※この作品はR-18です。

魂の座 一部 凍えた魂   作:伊駒辰葉

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四分割のラストです。
エロシーンはないです!


捜索開始 4

「こちらは如月要さん。彼女の母親が、ここに囚われているようなんです」

「それはにんげんなの?」

 

 優一郎の言葉を果穂は素早く切り返した。戸惑った様子はどこにもない。優一郎は頷いて告げた。

 

「ええ、普通の人間の女性です」

「……おんな」

 

 そう呟いて果穂は目を細めた。次いで要を見る。その目には冷ややかな光が宿っている。果穂は画面に目を戻してため息をついた。

 

「ころされるわね、まちがいなく」

 

 淡々と吐き出した果穂を要が凄まじい目で睨みつける。が、それが問題解決にならないと気付いたのだろう。要はすぐに目を逸らした。

 

「そこまで、するのか……?」

 

 栄子を利用した挙句、拉致し、さらに殺す。あまりにも酷いやり方に優一郎は激しい怒りを覚えた。何が目的かは判らない。だが相手は生きた人間なのだ。

 

「そのくらいはへいきでするわよ。あなた、これまできむらをなんだとおもっていたの? まさかわたしがいのちをねらわれるというのを、じょうだんやなにかとおもっていたの?」

 

 流れる口調で言いつつ果穂は画面に指を触れさせた。

 

「いえ、すいません。僕が甘かったようですね」

 

 そう応えた優一郎を横目に果穂は無言で表示された点を指で示した。続けて小さな指が別の場所をさす。次々に果穂は指を移動させた。

 

「わたしがすうねんまえにすてられるまえ、いましめしたばしょにけんきゅうしせつがあったの。いわゆるせいたいじっけんじょうね」

 

 今も変わらなければ点の位置にも実験場がある筈だ。果穂はそう告げて手を下ろした。白衣のポケットに手を突っ込んで斜に構える。優一郎は黙って画面に目を移した。果穂が指し示した位置をチェックする。続いて示された点を線で結ぶ。すると地図上には巨大な星が現れた。

 

「何、これ」

 

 それまで黙していた要が掠れた声で呟く。子供の姿をした果穂の言ったことを要が信じたかどうかは優一郎にも判らなかった。目を細めて腕を組む。線で描かれた星が何を意味するのか。そう考えていた時、横で果穂が口を開いた。

 

「ごぼうせい、ね。なにがしかのちからをぞうふくさせるということくらいしか、わたしはみみにしたことがないけれど」

 

 五芒星。優一郎は口の中で呟いた。点を繋いだ線が赤く輝いている。果穂はそれだけ告げるとその場を去ってしまった。何も言わなくとも用が済んだことを理解したのだろう。

 

 優一郎は無言で考え込んでいた。いつかどこかで書物で読んだことがある。画面に表示された逆さまの星を睨むように見つめ、優一郎は懸命に記憶をたぐった。エネルギーを蓄積するという意味がある程度のことしか思い出せない。

 

「何だか不気味なところね。この星がないにしても作りが妙だわ」

 

 え、と優一郎は伏せていた顔を上げた。だって、と要が地図を指差す。指を目で追った優一郎は思わず声をあげた。

 

「全体がすり鉢状になっているのよ? ほら、高低差があるでしょう? これじゃ、災害の際に被害が大きくなるわ。それに土地の周辺。この地図だと随分と高くなっていない?」

 

 逆五芒星が土地の全体に描かれている。それによって集められたエネルギーはすり鉢状になった地面を滑って中央に集められる。集めたエネルギーが逃げないよう、土地の周辺にはわざわざ丘の連なりが築かれているのだ。改めてそれを理解した優一郎の背中に冷たい汗が流れた。

 

「わざと、作ったとすれば。破壊することを前提に作っているとしか」

「そんな! だって、ここにはたくさんの人々が住んでいるのよ!?」

 

 要が悲鳴のような声をあげる。優一郎は鋭い目で画面を睨みつけた。そう、この土地で集めているのは人々から発される目に見えないエネルギーだ。俗に言えば生気だろうか。そうでなければこの土地の成り立ちは説明できない。

 

「先ほどの果穂さんの台詞ではありませんけど、木村に対するときは、甘い願望は捨てるべきでしょう」

 

 それまでの笑みを完全に消し去り、優一郎は冷ややかな口調で告げた。要が目を見張って絶句する。次いで要はがくん、と崩れ落ちた。優一郎は慌てて立ち上がり要を支えた。要は床にへたり込んで呆然となっている。

 

 優一郎は要を何とか立たせ、椅子に座り直した。要はすがるように椅子につかまり全身を震わせている。

 

「時を現在まで進めます」

 

 緊張に知らない間に顔が強張る。優一郎は震える指でキーを弾いた。瞬間、描かれていた星が消え、表示されていた点が消失する。優一郎は目を見張って急いで検索をかけた。が、地図のどこにも点はない。それどころかあらゆる場所を探ってみたが点は表示されなかった。

 

 痛いほどの沈黙が部屋に満ちる。間を空けて空しいエラー音が鳴る。

 

「いや、待てよ、感度を!」

 

 優一郎は素早くキーボードを叩いた。入力画面が表示される。出来るだけ感度を上げた状態で再度、トレースを開始する。現在時刻にセットして地図を睨むように見る。すると次々に地図に点が表示された。それを見た優一郎は愕然と目を見張った。

 

「な、なに? 何なの。どういうことなの?」

 

 点は地図上のあらゆる場所に散っている。それも同時刻でだ。優一郎は息を潜めて画面をしばし見つめ、それからおもむろに振り返った。痛ましさに顔を歪めて首を振る。

 

 要の身体が傾いた。




まあ、ショックですよね……。
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