現実にはないものですが、苦手な人は回避して下さい。
BL警報! 憑依警報! です!
エロシーンです。
優一郎の腕の中で淫らに喘ぐ水輝の姿が脳裏に映る。真也はくすくすと笑って机の中からビニール袋を取り出した。赤と白のツートンカラーのカプセルがビニール一杯に詰まっている。
記憶を読むことは造作もなかった。水輝が力を抑制するピアスを片方でもなくしていなかったら、こうも事は簡単に進まなかっただろう。真也は薄い嗤いを浮かべて水輝を振り返った。垂れ流しになった力が床を這って水輝を中心に広がっている。
力の大半は立城に委ねた。が、今の真也は着々と力を取り戻しつつあった。流れる水輝の力が全身に染み込んでいく。
ソファで力なくうつ伏せになっている水輝に近寄る。真也は嗤いながらビニール袋を翳してみせた。ざら、とカプセルがビニールの中で音を立てる。
「てめえが中毒になっててラッキーだったぜ。作っといて正解だったな」
カプセルに込められた試薬は元々はちなりから採集したものだ。ちなりの機体を修復する際、絵美佳は機体内に妙なものを見つけた。合成愛液が仕込まれたタンクが二つあったのだ。由梨佳もそれを見て首を捻っていた。結局、絵美佳は一回り小さい方のタンクを機体から取り外し、中身を分析した。
それは強度の催淫剤だった。が、人間に使うのはとても無理だろう。絵美佳は分析結果からそう判断した。つまり、ちなりの機体に込められていたそれは対人用のものではなかったということだ。
人間にとって劇薬になるそれを使う相手となると限られる。絵美佳はちなりが復活したのち、ちなり自身にこれは何だと問い掛けた。機体ログにはその液体の正体については一切、記されていなかったのだ。
「あ、それねぇ。前に部長がひじょーようにってつけてくれたの。えっとね、前に一度、雨宮先輩に使ったことがあってねぇ」
機体のログをどれだけ消しても人の生身の脳は当時のことを記憶している。絵美佳はちなりから話を聞きだして納得した。ちなりは多輝を陥れた時のことをよく覚えていた。その後にちなりはすぐに外に出かけるようになっている。つまり、優一郎はちなりの機体ログだけを消し、ちなり自身の記憶については特に問題ないと判断したのだろう。先のようなことが発生するとは、優一郎自身も思っていなかったに違いない。
多輝は紛れもなく龍神だ。そのことは真也も熟知していた。絵美佳の心の奥底に閉じ込められていた時も、多輝の輝きだけははっきりと見えた。そんな多輝の意識を翻弄するために作られたのがあの試薬だったのだ。
それは特殊な液体だった。何故、多輝が口にした時にすぐに気付かなかったのか。その理由を真也はすぐに理解した。絵美佳が笑って言ったのだ。この試薬には生身の人の体液が使われている、と。多輝はその人の香りにごまかされ、薬を口にしてもすぐにそれとは判らなかったのだ。
龍神は人を食うことを禁じられている。それは龍神にとって人そのものが甘い果実となるからだ。一度、口にしたら甘い蜜の虜になり、なかなかその味から逃げられなくなる。それゆえ、あらかじめ龍神間では人の営みには干渉しないという取り決めがなされている。……いや、為されていたのだ。
断罪の主が消えた後、禁忌を犯す龍神が後を絶たない。そして人の力を取り込む一方で、龍神の種としての力はどんどん衰えているのだ。
真也はかつて翠から聞いた話を思い出していた。翠は淡々と真也に地上の様子を語ることを常としていた。魂だけになってしまった自分にどうしてそんな話を聞かせるのだろう。当時の真也は翠の行動が全く理解できなかった。こうして絵美佳の身体に入った時、初めてその意味を理解したのだ。翠は最初から真也を地上に戻すつもりでいたのだ。それがどんな形であったとしても。
