ぎりぎりエロシーンではない気がします。
かつて優一郎は由梨佳に欲望を叩きつけた。息子であると判らないまま、由梨佳は優一郎と淫らに交わった。それを思い出しながら絵美佳は無言で由梨佳を見つめた。
「絵美佳、おねがい……休憩させて、もう限界なの」
由梨佳が涙を目に浮かべて訴える。だが絵美佳はすぐに返答しなかった。こんな機械に欲情できる優一郎の気が知れない。が、何かが引っかかる。絵美佳は無言で唇に指をあてた。何がこんなに気になるのだろう。絵美佳にとって由梨佳はあくまでも機械人形に過ぎない。
また一筋、由梨佳のふくらはぎを愛液が伝う。由梨佳は泣きそうな顔でお願い、と絵美佳に訴え続けている。絵美佳は目を上げて由梨佳をじっと見つめた。由梨佳は特に妙な格好をしている訳ではない。この反応もヒューマノイドなら当り前の筈だ。
「なんで、わざわざ俺の指示をあおぐわけ? それって俺に命令して欲しいって意思表示だってとっていい?」
心の奥底で声がしている。絵美佳は口許を歪めて嗤いを浮かべた。一歩、由梨佳に近づく。由梨佳は絵美佳に合わせるように一歩だけ下がった。途端に由梨佳が顔をしかめる。恐らく陰唇が擦れて刺激されたのだ。
前は由梨佳と目線は変わらなかった。が、今は絵美佳の方が背が高くなっている。絵美佳は由梨佳を見下ろしつつまた一歩、歩いた。今度は由梨佳が数歩ほど下がって絵美佳から離れる。
「まず命令その一。俺、男になっちまったから、名前変える事にしたんだ。男が絵美佳じゃおかしいだろ? 俺のことは羅木様と呼べ」
かつん、と小さな音がして由梨佳がよろける。一歩ずつゆっくりと歩み寄る絵美佳に対して由梨佳は少しずつ逃げていた。ヒールに弾かれた何かのねじが床を転がっていく。
「絵美佳は絵美佳よ……。たとえ性別が変わったとしても、わたしは……」
絵美佳は薄笑いを浮かべて由梨佳をゆっくりと追い詰めていた。一歩、また一歩と由梨佳に近づく。由梨佳は胸元を手で押さえ、懸命な面持ちで逃げている。だがその目は欲望に潤んでいた。絵美佳は逃げる由梨佳の肢体をじっくりと眺め回した。
「だから、機械人形の分際で母親ぶるなってば。あんた、俺に欲情してるんだろ?」
手を伸ばして由梨佳の白衣をつかもうとする。由梨佳は慌てたように後ろに大きく下がった。絵美佳の手が空を切る。だが同時に由梨佳の背が壁に当たる。驚きに目を見張り、由梨佳は慌てたように後ろを向いた。その間に絵美佳は由梨佳との間を詰めた。
いつの間にか絵美佳の心の中に欲望が生まれていた。変だとは思った。さっきまで何とも思わなかった由梨佳に自分が欲情してしまうなどあり得ない。だが絵美佳の身体は意志とは裏腹にはっきりと欲望に従った。由梨佳の肩を両手でつかんで耳元に唇を寄せる。
「俺の名前を呼べよ。呼ばないなら、オナニーさせてやらねーぞ」
耳元に囁きながら絵美佳は嗤った。由梨佳が身体を震わせて首を振る。力ないその仕草に絵美佳の心に生まれた欲望が強くなる。
「俺は、お前の子供なんかじゃねーんだよ。俺は神江羅木。さっさと、俺の名前を呼んで、次の命令をねだれよ」
意地悪く笑いながら絵美佳は由梨佳の耳元にまた囁いた。由梨佳が涙を零しながら伏せていた顔を上げる。絵美佳は由梨佳の髪を指で分け、唇を耳に触れさせて繰り返して囁いた。俺の名前を呼べ。数度ほど囁いた時、とうとう由梨佳は頑なに閉ざしていた口を開いた。
「羅……木さま。命令を、お願いします……」
涙が頬を伝い落ちる。絵美佳は由梨佳の頬に伝った涙を指ですくった。舌先で濡れた指を舐めてみる。味のない純水に目を細め、絵美佳は唇を歪めた。
「涙も作り物かよ」
喉の奥で笑う。すると由梨佳は顔を背けて肩を震わせた。絵美佳は由梨佳の反応に満足しつつ、目を細めた。肩から胸、細い腰、そしてスカートに包まれた下腹部を眺め回す。
何故、こんな機械人形に欲情しなければならないのだ。絵美佳は自分の心の動きに少し腹を立てていた。心の奥底から声が聞こえている。はっきりとした言葉にはなっていない。だがその声は何かを懸命に訴えている。いつもなら無視するその声に絵美佳は耳をすませてみた。
何を言っているのかは判らない。だがどこかでかちり、と音がする。それと同時に絵美佳は衝動的に由梨佳を壁に押さえつけた。急に絵美佳が動いたことに驚いたのだろう。由梨佳が目を見張って息を飲む。
「ご休憩、していいぜ。まず、寝室まで連れってってやるよ」
硬直している由梨佳の身体を絵美佳は軽々と抱き上げた。腕に抱かれた途端に由梨佳が暴れだす。
「やめて! 一人で行けるわ!」
以前なら腕力はきっといい勝負だったのだろう。だが今の絵美佳は由梨佳が暴れた程度では大して気にもならなかった。腕の中で由梨佳が喚いて手足をばたつかせる。懸命に絵美佳の胸を押しのけようとする。だが絵美佳は平然と歩き始めた。
「あんたのオナニー、いや、セルフメンテナンス作業だっけか? 見せてくれよ」
どう言い換えてもオナニーはオナニーなのにな。そう付け足しながら絵美佳は嗤った。由梨佳が短い悲鳴を上げる。絵美佳が乱暴にドアを足で開けた音に驚いたのだ。驚きに身体を竦めた由梨佳を抱え、絵美佳は研究室から出た。ここは自宅と繋がっている。絵美佳は研究所と自宅を繋ぐ渡り廊下を歩いた。
どこまでいってもヒューマノイドは機械……なのですが、ちゃんと書けてないような。
すみません……。