※この作品はR-18です。

魂の座 一部 凍えた魂   作:伊駒辰葉

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前の続きです~。
エロシーンはありません。


潜入して捜索 3

 ほどなく大きな水音が聞こえてくる。優一郎は髪を拭きながらそちらを見た。バスルームからよいしょ、と言いながら葵が出てくる。優一郎はあの、と葵に声をかけて片手に握っていた濡れたシャツを示した。

 

「それ、ここに入れて。キミが風呂に入ってる間にダッシュで乾かしてくるから」

「ありがとうございます」

 

 礼を言いながら優一郎はシャツを差し出されたかごに入れた。それも、と指差されたズボンを脱ぐ。続いて下着を取ってかごに入れる。葵はよし、と頷いてバスルームを顎で示した。

 

「今、湯を入れてるからシャワー浴びながら待ってるといいよん。んじゃ!」

 

 そう言い残して葵は本当に部屋を駆け出していった。実に慌ただしい。優一郎はそんな葵の動きに一瞬呆気に取られた。が、すぐに我に返る。そう、まずは落ち着かないと。そう自分に言い聞かせて大人しくシャワールームに向かう。

 

 シャワーコックを捻る。出てきた湯に身体を突っ込んだところで優一郎は少し震えた。雨に打たれ続けていたために全身が冷え切っている。しばらくシャワーの水流で身体を流す。そうすると少しだけ身体が温まる。

 

 車のタイヤが派手に軋む音がする。湯の溜まった湯船に身体を沈めていた優一郎は慌てて目を開けた。うっかり眠りかけていたのだ。

 

「おっまたせえ! 乾いたよん!」

 

 声が聞こえてくる。優一郎は頭を振って完全に目を覚ました。気が緩みすぎていた。頬を軽く叩いて気合を入れなおす。そうだ。早く栄子の居場所を突き止めなければ。そう自分に言い聞かせる。

 

「あれえ? まだ入ってるの? だいじょぶ?」

 

 軽いノックと共に葵がバスルームに顔を覗かせる。

 

「はい。おかげさまですっかりリフレッシュできました」

 

 優一郎は頷いて湯船の中に立ち上がった。それと同時に何かが飛んで来る。受け取るとそれは大きなバスタオルだった。

 

 葵は言葉通りに優一郎の服を乾かしてくれていた。ご丁寧に上着まで乾いている。ぴったりと折り目がついたズボンを指で持ち上げ、優一郎は驚嘆のため息をついた。どうやらアイロンまでかけてくれたらしい。

 

 ありがたく制服を着込む。優一郎がそうしている間に葵はビニール袋を探って何かを取り出した。見ると温かい缶入りの茶とおにぎりが数個ほど畳に並ぶ。どうやら寄り道をして買ってきたらしい。

 

「まずは腹ごしらえね。うおっと、もしかして優一郎くんてインスタントのメシって嫌い?」

「いえ頂きます」

 

 葵にならって優一郎は畳に座った。葵が嬉しそうに笑って茶を差し出す。ありがたくそれを受け取り、優一郎はプルトップをひいた。

 

「で? どこに行くの? ホントは」

 

 おにぎりを片付け、茶を飲みながら葵は告げた。その目はさっきまでのように笑ってはいない。優一郎を真っ直ぐに見つめている。

 

「ばれてましたか」

 

 にっこりと笑って優一郎は両手の中で缶をもてあそんだ。ぬるくなりかけた茶が缶の中で音を立てて揺れる。葵はうん、と短く答えて缶で優一郎をさした。

 

「だってさぁ。こんな時間だよ? 見学ったって、真っ暗だし何も見えないんじゃないかなってさ」

 

 それにホントならアポイント取ってオッケーでれば仮ID発行してもらえるしさ。葵はそう続けて缶を傾けた。優一郎は浮かべていた苦笑を消し、葵を見据えた。ここで葵に協力してもらえれば成功の確率は高くなるだろう。もし、それで失敗するようなら自分一人でも栄子の足跡は辿れない。

 

「ひとを探しています」

 

 告げると葵がぴくりと眉を上げる。優一郎は腹をくくって事情を話すことにした。栄子がいなくなった経緯を簡単に説明する。話をしている間、葵は無言だった。

 

「つまり? その誘拐されたヒトを探してここまで来たってことだよねぇ? で、そのおっきな反応だけはとにかく確かめたい、と」

 

 栄子を捜索した時、一気に拡散した反応のうち一箇所だけが大きく光った。あれは恐らく栄子の脳の部分だろう。優一郎はそう見当をつけていたのだ。反応があるということは栄子は生きている可能性が高い。たとえそれが罠だとしても、だ。

 

「そうです」

「その場所って正確に判るんだよね? んじゃ、いこっか」

 

 そう告げて葵は腰を上げた。優一郎は瞬きをして、え、と声を上げた。まだ協力を頼んではない。だが葵は当然のような顔で顎をしゃくった。

 

「なーに驚いてんのぉ。探しに行くんしょ? そのヒト」

「これで、何度目かわかりませんけど、本当にありがとうございます」

 

 優一郎は立ち上がって葵に深く頭を下げた。一人ならとてもあの壁は越せなかっただろう。葵が手伝ってくれたおかげでここまでこれたのだ。優一郎は素直に感謝していた。

 

 玄関に向かっていた葵が振り返る。その口許には人の悪い笑みが浮かんでいた。

 

「いいよん。そのうちに貸しを返してもらうから」

 

 そう言って葵は玄関を出た。優一郎は慌てて葵の後を追った。ドアをくぐったところで傘を押し付けられる。

 

「例の紹介の件ですね? あと、叔父の件も、なんとかしましょう」

「わぁい。ありがとう。楽しみにしてるよん」

 

 階段を降りて車に乗り込む。これでようやく栄子の行方がはっきりする。優一郎は緊張しながら窓から外を見た。空は暗い。雨はまだ落ち続けている。




この二人もなかなかいいコンビだと思います。
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