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「セックス終了後、連絡したら、二人で奥の研究室まで来てほしい。要さんにヒューマノイドについての説明を行いたいんだ」
了解、というカレンの声を聞いてから優一郎はまた要の手を取った。この部屋の奥にはもう一つ、小さな研究室がある。優一郎はカレンに片手を上げて部屋の奥に向かった。よろけながら要がついてくる。
ドアを開ける。表側の研究室より一回り小さな部屋がそこにはある。優一郎は壁にあるスイッチを入れて部屋の明かりを灯した。要を部屋に導いてからドアを閉じる。するとそれまで聞こえていた保美の喘ぎ声がぴたりと聞こえなくなった。
その研究室はとてもシンプルに作られている。机とベッド、それに端末が設えられているだけだ。優一郎は椅子を要に勧め、自分はベッドに腰を下ろした。要が困惑しつつも椅子に腰掛ける。
「ようこそ、ロボット研究会へ」
にっこりと笑いながら優一郎は告げた。要が困ったように視線を彷徨わせてから小さく頷く。優一郎はゆったりと足を組み、要を見つめながら首を傾げてみせた。要の顔はまだ赤い。
「ヒューマノイドについて基本的なことは、先日お話ししたわけですが、特に疑問点や興味を感じていることはありますか?」
要は頬を手で包んでため息をついている。先日の説明では要は熱心に話を聞いていたが、こんな反応はしなかった。どうやら自分の知らないところで要になにかあったらしい。そのことは優一郎にもよく判った。
「その、ヒューマノイド化にあたって、あの、容姿に手を加えることとかは可能なのかしら? あと、肌の感触や、その……」
言葉を濁しながら要が視線を彷徨わせる。優一郎は瞬きを数度ほど繰り返し、次いでにっこりと笑った。よくは判らないが要はどうやら今現在の自分の姿に満足していないらしい。先日まで容姿に絶対の自信を持っていた要からは想像できないことだ。
「容姿については変えようと思えば完全に変えてしまうことも可能です。身近な例をお見せしましょう」
立ち上がって机に近づく。優一郎は手際よく端末を立ち上げた。目当てのフォルダを開いて二枚の写真を画面上に並べる。片方は現在の栄子のもの、もう片方は栄子によく似た若い女性の機体の写真だ。
栄子の機体を優一郎はわざと若々しくした訳ではない。栄子がこの清陵高校に通っている当時に引かれた設計図を基に作り上げたため、必然的にそうなってしまったに過ぎない。だが要にはこの写真が充分に効果的だったらしい。食い入るように画面を見つめている。
かつて総一郎は全校生徒にそれと判らないよう、性格診断テストを行った。当時、研究していたヒューマノイドに最適な性格の生徒を探し出すためだ。そしてテストの結果、二名の生徒が選出された。片方は由梨佳、そしてもう片方の生徒が栄子だったのだ。
結局、二名のうち一名だけがヒューマノイド化された。それが由梨佳だ。栄子自身は総一郎がそんな計画を立てていたことにすら気付かなかった。当時、引かれた設計図は二種類あった。そしてどういう訳か現在までその設計図は残っていたのだ。
総一郎の描いた栄子の機体の設計図は寸分の隙もない作りになっていた。最近になってその設計図を発見した優一郎が舌を巻くほどの出来だった。当時、総一郎は優一郎と同じくらいの年だった。由梨佳の機体と異なり、栄子のそれは現在の優一郎が手がけるヒューマノイドの機体とほぼ同等、もしくはそれ以上の機能を持つように設計されていたのだ。
「これはお母様? 右の写真は完成予想CGか何かかしら?」
興味深そうに要が訊ねる。優一郎は穏やかに笑みを浮かべて別の写真を開いてみせた。栄子の機体の背面写真を表示する。
「いいえ、これは実在する栄子さんの機体の写真です。ヒューマノイドは機械の身体と人間の脳を組み合わせた存在ですから、週末に改造手術を行うためには、既に機体は完成していないといけませんから」
そう告げて優一郎はにっこりと笑った。要が驚いたように画面を覗き込む。栄子の実物写真と隣の機体の写真を懸命に見比べている。優一郎は微かに笑って机から離れた。白衣のポケットに手を入れて通信機を取り上げる。軽く指先で触れるとすぐに返答がくる。了解のサインを読み取って優一郎はドアに近づいた。
要が焦ったように振り返る。優一郎は軽くお辞儀をしてドアを静かに開いた。ドアの向こうにはきちんと服装を整えた保美とカレンが控えている。
「失礼致します」
保美がそう挨拶してドアをくぐる。その後ろからカレンが入室した。優一郎は微笑を浮かべたままドアを閉じ、要を振り返った。要は唖然とした様子で二人を見比べている。保美とカレンはユニフォームであるメイド服に身を包んでいるのだ。
この頃からメイド服か……(どこか遠くを見ながら