くらいな感じです。
のろのろと扉を開く。ゆらりと部屋に入って由梨佳は目を上げた。執務室の窓辺に立城が立っている。振り返った立城はにっこりと笑った。
「休暇はどうでしたか? ゆっくり休めました?」
まるで何も知らない素振りで立城が告げる。いや、実際に知らないのかも知れない。だが由梨佳はゆらりと動いて立城に近づいた。その動きはまるで夢遊病者のようだ。由梨佳は頼りない足取りで立城に歩み寄る。立城はそれを見て目を細めた。
「ほとんど家の掃除だけで終わってしまいました」
淡々と告げる。すると立城がにっこりと笑った。由梨佳は勧められるままにソファに腰を下ろした。立城が正面に腰掛ける。
絵美佳の身体を使って現れた知らない誰かのことがずっと気になっている。彼は立城のことに酷く拘っていた。由梨佳はちらりと立城を見、目を伏せた。彼の存在が気になるのは立城と関わりのある者だからという理由だけではない。言われたことの一つずつが由梨佳の心を深く傷つけたのだ。
そして絵美佳自身に言われたことを思い返す。お前は母親ではない。面と向かって言われた時、由梨佳は答えられなかった。母親、家族、そんな関係を保っていたいと願うのはそんなにいけないことなのか。
「どうしました? 何か気になることでも?」
「あのっ……いえ」
言いかけて由梨佳は唇をかみ締めた。絵美佳が男になっていたこと。知らない誰かが絵美佳の身体を使っていたこと。そして突きつけられた事実。それらが由梨佳の頭の中を巡る。
ふと考える。立城は自分にとって何なのだろう。ただのストレスを解消してくれる相手でないことは確かだ。だがはっきりとどんな関係とも言いがたい。
「何でもないという顔ではありませんよ」
そう言って立城は微かに笑った。穏やかなその微笑みに由梨佳の緊張が解ける。ほっと息をついて由梨佳は頷いた。そう、立城は今でもこうして悩みを聞いてくれる。決して身体だけの関係ではない。現に互いが協力しなければあらゆる研究は進められなかった。
「あの……女性器ユニットを検査していただけませんか? いま、直ぐに」
きっと立城にならあの知らない誰かの正体が判るに違いない。由梨佳は立ち上がりながらそう告げた。立城が不思議そうに首を傾げる。だがすぐに立城は頷いてみせた。
地下に行きましょう。そう告げて立城は由梨佳を伴って執務室を出た。屋敷の地下には研究室が幾つか作られている。ヒューマノイドである多輝の機体の調整もそこで行われる。
秘密の通路を抜けて研究室に辿り着く。眩しいほどのライトが室内を照らしている。由梨佳は自分から実験台の上に乗った。下着を取ってあお向けになる。
「これは……随分と手荒に扱われましたね。由梨佳さん自身ではないのでしょう?」
言いながら立城がそっと陰唇に触れる。ぴくりと身体を竦めて由梨佳は頷いた。
「はい」
「失礼、先に修理します。痛みがあったら仰ってください」
そう言われた途端、由梨佳の身体を心地良いものが包んだ。立城が手から力を少しずつ注いでいるのだ。由梨佳はため息をついて目を閉じた。立城は生真面目な顔で丁寧に指先で由梨佳の陰部を辿っている。
「あっ……立城くん!」
「辛かったでしょう? 身体の力を抜いて、楽にしてください。声は出しても構いませんから」
囁くように告げて立城が膣の中に指を入れる。由梨佳は熱い息をついて目をあけた。眩しいライトの明かりが目に飛び込んでくる。真っ白な光に目を細め、由梨佳は作業をしやすいように自分から小陰唇を指で開いてみせた。
「いつも、すいません。あの……」
立城が手を止めて目を上げる。由梨佳は数瞬ほどためらってから口を開いた。
「わたし、迷惑じゃないですか? こうして立城さんの手を煩わせて、メンテナンスをしていただける価値、ありますか?」
もし、誰にも必要とされていないなら。不安が由梨佳の心を締め付ける。絵美佳は由梨佳を母ではないと言った。絵美佳の言葉に間違いはないだろう。きっと絵美佳は最初から由梨佳を母とは思っていなかったのだ。だからこそ、必死で母親を演じる由梨佳を滑稽だと思ったのだろう。そう思えば絵美佳の数々の仕打ちは頷ける。
