※この作品はR-18です。

魂の座 一部 凍えた魂   作:伊駒辰葉

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TS警報!
颯爽登場! 男絵美佳ですw
エロシーンはありません。


初めて? の遊び方 1

 少し背が伸びただけで随分と景色の見え方が違う。絵美佳はのんびりと街の中を歩いていた。ヘッドホンに似せたそれを頭に被り、人の波を避けて歩く。

 

 今、教室の中は授業中だ。それ故に喋ることもない。絵美佳は学校に自分の代わりにロボットを通わせている。昨日から試しているのだが、どうやら誰にも正体はばれなかったようだ。絵美佳は自分に似せたロボットを遠隔操作しているのだ。

 

 思考を読み、唇の些細な動きを読んでロボットは行動する。フォローも兼ねて毎時間の授業の間には巴がロボットの様子を伺いにくる。絵美佳はその様を思い浮かべて小さく笑った。戸惑う巴の姿が脳裏に浮かんでくる。

 

 世間はいつの間にか冬になっているらしい。ここ最近、ずっと地下室にこもっていた絵美佳は人々の服装を見て何となく新鮮に思っていた。派手な配色の多かった夏に比べ、人々の服は暗く沈んでいる。行き交っているのは会社員たちだろうか。コートの襟を立てて過ぎていった集団を見送り、絵美佳は微かに笑った。

 

 普段、したことのないことをしてみよう。そう思い立った絵美佳は繁華街にあるゲームセンターに入った。力任せに殴るだけでいいらしいバッグを右手で殴りつけてみる。すると何故か液晶画面にエラーの文字が表示された。傍にいた少年たちが絵美佳を恐々と避けていく。どうやら測定可能な数値を大幅に振り切ってしまったらしい。

 

 続いて絵美佳はレースゲームをやってみた。数人で対戦できるそのゲームを絵美佳はしばらく繰り返した。アクセルとブレーキを巧みに踏みかえる。やっているうちに絵美佳は見知らぬ少年たちをかわしてぶっち切りでゴールすることに成功した。

 

 慣れるとゲームの操作も絵美佳には酷く簡単だった。三時間ほどで全てのゲームを試すと飽きてしまう。絵美佳はやれやれ、と肩を竦めてゲームセンターを後にした。外に出ると急に冷たい風が吹き付けてくる。

 

 教室内のざわめきが耳に入ってくる。昼休憩に入ったのだ。絵美佳は急いでビルとビルの狭間に身を隠し、ロボットを操作した。教室の中で座りっぱなしにしている訳にもいかない。絵美佳が操作するとロボットは立ち上がって教室を出た。時折、誰かが声をかけてくる。適当に返答させて絵美佳はロボットを地下に導いた。その後を追うように巴が駆け込んでくる。

 

『ふうっ。今日も大丈夫みたいですねっ。絵美佳先輩』

 

 巴の明るい声が聞こえる。絵美佳はビルの狭間で小さく笑った。耳に当てられたイヤホンを指で触る。口許に伸びた細いマイクを手に包み、絵美佳は告げた。

 

「あったりまえじゃない!」

 

 絵美佳は背中をビルの壁にもたせかけて自信満々の笑みを浮かべた。巴が嬉しそうに笑う。

 

『ですよねっ。ああ、でもどきどきしちゃう。あたしから見ても絵美佳先輩のロボットってとってもよく出来てるんだもん……』

 

 巴がうっとりと絵美佳のロボットを見つめる。その様を遠隔操作用のヘッドセットが伝えてくる。直に絵美佳の脳に働きかけ、ロボットが見ている景色が脳裏に浮かぶようになっているのだ。

 

「そーいうアンタだってロボットじゃない」

 

 微かに笑って絵美佳は告げた。すると巴が動揺したようにロボットから飛びのく。巴はいつものようにロボットに抱きついていたのだ。絵美佳はくすくすと笑いながらロボットを操作した。巴を引き寄せて胸に抱く。その触感はヘッドセットを通じて絵美佳に伝わった。ぞくりとするような感覚が背に走る。

 

 それから巴と時間を過ごし、ロボットはまた教室に戻った。絵美佳はビルの狭間から街へと戻り、とりあえずは何か食べようと歩き始めた。立ち並んだ店を眺めながらゆっくりと歩く。気付くと絵美佳は繁華街の外れにたどり着いていた。それまでの賑やかな雰囲気が一転し、嫌に暗い気配が周囲に漂っている。へえ、と呟いて絵美佳は周辺の店を見て歩いた。ピンク色の看板がやたらと目に付く。

 

「あら、坊や。こんなところで何してるの?」

「俺のこと? 坊や呼ばわりはないんじゃない?」

 

 相手にしなければそれで済んだだろう。だが絵美佳は律儀にそう答えた。すると声をかけた女性が不思議そうな顔になる。体型のはっきりと出る服に身を包み、高そうな毛皮のコートを着ている。絵美佳はそんな女性を睨むように見た。派手な化粧をしているところを見ると、もしかしたら夜の商売をしているのかも知れない。

 

「坊やみたいなのがこんなところに一人で来たら危ないわよ。もしかして道に迷ったの?」

 

 絵美佳の外見は年のまま高校生に見える。それ故に女性も心配したのだろう。声を落としてそう告げる。絵美佳は女性と自分の姿を見比べた。興味本位でこの界隈に入ったなら気をつけなさい。女性の目は言葉よりはっきりと告げている。

 

「このあたりに来るのは初めてだけど、迷ったわけじゃない」

「あらあ……。じゃあ、余計にまずいわよ」

 

 そう告げて女性は周辺を手で示した。絵美佳もつられたように女性の手の先を目で追う。辺り一体にあるのはピンクやブルーの鮮やかな看板ばかりだ。それもブティックホテルのものが殆どだ。絵美佳はそれらを見てああ、と笑った。




大分前の原稿なので……
まあ、昔風の、くらいに思ってもらえれば。
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