※この作品はR-18です。

魂の座 一部 凍えた魂   作:伊駒辰葉

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要のヘイトが半端ない件w
エロシーンはありません。


栄子の延命計画 2

 要が歯を食いしばって立ち上がる。蹴られた椅子が音を立てて倒れた。

 

「嘘よ! そんなことある筈がありませんわ! だって彼女は他の人と何ら変わりなく学校生活を送っているんですのよ!? 機械人形ですって!? そんな話、信じられませんわ!」

 

 そう喚いた要のこぶしが小刻みに震えている。優一郎は黙って要を見上げた。要は半ば睨むように優一郎を見ている。

 

「冗談は大概になさいませ!」

「本当ですよ。強力三号の動きを見たでしょう? 姉は彼女をロボットのパイロットとして最適化改造することで、あなたに勝利したんです」

 

 叫んだ要に優一郎は冷静に切り返した。はっと息を飲んで要が言葉をなくす。きっと先の戦いのことを思い出したのだろう。要は次第に怒りの表情になっていった。優一郎は怒りに震える要を眺めながら心の中でだけ笑った。

 

「あの女……! まさかそんな事をしていたとは……!」

 

 少し前、全校を挙げて性格判断テストというものが行われた。これは生徒が普段、どんなことで思い悩んでいるか、またその解決法はないか、教師が少しでも生徒のことを理解しようという目的で行われたものだ。学校内、ということもあってか教師たちの端末のセキュリティは子供だまし同然だ。優一郎にとっては防壁にもなっていなかった。優一郎が教師たちの所有する端末のネットワークに侵入し、生徒たちの性格データを入手するのは造作もないことだった。

 

 その結果を基に調べた。間違いなく要はヒューマノイドの機体に対する適合性が高い。怒りに震える要を眺めながら、自然と優一郎の気分は高揚していった。

 

「許せませんわ! あの女、彼女の弱みを握って脅したんですのね!?」

 

 怒り狂う要の思考は独自の方向に突き進み、極論をはじき出したようだ。

 

「巴さんは自発的に姉に協力しているようですよ? 孤独だった彼女にとって姉は初めてまともに接してくれた人間だったようですし」

「そんなことある筈がありませんわ! あの女がまとも!? 吉良君、あなた、姉という立場のあの女を過大評価しすぎですわ! あの女はアクマ! ゲドウ! 言いようのない悪代官に決まっているんです!」

 

 一体、何が要にそう思わせてしまうのだろう。優一郎はやれやれ、と肩を竦めて苦笑した。要はまだ絵美佳に対する罵詈雑言を吐きながら怒り狂っている。

 

「そもそも多輝様を陥れた辺りが最悪ですわ! よ、く、も、わたくしの多輝様を!!」

 

 ぎりぎりと歯軋りの音を立てながら要がこぶしを震わせる。優一郎は多輝の名にぴくりと眉を上げた。次いで冷たい汗が背中を流れる。要はまだ知らない。多輝は既に女性の機体に納まっている。かつての多輝はもういないのだ。

 

 要は絵美佳を罵りながら病室の壁にこぶしを入れた。要の打撃を受けて壁にひびが入る。相当に怒り狂っている証拠だ。それを見ながら優一郎は微かに頬を引きつらせた。きっと優一郎がしたことを聞けば、要の怒りはもっと激しくなるだろう。きっとただでは済まないな。そう思いながら優一郎は引きつった頬をさりげなく手で押さえた。

 

 だが一つ、判ったことがある。要が多輝を思った以上に好いていたということだ。要が多輝を狙っていたということは、優一郎も噂程度には聞いたことがある。何しろ要は見目のいい男性を周囲にはべらせるのが好きだともっぱらの噂だ。ボディガードの採用の折にも、まずはその姿形で第一次審査が行われたという。

 

 優一郎の想像していた以上に要は多輝に拘っているらしい。そのことを知り、優一郎はなるほどと心の中で呟いた。

 

「見てなさい、吉良絵美佳! 今度こそ必ずジゴクを見せて差し上げますわ! そして必ず多輝様を奪還してみせます!」

 

 怒りに燃えながら要が天井に向かってこぶしを突き上げる。だがそうしていた要がふと気付いたようにこぶしを下ろした。まだ怒りの残った目で優一郎を見る。

 

「ところで、それとこれがどう関係ありますの?」

「話を戻していいですよね」

 

 にっこりと笑いながら優一郎は首を傾げた。するとあら、と要が恥ずかしそうに頬を染める。失礼しました、と小声で詫びて要は倒れていた椅子を戻した。静かに腰を下ろして目を上げる。

 

「つまり、栄子さんの四肢に用いられているクローン合成された生体パーツを機械のパーツに交換すれば、死に至るような致命的な拒否反応は発生しないというわけなんです」

 

 だがそうするためには栄子を説得しなければならない。リハビリなしでは機械のパーツを動かすことが出来ないからだ。本人の覚悟とやる気がなければ無理な話だ。が、当の栄子は自分が拉致されていたことを知らない。優一郎は淡々とそう説明した。要が再び顔色を青くする。

 

「もうひとつ、方法があります。それは機械で組み上げた身体に、脳を移植するという方法です」

 

 言いながら優一郎は要を真っ直ぐに見つめた。要が目を見張って優一郎を凝視する。何か、言おうしているのだろう。唇が何度か開きかける。だがその度に要は首を微かに横に振って唇を閉じる。

 

「この方法は既に実績があります。木村の生体実験の結果、失敗作として誕生し、死にかけていたある女性を救うことに僕は成功しています」

 

 要の混乱を鎮めるために優一郎は出来るだけゆっくりと話した。要はだが殆ど反応をしない。顔色を悪くして目を伏せている。




要にとって絵美佳は『悪』みたいです。
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