※この作品はR-18です。

魂の座 一部 凍えた魂   作:伊駒辰葉

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ロボットバトルの打ち合わせみたいなものです。
エロシーンはないです。


自称、通りすがりの謎の遊び人! 2

 一枚の紙片がテーブルの上を滑る。優一郎は指先でそれを受け止めた。先ほどの真っ白なものとは違い、こちらは淡い黄色をしている。金色の飾り模様が名刺を縁取っている。そして優一郎はそれを見て目を見張った。

 

「えっとねぇ。いちお、これでも秘書なのだ」

 

 そう言って葵が笑う。だらしないその笑みを見てから優一郎はもう一度、名刺に目を落とした。木村総研株式会社 社長室付き。その文字が小さく記されている。どうやらそれが葵の正式な肩書きらしい。

 

 これが? 優一郎は驚愕に目を見張ったまま葵を見た。今度は大きなパイナップルを切ろうとしている。だがスプーンでは到底切れない。葵は何度もパイナップルにチャレンジしている。その様は子供のようだ。優一郎はため息をついた。

 

「木村総研の神崎葵さん。で間違いはありませんね? 真実だと誓えますね?」

「うんっ。あっ! えーん、落としちゃったよぅ。とほほ」

 

 背の高いパフェのグラスからパイナップルがテーブルに落ちている。その様子に優一郎は思わず苦笑した。それまでの緊張感が自然と緩む。優一郎は微笑を浮かべて葵に備え付けのペーパーを差し出した。

 

「それでは質問にお答えしましょう」

「わーい。ありがとう!」

 

 嬉しそうに笑う葵の表情は無邪気そのものだ。少々、だらしないイメージはあるが何らかの画策をしている様子もない。まあ、これだけでそう判断するのも危険だけど。優一郎は内心で呟いて告げた。

 

「別にあの企画に拘っているわけではありません。さらに優れた企画がスケジュールに間に合うのであれば、問題ありません」

 

 そう言いながら優一郎はカップを取った。コーヒーを半分ほどまで飲んで息をつく。ふんふん、と言いながら葵が身を乗り出す。不用意に身体をテーブルにはみ出させたために、葵は身体でパフェを倒しそうになった。さりげなく手を伸ばし、優一郎はパフェのグラスを支えた。すると慌てたように葵が椅子に舞い戻る。

 

「ご、ごめん。……えっと、でもさあ。あのおやじに作らせたらまた粗悪品にならない?」

 

 葵は今度はしっかりとグラスを支えてスプーンで大きくバニラアイスをすくった。溶けかけたアイスを口に運ぶ。しっかりと口許にアイスが付着している。優一郎はやれやれとため息をついてまた口許を指差して見せた。焦ったように葵が口許を拭う。どうしてこれで秘書がつとまるのだろう。優一郎は話している内容とは全く別の疑問を抱いていた。

 

「そんなことはありませんよ。決してベストではありませんけど、充分な性能はあります」

「えー。そうかなあ。だって、オレの目から見ても出来は良くない気がするよ? そもそも勝負に使うんでしょ? 勝てなきゃ意味ないし」

 

 すかさず葵が言葉を挟む。優一郎は内心で感嘆の声を上げた。少なくとも葵は企画内容を把握しており、更にその企画で作られた商品が何に使用されるのかを知っているのだ。

 

「いくら凄い機種が完成しても、こちらのスケジュールに間に合わなかったら無意味ですし」

 

 淡々と返す。すると葵が唇を尖らせて不服の声を上げる。困ったなあ、と口の中でぼやきながら椅子を前後に揺らす。

 

「それだったらさあ。優一郎くんが力を貸してくれるってのはどう?」

 

 がたん、と椅子を戻して葵が告げる。名案を思いついたと言わんばかりの表情だ。優一郎はため息をついて苦笑した。アイス、零れてますよ。そう指摘してみる。すると葵は焦ったようにスプーンを見た。スプーンの先に残っていたアイスが溶け、テーブルにバニラの雫を垂らしている。

 

「既に僕は勝利を目指して全力を尽くしていますよ」

 

 にっこりと笑って優一郎は告げた。すると葵が不思議そうに首を傾げる。そうなの? と目で問われて優一郎は頷いた。

 

 それから葵は二個のパフェを追加注文した。葵は食べながら優一郎が勝利する方法を懸命に聞きだそうとしていた。が、優一郎は頑として口を割らなかった。もしも葵がスパイであったら。そう考えたからだ。

 

「要さんは、訓練期間および調整期間の不足が前回の敗因だったと分析しているようです。僕もその意見には賛成です」

「うん、まあそうかもねぇ。ロボットってさあ。動かそうと思っていきなりできるってもんでもないんでしょ?」

「だからこそ、こちらとしては納入スケジュールは譲れません。企画の差し替えは結構ですが、本来のスケジュールに間に合うことが前提条件となります」

「じゃあさあ」

 

 エスプレッソを傾けていた葵が目を上げる。優一郎はコーヒーのお代わりを注文してから目を向けた。葵はテーブルに身体を乗り出して口許に手をあてがう。

 

「優一郎くんが直に企画に参入するってのでどう? あのおやじをぶちのめすチャンスだしぃ」

 

 ぴくり、と優一郎は眉を上げた。葵に克俊との関係を喋った覚えはない。もちろん、総一郎の話もしていない。優一郎は不信感を込めて葵を見返した。が、葵は優一郎のそんな態度に気付いていないようだ。声を落としたまま続ける。

 

「実はさあ。うちのボスもあのおやじには煮え湯を飲まされてるらしくってさあ。あの会社の社長、ボスとオトモダチなんだよ。で、ボスとしてもオトモダチを助けたいわけね」

 

 それから葵は潜めた声で話し始めた。克俊の勤める会社の社長は何度か克俊のくびを切ろうとしたらしい。だがどういう方法でか、克俊は社長である男性の浮気現場の写真を撮ったそうだ。確かに浮気していたのは社長自身だし、それは反省すべきだろう。だが会社に害を与えているのが判っていながらくびを切れない状態で困っているらしい。

 

 そこで社長は葵のボスに相談した。友達であることもあり、ボスも出来るだけ協力しようとした。が、そんな折、ボスの家族に嫌がらせをする輩が現れた。家族が執拗に付回される。ボスは慌てて警察に駆け込んだ。が、どうしても証拠を握ることが出来ない。しかもただ単に付けられた程度では警察は動かない。結局、ボスは友達である社長に協力することを諦めて現在に至るのだ。




色々あるので企画をボツにしたい側と、納期を守れば問題ない側。
説明が足りてないのがバレバレですね!
すみません!><
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