カプセルが袋の中で音を立てる。真也は嗤いながら水輝の顔を覗き込んだ。水輝は苦しそうに呼吸しながら目を閉じている。
「苦しいよなあ? 半端にヤク入れられたせいで、すげえ焦れるだろ?」
言いながら真也は足で水輝の肩を突いた。押されて水輝が身体を捻る。苦しげな顔がよく見える。真也は水輝の苦しむ様を見て嗤った。歯を食いしばって何かを堪えるような顔を見ているだけで気分が高揚してくる。
「ここはあいつに近いからな。そうそう邪魔は入ってこねえ。てめえにはとことん苦しんでもらうぜ」
手にしていたビニール袋をテーブルに置く。次いで真也はもう片方の手に握っていた首輪を取り出した。腰を屈めて水輝の首に嵌める。水輝は殆ど抵抗もしなかった。真也は指先で水輝の髪をつまんだ。髪は既に青く染まっている。きっと目も同じ色になっているだろう。
深く息を吸い込んで目を閉じる。真也は水輝から流れている力を思う存分に吸収した。一気に髪が紫に染まる。そして瞼をあげた真也の瞳も紫に染まっていた。
「そのかっこ、よく似合うぜ。おら、立てよ」
嗤いながら真也は手を引いた。鎖が音を立てて現れる。真也が握った太い鎖は水輝の首輪に繋がっていた。水輝が引っ張られて苦しそうに呻く。真也は構わず鎖を強く引いた。
「て……め、後、で……覚えてろ」
「へえ? まだ喋れるか。意外としぶといな」
嘲笑を浮かべ、真也は空いた手をテーブルに伸ばした。袋の中からカプセルを一掴み取り上げる。薄く目を開けた水輝の瞳の色は青く染まっていた。真也は鎖を引いたまま、カプセルを握った手を水輝の胸に押し付けた。嫌がるように水輝が頭を振る。
「どっちがしぶといか、器と精神体の根競べと行こうぜ!」
そう告げて真也は強引に手を押した。遮っていた水輝の器が真也の力に影響されて一部分だけ綻びる。真也の手が胸に埋まった瞬間、水輝の身体が大きく跳ねた。見開かれた目の色がゆっくりと沈んでいく。真也は水輝を引き起こして胸の中で手を捻った。指の間から少しずつ、カプセルが零れていく。
肌に手が食い込んでいる。力を乗せた真也の手が直に水輝の精神体に触れているのだ。喉の奥から呻きを発し、水輝は目を見開いたままだ。手にまとわりつくのは水輝の形を構成するものの正体だ。真也は目を細めて鎖を強く握った。金属の触れ合う耳障りな音がたつ。真也は水輝の身体を首輪で支え、腕を更に奥へと進めた。
脳裏にとある情景が蘇る。緑に覆われたその場所には青く輝く湖があった。湖畔で寄り添いあっているのは水輝と紫翠だ。二人は何も言わず、ただ湖面を眺めている。強烈な印象に思わず目を閉じ、真也は脳裏からその情景を追い出した。
「立城の匂いをぷんぷんさせやがって……。てめえは昔っから気に入らなかったんだよ!」
叫ぶように言いながら真也は肘まで水輝の胸に埋めた。腕に何かが触れては過ぎる。真也は乾ききった唇を舐め、ゆっくりと指を開いた。開かれた真也の手からカプセルがこぼれて落ちる。
その瞬間、水輝が絶叫する。反射的なものだろう。水輝は周辺の力を一気に燃やした。青白い炎がその身体を包む。真也は薄く嗤って生み出した力で炎をねじ伏せた。
「どうだ? こっちには直接食らったことねえだろう」
カプセルの最後の一つを真也は指先で握り潰した。ねっとりとした空間に液体が溶け込んでいく。水輝が叫びながら頭を振る。その目からは完全に意志の光は失せていた。
真也はけっこー容赦がないです。