※この作品はR-18です。

魂の座 一部 凍えた魂   作:伊駒辰葉

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順と都子のシーンです。
エロはありません。


ブルーグレイの制服を着て

 風が窓から入ってくる。冷たい風に目を細めて順は読んでいた本を膝に乗せた。既に怪我は完治している。だが順はまだ病院から出てはいなかった。栄子の周辺の様子を探るにはこの方が都合がいい。それにここにいれば必然的に優一郎に会えるという寸法だ。順はくすくすと笑って窓に目をやった。

 

「いいかげんになさいませ、お兄さま」

 

 空気が揺れて人影が現れる。順の個室の窓から入ってきたのは都子だった。ふわりと宙から舞い降りるその姿は小鳥にも似ている。順は小さく笑いながら口許に手をあてた。

 

「よく似合ってるじゃん。そのカッコ」

 

 今の都子は男の性をまとっている。都子と順、二人分の力を合わせて性を男に固定させているのだ。都子は憮然として腕組みをした。目に見えない力が勢いよく窓を閉める。あーあ、と順は小声で呟いた。力任せに閉じられた窓にひびが入っている。だがそれすら見もせず、都子は憤然と順に迫った。

 

 ブルーグレイの学生服のよく似合う容姿だ。順は都子を見ながら何気なくそう考えた。都子の今の姿はかつての多輝とそっくりだ。それも当然だろう。都子は龍神である多輝の器にそのまま精神を移しているのだ。

 

 多輝の精神は今はヒューマノイドの機体の中に納まっている。が、都子は逆に器に現存していた力の大きさに影響され、本来なら流出する筈のない力まで垂れ流している状態になっているのだ。今はまだ、順の力も使って抑え込んではいるが、その状態をいつまでも維持できる訳ではない。結局、術はいつか途切れ、その度にまた改めて施しなおさなければならないのだ。

 

 だがそんな状態をいつまでも続けられない。順と都子の力は本来は全く異なる質のものだ。それを無理に混ぜ合わせて術を編み上げる。それはただのその場しのぎ的な方法でしかない。しかも続ければ続けるだけ、都子にも負担がかかる。

 

「似合っている、ではありませんわ! 一体、いつまで続ければいいんですの」

 

 呆れ果てた、といった様子で都子がそう吐き出す。順は笑ってまあまあ、と手を振った。するとぎらりと都子が順を睨む。ここが病院でなければ都子はきっと順にすぐさま飛び掛っていただろう。順もそのことは判っていた。

 

「だからさぁ。優一郎くんに会ってってゆってるじゃん。まだ連絡ないの? あのオヤジから」

 

 間延びした言い方で告げる。都子は首を横に振ってポケットから携帯電話を出した。無造作に順に放り投げる。順は片手でそれを受け止めた。操作して着信履歴を見る。自分以外から電話がかかった形跡はない。

 

 順は苦笑して携帯電話から目を上げた。が、都子はまだ肩を怒らせている。どうやらこのまま帰る気はないらしい。やれやれ、と順はため息をついた。

 

「用事をさっさと済まさせてくださいな。この姿のままだと疲れるんです」

 

 苛々とした声がそう告げる。順は力なく笑って携帯電話を本の上に置いた。都子は慣れない男の身体を使っていることに相当の違和感を覚えているらしい。それは当然か。順は胸の中でだけそう呟いた。

 

 だがこのままでいてもらわなければ困る。それが順の本音だった。相手が別の誰かなら今はいいよ、と言うことも出来る。思案する順の顔から少しずつ笑みが消える。都子はそれまで怒らせていた肩から力を抜き、順にそっと声をかけた。順はふたたびだらしない笑みを浮かべて頭をかいた。

 

「とりあえず、オヤジ締めに行くかなあ」

 

 順が面倒くさそうに呟くと都子が途端に渋面になった。都子は順のすることに基本的には口を挟まない。だが順が何をしているのかを薄々理解してはいるのだ。それ故、時折はこうして嫌悪感を露にする。順はやれやれ、と呟いてベッドから降りた。

 

「もう少し事が早く進むと踏んでいたんだけどなあ。意外とみんな消極的だから」

「……お兄さまの計画に穴があるだけではありませんの? 誰にも心があるのですから」

 

 都子が低く呟く。順は顔をしかめてパジャマを脱ぎ始めた。包帯だらけの身体が剥き出しになる。都子にわざとつけさせた傷はもうすっかり癒えている。残っているのは胸の傷だけだ。順は手早くシャツを羽織り、ジーンズをはいた。都子は腕組みをして壁に寄りかかり、そんな順を斜めに見つめている。

 

「こだわりとか? 好きだの嫌いだのってさ。そーんなに大切なもんかねぇ」

 

 言いながら順は頭に手を伸ばした。巻かれた包帯を取る。真新しい包帯を丸め、順は都子に軽く放った。都子が片手でそれを受け止める。そして思い切り嫌な顔をした。言わなくても次に何をしろと言われるか理解したようだ。

 

「お兄さまには大切なものはないんですの?」

 

 手の中の包帯に目を落としながら都子がぽつりと告げる。順は笑って都子を指差した。すると都子が真っ赤になる。じゃあね、と手を振って順は病室を出た。顔見知りに会わないよう、いつも行く方向とは逆に歩き出す。

 

 直接、優一郎くんにあてがった方が早いかなあ。順はのんびりと歩きながらそう呟いた。




男装……ではなくて、TSになりますかね。
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