※この作品はR-18です。

魂の座 一部 凍えた魂   作:伊駒辰葉

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エピタイ通りですw
エロシーンはありません。


問題児(?)の転入

 プリントに目を落として水輝は小さく笑った。相変わらず清陵高校のシステムは変わっていないらしい。転入手続きは事務室で行われるが、説明等は生徒会役員が行う。転入した生徒がどのクラスに入るかを決めるのは生徒会の仕事だ。そしてその生徒に最適と思われるスケジュールを組む。立城がかつて作り上げた独自のシステムはまだ生きている。

 

 水輝はかつて通ったことのあるこの高校の制服を持っていた。が、今回は転入生ということになっている。幾種類か持っている制服の中から水輝は黒い学ランを選んで着ていた。転出先を適当に決めて書類を作るのは造作もない。

 

 真っ白な校舎が目の前にそびえたっている。硝子張りの脱靴場は生徒たちの声で賑わっている。水輝は軽い足取りで硝子の扉をくぐった。鞄からスリッパを出して履き替える。

 

 学年は三年だったな。呟きながら水輝は真っ直ぐに事務室を目指そうとした。だがそんな水輝の目の前に生徒たちの波をかき分けて二人の生徒が立ちはだかる。水輝は片方の眉を上げて彼らを見た。

 

 二人は並んで水輝を検分するように見つめている。男子生徒の二人連れの片方は鍛え上げられた体格をしていた。一方は細身ではあるが、こちらもしなやかな体躯をしている。どちらも格闘には自信があるのだろう。当り前のような顔をして水輝の行く手を阻んでいる。

 

「遊んでいる暇はないんだけどな。退け」

 

 周囲には通りかかった生徒たちの輪が出来上がっている。どうやらこの二人は学内でもよく知られているらしい。ふうん、と水輝は呟いて周囲を見回した。今から何か起こるのではないかと思っているのだろう。生徒たちの顔はどれも期待に満ちている。

 

「一緒に来てもらおう」

 

 水輝の身長は一七〇と少しだ。そんな水輝を腕組みをして見下ろしながら片方の生徒が言う。ゆうに一八〇センチは越えているだろう。筋肉質な体格の方の生徒を見上げて水輝は微かに唇を歪めた。

 

「嫌だって言ったら?」

 

 観客が増えてきたなあ。のんびりとそんなことを考えながら水輝はもう一方の男子生徒を見た。細身の生徒が即答する。

 

「無理にでも来て頂きます」

 

 予鈴が鳴る。水輝は小さく舌打ちをして鞄を片手に抱え直した。プリントをポケットに突っ込む。空いた片手を軽く振ってから握る。

 

「やれるもんならやってみろ」

 

 生徒たちの輪から歓声が上がる。よくよくトラブルが好きだなあ。水輝は内心でその声に返してから目の前の二人に一歩、近づいた。二人が顔を見合わせて同時に動く。水輝は両側から伸ばされた腕を軽く身体を捻って避けた。

 

「悪いな。ちょっと持っててくれ」

 

 二人の間を抜けて水輝は見知らぬ女子生徒に鞄を差し出した。群集の中の一人だった女子生徒が頬を染めてそれを受け取る。水輝の背後でよろけた二人が一斉に飛び掛ってくる。

 

「ついでに電話番号とか教えてくれてもいいぜ?」

 

 鞄を渡した女子生徒に笑みかけながら水輝は右の肘と左のこぶしを同時に放った。肘が筋肉質な方の生徒の鳩尾に、左の裏拳が細い生徒の胸部に命中する。水輝は女子生徒に笑いかけたまま、どう? と訊ねた。女子生徒が慌てたように水輝の背後に視線を飛ばしている。二人の男子生徒はものの見事に床にひっくり返っていた。

 

「あの、後ろ……」

 

 女子生徒が震える声で告げる。水輝はため息をついて振り返った。倒れた二人がよろけながら立ち上がる。水輝は舌打ちをして二人に向き直った。

 

「トンファー、か」

 

 黒い鋼の武器を手に細身の生徒が身構える。もう片方の生徒はナックルを嵌めている。やれやれ、と肩を竦めて水輝は軽く床を蹴った。黒い影が身体を沈めた水輝の頭上を行過ぎる。水輝はトンファーの描く軌跡を見切って細身の生徒の左腕をつかんだ。同時に左の肘を強く打ち上げる。

 

 一方の生徒には水輝の足刀がきまっていた。口を大きく開き、目を見張った生徒が崩れ落ちる。水輝と殆ど密着していた生徒の方は寄りかかるようにして意識を失っていた。

 

「全く……。武器を出すくらいならもう少しちゃんと攻撃して来いよ」

 

 言いながら水輝は寄りかかっていた生徒を床に放り出した。振り返ってゆっくりと歩く。生徒たちの輪は静まり返っている。水輝は無言で女子生徒の腕の中から鞄を取り上げた。

 

 本鈴が鳴る。水輝は平然と輪を横切って事務室に向かった。手続きを済ませて先ほどの輪の中に取って返す。二人はまだ倒れている。水輝はため息をついて鞄を背負った。空いた両手でそれぞれの襟首をつかむ。

 

 階段を上がる水輝を生徒たちは遠巻きにしていた。早く教室に行けよ。本鈴聞こえなかったのか。水輝は周囲にいる生徒たちに何度かそう声をかけた。やがて生徒たちが散り散りにいなくなる。二人の生徒を引きずって水輝はそのまま四階に上がった。

 

 足でドアを開ける。水輝は真っ先に二人を生徒会室に放り込んだ。生徒会室には女子生徒が一人いた。窓辺に立った女子生徒が唖然とした顔になっている。床に転がされた二人が微かに呻く。水輝は顎をしゃくって不機嫌に告げた。

 

「で? おれってどこのクラスだ? 生徒会長さん」




元々、水輝は清陵高校の生徒会役員だった、という過去があったりなかったりします。
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