TS……したままなので、警報は必要ないですかね?(汗)
ボディチェックは入念に行わなければならない。それには女性器のチェックも当然含まれている。何故ならヒューマノイドは性的快感なしでは維持できないからだ。由梨佳はベッドに四つんばいにさせた多輝の股間をまじまじと覗き込んでいた。
「あ、あのさあ。ほんっとにそんなとこ見なきゃなんないわけ?」
多輝が不服の声を上げる。由梨佳は当然、という顔で頷いた。
「今のあなたはヒューマノイドなのよ。ヒューマノイドにとって女性器はもっとも重要なパーツなの」
快楽がなければ機体を維持できない。それ故にヒューマノイドはストレス値が上昇するたびに本能的に快楽を欲する。そのことを由梨佳は丁寧に説明した。が、多輝に納得した様子はない。困ったような顔で肩越しに由梨佳を見つめている。
「そりゃ判るけどさあ。何もわざわざこんな格好でさあ。しかも五分も見られればおれだって不服の一つも言いたくなるよ」
何か質問が、と告げた由梨佳に対して多輝がそう吐き出す。由梨佳はため息をついて肩を竦めた。結局のところ、多輝は何一つ判ってなどいないのだ。メンテナンスを欠かせばそれだけで機体に異常が出る。そのメンテナンスを正確に行うためには機体チェックをしなければならない。ヒューマノイドと一口に言っても機体の構造は一体一体違っているのが普通だからだ。
「あなたの女性器ユニットは、わたしにとって未知のパーツなの。あの子の作品を見るのは初めてなのよ」
由梨佳の目から見ても多輝の機体は素晴らしい作りをしていた。まず人とは全く見分けがつかない。次に種々の反応を見ても申し分ない出来栄えだ。内部の詳しい構造は判らないが、それだけ見ても優一郎の才能が伺える。
だがそれを見ても由梨佳の顔は曇っていた。どうして優一郎は黙っているのだろう。学会に発表しろ、とまでは言わないが、どうして親である自分にも研究成果を打ち明けないのか。由梨佳は一抹の寂しさを覚えて深いため息をついた。
もしかしたら年頃の男の子だからかしら。由梨佳はふとそう考えた。それまで母親に甘えていた子供が急に素っ気なくなる。それも由梨佳の予想していたことだった。現に優一郎はある時期を境に由梨佳に対する態度を一変させた。が、それも特に由梨佳を避けるといった方向性に変化したのではなく、あくまでもそれまでのように甘えたりすることがなくなったというだけだ。
それとも同じ科学者としての立場を考慮して、優一郎は遠慮したのではないか。そう考えると由梨佳の思考は段々と別の方向へと流れ始めた。ヒューマノイドの維持には性的快楽が欠かせない。もしかしたら優一郎は性の知識が豊富であることを由梨佳に悟らせまいとしたのではないか。考える由梨佳の顔はどんどん曇っていった。
「どうでもいいけどまだ? おれ、いいかげん疲れたんだけど」
まだチェックははじめたばかりだ。なのに多輝はいとも簡単に不満を漏らす。そのことも由梨佳の苛立ちの原因だった。軽く咳払いして多輝を睨むように見る。
そう、由梨佳は苛立っていた。それは優一郎が水臭いとか多輝が不服を漏らすとか、そういう理由からだけではない。問題は多輝のその造作にある。人にしては異様なまでに整った容姿。皮肉っぽい笑みのよく似合う顔立ち。それは由梨佳にとある人物を思い出させるのだ。
かつてその人物は由梨佳と同じ高校に通っていた。その名前は池田水輝。当時、水輝は男だったが時折は女の格好で由梨佳の前に現れた。そして事あるごとに水輝はさまざまな事態を引き起こし、挙句の果てに収拾がつかなくなるまでにかき回してくれたのだ。
「それなら、別に電源を切ってもいいのよ」
苦い思い出が自然と由梨佳の言動を冷たくする。冷ややかに由梨佳が告げると多輝は慌てたように首を横に振った。どうやら自分の意志を無視して強制的にチェックを行われるのは嫌らしい。由梨佳は大きなため息をついてチェックを再開した。
多輝の不満はそこで止んだ。
「本当に良く出来てるわ……」
指先には機械的な継ぎ目は全く感じない。それどころか機械だという痕跡が全く見当たらないのだ。先にヒューマノイドであると知らされていなかったら、由梨佳ですら多輝の正体を見抜くことは出来なかっただろう。そのくらい、多輝の機体は出来が良かった。
小さくくすぐるように撫でると多輝がびくりと身体を震わせる。由梨佳は真面目な顔で多輝の女性器を弄っていた。
「感度も、すばらしいわね」
「い、いや、あの、そんなこと、言われても……ひゃぅ!」
由梨佳の指がするりと小陰唇の間に滑り込む。多輝は声を上げてベッドに突っ伏した。零れる愛液には特に香り付けはされていないようだ。濡れた指先を口に含み、由梨佳は納得顔で頷いた。
チェック用の器具の詰まった鞄に手を伸ばす。中身を探りながら由梨佳は深い落胆の面持ちになった。確かに多輝の機体はよく出来ている。由梨佳も感心するほどの出来栄えだ。だがそれに比べて自分はどうだろう。作られた年代も随分と離れているが、それだけでこの差は説明できない。何故なら由梨佳の機体は総一郎の『エコサイエンシズム』に基づいて作成され、機体の素材には出来るだけ金がかけられていないのだ。
そして女性器にもその差は現れている。多輝のそれが人と区別がつかないようにされているのに対し、由梨佳のそれは男性器を効率よく射精させるための、言わば大人の玩具に近い作りになっている。その部品が悉くリサイクル品であるのは、当時、やたらと壊れまくる女性器に金がつぎ込めなかったからだ。
ヒューマノイドの機体構造を決めていない状態で書き始めたのですが……。
書いてるうちに決まった感じです。なのでこの段階ではまだまだ(汗)