ちゅーはあるけど、ぎりぎりだからエロシーンじゃないことにしてます。
「随分とシンプルな部屋だな。飾り気がないというか」
モノトーンの部屋の中央で水輝は物珍しさに任せて周囲を見回した。真也が小さく笑ってソファに転がっていたクッションを取り上げる。顔を上げた水輝に軽くそれを放り、真也はソファを指差した。どうやら座れという意味らしい。水輝は肩を竦めて指示に従った。
黒いテーブルの上に硝子製のチェス盤が置かれている。擦り硝子と透明な硝子のコマを見つめ、水輝は苦笑した。どうやら誰かとゲームをしている最中のようだ。
「はーい! お待たせしましたあ。お茶でぇす」
明るい声と共にちなりが部屋に姿を現した。トレイを両手で支えてテーブルに寄ってくる。近づきざまににっこりと笑われ、水輝は反射的にちなりに微笑んだ。
「ありがと。あ、おれ、砂糖要らないから」
「手ぇ出すなよ。俺のお気に入りだからな」
即座に声が飛んで来る。水輝は憮然としつつ振り向いた。真也が仏頂面で水輝を睨んでいる。えへへ、と笑ってからちなりはトレイを抱えて部屋を去った。
「誰が手を出すって?」
ちなりがドアを閉めたのを確認してから水輝は呻くように呟いた。すると真也が当然のような顔で水輝を指差す。
紅茶の満たされた真っ白なカップを口許に近づけたところで水輝は手を止めた。甘い、不思議な香りがする。真也は水輝の正面に陣取り、知らん顔で紅茶を啜っている。水輝は目だけを上げて真也を捉えた。
「これ、紅茶、だよな?」
「お前に出してやる義理はないが、特別に茶っ葉を混ぜて作ったやつだ。ありがたく飲め」
そう言いながら真也が水輝を睨む。水輝はふうん、と呟いて一口ほど紅茶を啜った。じんわりとした温かさが喉を滑って落ちる。どうやら真也はわざわざ猫舌の水輝に合わせて紅茶を淹れるように指示したらしい。気が利くじゃん。水輝は微かに笑ってそう呟いた。
紅茶を半分ほど飲んだところで水輝はカップを置いた。真也と仲良く茶を飲むためにここに来た訳ではない。真也もそのことは理解しているのだろう。黙って顔を上げる。
「お前、こないだ立城に変なもの飛ばしやがっただろう?」
真也の飛ばした意識が結界の一部を綻ばせ、立城の意識と混ざり合った。水輝はその時のことを思い出しながら真也を睨みつけた。真也が無言でカップを傾ける。
「おかげで立城の精神状態は不安定に……って、聞いてるのか? おい」
目を閉じてカップを傾けていた真也が片目だけを開ける。水輝はふと眉をひそめた。妙な思惟が流れてくる。何かを数えている? そう、水輝が思惟を読んだ時、真也がカップを唇から離した。
「さーん、にー、いーち」
唇が嗤いの形に歪む。水輝ははっとしてテーブルに置いたカップを見た。赤い茶はカップの半分ほどの位置まで減っている。
「ゼロ」
立ち上がりかけた水輝の身体から一気に力が抜ける。ソファに崩れ落ちた水輝は力を振り絞って頭を上げた。視界がぐらついている。
「特別製だっつったろ?」
だが薬の類を使われればすぐに判る筈だ。水輝は歯を食いしばって真也を睨みつけた。真也はソファにゆったりともたれかかって水輝を眺めている。
「一つ忘れているようだから言ってやるが、俺を誰だと思ってるんだ?」
そう告げて真也はゆらりと立ち上がった。水輝はその間に全身に力をこめて何とか起き上がった。ソファに深く寄りかかる。
「絵美佳……ちゃん、か」
「当たり。俺の宿主はてめえが思う以上に天才なんだよ。てめえを嵌めるヤクの調合くらい朝飯前って訳だ」
薬、か。これが。水輝は内心でそう呟いた。人々の使用するあらゆる薬剤は龍神である水輝には通用しない。薬物の混入された食品を口に含んだだけでも酷い違和感を覚えるほどだ。
だがさっきの紅茶にその違和感はなかった。せいぜい甘い香りがした程度だ。水輝はふらつく頭を手で支え、もう一度テーブルのカップに視線を飛ばした。赤い茶が微かに揺れている。
「それにてめえに盛ったのは普通のヤクじゃねえ」
立ち上がった真也が近づいてくる。反射的に水輝は力をかき集めようとした。とても身体の動きでは抵抗できないと思ったからだ。真也が何を考えているにせよ、動きを制約されるのは困る。
「っと。あぶねえなあ。まだそんな力、出せるのか」
にやにやと嗤いながら真也が立ち止まる。水輝は震える腕を上げて真也に手のひらを向けた。集めた力を収縮させる。
「でもなあ、のろすぎんだよ」
不意に衝撃が襲ってくる。水輝は息を殺して呻いた。伸ばしていた腕が自然と下がる。身体を締め付けるような何かが自分を覆っている。同時に水輝の放とうとしていた力が逆流する。水輝は両腕で自分の身体を強く抱きしめた。
「……へえ? ちったあいい顔すんじゃねえか」
水輝の正面に回った真也がソファに足をかける。無造作に指で顎をつかまれ、水輝は歯を食いしばりながら顔を上げた。水輝自身、気付いていなかったが頬が微かに赤く染まっている。
「遅効性にしてもらったからな。じわじわ味わいな。てめえはただじゃ逃がさねえ」
身体の中で何かが暴れている。水輝は片目を開けて真也を見た。滲んだ視界一杯に真也の姿が映る。全身を震わせながら水輝は唇の端を微かに吊り上げた。
「お……まえこそ……ただで、済むと……思うなよ」
「あー、ただじゃ帰さねえつもりだが?」
震える腕をのろのろと上げる。水輝は真也の胸倉をつかもうとした。つかんで離さなければ、多少動きが遅くても攻撃は当たる。
「あまーい。てめえ、自分が力を垂れ流してんの、判ってねえだろ? 思考が丸見えなんだよ!」
不意に視界が暗くなる。水輝は目を見張って硬直した。何をされたのか、一瞬、理解できなかった。唇に温かく柔らかなものが触れる。口の中に甘い香りが一杯に広がる。抵抗する間もなく、生ぬるいものが喉の奥に落ちる。
水輝は大きく呻いて頭を振ろうとした。だが真也はがっちりと水輝の頭をつかんで離さない。
「ん……んぅっ!」
強烈な衝動がこみ上げてくる。下腹部の熱が全身へと広がる。水輝は自分の意志とは全く無関係に強制的に欲情させられた。何もかもが判らなくなるような激しい欲求がこみ上げてくる。
「けっ。手間取らせやがって」
間近で声がしたことだけは理解できた。真也が唇を袖で乱暴に拭って立ち上がる。冷ややかな眼差しで水輝を眺め、真也は口許に嗤いを刻んだ。
それにしても水輝はよくはめられるなあw
色んな意味でw