そして知らない誰かは言った。娘に犯されて感じるんだろ? そう、その時、確かに由梨佳は快楽を得ていた。激しい自己嫌悪に苛まれていたのに、それでも機体はさらに強い刺激を求めていた。それだけではない。その誰かは優一郎と由梨佳が交わったことを示してみせた。その言葉に由梨佳は深く傷ついた。それまで忘れてしまっていた光景が蘇る。あの時、由梨佳は優一郎に犯されながら激しく悶えていた。それを思い出してしまったのだ。
総一郎はかつて由梨佳に告げた。吉良瀬氏に協力したまえ。総一郎の言は由梨佳にとって絶対だ。そして総一郎は立城を由梨佳に紹介した。今でも覚えている。出会った時の立城は穏やかに微笑んでいた。
あれからしばらく経つ。互いに変わらない姿で今も由梨佳と立城はこうして生きている。だが本当に自分は立城の力になっているのだろうか。由梨佳は不安に息をついて立城を見た。
微笑みが見える。立城は穏やかに由梨佳を見つめながら頷いた。
「心配はありません。僕には由梨佳さんが必要です。それに迷惑だと思ったことは一度もありませんよ」
「ありがとう、ございます」
自然と由梨佳の目に涙が浮かぶ。由梨佳は目元を覆って肩を震わせた。そっと指で涙を拭う。指先で光る涙を見つめ、由梨佳はまた涙ぐんだ。涙も作り物か。そう言って笑われたことを思い出す。
「辛ければ記憶を封じますよ。どうしますか?」
「いいえ。記憶を封じても解決しないことはわかっています」
かつて優一郎が中学生だった時、由梨佳は激しいストレスに苛まれた。だがその時、何故か自慰行為が出来なくなった。目の前に優一郎がいる。由梨佳はいけないと思いながらも優一郎の前で痴態を晒してしまった。そして優一郎は訳も判らないまま、由梨佳の身体を弄った。その時のことを思い出し、由梨佳は自嘲気味に笑った。優一郎の記憶が混乱し、そのことを覚えていないと知った時、由梨佳は自身の記憶を封じてくれるように立城に頼んだのだ。
だが結局はこうして記憶は戻ってしまった。由梨佳は落胆のため息をついた。立城がそうですか、と小声で答えて作業を再開する。
「くぅっ!」
膣壁をなぞられ、由梨佳は声を殺して背中を反らした。自己嫌悪により、ストレス値がぐんぐんと上昇していたのだ。機体は当り前のように立城の指の動きに敏感に反応する。
「大丈夫ですか? 傷は大分、修復しましたが」
「大丈夫です……ああっ!」
声を震わせて答える。由梨佳は出来るだけ冷静になろうと努力した。今は欲情している場合ではない。絵美佳のこと、あの誰かのこと、様々なことを立城に知ってもらう必要がある。だがそう考える心のどこかがもっと激しい刺激を求めるのだ。全く違う思いが同時にわき、由梨佳の機体はさらに欲情した。
「だめ、あそこが! また……止まらなくなるっいやあっ!」
壊れるかも知れない、という恐怖に駆られ、由梨佳は悲鳴混じりに叫んだ。驚いたように立城が手を止める。由梨佳は身体を自分の腕で抱き、がくがくと震え始めた。怖い。心が冷え切ってしまうような恐怖に襲われる。
「立城くん、たっくん、助けて、あそこが、止まらないの! 壊れちゃう! 嫌っ!」
由梨佳は頭を振って泣いた。下腹部で低い音がし始めている。自分の身体を抱きしめて震える由梨佳の目元に何かが触れる。びくりと首を竦めた由梨佳の頬を、立城がそっと指で撫でた。
「僕で良ければ」
そう告げて立城が台にのぼる。由梨佳は夢中で立城に抱きついた。優しく抱きしめられて口づけられる。由梨佳はうっとりと目を閉じて腿をひらいた。
「助けて……くれるの? こんなダッチワイフみたいな、わたしを? ほんとに……いいの?」
再び目を開いた由梨佳は涙を浮かべていた。立城が口許に柔らかな笑みを浮かべる。軽い、触れるだけの口づけをして立城は由梨佳の耳元に唇を寄せた。
「呪いを解いてあげますよ。大丈夫。あなたは人形ではありません。僕の大切なパートナーです」
突き上げるような快感が訪れる。由梨佳は挿入の瞬間に身体を震わせた。立城のペニスが撫でるようにゆっくりと膣壁を擦る。
「ああっ、立城くんっ!」
声を上げて由梨佳は立城の首に腕を回した。貪るように唇を合わせる。立城は口づけに応えながら徐々に腰の動きを速くし始めた。ペニスを抜き差しする音が室内に響く。艶かしい水音を立ててペニスが膣の奥を強く突く。由梨佳は立城と口づけたまま、一気に果てた。
機械なので色々と思うところがあるのです……。
まあ、ちゃんと書けてませんけど!!!><