エロシーンはありません。
……あ、あるか……ある意味……。
下ネタぽいので嫌な人はにげてー!
「このふたりは、あなたの従者なのですか?」
要が不安そうに訊ねる。きっと従者になるつもりはさらさらないと思っているのだろう。自尊心がその顔に表れている。優一郎は苦笑して再びベッドに腰を下ろした。柔らかなクッションが優一郎の重みを包むように受け止める。
「カレンは戦闘用途に、保美先輩は家事用途に特化した、特別なタイプのヒューマノイドです。一般的なヒューマノイドとは異なっています」
説明しながら優一郎は保美に頷いた。保美がゆったりと一礼し、スカートをめくり上げる。要があっ、と口を覆う。保美が手にしていたカップを股間にあてがい、コーヒーを淹れ始めたのだ。
「な、なんですの!?」
素っ頓狂な要の声が響く。その間にも真っ白なカップにコーヒーが満たされていく。それに伴って香ばしいコーヒーの香りが部屋に漂った。保美がにっこりと笑ってコーヒーカップを股間から持ち上げる。続いて機体の吐き出したカプセルにはコーヒーを淹れる過程で出来た紙くずなどが詰まっている。保美は隣のカレンにカップを渡し、何事もない顔でカプセルをエプロンのポケットにしまった。
要は呆然としていた。出されたコーヒーカップを見てはいるが手に取ろうとしない。どうやら淹れ方が気に入らなかったようだ。
「ちょっと下品ですわ! まるで、お……」
そこで口ごもって要は真っ赤になった。保美が小さく笑ってカップを引く。優一郎は微笑みながら保美に頷いた。保美の手からコーヒーカップを受け取り、優一郎はそ知らぬ顔でコーヒーを啜った。
「できるだけ人間の身体を再現しつつ、家事機能を内蔵するために、このような設計になっています」
優一郎は目を上げて要の反応を見た。要はうろたえるように視線を優一郎に飛ばしている。優一郎は不思議に思いながら要の前に立つ二人に目をやった。保美は変わらないが、カレンが腕組みをして鋭く要を睨んでいる。どうやら保美の淹れたコーヒーに手をつけなかった要に怒っているらしい。優一郎は小さく笑ってまあまあ、とカレンに手を上げた。
「だって部長。仁科が折角淹れたのに」
「いいでしょう、いただきますわ!」
カレンがぼやくと同時に要はそう告げて腰を上げた。そのままベッドに近づいてくる。優一郎の手からカップを取り上げ、要はコーヒーを啜った。好奇心でも刺激されたかな。優一郎は内心でそう呟きながら小さく笑った。
要が唐突に目を見張る。恐る恐るカップを覗き込み、要は次に保美を見た。
「キリマンジャロ……ですわね。なかなか美味しかったですわ!」
言いながら要は空になったカップを保美に無造作に突き出した。淹れたての熱いコーヒーを一気飲みする豪快さも勿論だが、要の順応性の高さに優一郎は内心で驚いた。保美は嬉しそうに微笑んでカップを受け取る。
「恐れ入ります」
そう告げて深々と頭を垂れる保美に要は満足そうに頷いた。傅かれることに慣れているからだろう。悠然とした要の態度を見て優一郎はなるほど、と呟いた。カレンはわかりゃいいんだよ、としたり顔で頷いている。
「フィルターや豆は、どうやって、身体の中にセットするんですの?」
興味津々といった様子で要が保美に質問を投げかける。保美は丁寧に説明をしながら時折、優一郎を伺った。だが保美が説明するなら優一郎も言葉を足す必要がない。機体のことを十二分に知っていなければ機能をフル活用など出来ない。保美は優一郎を除けば誰よりも自分の機体について知り尽くしているのだ。
要の興味は尽きないらしい。続いてカレンに色々な質問をし始める。カレンは困ったような顔で優一郎を振り返った。保美と異なり、カレンの機体についてはカレン自身にが理解していない機能がつけられている。というより、カレン本人は機体が充分に戦闘能力を発揮すればいいだけなのだ。つまり、説明できるほどに内部構造を把握してはいない。優一郎はカレンの機体についての質問にだけは自分から口を挟んだ。要が時折、感心した声を返す。
この二人は一般的なヒューマノイドではない、と優一郎は再三念を押した。要も特殊な機体に対する興味から質問はしているが、実際にその機体に入ることを望んではいないのだろう。優一郎が念を押すたびに判っている、と返答する。
どうしても試してみたい。そう要が言い出したため、四人は再び小さな研究室から表の研究室に移動した。要が部屋の中央まで進んでくるりと振り返る。
「試させて、いただきますわよ!」
要が一気にカレンに迫る。放たれた回し蹴りをカレンは片手でがっちりと受け止めた。要はそのまま身体を捻って次々と攻撃を放った。肘を飛ばし、こぶしを繰り出し、足刀を放つ。だがそれらをカレンは悉く受け止めた。カレンの機体のテストにもなるか。のんびりと思いながら優一郎は二人を見物した。
「遅いですわ!」
叫んで要が身体を反転させる。裏拳がカレンの顔面に飛ぶ。カレンは軽く頭を倒して要の手を避けた。その瞬間に要が身体を沈める。足払いがカレンの脛に見事に命中する。
「ありゃ。当たっちまったねぇ」
のほほんとカレンが呟く。だが要はその場に凍りついたように静止していた。カレンの脛に当たっている要の足がひくひくと動いている。
「卑怯……ですわよ!!」
通常の攻撃など本当は避けるまでもない。その程度にはカレンの機体は頑丈に出来ている。涙目で言う要にカレンがやれやれと肩を竦める。その場から動けなくなっているらしい要の腕を無造作につかむ。カレンは悲鳴をものともせず、軽々と要を引っ張り上げた。
初代コーヒーサーバー……(遠くを見ながら