※この作品はR-18です。

魂の座 一部 凍えた魂   作:伊駒辰葉

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優一郎視点ですが、エピタイは要になってます。
このキャラ、ホント個性が強くて他を食うんですよね……w
エロシーンはありません。


要、ロボット研究会を訪ねる 1

 呼び出しに応じて優一郎が地上に出たのは夜の九時を回った時だった。用務員室に真っ先に行って断りを入れる。すっかりおなじみになってしまったからだろう。用務員は優一郎に笑って頷いてみせた。

 

 廊下は薄暗かった。が、月明かりが窓から差し込んでいるために明かりを灯す必要はない。優一郎は静かに廊下を進んだ。時折、足を止めて窓から空を仰ぐ。赤く丸い月が酷く不気味に見えた。

 

 巨大ロボットのプロジョクトは優一郎が参入したことにより、ほぼ順調に進行している。このまま行けばあと一週間ほどで試作段階にまでこぎつけるだろう。叔父である克俊には今回だけは痛い目を見てもらわなければならない。凝り固まった頭で幾ら考えたところでうまい案は見つかる筈がない。結局のところ、克俊の提案は悉く却下された。

 

 柱の陰からまた月明かりの中に出る。優一郎はふと立ち止まって月を見上げた。赤いその色が何故か地下に眠るあの機体を思わせる。優一郎は薄く笑ってまた歩き出した。

 

 優一郎を呼び出した要は生徒会室にいるらしい。業務が長引いたのかな。優一郎はこの時まだそう考えていた。要はあれで生徒会業務にとても熱心だ。生徒たちからは変わった生徒会長だと言われてはいるが、今の清陵高校の内部が一応は安定しているのは要の尽力によるところが大きい。奇異な行動が目に付くため、多くの生徒はそのことに気付いていないのだ。

 

 教職員の管理も要が行っている。先に退職した教師はどうやら女子生徒たちにわいせつな行為をしていたらしい。生徒たちはだが、その教師が退陣した本当の理由を知らない。優一郎にしても要から聞かなければ実態を知ることは不可能だっただろう。生徒会と生徒会の抱える人材は決して無能ではないのだ。

 

 階段を昇る。生徒たちのいない学校は静まり返っている。今日は居残って活動する生徒もいないようだ。優一郎は静かな階段をゆっくりと昇った。硝子張りの窓から外の様子がよく見える。斜めに差し込む月明かりが長い影を作る。優一郎は白衣のポケットに手を入れて無言で進んでいった。

 

 四階に辿り着く。優一郎は生徒会室のドアを軽くノックした。中から要の声が応える。静かに扉を開き、優一郎は生徒会室に入った。

 

 珍しくボディガードの姿がない。優一郎は不思議に思いながら要に挨拶した。要が軽く頷くようにして声に応える。

 

 茶を出され、優一郎は椅子に腰掛けるように勧められた。素直に椅子に座る。要はふう、とため息をついてティカップを傾けた。ほどよく淹れられたそれを優一郎も手に取る。ばらの香りのする赤い茶が満たされている。

 

 何らかの業務中だったという様子はない。生徒会室の中は整然としている。要の端末だけが低い機械の音を発しているだけだ。優一郎は不思議に思いつつも栄子の経過報告をした。容態そのものは悪くない。精神的にも安定しているだろう、というのが呉羽の見解だった。

 

 だがいつ爆発するか判らない爆弾を抱えていることには変わりない。優一郎は慎重に言葉を選びながらそのことを告げた。

 

「早急に栄子さん本人の最終意思確認を済ませて、今週末に改造手術を実行したいと考えています」

 

 だがその最終の確認こそが優一郎の頭を悩ませている原因だった。栄子自身はまだ優一郎のことを総一郎と認識している。総一郎と偽ったまま計画を進めることは容易いだろう。だがどうしてもそれはためらわれる。栄子が総一郎を慕っていることを利用することそのものは問題はない。が、この先のこともある。いつ、栄子の記憶が戻るか判らないのだ。

 

 それに、と優一郎は心の中で呟いた。自分はあくまでも自分だ。決して総一郎のコピーなどではない。その自負が優一郎の決心を鈍らせていた。

 

 深々と要がため息をつく。紅茶のお代わりを注ぎながら要は目だけを優一郎に向けた。何故かは判らないがとても疲れた顔をしている。

 

「改造の前に、栄子さんには現在置かれている状況をある程度認識していただこうと思っています」

 

 それは優一郎にとっても栄子にとっても必要なことだ。少なくとも栄子の現在の容態は悪くない。表面上だけでも栄子はそう思っている筈だ。無用なショックを与えないようにと呉羽が気遣っているからだ。だが例えばこのまま黙って改造したとしたら。栄子はその事実を後に知った時どう思うだろう。恐らく、そんな真似をせずとも健康体だったのにと思うのではないか。それ故にある程度の現状説明は必須だ。優一郎は要が判りやすいようにそう説明した。

 

 要はしばし、口を挟まずにその説明を聞いていた。時折、力なく頷く。もしかしたら激務で疲れているのかも知れない。優一郎は説明の途中で口を噤み、大丈夫ですかと要に声をかけた。

 

「要さんも、栄子さんに誤解されたままでは、あまり気分が良く無いでしょう? 記憶はないとしても、娘だと自覚してもらって、もう一度関係を築き上げるべきだと思うのです」

 

 大丈夫だと応えた要に優一郎はそう告げた。そうね、と要が頷く。だが要の目はどこか遠いところを見つめている。話そのものは聞いてはいるのだろう。その方がいいわね、と呟いている。優一郎は訝りに眉を寄せ、要の顔を覗きこんだ。




一応、今のところは真面目シーンです。
長いので五分割します。
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