※この作品はR-18です。

魂の座 一部 凍えた魂   作:伊駒辰葉

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このところ、色々警報を出していないのですが大丈夫でしょうか。
(TSとかいろいろ)
エロシーンはありません。


恋する乙女? 1

 蒼とのトレーニングの時間を考慮すると勉強する時間は前より随分と短くなっている。そのことを気にしているのだろう。由梨佳は以前よりかなり熱をいれて多輝に様々なことを教えている。多輝はうんうん、と頷きながら由梨佳の話を聞き、判らないところはストレートに訊ねる。時折、欲情するがその際には由梨佳が手際よくメンテナンスを施してくれる。

 

 だが一つ、問題があった。由梨佳に言われた言葉遣いについてだ。多輝は今日も頭を抱えて懸命に拒絶しようとした。どうしても女言葉に慣れない。出来ればこのままでいたい。だがそんな多輝の訴えを由梨佳はあっさりと却下する。その度に多輝は必死で由梨佳の口真似をしなければならなかった。

 

「あのー、どうしてもしなきゃ駄目か? おれ、別にこのままでもいいと思うんだけど」

 

 多輝は呻きながら頭を抱えた。どうしても慣れない、だが由梨佳はぴしゃりと多輝を叱った。

 

「わたしや立城さんと話すときはかまわないわ。だけど、他の人と接するときに、その言葉遣いでは失礼よ」

 

 あくまでも由梨佳は冷静に告げる。温度の感じられない言葉が逆に多輝の胸に突き刺さった。確かに吉良瀬を名乗る以上、立城が恥をかかないようにしなければならないだろう。それは判る。

 

「いつも丁寧な言葉で喋れとは言わないわ。TPOにあわせて使い分けられるようになってほしいの」

「そ、そんなこと言われても」

 

 自分の喋り方がまずいと思ったことがないのだから直しようがないではないか。多輝はそう言い返そうとした。が、思ったより由梨佳の目が厳しかったので断念する。多輝は渋々とテキストを持ち直した。

 

 言葉遣いについての授業が終わる。休憩ね、と言われて多輝は大きく息をついて肩の力を抜いた。

 

「まだまだ時間はあるわ。あせらずにいきましょう」

 

 にっこりと笑いながら由梨佳が告げる。励ましてくれているのだ。多輝は素直にそう受けとめて由梨佳に礼を言った。由梨佳はそんな多輝を見て嬉しそうに笑う。きっと息子と同い年くらいだからだろう。由梨佳の顔は母親のそれに見えた。

 

 多輝はカップを両手に包んでじっと紅茶を見つめた。揺れていた水面が静まる。どうしても由梨佳に訊きたいことがある。だがこれまでずっと訊けずにいた。

 

「あ、の、由梨佳先生……」

 

 ためらいながら声をかけた多輝を由梨佳は見つめた。その顔が次第に曇る。

 

「何、どうしたの? 身体に異常でも?」

 

 心配そうな面持ちで訊ねられ、多輝は慌てて首を横に振った。迷ってるから由梨佳先生に心配かけちまうんだろうが。そう、自分を叱咤する。

 

「えーと、その、優一郎……くんって、由梨佳先生の息子、なんだよな?」

 

 だが自分を叱った割には多輝はしどろもどろになったままだった。由梨佳が不思議そうな顔になる。

 

「そうよ。優一郎は、わたしの息子よ」

 

 告げた由梨佳は複雑な表情をしていた。が、多輝はそのことには気付かなかった。とにかく意志を伝えようと必死になって考えていたためだ。

 

「えーと! あの、おれ、あいつにもっかい会いたいんだけどっ」

 

 考え抜いた末に多輝は一気にそうまくし立てた。スカートを握り締めて俯いた多輝の頬が染まる。だがすぐに由梨佳は応えない。怪訝に思いながら多輝は顔を上げた。由梨佳は口許を押さえて笑っている。

 

「もしかして、一目惚れでもした?」

 

 くすくすと笑いながら由梨佳は告げた。由梨佳自身は冗談のつもりだったのだろう。楽しそうに目を細めている。が、多輝はそれどころではなかった。一気に顔が熱くなる。赤くなって言葉を濁した多輝を見ていた由梨佳が驚きに目を見張る。

 

「からかうような事いって、ごめんなさい。もしかして、本気で一目惚れしたの?」

 

 それまでの笑いを納め、一転して由梨佳は真面目な顔になった。多輝はうろたえつつも小さく頷いた。こうなったらやけだ。多輝はカップを握り締めたまま息を大きく吸った。

 

「最近、あいつのことよく考えるようになって、夜も眠れない時があるんだ。考え事とかしてる時も思い出すし、そのこと言ったら蒼はきっと一目惚れだって言うし、でもおれ、あいつに会う方法判らないし、もしかしたら由梨佳先生なら何とかしてくれるって思ったんだ」

 

 一気にそうまくし立てる。それから多輝は深々と息をついた。思いを吐露したことで少し気が楽になる。

 

「つまり、優一郎のことを考えると、欲情して自慰がしたくなるのね?」

「うっ」

 

 ストレートな訊き方に多輝は思わず言葉に詰まった。視線を泳がせて必死で言葉を探す。だが上手い言い回しが浮かばない。何故なら由梨佳が言ったことは図星だったからだ。

 

「恥ずかしがらなくてもっ……て恥ずかしいわよね」

 

 そう言って由梨佳が微笑む。多輝はさらにうろたえた。もしかして変なことを言ってしまっただろうか。段々と不安になり、多輝は助けを求めるように視線を彷徨わせた。だがこの部屋には今は二人の他に誰もいない。

 

「でも、それはヒューマノイドとして普通の動作よ。恋しい相手を想えば自動的に身体が反応するように、わたし達は作られているの」

 

 由梨佳はこれまでに何度か繰り返したことを再び口にした。が、その言葉はいつもより重く聞こえる。多輝は真面目に頷いた。言われていることは判る。確かに優一郎のことを思うと身体が疼くからだ。

 

 でも、と多輝は心の中で呟いた。本当にそれだけだろうか。多輝は先日のことを思い出した。狂うほどに快楽に溺れさせられたあの日のことがまざまざと蘇る。あの日、水輝は立城と多輝をいたぶるように抱いた。その時、確かに多輝は欲情していたのだ。相手は水輝だ。とても恋しいなどと思う相手ではない。

 

 考えをめぐらせていた多輝は自然と俯いていた。それがヒューマノイドの本性なのだと言われれば納得せざるを得ない。欲情しやすいよう、機体は設定されている。だがだとすれば恋しい相手でなくとも欲情するという意味ではないのか。確かに優一郎のことを考えると夜も眠れないが、優一郎以外の相手にも欲情してしまう自分はどうなんだろう。




乙女扱いされたらこの頃の多輝ならキレてるだろうなあ……。
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