせるために、スポーツドリンクに口を付け始めた。
その落ち着いた様子を見て、(これはイケる!)と確信したマリンが夏色情事の内面に迫る。
「どうしてまつり先輩とエッチすることになったの?」
「……えっと……最初は、あることがきっかけで……なし崩し的に……その、手で……あそこ、触られることになっちゃって……」
「あそこってどこ?」
「…………マリンちゃんさぁ……」
フブキは本気で嫌そうに顔をしかめて、それ以降の言葉を詰まらせた。
「な、なによ、その目はぁ!? どこを弄られたのかわかりにくかっただけでしょ!? べつに、フブちゃんが淫語しゃべってるところを聞きたいとか、そういう私欲じゃないから!」
「……お……おま×こ……だよ……! こ、これでいいか、ヘンタイ野郎め!!」
「うわぁーっ、か~わ~い~い~っ! ていうかエッロ!! そのとろ甘ボイスで下ネタ聞けるの反則だわぁ~!」
「くぅ~……! 声優の裏名義を偶然知ったオタクみたいな反応しやがってぇ……!」
一生分の恥ずかしさを味わわされたフブキが、恨めしげにマリンを睨んだ。
けらけらと笑っていたマリンは、その強い訴えを孕んだ視線を気にもせず、気になっていたことを口にする。
「……でさ……まつり先輩と……付き合ってないってのもホントなの?」
「……うん……。ハッキリと……告白とかしたり、されたりしてないし……されても、私は………………」
複雑な表情で部屋の片隅を見つめたフブキは、これまでの情事を表すように、曖昧なまま終わらせようとしていた。
「…………でも、フブちゃんはまつり先輩のことが好きなんでしょ? じゃなきゃ、レズセなんてしないもんね」
「……あぅ……。それは、その……だな……言葉にするのはとても難しくて、敢えて謎のままにしておくべきかな、とも思うワケでさ……」
「ンモー、煮え切らないわねぇ! そんなだから電マを買う羽目になったんじゃないの!?」
「う、うるせーっ!! 私たち、アイドルなんだぞ……!? そんな軽率にアレコレ決められんだろっ……!?」
「そりゃあ、アイドルではあるけどさぁ……女の子同士なのにそこまで気にするかぁ? ノエフレとかおかころもあるし……『夏色吹雪はガチ』なんて、普通に需要ありそうだけどねぇ」
「……そりゃ、彼氏とかより全然マシだと思うけどさ……。私もまつりちゃんも、ほら……ガチ恋してくれてる人、いるワケだし……誰かの気持ちを裏切るかもしれないって、考えちゃってさ……」
「どんだけ真面目なのよ……そのままだと、頭が固すぎておっぱいもカチカチになっちゃうんじゃない?」
「なるわけねーやろがいっ!!」
毛を逆立てて憤慨するフブキと、対照的に爆笑するマリン。
危険なバカンスを経たおかげで、お互いの仲の良さは思っていた以上に深まっていた。