あ、ちなりはTSはしません。
エロシーンはないです。
「俺もマズイかもしれないけど、そっちこそマズイんじゃないの?」
目を細めて少年が告げる。顎をしゃくられてちなりは頬を膨らませた。
「ちなりはいーの! あんたは制服じゃないのよぅ。あ、やばい」
そう呟いてちなりは近づいてきた男を見た。体格はあくまでも男だ。が、その格好は派手な女性のそれだった。顎には髭の剃り跡が青々と残っている。男は舐めるように少年を見つめ、しなを作った。
「あらあん。可愛い坊や、アタシと遊ばなぁぃ?」
ひっくり返った声も男のものだ。怪訝そうに眉をひそめる少年を庇うようにちなりは一歩、前に出た。
「えっと、その、あたしのカレだから! 知らずにこの辺ふらふら入っちゃって……その、ごめんね!」
そう男に言い置いてちなりは少年の腕を取った。おい、と慌てた声をかける少年を無視して脱兎のごとく駆け出す。背後から残念ねぇ、という声が聞こえたが、ちなりは必死で道を逆戻りした。
「もう! だから言ったでしょお? あそこら辺ってヤバイの! マズイの! ちなりだって入らないの! だから制服なんて着て入っちゃダメなの!」
ある程度、ピンクのネオンから遠ざかったところでちなりはそう言いながら振り返った。全身で息をしているちなりとは対照的に少年は落ち着き払っている。
「えっと、とりあえず、ありがと」
困ったように笑いながら少年が告げる。更に怒鳴ろうとしていたちなりはそこで口を噤んだ。突きつけていた指が自然と折れる。いかん、と思いながらもちなりは精一杯恐い顔をして見せた。
「あんた、自分のカッコがすっごくあの手のヒトに好かれるって知らないでしょ?」
「そ、そうなんだ」
ちなりに押されるように一歩下がり、少年はまじまじと自分を見下ろす。ちなりはふん、と鼻で息をついて胸を反らした。腰に手を当てて出来るだけ威厳が出るように心がける。だがそんなちなりは傍目には子供が虚勢を張っているようにしか見えない。
「そうよっ。あんた、とってもカッコカワイイんだもん!」
きっぱりと言い切ると少年が不思議そうな面持ちになる。次いで少年はにっこりと笑った。
「ありがと」
「……う。素直にそう言われると困るんだけど……」
ちなりは困惑しつつ頭をかこうとした。が、手の中に指輪を握っていたことを思い出す。あー、と力ない声をあげてちなりは手を開いた。すると急に視界が暗くなる。驚いて見ると少年が手を伸ばしてちなりの頭を撫ぜていた。
「ちなりちゃんだって可愛いじゃない」
「ちなりが可愛いのはとーぜんなの! あー、子ども扱いしてるでしょっ、あんた!」
そう言いながらもちなりはうっすらと頬を染めていた。ヒューマノイドの中でも抜群の感度を誇るちなりの機体が、無条件に少年の手の動きに反応する。自然とちなりの目は潤み始めていた。
「ふうん。子供だと思ったけど、そうでもないのか」
少年の手がさりげなくちなりの耳を撫でる。ちなりはうっ、と目を閉じて首を竦めた。ぎこちなく少年の手から逃れる。ちなりは触られた耳を押さえて泣きそうな顔で呟いた。
「見かけによらず、手が早いんだぁ。あんた、けっこうエッチね」
「そっちこそ」
くすりと笑って少年が返す。その笑顔はちなりが今までに見てきた男の中でも最高級のものだった。きっと、部長に似てるから。ちなりは内心でそう呟いた。少年の面立ちは優一郎によく似ている。そう思えば思うほど、ちなりはこの少年のことが気になっていった。
少年が腰を屈めてちなりの耳元に口を寄せる。ちなりは吐息を耳にかけられてびくりと身体を震わせた。
「セックス好きなんでしょ? やりたい?」
低く心地のいい声で囁かれる。ちなりは深い息をついて傍にあった電柱に背中を預けた。とろけるような快感がこみ上げてくる。少年はそんなちなりに笑いかけつつ一歩、前に出た。殆ど身体が密着する。ちなりの頭の上に腕をつき、少年はねえ、と耳元に囁いた。
気持ちいいよう。ちなりはうっとりと目を潤ませて自分の身体を腕で抱きしめた。目を閉じて息をつく。
街の外れは喧騒から少し遠い。人の行き来の少ない場所で二人は殆ど抱き合うような格好で向き合っていた。人のざわめきが遠い。
「公園で、デートってことでどう?」
言いながら少年は有無を言わずちなりの肩を抱いた。ちなりはよろけつつ少年の腕に納まった。逞しい胸が頬に触れる。
「んっ……。ダメ、そんなところ触っちゃ……んぅっ」
少年がさりげなくちなりの耳を探る。ちなりは出来るだけ小声でそう告げた。少年に合わせて歩き出す。時折、よろけるちなりを支えて少年はゆっくりと歩を進めた。
最後のあたりはビミョーにエロっぽいですけど、エロシーンまではいかないので警報は出しませんでした。