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要がコスプレ少女と命名した奈月は明るい表情でグランドを横切っていた。グランドには授業中の生徒たちがいた。奈月は手近な生徒に目的の教室の場所を聞き、会釈をして別れた。
おつかいに行って頂けますか。立城に頼まれたことを思い出して奈月は嬉しそうに笑った。片手に下げた買い物かごは帰りに醤油を買うためのものだ。水輝に渡さなければならないものは奈月のポケットに大切にしまってある。
硝子張りの入り口はとても広々として見えた。かつて通っていた学校の事を思い出し、奈月はしばし入り口の手前で足を止めた。何枚もの硝子窓が組み合わされたその入り口からは校舎内に明るい日差しが入っている。懐かしさに目を細め、奈月はまた歩き出した。途端に何もないのにつまづいてしまう。恥ずかしさに頬を染め、奈月は気を取り直して入り口をくぐった。
一つだけ注意してください。清陵高校に着いたら力は使わないでください。奈月はかごからスリッパを出しながら首を傾げた。立城は力を使ってはならない理由については説明しなかった。が、きっと何か訳があるのだろう。奈月は小さく頷いてスリッパを履いた。
意識して力を機体の内部に封じ込める。この学校にたどり着く直前に奈月はそうした。安全のために幾重にも鍵をかける。そうしなければふとした拍子に力が零れてしまうからだ。奈月はぺたぺたと自分の身体を触り、力の漏れがないかを確かめた。うん、大丈夫。そう内心で呟いてまた歩き出す。
事務室の前を過ぎる。事務室内で働いていた人々がぎょっとしたように奈月の姿を目で追う。余りにも姿に驚いたのだろう。事務員たちは誰も出て来ない。奈月は自分がそんな注目を集めていることにも気付かず廊下を歩いていた。続いて校長室、教頭室、保健室を過ぎる。
奈月は楽しい気分で校舎の二階に上がった。教室で授業を受けていた生徒たちが徐々に騒ぎ始める。だが奈月は自分が騒ぎの原因であることに全く気付かなかった。賑やかな学校だと呑気に認識する。楽しそうだなあ、と呟いて奈月はかごから一枚の紙を取り出した。水輝のクラスが記されたそれと教室に書かれたクラス名を確かめる。
首を傾げて立ち止まった奈月の姿を教室内の生徒たちが凝視する。紙と教室を見比べていた奈月はあっ、と小さな声を上げて口許を手で覆った。しまった。水輝の学年はこの階ではない。そのことに気付いて奈月は真っ赤になった。
慌てて別の階に移動する。だが奈月は生徒たちの邪魔にならないよう、極力足音を立てないように努めていた。つまづいた時も、奈月は器用に機体を操って足音を殺した。その器用さをつまづかないようにする、という方向に持って行けばいいのではないか。という点については全く考えが及ばない。奈月は一つずつの階を確かめながら水輝の教室を探した。
陰に隠れて奈月を見つめる目に、奈月自身はまだ気付けなかった。
可愛い格好をしているので余計に目立つ件w