※この作品はR-18です。

魂の座 一部 凍えた魂   作:伊駒辰葉

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ひとめぼれとかwww
あ、エロシーンはないです。


面倒だっただけなのに 2

 唐突に激しい欲望が心の底からわいてくる。多輝は声を上げて廊下に座り込んだ。さっきまでは何ともなかった下腹部が熱を持っている。多輝が座ったその場所のじゅうたんが色濃く染まっていく。強制的に欲情させられ、多輝は膣口から愛液を大量に漏らしていた。

 

「半分くらいは使えるようになっているかな」

 

 立城の声が遠い。多輝は目を潤ませて手をゆるゆると上げた。立城のシャツをつかんで肩に頭をもたせかける。近づいたことで立城の手は肘まで多輝の機体の中に埋まった。

 

 それからのことはよく覚えていない。気がつくとベッドの中だった。多輝はぼんやりとしていた目をこすり、周辺の様子を伺った。天井の明かりは煌々と灯っている。窓には分厚いカーテンが引かれ、外の様子は全く見えない。が、恐らくは夜になっているのだろう。

 

 何だか身体がだるい。多輝は深々と息をついて枕に頭を乗せ直した。ベッドの脇には蒼がいる。

 

「おい、いま何時だ?」

「夜の十二時前です」

 

 淡々と蒼が答える。まるで何事もなかったかのような顔だ。そりゃそうか、と多輝は心の中で呟いた。苦笑して目を手で覆う。

 

 多輝は龍神だが今の身体は紛れもなくヒューマノイドのそれだ。機体維持のためにはどうしても性的快感が必要となる。多輝の機体も他のヒューマノイドと同様に欲情しやすく作られている。

 

 だがその説明を誰から聞いたのかを思い出せない。多輝は息をついて手の中で目をあけた。指の隙間を通った光が見える。すけた手のひらの縁がオレンジ色になる。

 

 ふと前に訪ねて来た優一郎のことを思い出す。一度会っただけなのに近頃妙に思い出すことが多い。立城を思わせる穏やかな笑い方が印象的だった。だが言葉はさほど交わしてはいない。せいぜい、荷物を入れるために二、三の質問をした程度だ。ごく日常的なそれだけの会話をしただけなのに、どうしてこんなに今になって気になるのだろう。多輝は顔をしかめて手を退けた。一気に明かりが目に飛び込んでくる。

 

「なあ、蒼。一目惚れって信じるか?」

 

 多輝のために茶を淹れようとしていたのだろう。蒼はテーブルに向かっていた。呼ばれて振り返る。

 

「さあ、わたくしには判りかねますが……」

 

 困ったように首を傾げている。そうだよなあ、と多輝は同意した。蒼は使い魔だ。使い魔は作り主である龍神に絶対の忠誠を誓う。そしてそれは死ぬまで続く。それが使い魔というものだ。そんな蒼に訊ねたところで答えは出ないだろう。

 

「だよなあ。でも、おれも変だと思うんだ。一目惚れなら見た時から気になるもんだろうし」

 

 誰に聞かせるでもなく多輝はそう呟いた。のろのろと身体を起こす。蒼が差し出したカップを手に取る。多輝は熱い紅茶を一口啜り、傍に立つ蒼を見上げた。

 

「ですが、見た瞬間はそう気にならなくとも、後にその方のことを思い出して一目惚れだと気付くこともあるかと」

 

 蒼が静かに告げる。それはまさに今現在の多輝の心境を言い表している。そうか? 多輝は眉間に皺を寄せてそう答えた。腕組みをして唸る。

 

 だがたとえ気になったとしてもまた会う方法が判らない。多輝は真剣に頭を抱えて悩み始めた。先の一目惚れかどうかという疑問すら気にならなくなる。会えないと思うと余計に会いたくなる。

 

「それより多輝様。お食事はどうなさいますか? おとりになるのでしたら運ばせて頂きますが」

「あ、うん。頼む」

 

 蒼に返事しつつも多輝は全く別のことを考えていた。優一郎が訪ねてきた時のことを思い出してみる。優一郎を連れて立城の執務室に荷物を運び入れた。ここまではいい。その後、立城がいらぬちょっかいを出してきたため、多輝は優一郎のことを気にする余裕がなかった。

 

 静かに蒼が部屋を出る。だがそのことに気付かないほど多輝は自分の考えに没頭していた。確か、誰かが入ってきて。そこまで考えた時、短い声を上げて多輝は顔を上げた。そう、由梨佳があの時に現れたのだ。

 

「母さんって言ってた。もしかして、あいつってば由梨佳先生の子供なのか?」

 

 それならもしかした会えるかも知れない。由梨佳に頼んで引き合わせてもらえばいいのだ。問題は学習期間がまだ終了していないことか。多輝は自分でも気付かないうちに爪を強く噛んでいた。ぎり、と奥歯が嫌な音を立てる。無意識に多輝は歯軋りしていた。

 

「失礼いたします。お食事を持って参りました」

 

 静かにドアが開いて蒼が戻ってくる。多輝は目だけで返答した。すると蒼が眉を寄せる。食事の乗ったワゴンをテーブル脇に据えて多輝の傍に近づく。

 

「いけません、多輝様。爪の形が悪くなってしまいますよ」

 

 多輝の右手をそっと握り、蒼は首を横に振った。多輝は慌てて手を布団の間に隠した。考え事をしている時に爪を噛む癖は前から蒼に注意されている。多輝は反射的にごめん、と詫びた。すると蒼が柔らかな微笑を浮かべる。

 

 主とえらい差だよなあ。食事の準備をし始めた蒼の後姿を見ながら多輝は感心して頷いた。蒼の主は水輝だ。多輝は水輝のことをよく思っていない。だが蒼は主とは全く正反対の性格をしているように思える。でなければわざわざ多輝に戦い方を教えてくれる筈がない。

 

「準備が整いました。お起きになれますか?」

「大丈夫」

 

 軽く答えてベッドから飛び降りる。多輝は空腹を満たすためにテーブルについた。




記憶がなくなってるので仕方ないですね!w
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