エロシーンはありません。
あ! 閑話休題の使い方間違ってますね!><
余談みたいな話です。
……いや、ある意味使い方あってるんか……。
(読み方によってはこっちが本筋)
結界の綻びは修復することは可能だ。が、それには立城の力の回復を待たなければならない。水輝は低く呻いて髪を指ですき上げた。指の間を通り抜けた髪がはらりと額にかかる。
「んでも、そんなに待ってられないだろ? おれだけでも直した方が良くないか?」
一人の力でもないよりはましだろう。そんな考えで口にした水輝の言葉を立城は首を振って否定した。
「僕自身が綻び具合を見ていないから何とも言えないけれどね。でも、見ていないから尚のこと、ちょっと待って欲しいんだよ」
長い髪を背中に払い、立城は窓辺に立った。執務室は夕暮れが過ぎて薄暗くなっている。水輝は黙って目を細めた。先ほどまで淫らに喘いでいたとは思えないほど、立城は穏やかに笑っている。
「この結界は二人分の力を編んであるからね。壊れたからと言って単純に力を繋げば直るというものでもなくてね」
そう言いながら立城は大きな窓に寄りかかった。暮れた空に一つ、また一つと星が瞬き始める。水輝はソファに深く寄りかかってため息をついた。今更、力の使い方を教わる気にはなれない。判ってる、と水輝が低く告げると立城が小さく笑った。
「うん。だから僕が見えるようになるまで待ってくれる?」
本音を言えば今すぐにでも穴は塞ぎたい。けれど水輝はその言葉を飲み込んだ。どちらにせよ、自分一人で結界を織ったとしても無意味だ。その程度のことは水輝もよく判っていた。
焦りだけが募る。水輝は膝の上で手を握り締め、歯を食いしばった。自分でも酷い有様だと思う。奈月に危害が及ぶのが恐い。それだけははっきりと自覚できる。水輝は伏せていた目を上げて睨むように立城を見た。
立城は静かに窓の外を眺めている。その横顔が暗がりの中に浮かんで見える。
「本当に君は弱くなってしまったね。まあ、だからこそ今がある訳だけれど」
水輝は応えなかった。黙したまま立城を見据える。立城はそんな水輝の視線を避けるように歩いた。窓に沿ってゆっくりと歩く。水輝はそんな立城の姿を目で追った。
「そのままでいるなら許さないよ?」
にっこりと微笑んで立城はぴたりと足を止めた。窓と窓の間にある細い壁に背中を預け、水輝を正面から見つめる。水輝はため息をついて肩の力を抜いた。天井を仰ぐように伸びをする。
「んな訳あるか。いつまでも不変のものなんざ、あれっきりで充分だ」
僅かに険を込めて水輝はそう吐き捨てた。勢いをつけてソファから降りる。窓辺に近づく水輝に立城は何も言わない。水輝は立城の横に並んで外を見た。暗くなった夜空に幾つかの瞬く星がある。薄い雲が流れ、星を隠す。
死してなお、紫翠の誓約は生き続けている。夜叉を守れと水輝の魂に叫び続けているのだ。そして水輝はその叫びを無視することが出来ない。その誓約は性の別に関係なく水輝を縛る。
「矛盾してるよなあ。守ればおれは弱くなるし、でも守るには強さがいる。結局、おれはどこまで行ってもこの矛盾からは抜け出せないんだ」
ふと呟くと間近で立城が小さく笑う。水輝は横目に立城を見やって苦笑した。ただの愚痴だ、と告げると立城が肩を竦める。
空が静かに濃くなっていく。水輝は無言で雲の流れを目で追った。風、と小さく呟く。すると立城が壁から背中を引き剥がして水輝の右手に回った。窓から空を眺めて少しだけ笑う。その笑みはどこか冷ややかだった。
「とにかくお前は歪みを抜くのが先だな。……一体、どれだけ吸いやがったんだか」
ぼやくように告げると立城が意外そうな顔になる。水輝は頭をかいてため息をついた。元々は自分が原因なだけに文句もつけられない。不機嫌になった水輝の肩を軽く叩き、立城はにっこりと笑った。
「大丈夫だよ。僕が還元してあげるから」
「……阿呆。どうせお前も力を戻さなきゃなんないんだからそのままとっとけ」
言いながら水輝は窓から離れた。どこに行くの、という立城の言葉を無視して片手を上げる。ドアまで歩いてから水輝は振り返った。
「あのくそがきもいるからここは大丈夫だろ? ちょっと出かけてくる」
そう告げて水輝はドアを閉めた。
若干説明気味ですかね。
あ、この話で六章は終わりです。