※この作品はR-18です。

魂の座 一部 凍えた魂   作:伊駒辰葉

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多輝視点のまま続きます。
エロシーンはありません。


治療のはずなのに 1

 目を閉じていると周囲のことがよく判る。これまで多輝は無意識に感じることを拒絶していた。かつて水輝が解放した力が無尽蔵に周辺の気配を多輝に押し付けようとし、そのために多輝は一種のショック状態に陥った。それ故に無意識に感覚を閉じる癖がついていたのだ。戦い方を少しずつ学習したため、今、多輝の感覚は徐々に開きつつあった。

 

 一気に視界が開けるように感覚が開ける。それで多輝は蒼が自分を抱えて外に出たのだと知った。屋敷に続く庭を歩いているのだ。手に取るように周囲の様子が判ることをこの時の多輝は恐れなかった。

 

 庭一面に花が咲き乱れている。鋭く研ぎ澄まされた感覚が気配で花を見る。それは多輝に酷く新鮮な印象を与えた。間近にいる蒼の気配を静かに避ける。すると一気に感覚の景色が開けた。思わず多輝はその光景に息を飲んだ。

 

 まるで花の中に埋もれているようだ。目を閉じて深く息を吸うとばらの香りが全身に染み込んでくる気がする。

 

「おや。多輝様は植物と相性がおよろしいようですね」

 

 そう告げて蒼が微笑む。多輝は感覚を切り替えて蒼の表情を読んだ。すると一面の花の中にぽっかりと蒼の姿が浮かぶ。口許に笑みを見止めて多輝も満足そうに笑った。

 

 やがて静かに花が遠ざかる。どうやら屋敷に入ったらしい。多輝は今度は蒼に意識を集中してみた。人のように胸で脈打っているものがある。だがそれは人の心臓の形をしていない。注意深く感覚を絞ると蒼の気配が遠ざかる。そして多輝の感覚の真ん中に一つの珠が浮かび上がった。

 

 血のように紅い珠が静かに闇に浮かんでいる。多輝はするりと感覚を動かして珠に触れてみた。熱い触感と共に珠の脈動を感じる。

 

 不意に蒼が足を止めた。多輝を抱く腕に僅かに力がこもる。

 

「……多輝様。それ以上は……」

 

 そう告げた蒼の息遣いは少しだけ速くなっている。多輝は慌てて意識を切り替えた。珠から感覚が遠くなる。そして感覚の視界に現れたのは苦しげに顔を歪める蒼の姿だった。

 

「あっ、ご、ごめん」

 

 焦りつつ詫びる。すると蒼は不安になるほどそっけなくいえ、とだけ返した。再び静かに歩き出す。多輝はそれから大人しく蒼の腕に納まっていた。

 

 階段を昇りきる。その時、不意に何かが多輝の感覚を叩いた。慣れない気配が見えてくる。

 

「あれ? もしかして知らない奴が屋敷にいる?」

 

 気配に意識を集中したまま多輝は呟くように告げた。すると蒼が困惑した面持ちになる。そのまま蒼は足を止めてしまった。

 

「いえ、多輝様もよくご存知の方なのですが、今は少し気配を違えられているかも知れません」

 

 どうしますか、と蒼は続けた。どういう意味だろう。多輝は首を捻って考えた。特に害意のある気配でないことははっきりしている。ただ気に食わないのはその傍に蒼に良く似た、けれど強大な力の持ち主がいることだ。

 

 水輝。多輝は口の中で呟いて眉を寄せた。ここで逃げるのは癪だ。そう結論を出して蒼の胸に頭をもたせかける。驚いたように蒼が腕を震わせる。だが多輝は構わず告げた。

 

「いいよ。行こう」

 

 近づくにつれて気配が濃くなる。そうして多輝の感覚には三人の気配が引っかかった。知らない誰かと水輝、そして奈月の気配が見える。その時に多輝は初めて気付いた。奈月は人ではない。その身体は機械仕掛けだが、内部に大量の力を持っている。普段、気付かないのは恐らく巧妙に力が隠されているからだ。そして力を隠しているベールは同時に奈月が人ではないことも隠している。

 

 なるほどね。多輝は内心でそう呟いて少し笑った。奈月は元々、多輝ととても仲のいい友達だ。が、これまで多輝は奈月に対して少し距離を持っていた。奈月はあくまでも人だと思っていたからだ。だが本当はそんな必要はなかったのかも知れない。そう思うとそれまで奈月に対して無意識に張り巡らせていた多輝の警戒心が解けた。自然と口許がほころぶ。

 

「開けますよ。本当に宜しいのですか?」

 

 伺うような蒼の声に多輝は小さく頷いた。直後、激しい痛みのような感覚に囚われる。多輝は思わず呻いて全身に力を込めた。油断していたために感覚が吸い込まれるように気配に絡みつく。

 

「あっ、んふぅ! やっもう、やめっ! だいじょうぶ……ああっ!」

 

 濃い紫の気配が多輝の感覚を襲う。衝撃に一瞬、息が止まる。多輝は見えない目を見張って声もなく仰け反った。慌てたように蒼が多輝をしっかりと抱きしめる。だがそのことすら多輝には判らなかった。

 

 多輝の感覚が捉えたのは膨大な光だった。突き刺さるような激しい痛みに晒される。同時に強すぎる快楽に襲われ、多輝は蒼の腕の中で一気に果てた。

 

「ようやくいったか……。あれ? 蒼? 何してんだ、お前」

 

 水輝の声が遠い。多輝は全身で息をしながら何とか感覚を閉ざそうとした。が、一旦開いてしまった感覚はなかなか閉じてくれない。

 

「えっ、あの……きゃあ!」

 

 奈月が愛らしい悲鳴を上げる。多輝はここでようやく理解した。知らない誰かが水輝に犯されている。同時に奈月に快感を与えられて絶頂に達したのだ。それを知った多輝は震える声で怒鳴ろうとした。が、その寸前に蒼が口を開く。

 

「申し訳ございません。多輝様の手当てをお願いいたしたく」

 

 蒼が静かに頭を垂れる。次いで多輝の感覚を弾いたのは水輝の気配だった。やれやれ、と言いながら腰を上げる。ずるり、という艶かしい音と共にペニスが引きずり出される。それと共に多輝はびくりと身体を震わせた。

 

「そんなもん放っとけば……ん?」

 

 水輝の声が近づく。多輝は何とか目を開けて水輝を睨もうとした。が、視界は相変わらず暗いままだ。そうしている内に何かが多輝の顎を捕える。水輝が指で多輝の顎をつかんで上向かせたのだ。




視界を閉ざされた状態ってエロいですよねー。
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